下野竜也/読響(2008/03/16)
2008年3月16日(日) 18:00
サントリーホール
指揮:下野竜也
読売日本交響楽団(第500回名曲シリーズ)
ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ラフマニノフ:13の前奏曲から第5番(アンコール)
メトネル:「おとぎばなし」から「リア王」(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第7番
J.S.バッハ:G線上のアリア(アンコール)
「コリオラン」序曲と、交響曲第7番は、まさに下野さんの音楽。
劇的な部分だけでなく、静かな旋律にも、なんとも言えない潤いが宿ります。
エネルギッシュでありながら決して肩に力は入らず、オーケストラはその指揮に乗って次々に魅力的な瞬間を作り出す。
7番をこれだけ盛り上げながら“爆演”系の演奏にならないのは見事です。
下野さんのベートーヴェンは、去年5番、9番と聴いてきましたが、いずれもピリオドアプローチではないのに、まさに現代の生命力に満ちたベートーヴェン。
読響の弦も、ヨーロッパのオケのような響きで応えていたように思いました。
7番の後にアンコールをやるとは予想していませんでしたが、下野さんは、「名曲シリーズは本日で500回になります。高いところから恐縮ですが…」と落語の真打ち披露口上のような言い方をして会場の笑いを誘い、「今後とも読売日本交響楽団をよろしくお願いいたします。」と言ってから「G線上のアリア」を演奏しました。
しっとりとした、素晴らしい演奏でした。
下野さんには、こんどは「田園」を演奏してもらいたいものです。
以上の3曲に比べて「皇帝」は、下野さんのやりたい音楽になっていたのでしょうか?
ベレゾフスキーさんのピアノは、ときには「ヴァイオリンを弾いているような音を目指しているのではないか?」と思うくらい、まるで流れるような旋律。
しかもかなり速い。
「おいおい、ショパンかい?」「いや、ドビュッシーかい?」と思うような瞬間も多々ありました。
ベレゾフスキーさんはピアノ演奏だけに没頭はせず、鍵盤上で指を動かしながら、指揮棒を見たり、指揮者を見たり、ソロを吹くオケのメンバーを見たりしていました。
仲道郁代さんのような、自分がピアノを弾かないときに、まるで指揮者のような身振りでオケの方に眼光を光らすのとは違って、演奏しながらのアイ・コンタクトですが、楽団員を自分のペースに引き込むのには効果的だと感心しました。
「皇帝」の冒頭のピアノを聴いた瞬間に、「あ、私好みの演奏ではないな」と感じましたが、曲が進むにつれてだんだんとと引き込まれてしまい、終わったら私も思いっきり拍手をしていました。
今でも「私好みではない」と思っていますが、“このスタイル”での名演であることは認めざるを得ません。
アンコールの2曲はベートーヴェンではないので、私も存分に楽しめました。
ベレゾフスキーさんは、個人的には「協奏曲ではなくリサイタルを聴きたい」と思いましたが、この日の「皇帝」も、面白かったことは事実です。
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