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2008年3月の12件の記事

2008年3月30日 (日)

飯守泰次郎/関西フィル(2008/03/30)

2008年3月30日(日)19:00
すみだトリフォニーホール

指揮:飯守泰次郎
関西フィルハーモニー管弦楽団

(地方都市オーケストラ・フェスティバル2008)
ソプラノ:緑川まり(*)
バリトン:三原剛(**)

オール・ワーグナー・プログラム
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
歌劇「タンホイザー」より「夕星の歌」
(**)
歌劇「ローエングリン」より「エルザの夢」(*)
「エルザの大聖堂への行列」「第3幕への前奏曲」
楽劇「ラインの黄金」より「ヴァルハラ城への神々の入場」
楽劇「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」
「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」
(**)
楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートの葬送行進曲」
「ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲」
(*)

私は聴きませんでしたが、昨年の関西フィルの東京公演もかなりの迫力だったそうです。
幸い、その演奏(ショスタコーヴィチの5番)はCD化され、この日の会場で先行発売されていました。
(一般発売は5月とのことです。)
http://www.taijiroiimori.com/04disc/discf.html
“重い音”がズシッと響く“飯守泰次郎さんの音”は、聴けば聴くほど「また次回も聴きたい」と思うようになってしまいます。
2月の二期会の「ワルキューレ」を聴いたこともあり、この日も吸い寄せられるようにすみだトリフォニーホールに来てしまいました。

空席はありましたが、前日の広島交響楽団よりはお客さんの入りは多い。
金、土、日で5公演(さらに室内楽公演もあり)、この演奏会が日曜日の夜という条件を考慮すると、“飯守泰次郎さんがワーグナーを振るとどうなるのか”を知っている人が集まったのかもしれません。

一曲目のマイスタージンガーから、もう心はウキウキです。
なんとも言葉にしようがない、飯守さんのワーグナー・サウンドです。
「このまま第1幕に突入してくれないかなぁ」という欲求すら感じましたが、曲が終わったときには、第3幕の最後を聴いているかのような満足感。
全く矛盾する二つの感情ですが、どちらも演奏に満足した感情であることは間違いありません。

関西フィルのサウンドは、飯守さんが東京シティ・フィルを振ったときに比べれば、多少軽い感じもしますが、1月に新国立劇場で「ナクソス島のアリアドネ」のピットに入ったときも、こういう方向性のサウンドでした。
長い曲などは力を入れる場面と少し力を抜く場面を使い分けていたようですが、逆にマイスタージンガーや、ローエングリンの前奏曲、そしてワルキューレの騎行など、オケだけで演奏されることも多い曲は、響きも磨かれ、迫力満点でした。

歌手の二人も見事。
三原さんはすっかり役になりきって歌っていたようで、前半のタンホイザーと、後半のワルキューレでは全く表情が違う。
もちろん燕尾服での歌唱でしたが、後半で出て来たときは、思わず「あ、ヴォータンの顔になってる!」と、思わずニヤッとしてしまいました。
緑川さんは、ブリュンヒルデの自己犠牲で、オケの強奏にも負けずに声を張り上げ、それが決して「叫び」にならないところが日本人歌手としてはトップクラスなのでしょう。
すばらしいパワーですが、声のきれいさがパワー全開でも損なわれないのに感心しました。

歌手のお二人が暗譜なのは、オペラ歌手として、ある意味当然ですが、指揮の飯守泰次郎さんも、最初から最後まで暗譜。
すっかり手の内に入っているワーグナーを披露してくれたのでした。

なお、この日はプレトークで紹介されましたが、若いコンマスの人がトップに座り、ベテランのコンマスの人が内側に座りました。
ただ、見ていると、内側に座ったベテランの人は、自分が弾いていないときはソロを吹いている管楽器奏者の方を見たりして目配りをしていますが、若いコンマスの人は、あまりそういう気配は見えませんでした。
休憩前や終演後のオケを解散させるタイミングなども、結構難しそうです。
都響のコンマスの矢部達哉さんが、「コンマスになりたての頃に、先輩のコンマスから、コンマスとして何をしなければならないかを、みっちりたたき込まれた」と雑誌のインタビューで語っていたと思いますが、コンマスは、なってからが大変なのでしょうね。

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2008年3月29日 (土)

秋山和慶/広島響(2008/03/29)

2008年3月29日(土)19:00
すみだトリフォニーホール

指揮:秋山和慶
広島交響楽団

(地方都市オーケストラ・フェスティバル2008)
ヴァイオリン:ヘンニング・クラッゲルード

グリーグ:抒情組曲
シンディング:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブル:メランコリー(アンコール)(ヴァイオリン&オーケストラ)
スヴェンセン:交響曲第2番
グリーグ:2つの悲しき旋律~過ぎし春(アンコール)

