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2008年2月の10件の記事

2008年2月24日 (日)

二期会「ワルキューレ」(2008/02/24)

2008年2月24日(日)14:00
東京文化会館大ホール

東京二期会オペラ劇場
指揮:飯守泰次郎

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」全三幕
200802241200802242
200802243




くせになりそう。
私は(まだ)ワグネリアンではなく、どちらかというとオペラよりもコンサートの方を好む人間ですが、こういう音を約4時間続けて聴いてしまうと、なぜ世の中にこれだけ多くのワグネリアンが居るのかと言う理由が、多少なりともわかるような気がします。
『これだけは見ておきたいオペラ』(新潮社)という本に堀内修さんが「退屈するなら、誰が4晩もかかる作品に付き合うものか。」という文章を書いていますが、“4晩”を“4時間”に置き換えれば、それがそのままこの日の「ワルキューレ」にあてはまると思います。
この長時間、東京文化会館の座席に座っているのは、東京から香港までエコノミークラスで行くのと同じようなものですが、それだけの価値はあったと思いました。

まず、飯守泰次郎さんの指揮するオーケストラの音が見事。
長丁場ですので、ちょっと音がずれたり、外したりという場面が無かったわけではありませんが、総じて、吠えたり、甘美になったり、官能的になったり、…といったワーグナーの音響を見事に体現していたと思います。
東京文化会館の響きは、残響感があまり感じられません。
でも、昨年5月のウィーンへの旅行時に聴いた国立歌劇場(シュターツオーパー)やフォルクスオーパーの音響は、サントリーホールよりも東京文化会館に近い感じでした。
歌劇場としては、あまり響きすぎない方が良いのでしょう。
個人的な好みとしては、もう少し音に包み込まれるような感じが欲しい感じもしますが、ストレートに音が向かってくる感じも、なかなか良いものでした。

歌手陣についても、皆それぞれ良かったと思いますが、フンディング役の小鉄和広さんの声が特に力強く迫ってきました。
これは、比較的出番が少なかったせいもあるのでしょうか。
他の主役陣は、力を入れて歌っている場面と、やや力を抜いて歌ってる場面があったようにも感じました。
歌い始めで「おや?ヴォータンにしてはちょっと弱々しいかな」などと思っていると、そのうちにどんどん声が強くなってきて、ここぞというところでは朗々と響く声が…という感じ。
確かに、これだけ長いと、最初から最後まで声を張り上げっぱなしというわけにもいかないのでしょう。
逆にメリハリがついて、聴く側の聴衆にとっても、私は良かったように思います。

演出は、オペラ通ではない私には、先進的なのか伝統的なのか、すばらしいのか平凡なのか、よくわかりませんでした。
DVDで観たメトロポリタン歌劇場のようなリアルな舞台装置ではありませんが、登場人物の服装は伝統的なスタイルの服装のようにも思えます。
特に奇抜な読替もなかったようです。

終演後の「ブラボー」の声が一番多かったは、やはり飯守泰次郎さん。
当然ですね。
1月に新国立劇場で観た同じ飯守さん指揮のR.シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」も良かったですが、やはり飯守さんのワーグナーは格別でした。

演出および装置:ジョエル・ローウェルス
衣裳:小栗菜代子
照明:石井リーサ明理
舞台監督:小栗哲家
公演監督:多田羅迪夫、曽我榮子

配役:
ジークムント:大野徹也
フンディング:小鉄和広
ヴォータン:泉良平
ジークリンデ:増田のり子
ブリュンヒルデ:桑田葉子
フリッカ:増田弥生
ゲルヒルデ:林志保
オルトリンデ:星野尚子
ヴァルトラウテ:三本久美子
シュヴェルトライテ:北澤幸
ヘルムヴィーゲ:吉村美樹
ジークルーネ:浪川佳代
グリムゲルデ:田辺いづみ
ロスヴァイセ:平舘直子

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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2008年2月16日 (土)

