« 神奈川フィル・シュナイト音楽堂シリーズ(2008年度) | トップページ | 「第九」を振り返って »

2007年12月29日 (土)

秋山和慶/東響(2007/12/29)

2007年12月29日(土)14:00
サントリーホール


指揮&チェンバロ:秋山和慶
東京交響楽団

ヴァイオリン:大谷康子
ソプラノ:佐藤しのぶ
メゾ・ソプラノ:井戸靖子
テノール:フェルディナンド・フォン・ボートマー
バス:ダニエル・ボロウスキ
合唱:東響コーラス

ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」より「春」「冬」
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」
蛍の光 (アンコール)

Img_2777Img_2779




最近は「第九」の後のアンコール、照明を落としたステージをペンライト等でライトアップした「蛍の光」も、かなり気に入っています。
しかし、昔は違いました。

最初に東京交響楽団の「第九と四季」を聴いたのは1985年。
サントリーホールはまだなく、会場は五反田の簡易保険ホールでした。
そのときは「第九の後にアンコールをやるなんて!」「しかも、よりによって蛍の光をやるなんて!」と思いました。
「第九に対する冒涜だ」とまで過激には考えませんでしたが、「照明を落として、ペンライトでライトアップするなんて、なんと一般大衆向けの企画なんだろう!」とがっかりして家路についたのを覚えています。

その後(私は秋山和慶さんの大ファンであるにもかかわらず)、しばらくは「第九と四季」を聴くことはありませんでした。
久しぶりに聴いたのは13年後の1998年。
1985年には無かった東響コーラス(1987年創設)の素晴らしいハーモニーに触れ、また、秋山さんの音楽の運びがやはり素晴らしく、“第九の後のアンコールとライトアップ”も素直に受け入れられました。
もしかしたら、秋山さんの円熟もあったかもしれません。
受け入れてしまえば、年の瀬に聴く「第九」として、こんなに雰囲気満点の演奏会はありません。
その後2003年まで、6年連続で聴いています。

その間に気がついたのは「第九」の前に演奏される「四季」の出来に、ソリストによってかなり差があるということです。
結構名の知れた人がヴァイオリンのソロを弾いたときに「おいおい、練習はしてきたのかい?」と思ったこともあります。
「こんな四季なら、第九一曲だけでいい」と思った年もありました。
たかが「四季」、されど「四季」。
素人耳には簡単そうに聞こえる「四季」のヴァイオリン・ソロであっても、きちんと準備をしないと、プロでも「おやおや」という演奏になるということなのでしょうか。

しかし、この日のソロは、東響のコンサートマスターの大谷康子さんなので、何の心配もしていませんでした。
聴く前から、準備の行き届いた好演になることは確信していました。
なぜなら大谷さんは、秋山さんと東響をバックに、この曲をレコーディングしているのです。
また、演奏会でも聴いたことがあります。
確か1999年だったと思いますが、オペラシティ・シリーズで前橋汀子さんが親族の不幸で降板したときに代演し、満場の大喝采を浴びました。
この日も期待以上の好演。
もちろんピリオドアプローチではなく昔ながらの普通の「四季」ですが、それだけにヴァイオリンが情感たっぷりに歌うことが出来、うっとりと聴き惚れました。
「前座」ではない「四季」(春と冬だけですが)は、私が聴いた「第九と四季」の中でも、たぶん一番の出来だったと思いました。

休憩後の「第九」は、大谷さんは赤いドレスを黒(紺?)の服に着替えて登場。
ソロを弾いた後なのに、コンサートマスターの席に座りました。
秋山さんの「第九」も、もちろんピリオドアプローチではなく昔ながらの普通の「第九」ですが、推進力と重量感のバランスを絶妙に保った演奏で、大好きです。
秋山さんというと、昔はカチッとしたカラフルな音を連想していましたが、古典派を振るときは結構どっしりとした音を出します。
「第九」は長年振ってきて、完全に手の内に入っているはず。
4年ぶりに聴きましたが全曲どこをとっても素晴らしく、特に終楽章の迫力は圧巻。
スダーンさんの時代になっても、秋山&東響のコンビは健在でした。

この日のソリストは第2楽章終了後に入場。
開演前に「ソリストの入場のときに拍手はしないで下さい」というアナウンスが流れており、またステージ上も、若干照明を落とした中、静かな入場でした。

第4楽章に声楽の口火を切ったダニエル・ボロウスキさんが素晴らしい!
声を張り上げて叫んでしまっては興ざめですが、ボロウスキさんは十分な声量ですが、決して叫んではいません。
情感たっぶりに、朗々と「おお、友よ…」のフレーズを歌い上げました。
テノールのボートマーさんも良かったので、男声を海外から招いたのは成功だと思います。
女声陣に関しては、ソプラノの佐藤しのぶさんの声は、個人的には「少しかん高い」と感じてしまいました。
本来は、もう少し深みのある声を出す人だと思います。
また、この曲はアルトがあまり聞こえないことが多いのですが、この日の井戸靖子さんの声は、結構響いていました。

東響コーラスは100人を超える人が舞台に載っていたと思いますが、透明感のあるハーモニーはいつも通り。
専属とは言えアマチュアですが、うわさによると結構練習は厳しいそうで、「第九と四季」だけでなく定期演奏会でも、いつも良い演奏を聴いています。
今年は、新国立劇場合唱団(読響)、二期会合唱団(都響)とプロの合唱団の魅力を満喫しましたが、東響コーラスも“いつも通り”の素晴らしい声を聴かせてくれました。

お約束のアンコールの「蛍の光」は、例年通り、コーラスの一部が舞台を降りて1階客席に並び、照明が落ちていく中、ペンライトでライトアップ。
昔は、完全に暗くなって秋山さんがペンライトで指揮した年もありましたが、最近は完全には暗くしません。
でも、オケのメンバーの譜面台にもライトが取り付けられ、雰囲気満点。
他の在京オケとはひと味違う演出の「第九」は、東響の伝統と言ってよく、これからも可能な限り聴き続けていきたいと思います。
“演出”だけでなく、本編の「第九」も十分に“通”の人の鑑賞に堪えると思います。
「四季」もソリストに人を得れば“前座”の域を凌駕します。
無理に有名な人を呼ぶ必要はなく、このままずっと大谷さん(あるいは、もう一人のコンマスの高木さんと交替?)で行くのも良いかもしれませんね。
Img_2782

|

« 神奈川フィル・シュナイト音楽堂シリーズ(2008年度) | トップページ | 「第九」を振り返って »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/214768/17514823

この記事へのトラックバック一覧です: 秋山和慶/東響(2007/12/29):

« 神奈川フィル・シュナイト音楽堂シリーズ(2008年度) | トップページ | 「第九」を振り返って »