もしかしたらお客さんの数よりも、空席の数の方が多かったかもしれません。
でも、目の覚めるような素晴らしい演奏に、会場はかなり沸いていました。

コンサートマスターは派手なアクションで煽るし、木管奏者はソロになると、まるで外来オケのように「待ってました、私の妙技を聴いて下さい」と言わんばかりにノリノリで演奏する。
音色という点では、私の好みとすれば、もう少しまろやかな響きを好みますが、おそらくこのオケが目指している方向は“熱演型”“勢い”であって、私の“好み”は、おそらく的外れなのでしょう。
普段の広島での定期演奏会で、いつもこういうテンションの高い演奏をしているとすれば、このオケはすごいオケです。

シンディングのヴァイオリン協奏曲では、独奏のクラッゲルードさんが曲が手の内に入った熱演を披露してくれましたが、バックのオケも凄い。
“伴奏”ではなく“競争”と言っても良いくらいで、こんなにテンションの高い協奏曲のバックは滅多に聴けません。
クラッゲルードさんは、ソロがひと休みのオケだけが鳴っているときに、一瞬ニコッとしましたが、こんな熱演のオケパートを聴けば、ソリストも嬉しくなるでしょう。
実は、待ちきれなくて、ナクソスから出ているこの曲のCD(独奏は同じクラッゲルードさん)を事前に聴いてしまったのですが、CDではそれほど面白い曲とは思えなかったのが、この日の演奏では、ぐいぐいと引き込まれ、大変魅力的な曲に聞こえました。
生演奏の力は大きいですし、CDのセッション録音から数年が過ぎていますので、その間のクラッゲルードさんの弾き込みも効いているのでしょう。
(帰宅してもう一度CDを聴いてみましたが、この日聴いた演奏にはとうてい及ばない印象です。)
素晴らしい瞬間に立ち会えたことを感謝したいと思います。

スヴェンセンの交響曲は、おそらく私は初めて聴いたと思います。
プログラムの冊子の解説では「典型的19世紀ドイツ語圏のスタイル」と書かれていますが、まさにそういう曲。
北欧的な印象は薄いと言った方が良いかもしれません。
だからと言って、決してシューマンやブラームスの亜流ではなく、作曲者の個性を感じます。
この日の演奏の力も大きかったのかもしれませんが、素晴らしい曲なので、機会を見つけてまた聞いてみたいと思います。

------------------
2008年3月31日追記:
すみだトリフォニーホールのHPに、アンコールの曲名が掲載されました。
前半のアンコールは、ブル作曲の「メランコリー」という曲名とのことです。

三省堂の「クラシック音楽作品名辞典」を見てみると、
『John Bull(英)1562/63~1628』
とありますが、この人でしょうか?
「初期バロック音楽の鍵盤音楽の発展に貢献した」とあります。
ちょっと違うようです。

ネットで検索してみると、
NORDIC FOREST -北欧のクラシック音楽-というHPの、CD紹介のページに、
『Ole Borneman Bull 1810-1880、ノルウェー』
という作曲家がヒットしました。
ノルウェーだから、この作曲家の可能性が高いですね。
『孤独の時に (メランコリー) (ヨハン・ハルヴォルセン編曲)』
という曲目が含まれていますので、もしかしたらこの曲かもしれません。

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2008年3月26日 (水)

デプリースト/都響(2008/03/26)

2008年3月26日(水)19:00
サントリーホール

指揮:ジェイムズ・デプリースト
東京都交響楽団
(第659回定期演奏会Bシリーズ)
ヴァイオリン:矢部達哉

ペルト:フラトレス
    [弦楽オーケストラと打楽器のための(1991年版)]
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
ヒンデミット:交響曲「画家マチス」


ヒンデミットの演奏が終わった後は、まるでマーラーの交響曲の後のような歓声と盛大な拍手。
確かに、この音響効果は素晴らしいものでした。
しかし、単なる“きれいな響き”だけではなくて、その“音”が雄弁に何かを語り、心に迫ってくるかのような印象でした。
デプリーストさんは、細部を浮かび上がらせることよりも、オケ全体の音が溶け合った状態を目指していると思いますが、その一体感のある美音は聴いていて爽快でした。

「ドン・ファン」は、ヒンデミットに比べると弱音時の金管楽器の細部の丁寧な音作りを望みたい箇所もありましたが、それはほんの一部のことで、全般的にはやはり素晴らし音響効果でした。

なお、前半の2曲については、近くの席のお客さんの騒音で、著しく集中力をそがれましたので、あまりコメントする立場にありませんが、都響の弦楽器群は、何とも言えない艶のある音色を出していました。
ペルトは、かなりの緊張感を伴った弱音が魅力的。
モーツァルトの協奏曲は、矢部さんのヴァイオリンが磨き抜かれた音色。
しかし優雅に弾いているだけではなくて、コンマスの山本さんの方を向いて情熱的に煽る場面も。
そういえば、「ドン・ファン」での山本さんのソロも、なかなかの美音でした。

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2008年3月22日 (土)

スダーン/東響(2008/03/22)

2008年3月22日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(第554回定期演奏会)
ソプラノ:森麻季
メゾ・ソプラノ:谷口睦美
テノール:福井敬
バリトン:久保和範
合唱:東響コーラス
(創立20周年記念)
合唱指揮:大谷研二、松原千振

ハイドン:交響曲第82番「熊」
モーツァルト:ミサ曲ハ短調K.427

こういうハイドンを聴きたかったのです!!