ボッセ/新日本フィル(2008/02/16)

2008年2月16日(土)15:00
すみだトリフォニーホール


指揮:ゲルハルト・ボッセ
新日本フィル
(第75回名曲シリーズ<クラシックへの扉>)
ヴァイオリン:郷古廉(ごうこ すなお)

ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番「軍隊」
パガニーニ:24のカプリースより(アンコール)
ハイドン:交響曲第1番
ハイドン:交響曲第100番「軍隊」
ハイドン:交響曲第88番「V字」から第4楽章(アンコール)


昨年10月30日の都響12月7日12月8日の札響、今年1月25日の神奈川フィルと、勝手に個人で聴き続けてきた“ボッセ・ハイドン・ツィクルス”も、とりあえず一段落。
(この後、関西で神戸市室内合奏団の演奏会でハイドンが取り上げられますが、私は関東在住ですし、予定もあって遠征は出来ません。)

この日のハイドンは、いままで聴いてきた4回に比べて、ピリオドアプローチの影響が一番少ない演奏のように感じました。
弦楽器は、メリハリをつけると言うよりも、流れるような音。
バロックティンパニが強打するので、ピリオドアプローチっぽい響きもしますが、それ以外は、割と昔ながらのハイドンの演奏に近く、ちょっと意外でした。

もしかしたら、今までの都響、札響、神奈川フィルも、私がぼんやり聴いていただけで、実はこういう演奏だったのでしょうか?
そうではなかったような気がするのですが…。
まあ、それはそれとして「ハイドンの演奏は、○○でなければならない」というわけでもないので、ボッセさんの指揮に乗って熱演を繰り広げた新日本フィルの演奏は良かったです。

考えてみれば、新日本フィルは、かつてカザルスホールで、ハイドンの交響曲全曲ツィクルスを完遂したオケです。
私は全て聴いたわけではありませんが、60番あたりから、ほぼ毎回通い、お世話になりました。
当時は、ピリオドアプローチではありませんでしたが、だからと言って、あの“偉業”の価値は、いささかも揺らぐことはありません。
この日の演奏を聴いて、あの当時、目を輝かせてカザルスホールでハイドンを毎月聴いていた日々を思い出しました。

最後にアンコールで、交響曲の楽章を演奏してくれたのは、ハイドン好きの私にとっては最高の贈り物でした。

さて、私はハイドン目当てでこの日の演奏会に出かけたわけですが、この日のもう一つの聴き物は、郷古廉(ごうこ すなお)さんのヴァイオリンでした。
プログラムの冊子によれば、1993年12月生まれとのこと。
中学2年生です。
若い、若すぎる…という先入観を吹き飛ばして、伸びのあるきれいな音。
テクニックだけでなく、音楽性も豊かなようです。
生徒による「発表会」ではなく、入場料を取れるプロの「演奏会」レベルの演奏にびっくりしました。
重箱の隅をつつくならば、曲の終わりを一目散に目指して急がずに、少しよそ見をしたり、寄り道をしたりする演奏をする余裕があれば、さらに良い演奏になると思いますが、そんなものは、歳を重ねれば身につくでしょう。

モーツァルトを弾ききっただけでなく、アンコールを弾いたのにも驚きました。
豊島さん、西江さんと、二人のコンマスが座っている目の前でアンコールを弾く度胸もたいしたものです。
こちらも伸びのある音が印象的でしたが、多少力が入り過ぎの部分もあったようです。
でも、ありきたりのバッハとかではなくて、聴いていて楽しかったです。

なお、ボッセさんは、郷古さんのアンコールの演奏を、舞台の袖でずっと立って聴いていました。

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2008年2月15日 (金)

金聖響/東京シティ・フィル(2008/02/15)

2008年2月15日(金)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール


指揮:金聖響
東京シティ・フィル
(第216回定期演奏会)

