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2007年10月14日 (日)

上岡敏之/ヴッパータール響(2007/10/14)

2007年10月14日(日)15:00
ノバホール(つくば)


指揮・ピアノ:上岡敏之
ヴッパータール交響楽団


R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番
ベートーヴェン:交響曲第5番
J.シュトラウス:喜歌劇「こうもり」序曲(アンコール)

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ヴッパータール交響楽団の来日演奏会…と言うよりは上岡敏之さんの凱旋公演は、ぜひ聴きたいと思っていましたが、東京での演奏会は平日夜だったので、仕事で行けなくなるリスクが高く、高額チケットは買いにくいし、土曜日の横浜での演奏会の日は別の予定が入っていました。
幸い、日曜日につくばでも演奏会が、しかも東京公演に比べて割安な料金で開催されることを知りました。
つくばエクスプレスが開通したおかげで、比較的短時間で行くことが出来ることもわかり、チケットを購入しました。
私の家からだと、みなとみらいホールと変わらない時間で行くことが出来ます。
そのつくばエクスプレス、さすがに21世紀に開通した鉄道だけあって、スピードを出しているのにあまり揺れません。
私の乗った区間では、一度発進すると高速で突っ走り、カーブで減速するなど一切ありません。
あっという間に終点つくばに到着しました。
ノバホールは、ここから歩いて5分程度です。
http://tsukubacity.or.jp/info/modules/tinyd1/index.php?id=2
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この日は残念ながら、1階席後方にかなりの空席が目立ちます。
でも、お客さんの鑑賞態度は非常に良い。
ビニール袋をガサゴソする人も居なくて、都内のホールより良いくらいです。
ロビーで話をしている人の様子を見ると、都内からの遠征(と言うほど遠くありませんが)の人もかなり居たようです。

この日は1階席前方で聴きました。
この席で聴いた限りでは、このホールは残響はそれほど多くありません。
しかし、決してデッドな響きではありません。
各楽器がくっきりと聞こえ、音の分解能が良く、オケの音がきれいに響くホールだと思いました。

一曲目の「ドン・ファン」は、決して先を急がず、悠然と音楽を奏でた印象。
ただし淡々と演奏ではなく、情熱を持った指揮振りで、髪を振り乱して半狂乱のように振る場面もありました。
オケは超一流ではないかもしれませんが、十分に一流の響き。
ドイツの地方都市のオケだけあって、インターナショナルにならないドイツの響きが素晴らしい。
会場の拍手は、一曲目なのに指揮者を3回舞台に呼び戻しました。

二曲目のモーツァルトはドイツ風の堂々たるモーツァルト。
短調の20番や24番ならともかく、21番でこれほど風格のある演奏を聴いた記憶はあまりありません。
そう思っていたら第1楽章のカデンツァで、20番のパッセージが登場し、びっくり。
上岡さんのオリジナルのカデンツァでしょうか?
ヴィオラ奏者がカデンツァが始まったとたんに、他のメンバーに何か目配せをしていたようでしたが、毎回即興で弾いているのでしょうか?
残念ながら、私はこの日1回限りの体験なのでわかりません。
この曲は比較的推進力のある演奏ですが、決して腰の軽い演奏ではありません。
第2楽章は優美の極み。
でも、単なるムード音楽とは対極にある、深みのある演奏でした。
なお、この日のピアノの向きは、弾き振りにもかかわらず普通のピアノ協奏曲の配置。
通常、弾き振りのときにはピアノのふたを取り、奏者兼指揮者は聴衆に背を向けて座る場合が多いと思います。
会場の制約とは思えないので、上岡さんの弾き振りのスタイルなのでしょう。
上岡さんはピアノを弾かないときは、立ち上がってピアノの後ろ(通常の協奏曲で指揮者が立つ位置)に行き、大きな身振りでオケをリードしていました。
この曲でも会場は熱烈な拍手で、上岡さんがコンサートマスターの手を引っ張って舞台の袖に引き上げ、ようやく拍手がおさまりました。

休憩後のベートーヴェンは速いテンポで始まりました。
でも重量感はあり、やっぱりドイツのオケのベートーヴェンです。
ぐいぐいと引っ張っていく演奏ですが、緊張感のある弱音部と、力のこもった大音量の対比が絶妙。
第2楽章をこんなに面白く聴いたのは、もしかして初めてかもしれません。
第3楽章では、うねるような響きに身を任せ、第4楽章に続く場面では、まばたきすら許さないような弱音に吸い込まれ、爆発するような第4楽章へ。
「終わってほしくない」と思いつつも、最後のたたみかけるような音の連続に圧倒され、一瞬、拍手をするのを忘れそうになるくらいでした。
オケも全員体を揺らして必死に食らいつき、大熱演でした。