東京交響楽団の2007年度はハイドン・ツィクルスでした。
確かに10月のヘンツェのオペラのとき以外は、必ず1曲、ハイドンの交響曲が演奏されました。
しかし、スダーンさんが振ったのは、7月の川崎定期を含めても、1番、2番、3番9番、そしてこの日の82番だけ。
(1番、2番は私は聴いていません。)
それ以外の指揮者が振ったのが、25番93番94番101番、104番。
(104番は私は聴いていません。)
ハイドンの交響曲が膨大なのはわかりますが、選曲にバランスも欠いているし、1回くらいはスダーンさんの指揮でオール・ハイドン・プログラムの日があっても良かったのではないか…というのが、ハイドン好きの私の感想です。

まして、この日の82番の素晴らしい演奏を聴いてしまうと、スダーンさんには初期の曲ばかりでなく後期の曲も指揮してほしかったなぁ…と思ってしまいます。
スダーンさん以外の指揮者が指揮したハイドンは、ピリオドアプローチではなかったと思います。
この日の演奏は、ピリオド風ではなく、完全にピリオド奏法だったのではないでしょうか?
楽器も、バロック・ティンパニに加えて、トランペットは普段あまり見ない形のものでしたし、フルート主席の甲藤さちさんが持っていた楽器は、黒っぽい色のものでした。
弦楽器奏者の弦を押させる左手は震えていません。
こうして、鮮烈で、鋭いアタックを伴った、今風のハイドンのサウンドが響き渡ったのでした。
会場も、演奏会が始まって約20分が経過したところなのに、演奏会の最後の曲が終わったかのような盛大な拍手。
私個人としても、1年間、待ちに待った快演でした。

休憩後の後半は、創立20周年記念の東響コーラスが(例によって暗譜で)加わり、モーツァルトのミサ曲。
ここでもオケはピリオドアプローチ。
アクセントをはっきりつけ、透明感のある響き。
コーラスも同様に透明感のあるハーモニー。
今風のモーツァルトのサウンドに包まれる経験は、至福のひとときでした。
独唱者では、やっぱり森麻季さんが素晴らしい!
ソプラノ独唱の活躍する曲ですので、どうしても他の独唱者に比べて目立つことは目立つのですが、本当にきれいにコントロールされた、これまた透明感を感じる声で、スダーンさんの意図を十二分に体現していたと思います。

この日のチケットは全席完売でした。
森麻季さんの人気のためなのかどうかはわかりません。
今シーズン最後の定期演奏会は、待ちに待ったスダーンさんらしい演奏での締めくくりでした。

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2008年3月21日 (金)

マリン/新日本フィル(2008/03/21)

2008年3月21日(金)19:15
サントリーホール

指揮:イオン・マリン
新日本フィル
(第428回定期演奏会)
ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ

バーンスタイン:「キャンディード」序曲
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ホルヘ:クリン(アンコール)
プロコフィエフ:交響曲第5番

指揮者のマリンさんは、ひたすらきれいな響きを追求していたように感じました。
「キャンディード」序曲も、プロコフィエフの交響曲も。
まるで、ジョン・ウィリアムズの映画音楽のような…と言ったら叱られるでしょうが、汚い音は徹底的に忌避して、オケの強奏でも澄んだ響きで、全くうるさく感じません。
ひたすら、きれいに、きれいに。
かなりオケを煽っている場面がありましたが、それでも音はきれい。
重量感や、突き刺さるような迫力や、心躍るようなリズムはあまり感じられません。
指揮棒も、点を打つと言うよりは、しなやかに弧を描く感じ。
おそらく、好みによっては評価が分かれる演奏だったのではないでしょうか。

私は「キャンディード」はともかく、プロコフィエフはもう少し迫力とリズムを感じたい気分でしたが、マリンさんの音のスタイルは徹底していて、これはこれで認めざるを得ないと思いました。
確かに、こういうサウンドでオケの強奏が止まった後にサントリーホールに響く残響の美しさは格別のものがあります。
「ちょっと好みと違うんだよな~」と思いながらも目を輝かせて聴き入ってしまい、第4楽章の最後では「終わらないでほしい」と思ってしまいました。
こういう音作りだったら、ラヴェルの曲を聴いてみたくなりました。