プロコフィエフ:交響曲第5番
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番


東京シティ・フィルの2007年度の年間プログラムを見たときに、真っ先に私の目をひいたのがこの演奏会でした。
この2曲を並べた演奏会というのは、結構珍しいのではないかと思います。
どちらも、普通は演奏会の後半を飾る曲。
今年5月のフィラデルフィア管弦楽団の来日演奏会では、23日(金)と24(土)の2日に分けて演奏される曲目です。
しかも、どちらも私の好きな曲目で、プロコフィエフは特にお気に入りです。
1年くらい前から楽しみにし、発売初日にチケットを買いました。

しかし、残念なことにお客さんお入りは、いま一歩。
1階席は半分も埋まっていなかったのではないでしょうか。
でも、2階両サイドのバルコニーはほとんど埋まっていましたし、3階にも結構お客さんが座っていました。
(要するに、S席以外は、そこそこ売れていたと言うことになりますね。)
そして数は少ないながらも、入場したお客さんは、みんな熱心に聞き入っていて、会場の雰囲気は、なかなか良い雰囲気でした。

前日にはこの同じホールでハーディング/東京フィルの演奏会を聴きました。
昨日は3階正面の席でしたが、この日は正反対の、オルガンの前のP席。
やっぱり私は、P席の方が、視覚面、音響面、価格面ともに好きです。

金聖響さんが指揮する東京シティ・フィルの音は、飯守さんが振ったときの重い音でも、矢崎さんが振ったときの明るい音でもなく、なんと言ったらいいのでしょう、シンフォニックな音です。(語彙が貧弱ですみません。)
しかも、単に音響効果を狙っただけの演奏ではなく、フレーズがなんとも音楽的。
またまた語彙が乏しくてすみません。
「シンフォニックで音楽的な演奏」なんて書いても、全然わかりませんよね。
ただ、弁明ではありませんが、この日の2曲はいろいろな背景があるにせよ、最終的に出来上がった姿は標題のない純粋な交響曲。
(最近では「革命」と呼ばない方が主流ですね。)
この日の演奏は、ことさら何かを強調するわけではなく、しかし決して淡々とした演奏でもなく、ニュアンスと力強さを兼ね備えた、この2曲の、まさに私好みの演奏でした。

一曲めのプロコフィエフから、まるで演奏会後半の雰囲気で、気合いが入っています。
弦楽器群が秀逸。
管楽器のごく一部のソロでは、「あれれ?後半のショスタコーヴィチに練習の優先度を置いたのかな?」という場面がありましたが、全般的には、大熱演、大健闘でした。

後半のショスタコーヴィチもほぼ同様に、弦楽器奏者は、みな体を揺らしての熱演。
本当に魅惑的な音でした。
一曲目のごく一部で気になった、管楽器の「あれれ?」という場面もなく、素晴らしい演奏でした。

東京シティ・フィルは正団員の数がそれほど多くはないので、今回も多くのエキストラの奏者が参加しているものと思います。
エキストラが比較的固定メンバーなのか、毎回違うメンバーなのかは、単なる一般音楽ファンの私にはわかりませんが、決して臨時編成のオケの音ではありませんでした。

演奏終了後、拍手を受けながら、オケのメンバーはあちこちで、ニコニコしながら、何やら二言三言交わしあっていました。

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2008年2月14日 (木)

ハーディング/東フィル(2008/02/14)

2008年2月14日(木)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール


指揮:ダニエル・ハーディング
東京フィル
(第36回東京オペラシティ定期シリーズ)

マーラー/交響曲第6番「悲劇的」


なんと力強い音でしょう!
物理的な音の強さだけではないと思います。
強い「意志」が音に乗り移っていたのだと思います。

この日私が座ったのは3階席正面。
http://www.tpo.or.jp/japanese/ticket/seat/operacity/index.html
席のランクはA席で、私にしては高価なランクのチケットを買いました。
…というか、あまり席が残っていなくて、あまり選ぶ余地がなかったのです。
すぐ目の前は格安のT席。
僅か1メートル程度の距離ですが、チケット代の差額は大きい。
その差は、おそらく視覚の差でしょう。
T席に近い側だったのでちょっと心配しましたが、体をよじることも、身を乗り出すこともなく、少し遠いながらも舞台の95%くらいがが良く見えました。