アンコールのために何人かの奏者が入場してきたので、ワーグナーでもやるのかと思ったら、なんとアンコール曲は「こうもり」序曲。
上岡さんはいきなり全開のパワーでオケをあおり、まるでカルロス・クライバーのように演奏を開始。
冒頭のスタートダッシュが落ち着いたところで、オケのメンバーの何人かは目配せしあって、目が笑っています。
きっと、いつになく気合いが入っていたのでしょう。
事実、かなり速いパッセージで、管楽器がようやくついていったくらいのように感じました。
この演奏も、ドイツ風と言えばドイツ風ですが、優美なところは限りなく優美。そして速いところはスピード感あふれる快演。
全曲通して聴いても、冒頭で感じた「まるでカルロス・クライバーのように」という印象が残りました。

普段私は「ベートーヴェンの熱演の後ならアンコールなしでも良い」と思っています。
しかも、曲目が「マイスタージンガー」とかならともかく「こうもり」なんて…と思う方の人間なのです。
でも、この日の「こうもり」は違いました。
まさに、ベートーヴェンの熱演の後に演奏されるべき必然性をもった演奏でした。

オケが引き上げた後も全く拍手はやまず、上岡さんを無人の舞台に呼び戻しました。
上岡さんはちょっと驚いたような表情で笑みを浮かべて答礼。
この時点で会場はスタンディングオーべーション。
その後、手招きして、オケのメンバー全員を舞台に呼び寄せました。
メンバー全員で2回お辞儀して退場。
それでも拍手はおさまらず、上岡さんをもう一回無人の舞台に呼び戻してようやく拍手がおさまりました。
この日の素晴らしい演奏に、この賞賛は十分に値すると思います。
最後の答礼には楽団同行のカメラマンと思われる人が舞台に出て来て、「無人の舞台で一人拍手に応えるマエストロ」を撮影していました。

ロビーには「本日サイン会があります」と張り紙がしてありました。
終演後、すでに机が用意されていました。
でも「CDを購入した人」とは、書いてありません。
一般の人でもサインしてくれたのでしょうか?
残念ながら帰宅してやらなければならないことがあり、質問はしないで急ぎ会場を後にしました。
CDは最近発売された「悲愴」とブルックナー7番の2枚とも購入済みで、家にあります。
でも、しばらくはこの日の実演の余韻に浸りたいと思います。

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コメント

こんにちは、はじめまして。

私もこの演奏会を聴いていました。つくば市在住なので、ノバではしょっちゅう演奏会に行っています。ので、

>お客さんの鑑賞態度は非常に良い。

とのお言葉は、大変うれしい評価です。そうなんです、ノバは地元のお客さんもクラシックへの造詣も深くて集中力をもって聴けるし、チケットも安いことが多く、結構穴場ですよ。

演奏会も、凄いことになっていましたね。あれほどのスタンディングオベーション、ノバ始まって以来のような気がします。

それにしても、観客が少なかったのはもったいない。

投稿: ファルケ | 2007年10月14日 (日) 23時25分

はじめまして。
上岡敏之指揮ヴッパータール交響楽団つくば公演を主催した「つくばコンサート実行委員会」のメンバーです。ご堪能いただけたようで嬉しく思います。

今回の演奏会は、私たちの開催してきた公演の中でも出色のものではなかったかと思っております。お客さんのマナーに関しては、私たちが招待券のばらまきをまったくやらないこと、出張や学会等の折りに世界で聴いておられるような聴き巧者の方もおられることなど、いろいろと理由もあるのでしょうが、よい聴衆に恵まれております。お客さんの入りは率直に言ってもうひと息ほしいところですが、今日の公演に関して、お越しになった人はご堪能いただけたのではないかと自負しております。

サイン会はCD云々という制限をかけることはいたしません。上岡さんはおひとりおひとりから感想を聞き、1時間近くかけておりました。カデンツァについても何人かの方が質問していましたが、自作だそうです。

ぜひまたお越し下さい。

投稿: キンキン@ダイコク堂 | 2007年10月14日 (日) 23時40分

>ファルケ様

コメントありがとうございます。
本当に、お客さんのレベルの高さはびっくりしました。
始まって以来ですか。
ノバホールの歴史的瞬間に立ち会えて、光栄です。
お客さんが少なかったのは残念ですが、演奏中にガサゴソする人が居るよりは、上岡さんの音楽を、本当に真剣に聴いている人だけが居た、と考えることも出来ますね。

投稿: 稲毛海岸 | 2007年10月15日 (月) 23時56分

>キンキン@ダイコク堂様

コメントありがとうございます。
素晴らしい演奏会の主催、ありがとうございました。
あの素晴らしい演奏も、素晴らしい聴衆が居て成り立ったような演奏会でしたね。
ノバホールの名前は昔から知っていましたが、足を運んだのは今回が初めて。
ホールの響きもつくばの聴衆の皆さんも、大変気に入りました。
所用があったため、サイン会で上岡さんに直接感動の言葉を伝えられなかったのは残念ですが、あの演奏は私の記憶の中にずっと生き続けるでしょう。

投稿: 稲毛海岸 | 2007年10月15日 (月) 23時57分

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