協奏曲のソロを務めたコパチンスカヤさんは、ときに足を踏み鳴らし、上半身を派手に動かし、情熱の熱演。
それにもかかわらず音は濁らず、テクニック的にも素晴らしい。
暗譜ではなく譜面を置いての演奏でしたが、決して曲が頭に入っていないわけではなく、曲は完全に彼女のものになっていたと思います。
木管奏者のソロの場面で2回ほどオケの方を振り返って、ソロ奏者に目を向けましたが、その目線の魅力的なこと!
指揮のマリンさんとは違って、聴衆を興奮に誘うような、力のこもった音でした。

会場の聴衆だけでなく、オケのメンバーまでがアンコールを促すかのように拍手をしていました。
アンコール曲は短い曲でしたが、こするような音も使った(たぶん)超絶技巧の曲。
会場からは、演奏中にもかかわらず、かすかにどよめきと笑いが起こりました。
ぜひまた聴いてみたいヴァイオリニストです。

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2008年3月20日 (木)

新国立劇場「アイーダ」(2008/03/20)

2008年3月20日(木・祝)14:00
新国立劇場
ヴェルディ:アイーダ

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豪華な舞台装置の第1幕、第2幕に比べれば、第3幕の舞台装置はやや質素。
でも質素な舞台の第3幕の方が、緊張感のある人間模様が迫力のある歌唱によってドラマティックに迫ってきたような気がして、ちょっと面白くなりました。
もっとも、これは舞台装置のせいというよりは、尻上がりに調子が上がったと見るべきでしょう。

第1幕のラダメス、アイーダ、アムネリスの三重唱や、第2幕のアイーダ、アムネリスの二重唱など、水準以上ではあるものの、もう少し迫力がほしい気がしました。
あるいは「清きアイーダ」のアリアも、第3幕、第4幕のベルティさん(ラダメス役)の素晴らしい歌唱に比べれば、多少抑え気味だったような印象でした。

第2幕第2場の「凱旋の場」は、豪華な装置の舞台を次から次へと人々の行列が精巧な小道具を伴って横切ります。
一瞬目の錯覚かと思いましたが、本物の馬に乗った人も横切りました。
たかだか10秒か15秒のために、めちゃくちゃ贅沢ですね。
しかし、この豪華な舞台の割りには、意外に音が迫ってこない印象でした

私は最初、会場の音響のせいだと思っていました。
この日座ったのは3階席のサイド。
頭上には4階席の底があるので、ホールの天井からの反射音などがあまり聞こえないせいだろうと思っていました。
でも、第3幕、第4幕の“音”を聴くと、そのせいではなかったような気がします。

第3幕のアイーダとラダメスの掛け合いは迫力満点。
オーケストラもシンフォニックな響きで迫力を後押しします。

第4幕の裁きの場面における緊張感は、“迫力”は“音の大きさ”のことではないということを示してくれました。
神殿と地下牢の上下二段構造の舞台も同様。
地下牢のアイーダとラダメスはしっとりと歌い上げ、それに神殿のアムネリスがからみ、息をのむような美しい瞬間でした。

ピットの東京交響楽団は2月の「サロメ」よりも音がきれいだったような気がします。
(席が違うので一概には言えないかもしれませんが。)
管楽器も含めて、定期演奏会で聴くようなシンフォニックな音を出しているように感じました。
私の席からはオーケストラピットの指揮者は見えなかったので、フリッツァさんの指揮ぶりはわかりませんでしたが、少なくとも第3幕、第4幕については、なかなかの好演だったと思います。
歌唱の方では、ラダメス役のベルティさんがいちばん印象に残りました。

…というわけで、第1幕と第2幕に対してネガティブな感想を書いてしまいましたが、あくまでも「第3幕と第4幕に比べて」ということですし、この豪華な舞台だけでも“目には御馳走”ですので、大いに満足して帰ってきました。
第2幕第2場(凱旋の場)などは、“耳ではなく目が主役”だったと思えば、お釣りが来るくらいです。
やはり「ゼッフィレッリのアイーダ」だったのでしょう。

【指揮】リッカルド・フリッツァ
【演出・美術・衣裳】フランコ・ゼッフィレッリ
【再演演出】粟國淳
【照明】奥畑康夫
【振付】石井清子
【舞台監督】大仁田雅彦
【芸術監督】若杉弘

キャスト
【アイーダ】ノルマ・ファンティーニ
【ラダメス】マルコ・ベルティ
【アムネリス】マリアンナ・タラソワ
【アモナズロ】堀内康雄
【ランフィス】アルチュン・コチニアン
【エジプト国王】斉木健詞
【伝令】布施雅也
【巫女】渡辺玲美