音響に関しては、良く混ざり合ってひと固まりに近い感じに聞こえます。
第2ヴァイオリンが右側でチェロが左側に来る対向配置でしたが、さすがに距離がありますので、ステレオ効果はあまり感じませんでした。
残響感はそれほど感じませんが、乾いた音ではありません。
個人的には、視覚的には多少難があるものの、3階R1~2列の1~20番あたりの音の方が好きです。

それでも“ハーディングさんのマーラーの音”は、ビンビン伝わってきました。
舞台に近い席で聴いたらもっと凄かったのかもしれませんが、会場に居合わせることが出来たことを喜ぶべきでしょう。
第1楽章の最初の一音から、いきなり重戦車の大群が現れたような迫力。
その迫力も、決して粗野な爆演ではなく、冒頭に書いたような「意志」のこもった迫力です。
この大音量での迫力は、最後まで持続しました。

ただ、その反面、ゆっくりのテンポや弱い音の部分は、ほんの少し雑になったり、奏者がちょっとためらいがちに音を出す場面がなかったわけではありません。
この辺は、個人的には、4日前に聴いたホーネックさん指揮の読響の「復活」に軍配を上げたいような気もします。
しかし、それは些細なこと。
当夜の演奏を聴けて、私は、大満足でした。

この日は、第2楽章=アンダンテ、第3楽章=スケルツォの順番で演奏されました。
プログラムの冊子には、比較的詳しくいろいろな経緯が書かれていますが、今後は、この順番の演奏が主流になっていくのでしょうか。
記憶の限りでは、この順番で聴いたのは、私は、この日が初めてです。
(12月に聴いたインバルさん指揮の都響の演奏も、第2楽章=スケルツォ、第3楽章=アンダンテでした。)
私個人としては、長年慣れ親しんできた「第2楽章=スケルツォ、第3楽章=アンダンテ」の方が、しっくり来る印象でした。
ただ、第1楽章→第2楽章、第2楽章→第3楽章では違和感があったものの、第3楽章→第4楽章は、意外としっくり来ました。
もう少し時間がたって慣れてくれば、あまり気にならなくなるかもしれません。

第4楽章の最後の一音が鳴り終わってからハーディングさんが手を下ろすまで、20~30秒くらいだったでしょうか。
その間の静寂と緊張感は“音楽の一部”でした。

追記:
この日の録音が、後日2008年5月11日にNHK-FMで放送されました。
最後の一音が鳴り終わってから拍手が始まるまでの静寂は、38~9秒くらいでした。

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2008年2月10日 (日)

ホーネック/読響(2008/02/10)

2008年2月10日(日)18:00
サントリーホール


指揮:マンフレッド・ホーネック
読売日本交響楽団
(第499回名曲シリーズ)
ソプラノ:薗田真木子
アルト:マルティナ・グマインダー
合唱:国立音楽大学合唱団

マーラー:交響曲第2番「復活」


プログラムの冊子には、ホーネックさんの微弱音のことが「音の魔術」「耳をそばだてて聴く、音楽のすごさ…。」と書かれています。
確かにその通りで、鳴らすところは思いっきり派手にドカンと鳴らすのと好対照の微弱音が、この日の会場を支配しました。
合唱の入りがこんなに小さい声で歌われたのを聴いたは、私は初めての経験のような気がします。

ホーネックさんの指揮姿は美しく、エネルギッシュでありながらも、しなやかな動きでオケを引っ張ります。
素人目の感想で恐縮ですが、こういう棒だったら、弦楽器はさぞかし弾きやすいのではないか…と思いながら聴いていました。
この日の読響の弦の音は秀逸。
特に第2楽章あたりから妖しい(?)雰囲気が会場に満ち始め、第3楽章では聴く者を麻酔にかけるかようなに陶酔感。

