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2008年1月13日 (日)

コウト/プラハ響(2008/01/13)

2008年1月13日(日) 14:00
サントリーホール

指揮:イルジー・コウト
プラハ交響楽団


スメタナ:連作交響詩「わが祖国」全曲


ホールに入ると、舞台の上でハープ奏者二人が「ヴィシェフラト(高い城)」冒頭の練習をしています。まるで「今から我が祖国が始まりますよ~」と言うような最高の予告編で、気分はすっかり「わが祖国」モードに切り替わりました。

このコンサートのチケットを買ったのは、NHK-BSで放送された2005年11月のコウトさん指揮のN響の演奏会が素晴らしかったからです。
コウトさんはN響の定期会員だった1990年代に何回か聴いていますが、あまり記憶にありません。
しかし、その放送で聴いたブラームスの交響曲が推進力満点の迫力だったので、コウトさん指揮のコンサートに行きたくなりました。

また、2007年11月に聴いたチェコ・フィルの「わが祖国」が、(たまたま私の座った席の音響のせいかもしれませんが)私にとっては不完全燃焼だったので、チェコの指揮者とチェコのオケでのリベンジの意味もありました。
そして、その期待は、見事に満たされました。

オケの並びはチェロが右側に来る対向配置。
コンサートマスターを先頭にメンバーが入場し、次々に着席。
会場からは拍手が贈られます。
チューニングで何とも形容しがたい“チェコの香り”の音を確認した後、コウトさんが登場しました。

このオケの音は、言葉では形容しがたいのですが、まさにチェコのオケがボヘミアの曲を演奏する際に期待されるちょっとくすんだ音。
“透明感”とは対極にあるような音ですが、決して濁った音や汚い音ではありません。
フィラデルフィアやモントリオールとは全く違う音で、ウィーンとも違いますが、うっとりするような瞬間が多々あります。

“予告編”のあった「ヴィシェフラト(高い城)」冒頭のハープの出だしは、お約束通り指揮者は何もせずに立ったまま。
でも、何とも言えない間合いで演奏は進みます。
コウトさんが指揮を始めると、弦のアンサンブルが…、木管が…、金管が…、と、次々に妙技を繰り広げます。
ほんのちょっとしたフレーズでも、本当に丁寧に、しかし萎縮せずに歌います。
技術的にうまいオケは他にいくらでもあるでしょうが、この“チェコの音楽性”を“妙技”と言わないわけにはいきません。

「モルダウ」になるとハーモニーにさらに厚みが増し、うねるような音の流れが会場を包みます。
壮大なドラマを見るような「モルダウ」が終わったときには、拍手をしたい衝動に駆られました。
「やはりこの曲は演奏機会が他の5曲より多いから仕上がりが良いのかな?」と思いましたが、このハーモニーは「シャルカ」以降も継続しました。
宴会で夜が更けてみんな眠り込んだ後の、弦のザワザワという音は、この後の総攻撃を予感させる、少し背筋が寒くなる雰囲気を見事に表していたと思います。
私も少し背筋がゾクゾクしました。

「シャルカ」が終わったところで拍手をして良いのかどうか、会場は迷ったようで、最初はパラパラと拍手が起こりましたが、コウトさんが客席の方を向くと、盛大な拍手になりました。
ここで15分の休憩。
休憩後に登場したコウトさんを迎えた拍手は、さらに盛大でした。

「ボヘミアの森と草原から」「ターボル」「ブラニーク」と、“こうしてほしい”演奏が進みます。
単に“チェコの香り”を漂わせるにとどまらず、推進力と迫力で興奮させられたのはコウトさんの力量でしょう。
コウトさんの指揮の動作はスクロヴァチェフスキさんに似ているような気がしました。
手の動作だけでなく、ときどき口を開けてオケを煽るところも似ています。
譜面を見ながらの指揮でしたので、「わが祖国」の楽譜が6冊に分かれていることもわかりました。
なるほど、連作交響詩6曲なんですね。

この曲は、民俗色を漂わせる部分もありますが、シンフォニックな部分も多々あります。交響詩ですからあたりまえかもしれませんが、この日の演奏は、「交響」+「詩」を最適な配分で提示した、私にとっては理想に近い演奏でした。
演奏終了後はブラボーの声もかかり、盛大な拍手でした。

この日の会場は満席ではありませんでしたが、それなりにお客さんは入っていたと思います。
11月のゲルギエフでもこれくらいの入りでした。
当日券はS席とA席だけでしたが、確かにPブロックやLA、RAブロックは空席なし。
休日昼の公演で「ニューイヤーコンサート」と銘打っていましたが、会場のお客さんに浮ついた雰囲気は一切なし。
コウトさんの、あるいはチェコのオケの「わが祖国」を聴くのが目的で集まった聴衆は、平日夜の定期演奏会並みの集中力で聴いていたと思います。
定期演奏会並みにアンコールもなく、後味良く会場を後にしました。

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