【合唱指揮】三澤 洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【バレエ】東京シティ・バレエ団
【児童バレエ】ティアラこうとう・ジュニアバレエ団
【管弦楽】東京交響楽団

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2008年3月17日 (月)

デプリースト/都響(2008/03/17)

2008年3月17日(月)19:00
東京文化会館大ホール

指揮:ジェイムズ・デプリースト
東京都交響楽団
(第658回定期演奏会Aシリーズ)
ピアノ:児玉桃

ハイドン:交響曲第44番「悲しみ」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」

なぜか私は、在任中ほとんど聴く機会がなかったデプリーストさん。
前回聴いたときは、椅子に座って指揮をしてはいましたが、まだ杖をついて歩いて舞台に登場しましたから、かなり前のことです。
千葉マリンスタジアムで、野球の試合の前に都響の金管奏者を指揮して「Take Me Out to the Ball Game」演奏したのは(私はスタジアムに居ましたが)聴いたうちに入りませんね。
すでに“先物取引”でインバルさんの治世下のような都響ですが、3月いっぱいはシェフはデプリーストさんです。

プログラムの冊子を見ると、デプリーストさんの音に対して「フィラデルフィア・サウンド」と書いてある記事を良く目にします。
でも、この日の演奏は、はたしてフィラデルフィア・サウンドだったのでしょうか?
私はフィラデルフィア管弦楽団は、CDか、NHK-BSか、NHK-FMでしか聴いたことがありませんが、その輝かしい金管のサウンドとは、この日の都響はちょっと違う印象でした。

でも、弦楽器の潤いのある音は、なかなか魅力的でした。
しっとりと落ち着いた感じの音で、あまり高い音がキンキン響くことはなく、中音域が美しい。
ハイドン、モーツァルトでも、まったく曲調が異なるショスタコーヴィチでも、私はしばしば弦楽器に耳を奪われました。

管楽器を加えたときに完璧なアンサンブルとは言えない場面もありましたが、総じてデプリーストさんの落ち着いた音楽の運びは“貫禄”を感じました。

ピアノ協奏曲の独奏は児玉桃さん。
ソリスト目当てにオケのコンサートのチケットを買いたくなるピアニストの一人です。
前日聴いたベレゾフスキーさんのピアノが、まるで流れるような弾き方だったのと対照的に、一音一音をしっかりと鳴らして、格調高いモーツァルトの音楽に仕上げていたと思います。
個人的には、こういうピアノの音の方が私は好きです。
モーツァルトのピアノ協奏曲というと、短調の20番、24番が取り上げられることが多いような気がしますが、私は23番や17番などの長調のピアノ協奏曲をもっと聴きたいと思っていました。
そう言う意味で、児玉桃さんのピアノで23番を聴けて、この日はとても幸せでした。

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2008年3月16日 (日)

下野竜也/読響(2008/03/16)

2008年3月16日(日) 18:00
サントリーホール

指揮:下野竜也
読売日本交響楽団
(第500回名曲シリーズ)
ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー

ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ラフマニノフ:13の前奏曲から第5番(アンコール)
メトネル:「おとぎばなし」から「リア王」(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第7番
J.S.バッハ:G線上のアリア(アンコール)
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「コリオラン」序曲と、交響曲第7番は、まさに下野さんの音楽。
劇的な部分だけでなく、静かな旋律にも、なんとも言えない潤いが宿ります。
エネルギッシュでありながら決して肩に力は入らず、オーケストラはその指揮に乗って次々に魅力的な瞬間を作り出す。
7番をこれだけ盛り上げながら“爆演”系の演奏にならないのは見事です。
下野さんのベートーヴェンは、去年5番、9番と聴いてきましたが、いずれもピリオドアプローチではないのに、まさに現代の生命力に満ちたベートーヴェン。
読響の弦も、ヨーロッパのオケのような響きで応えていたように思いました。

7番の後にアンコールをやるとは予想していませんでしたが、下野さんは、「名曲シリーズは本日で500回になります。高いところから恐縮ですが…」と落語の真打ち披露口上のような言い方をして会場の笑いを誘い、「今後とも読売日本交響楽団をよろしくお願いいたします。」と言ってから「G線上のアリア」を演奏しました。
しっとりとした、素晴らしい演奏でした。
下野さんには、こんどは「田園」を演奏してもらいたいものです。

以上の3曲に比べて「皇帝」は、下野さんのやりたい音楽になっていたのでしょうか?
ベレゾフスキーさんのピアノは、ときには「ヴァイオリンを弾いているような音を目指しているのではないか?」と思うくらい、まるで流れるような旋律。
しかもかなり速い。
「おいおい、ショパンかい?」「いや、ドビュッシーかい?」と思うような瞬間も多々ありました。