加えて、この日の独唱者2人が素晴らしい。
アルトのグマインダーさんは、ホーネックさんの推薦での起用とのこと。
確かに、シーズンプログラム発表の時点ではアルトは「未定」とされていました。
第4楽章のアルト独唱は、第3楽章までの弦の音の“雰囲気”を見事に引き継ぎ、陶酔の極み。
声を張り上げて歌う曲ではないこともあると思いますが、無理をせずに余裕を持って、その余力をニュアンスに振り向けて歌っていたのでしょう。
声の質も魅力的で、ぜひまた聴いてみたい人です。
ソプラノの薗田さんも、決して声を荒げることなくきれいな声を維持して歌いきったように思います。
ソプラノのキンキンする声はあまり好きではありませんが、こういうきれいなソプラノは大好きです。

合唱の国立音楽大学も声を張り上げずに好演。
N響の「第九」で「ちょっと声を張り上げすぎじゃない?」「叫んじゃ駄目だよ」と思うことがたまにあるのでちょっと心配しましたが、ホーネックさんの意図を汲み取ったようです。

全席完売にもかかわらず、会場内には空席が結構ありましたが、この日聴きに来たお客さんは(咳は少し目立ちましたが)みな集中力をもって聴いていたようです。
「拍手はご遠慮下さい」というアナウンスが流れたわけではありませんが、歌手が登場したときの拍手はなし。
曲が終わった後も、こういう曲もかかわらず、ほんのごく僅かとは言え、一呼吸置いての拍手開始。
みんなホーネックさんの魔術にかかってしまったのでしょう。

金管楽器にもこのニュアンスが徹底できればなお良かったと思いますが、本来咆哮する役割の楽器にそれを求めるのは酷なのでしょう。

まるで、この曲を初めて聴いたかのような、「ここは、こんな音だったんだ」というような、いろいろな発見のあった演奏でした。

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2008年2月 9日 (土)

新国立劇場「サロメ」(2008/2/9)

2008年2月9日(土)14:00
新国立劇場
R.シュトラウス:サロメ

この日ピットに入った東京交響楽団は、前日の夜にサントリーホールでの定期演奏会を聴いたばかりです。
ずいぶんハードだと思いますが、さすがはプロですね。
(2日続けて聴いている私も私ですが…。)(^^ゞ
ちなみに、サロメの公演は2月3日(日)、6日(水)、9日(土)、11日(月・祝)の4日で、その合間(?)に8日(金)にサントリーホール、10日(日)にミューザ川崎で定期演奏会の開催です。
ピットに入るのはオケとしては重要な活動(経験)だと思いますが、もう少しスケジュールは考慮した方が、演奏の“質”のためには良いのではないかとも思います。

私個人の印象では、この日の東響の演奏は、“オペラのオケ”としては満足できるレベルだったと思います。
確かに超一流クラスの指揮者が振ったときのオペラのオケの響きは、絶妙のものがあります。
昨年は、小澤征爾さん指揮のウィーン国立歌劇場(現地)やサイトウキネン、ウェルザー・メストさん指揮のチューリッヒ歌劇場(来日公演)で、オペラのオケの極上の響きを聴きました。
この日の演奏は、もちろんその域には達していないと思います。
でも、普通のレパートリー指揮者が振る、普通の(?)オペラのオケとしては、迫力も繊細さも雰囲気もありました。
評論家の先生の中には、ピットでの演奏を「ステージ上(つまり定期演奏会など)では、あれだけ良い演奏をするのに…」と酷評する向きもありますが、指揮者も違いますし、ある程度は、いたしかたないことだと思います。
この日の演奏だって、昨年11月にゲルギエフさんが東響を振ったときの演奏と比べてみても仕方ありません。
繰り返しになりますが、私は、この日のレスナーさん指揮の東響の演奏で、「サロメ」というオペラを満喫しました。