ベレゾフスキーさんはピアノ演奏だけに没頭はせず、鍵盤上で指を動かしながら、指揮棒を見たり、指揮者を見たり、ソロを吹くオケのメンバーを見たりしていました。
仲道郁代さんのような、自分がピアノを弾かないときに、まるで指揮者のような身振りでオケの方に眼光を光らすのとは違って、演奏しながらのアイ・コンタクトですが、楽団員を自分のペースに引き込むのには効果的だと感心しました。

「皇帝」の冒頭のピアノを聴いた瞬間に、「あ、私好みの演奏ではないな」と感じましたが、曲が進むにつれてだんだんとと引き込まれてしまい、終わったら私も思いっきり拍手をしていました。
今でも「私好みではない」と思っていますが、“このスタイル”での名演であることは認めざるを得ません。

アンコールの2曲はベートーヴェンではないので、私も存分に楽しめました。
ベレゾフスキーさんは、個人的には「協奏曲ではなくリサイタルを聴きたい」と思いましたが、この日の「皇帝」も、面白かったことは事実です。

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2008年3月15日 (土)

CD「ラフマニノフの交響曲第2番によるピアノ協奏曲」

CDショップの目立つ場所に置いてあるので御存知の方も多いと思いますが、「ラフマニノフのピアノ協奏曲第5番」なるCDがBRILLIANTレーベルから発売されています。
輸入盤ですが、日本語の帯がついていました。
交響曲第2番をピアノ協奏曲の形に編曲したものですが、こういう“ゲテモノ”(?)を見ると、ついつい興味をそそられて買ってしまいます。
商売にうまくのせられている感じです。

ラフマニノフ(ヴァレンベルク編)ピアノ協奏曲第5番
(交響曲第2番のピアノ協奏曲編曲版)
ピアノ:W.シュミット=レオナルディ
指揮:テオドール・クチャル
ヤナーチェク交響楽団
(BRILLIANT CLASSICS BRL8900)

聴いてみるとラフマニノフの協奏曲っぽい雰囲気でピアノとオケが交錯し、演奏も熱がこもっていて結構おもしろい。
でも、交響曲の第2楽章は省かれていて全3楽章になっているのは、原曲の交響曲を知っているだけに、第1楽章から第2楽章(交響曲では第3楽章)へ移るときに、「え?」と思ってしまいます。
確かに交響曲の第2楽章はピアノ協奏曲っぽくない曲調かもしれませんが…。

聴く前は、「ピアノ協奏曲第5番」ではなく、「交響曲第2番(ピアノ協奏曲版)」と表記すべきでは?…と思いました。
シェーンベルク編曲の、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番だって、「ピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)」であって、「交響曲第5番」とは表記していません。
でも、2楽章がないのであれば、「交響曲第2番(ピアノ協奏曲版)」とは表記できませんね。

ちなみに、CDジャケットの表面には
   PIANO CONCERTO “No 5”
   ARRANGEMENT OF SYMPHONY No 2
とあり、裏面には
   PIANO CONCERTO “No.5”
の下に、
   Symphony No.2 in E minor Op.27
   arranged as Piano Concerto, by …
とあります。
表と裏で、微妙に表記が違います。
No.5に“ ”がついているのが、微妙なニュアンスなのか、強調なのか、その両方なのか…。

音楽的に価値があるのかどうかは私にはわかりませんが、いろいろな意味で面白い経験をさせていただきました。
個人的好奇心としては、編曲から始まって、録音、販売に至る行為がビジネスとして成功したのかどうか、後日、収支を知りたいところです。

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2008年3月14日 (金)

エッティンガー/東京フィル(2008/03/14)

2008年3月14日(金)18:30
千葉市文化交流プラザホール

指揮・ピアノ:ダン・エッティンガー
東京フィル
(第33回千葉市定期演奏会)
ソプラノ・お話:中村恵理

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
シューベルト:歌曲「アヴェ・マリア」
シューベルト:歌曲「ます」
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」より「さあ、この薬で」
モーツァルト:歌劇「魔笛」より「愛の喜びは露と消え」
グリーク:付帯音楽「ペールギュント」より「ソルヴェーグの歌」
グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

エッティンガーさん指揮の東フィル定期のライブ録音はNHK-FMで聴いていますし、オペラは新国立劇場で観ています。
おなじみの指揮者のつもりでいましたが、よく考えると、コンサートを生で聴くのはこの日が初めてでした。
しかも、新国立劇場の4階席からはピットの中は見えませんので、指揮姿を見るのも、この日が初めてでした。

大変エネルギッシュな指揮ぶりで、そのパワーが音に乗り移って爆風のように迫ってくる感じ。
「魔笛」序曲も「運命」も、日本のオケの通常のレベルとはパワーが違う印象です。
ただ、歌の伴奏にまわったときのオケの音には、そのパワーが感じられず、ちょっと残念でした。

ソプラノの中村恵理さんが英語を通訳しながらの、エッティンガーさんとのトークが楽しかったですが、エッティンガーさんは風邪をひいて3月8日のサントリーホールでの定期演奏会の後、寝込んでいらしたそうで、当初予定されていたエッティンガーさんの歌がキャンセルになったのは残念でした。

中村恵理さんの声もなかなか魅力的。
軽すぎず、重すぎず、無理な声のはり上げもせず、一音一音を大切に歌い込んでいる感じです。
容姿も良いので、舞台に花が咲いた感じです。
「アヴェ・マリア」「ます」はピアノ伴奏での歌唱でしたが、ピアノの音が鳴り終わる前に会場からは拍手が起こってしまいました。
オケの伴奏での4曲の中では、グノーの「私は夢に生きたい」が、楽しさ、迫力、技巧ともに会場を圧倒する素晴らしい歌唱。
この圧倒的な歌唱を聴くと、他の5曲は「力をセーブしていたのかな?」と思ってしまいましたが、まあ、歌の性格が違うので、そんなこともないのでしょう。
中村恵理さんの“声”は、またぜひ聴いてみたいです。

この会場の音響は、シンフォニーを聴くには、個人的にはもう少し残響が欲しいところですが、逆に歌にはこの程度の残響の方が好ましく感じました。
このホールは、2006年度まで「ぱるるプラザ千葉 ぱるるホール」と呼ばれていたところです。2008年度からは、京葉銀行が命名権を取得し、「京葉銀行文化プラザ 音楽ホール」と、また名称が変わるそうです。
http://www.mielparque.jp/chiba/hall.htm

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2008年3月 9日 (日)

秋山和慶/東響(2008/03/09)

2008年3月9日(日)14:00
府中の森芸術劇場 どりーむホール


指揮:秋山和慶
東京交響楽団

チェロ:長谷川陽子

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番
エルガー:チェロ協奏曲
ホルスト:組曲「惑星」

20080309_2




昨年、NHK-FMで大阪フィルの定期演奏会(2007年3月29日、ザ・シンフォニーホール)が放送されました。
そのときの秋山さん指揮の「惑星」、エルガーのチェロ協奏曲(独奏:ジャン・ワン)が素晴らしく、ぜひ秋山さんの「惑星」を生で聴きたい!と思っていたところ、この演奏会のことを知りました。
協奏曲の曲目も共通しています。

秋山さんの「惑星」を生で聴くのは、1986年3月8日のN響定期以来、22年ぶりです。
私は、1981年3月11日の東響定期で初めて秋山さんの指揮する演奏会を聴いて以来の秋山さんのファンです。
かつて秋山さんの指揮で聴いて大感激した曲を、近年の秋山さんの指揮で再度聴くと、素人が生意気なことを言うようですが、秋山さんの円熟を体感します。
この日も貫禄の棒さばきでした。

チューニングの音、そして1曲目の「威風堂々」の音を聴いて嬉しくなりました。
私がこのホールでコンサートを聴くのは今回が初めてですが、残響感もあり、なかなか良い音響です。
サントリーホールやオペラシティに匹敵するレベルではありませんが、私の座ったのは2階席前方に関して言えば、東京文化会館よりも私好みの音です。
多目的ホールということで少し心配していましたが、杞憂でした。
パイプオルガンがないことだけはハンディだと思いますが、東京文化会館だってありません。

コンサートマスターに高木さんが座り、ヴィオラの西村眞紀さんやフルートの甲藤さちさんなど、定期演奏会でおなじみのいつものメンバーが顔を揃え、秋山さんが指揮台に立てば、もう心配はいりません。
ずっと聴き続けてきた秋山&東響サウンドが響き渡りました。

2曲目のチェロ協奏曲は長谷川さんの音に魅了されました。
長谷川さんの演奏を生で聴くのも本当に久しぶりですが、朗々と鳴る音のスケールの大きさと音の艶に嬉しくなりました。
演奏が終わった後の会場の拍手は盛大でしたが、あまり長くは続かず、2回呼び戻しただけで終わってしまい、ちょっと申し訳ない気分。
都心のホールだったらもっとカーテンコールは長かっただろうと思われる好演でした。

休憩後の「惑星」は期待通りの名演。
「サントリーホールで聴きたかった」と思わなかった…と言ったらウソになりますが、逆にカラフルな色彩の音は、このホールの方がくっきりと出たかもしれません。
「木星」を聴きながら、「最近はいろいろ使われているけれど、やっぱりオリジナルをフルオーケストラで聴くのが一番!」と思いました。
「海王星」の終結部の音が消えていくところでは、ステージ上のライトを徐々に暗くしていき、最後は青っぽいかすかな光だけが残るという、クラシック音楽のコンサートでは珍しい演出もありました。
演奏終了後は、舞台裏で歌っていたコーラスのメンバーも舞台上に出て来て拍手を受けていました。