(その分、定期演奏会の方に多少の負担が出ていたような気がしないでもありません。メンバー表を見ると“分担”はしているようですが、東フィルのような大所帯ではないので、共通しているメンバーが多いと思います。)

歌手陣では、ヘロデ王役のヴォルフガング・シュミットさんが絶妙。
声の質が私のイメージするヘロデ王にピッタリだと思います。
ヨハナーン役のジョン・ヴェーグナーさんも、朗々と響き渡る声で、自信に満ちた預言者を演じていました。
王妃ヘロディアス役の小山由美さんも、妖艶な熟女の雰囲気とはちょっと違いましたが、声量も声の質も、なかなかのものでした。
私は、この3人の歌唱が印象に残りました。

サロメを歌ったナターリア・ウシャコワさんは、この3人に比べて、4階席の私の座った席までは、声があまり強く響いてこない印象がありました。
特に前半は、多少抑え気味に聞こえました。
確かに、最初から最後まで、ほぼ出ずっぱりですし、踊りも踊らなければならないので大変だと思いますが、“主役”なわけですから、頑張ってほしかったと思います。
…と言っても「3人と比べて」の話しですから、合格ラインに達していないわけではありません。

演出はおそらくオーソドックスなものだと思います。
私はそんなに“オペラ通”ではないので、やはりこういう演出の方が安心できます。
もっとも、プログラムの冊子によれば、最後にサロメにとどめを刺すのが小姓であるところは新機軸とのこと。
サロメのせいで自殺した護衛隊長に思いを寄せていた小姓が敵を討つ…ということだそうです。
もっとも、新機軸と言っても、もとになった演出はバイエルン国立歌劇場の1987年の演出とのことですから、1987年当時の新機軸ですが…。
(この新国立劇場の「サロメ」も、私は観るのは初めてですが、プレミエは2000年です。)

開演時は、場内が暗くなって指揮者の登場を待っていると、幕が上がり、いきなり音楽が鳴り始めました。
…というわけで、開演時の拍手は無し。
終演時は、最後の大音量が鳴り終わって舞台が暗転し、ふた呼吸ぐらい置いてから拍手が始まりました。
フライングの拍手など無く、とても良かったと思います。

【指揮】トーマス・レスナー
【演出】アウグスト・エファーディング
【美術・衣裳】ヨルク・ツィンマーマン
【再演演出】三浦安浩
【舞台監督】大澤裕
【芸術監督】若杉弘
【管弦楽】東京交響楽団

キャスト
【サロメ】ナターリア・ウシャコワ
【ヘロデ】ヴォルフガング・シュミット
【ヘロディアス】小山由美
【ヨハナーン】ジョン・ヴェーグナー
【ナラボート】水口聡
【ヘロディアスの小姓】山下牧子
【5人のユダヤ人1】中嶋克彦
【5人のユダヤ人2】布施雅也
【5人のユダヤ人3】松浦健
【5人のユダヤ人4】小貫岩夫
【5人のユダヤ人5】大澤建
【2人のナザレ人1】青戸知
【2人のナザレ人2】青柳素晴
【2人の兵士1】大塚博章
【2人の兵士2】斉木健詞
【カッパドキア人】藤山仁志
【奴隷】鈴木愛美

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大友直人/東響(2008/2/8)

2008年2月8日(金)19:00
サントリーホール


指揮:大友直人
東京交響楽団
(第553回定期演奏会)
ピアノ:ジョナサン・ビス

ハイドン:交響曲第25番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル・ラ・ヴァルス


ゲストコンサートマスターのレオン・シュピーラーさん(元ベルリン・フィル)は、拍手を受けて入場すると、団員を立たせて答礼してからチューニングに入りました。
ベルリン・フィルのスタイルですね。
オーストリア式、イギリス式など、国によっていろいろなスタイルがありますが、私は、このベルリン・フィルのスタイルが結構好きです。

シュピーラーさんは1928年1月生まれということですのでなんと80歳になったばかり。
技巧的にはともかく、座って弾いているときの存在感はさすが。
ベートーヴェンの協奏曲の“伴奏”では、特に力が入っていたように見えました。
ジョナサン・ビスさんのピアノは一音一音がくっきり聞こえる感じで、「この音でドビュッシーのピアノ曲を聴いてみたい」などと考えながら聴いていましたが、曲が進むにつれて次第に熱がこもっていったのは生演奏ならでは。
ベートーヴェンの協奏曲の中では、この3番がビスさんに合っていたかもしれません。

大友直人さんは、最近はいつもそうしているように指揮棒を持たないでの指揮。
後半のドビュッシーでは、最初は「直球勝負の演奏」と感じました。
確かに“音楽”としては、聴いていて非常にわかりやすい演奏だったと思います。
「リヒャルト・シュトラウスの交響詩のようなドビュッシー」などと言ったら言い過ぎかもしれませんが、旋律の流れが非常によくわかり、各楽器の音が生々しく聞こえました。
しかし、個人的には、もう少しミステリアスな雰囲気や、ブレンドされた音の香りが欲しいところです。
この曲の生演奏をそれほど多く聴いたことがあるわけではありませんが、ジャン・フルネさん指揮の演奏に接したことがある者としては、どうしてもあの独特の雰囲気が忘れられません。
…というわけで、「悪い演奏ではないのだが…」と思って聴いていると、第3曲からオケの響きが変わったような気がしました。
各楽器の音が生々しく聞こえていたのが、音が溶け合って、クリアで透明感のあるサウンドに聞こえるようになりました。
このサウンドが曲の最後では高らかに鳴り、快感。
第1曲、第2曲が私の個人的な好みに合わなかったことなど忘れて、幸せな気分で拍手をしました。

ラヴェルでは再び少し生々しい音に戻った感じですが、ドビュッシーでは気に入らなかったサウンドであっても、ラヴェルだったらOKの場合もあります。
「響きのきれいさ」よりは「迫力」を目指したような演奏でした。

1曲目のハイドン(ピリオドアプローチではありませんが、やや速めのテンポで、きれいな弦の音が印象的)からベートーヴェンを経て、休憩後はドビュッシーとラヴェルというのは、バラエティーに富んでいて、面白いプログラムです。
でも、楽員の皆さんは(プロだから大丈夫なのかもしれませんが)多少切り替えが難しかったのではないかと感じました。

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2008年2月 5日 (火)

ノリントンの「わが祖国」のCD

もともと好きな曲でしたが、最近再びスメタナ作曲の連作交響詩「わが祖国」に興味を持って聴いています。

きっかけは昨年11月のチェコ・フィルの演奏会が、私の座った席の音響のせいか、満場大喝采の中、取り残されてしまったことです。

でも、1月のプラハ交響楽団の演奏会はとっても好印象で、私にとってはリベンジが出来て大満足でした。

CDでは、コシュラー/都響の演奏で、27年前に聴いた演奏会の追体験をしました。
タイムマシンに乗って若返って当時の東京文化会館に座っている気分でした。

続いて、アーノンクール/ウィーン・フィルという比較的変わった部類に入るCDを買ってきてみましたが、何回聴いても良さがわかりません。(^^ゞ
雑誌などでの評論家の先生のウケは、結構良い演奏なのですけれどね。
どうもアーノンクールは、この演奏に限らず私とはあまり相性が良くないようです。