アンコールはもちろん無し。
この曲の後にアンコールはいりませんね。
開演前に会場に入って席についたとき、金管が「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」のようなフレーズを練習していたので「まさかアンコールに?」と思いましたが、そんなわけないですよね。
「ティル・オイレンシュピーゲル」と思ったフレーズも、私の聞き違いかもしれません。

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2008年3月 8日 (土)

シュナイト/神奈川フィル(2008/03/08)

2008年3月8日(土)15:00
神奈川県立音楽堂


指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
神奈川フィル
(シュナイト音楽堂シリーズVol.XIII)

ハイドン:交響曲第82番「くま」
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
20080308





「田園」の最後の音が鳴り終わってすぐに拍手を始めた人が会場の2~3割だったでしょうか。
でもシュナイトさんは、まだ指揮棒を下ろしません。
拍手はいったん止み、シュナイトさんが棒を下ろしてから盛大な拍手となりました。
この日の「田園」、特に終楽章の喜びに満ちた旋律は至福のひとときでした。
「田園」くらい有名な曲であれば、曲が終わったことは、ほとんどのお客さんがわかっていたと思います。
会場を埋めたお客さんの多くが間髪を入れない拍手に同調しなかったのは、皆シュナイトさんの音楽に心から共感していたのでしょう。
会場では当日券も発売されていたので完売ではなかったようですが、見渡す限り、満席のように見えました。
そして、シュナイトさんに対する拍手も熱狂的。
みな、シュナイトさんの音楽を聴くために集った“信者”だったのかもしれません。

私が神奈川フィルの「シュナイト音楽堂シリーズ」を聴くのは、今回が初めてです。
音楽堂でコンサートを聴いたのも本当に久しぶり。
前回は1993年4月29日の神奈川フィル(指揮:広上淳一)ですから、15年ぶりです。
昔から「音響が良い」と言われている音楽堂ですが、残響はあまり感じられません。
しかし、決して無味乾燥の痩せた音ではなく、くっきりとした美しい音が迫ってくるのは、やはり「音響が良い」と言うべきでしょう。
サントリーホールやオペラシティとは違う次元の音響の良さだと思います。
また、1階席前方から傾斜がついているので、前の席の人の頭が視覚の妨げになることもなく、非常に舞台が見やすいホールです。
この日は、定期会員の友人に先行予約で一緒に買っていただいた席なので、舞台からの距離も位置も絶妙の場所で、音、視覚、価格(会員割引!)ともに三拍子揃った最高の席でした。

シュナイトさんはかなり足が悪いようで、狭い歩幅でゆっくりと歩いて登場。
当然、椅子に腰掛けての指揮です。
しかし音楽が始まってしまえば、そんなハンディは全く関係なし。
1曲目のハイドンからして、はつらつとしたメロディとリズムが会場を支配します。
聴く前は「ドイツの正統派」などとレッテルを貼りたくなりますが、決して古くさい演奏ではなく、いま生まれてきたような新鮮さを持ったハイドン。
ピリオドアプローチではないと思いますが、伝統に根ざしながらもやはり21世紀のハイドンです。
この曲の第2楽章がこんなに楽しい曲だったなんて、初めて感じたような気がします。
第4楽章冒頭の単独の“熊のうなり声”や、終結部の全奏における“うなり声”を伴ったミックスした音響も楽しく響きました。

「ここで帰ってしまっても十分に満足」という気分の休憩時間ですが、もちろん帰るわけにはいきません。
「田園」はCDも出ていますが、このコンビにとっては“お約束の名演”のようです。
特に変わったことをしているわけではないのに音が次から次へと迫ってきます。
コンマスの石田さんも大きなアクションで熱演。
最初から最後まで、特に弦楽器群が素晴らしかったですが、第5楽章が静かに始まった後、音が動き始めたときには、あまりの美しさに背筋がぞくぞくっとしてしまいました。
冒頭にも書きましたが至福のひととき。
私自身は、おそらく美味しいものを食べたときの最初の一口のような(あまり人様にはお見せできない)恍惚感の表情を浮かべていたと思います。
管楽器が多少完璧でない場面もありましたが、そんなことでこの演奏の価値は揺らがないでしょう。
そして、終結部は音量をやや落として、テンポもゆっくり目にして、「消え入るように」と言ったら言い過ぎかもしれませんが、静かに曲を閉じました。

このコンビの「田園」のCDは私の自宅のオーディオ装置では、少し鮮明さに欠ける音に聞こえます。
しかし、この日は音楽堂の分解能の良い音響で、“お約束の名演”を堪能させていただきました。

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