もうひとつの変わり種のノリントン/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズのCDも買ってみました。
音楽之友社の「21世紀の名曲名盤」というムックでは、金子建志さんだけが一票を投じています。
全く期待せずに、冷やかし半分で聴き始めたのですが、これが、なんと、素晴らしい!
ピリオド楽器がどうのこうのという前に、“音”が生き生きと迫ってくるのです。
良く聴けばノリントンさん特有の“小細工”もあるのかもしれませんが、私は細部は気にせずに聴き通しました。
(もっとも、1月30日に聴いた「英雄」の生演奏では、その“小細工”のひとつひとつが、自然で説得力を持つ音として心に迫ってきましたので、「変わった演奏」を期待し過ぎてはいけないのでしょう。)
万人向きの演奏ではないかもしれないし、「わが祖国」の最初の1枚として購入するには難があるかもしれませんが、なかなか魅力的な1枚であることは事実です。
私は、最近は、コシュラー/都響のCDと交互に聴いて楽しんでいます。

…となると必然的に、秋にコバケンが都響の定期を振って演奏する「わが祖国」は非常に楽しみだったわけですが、会場のダブルブッキングによる演奏会中止のニュースが飛び込んできて仰天しました。

過去には、1998年の東京シティ・フィル、1999年のチェコ・フィル来日公演で、コバケンの「わが祖国」を聴いたことがありますが、いずれも素晴らしかったです。
チェコ・フィルとのCDも良いですね。

コバケンは3月の札響定期でも「わが祖国」を振ります。
札幌の皆さんが羨ましいです。

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2008年2月 4日 (月)

山崎伸子チェロリサイタルの映像

聴きたいのに行けなかったコンサートがテレビやFMで放送されると嬉しいものです。
しかし、雑誌の付録のDVDで映像が見れるとは、予想もしていませんでした。

2007年12月17日(月)津田ホールで開催された『山崎伸子チェロリサイタル With 長岡純子』は、気がついたときにはチケットは完売していて、聴きに行くことが出来ませんでした。
Yahoo!オークションもこまめにチェックしていましたが、チケットの出品はなかったように思います。

(私が山崎伸子さんのファンになった経緯は、2007年11月30日の神奈川フィルのところに書きました。)

雑誌とは、モーストリー・クラシック』の2008年3月号です。
付録のDVDに、下記の演奏が収録されています。

ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番第2楽章
ブラームス:チェロ・ソナタ第2番第1楽章
ブラームス:メロディーのように

30分程度という収録時間ですが、行けなかった垂涎のコンサートの様子をうかがい知ることが出来、本当に嬉しくなりました。

山崎伸子さんのチェロは、当夜の主役ですからもちろん魅力的ですが、ピアノの長岡純子さんがまた素晴らしい。
ベートーヴェンのソナタなど、ピアノ・パートが(三重協奏曲とは対照的に)非常に雄弁で、チェロが休んでいてもピアノは弾き続けている部分もありますので、ピアノの音の存在感が大きい。
でも、ピアノの音にチェロが“割り込む”ときの山崎さんの音の魅力的なこと!
ブラームスだとチェロとピアノが対等に渡り合う雰囲気ですが、この“二人の個性”の協奏は、きっと当夜の会場を、圧倒的な迫力で支配したことでしょう。

聴きに行けなかったことを残念に思う気持ちなど吹き飛んで、堪能しました。

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2008年2月 2日 (土)

小澤/新日フィル曲目発表、コバケン/都響中止

新日本フィルのHPで、5月の特別演奏会(小澤征爾さん指揮)が発表になりました。

■新日本フィルのHP
http://www.njp.or.jp/njp/information/index.html#080128

…と思ったら、こんどはの10月の都響定期(小林研一郎さん指揮)の中止が発表され、驚きました。

■YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20080201-OYT1T00593.htm

■都響のHP
http://www.tmso.or.jp/j/topics/index.php#20080201

ウィーン国立歌劇場来日公演のチラシの、
『会場:東京(会場は追って発表いたします。)』
という文章の理由は、これだったのでしょうか?

読売の記事には、ウィーン国立歌劇場の前に“小沢征爾さんが音楽監督を務める”という枕詞がついていますが、ダブルブッキングしたのは、ムーティさん指揮の「コシ・ファン・トゥッテ」の日ですね。

(URLは2008年2月2日現在です。)

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