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2008年5月16日 (金)

小澤征爾/新日本フィル(2008/05/16)

2008年5月16日(金)19:15
サントリーホール

指揮:小澤征爾
新日本フィル
(特別演奏会)
オーボエ:古部賢一

モーツァルト:ディヴェルティメントニ長調K.136
モーツァルト:オーボエ協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

ピカピカに磨き上げられたモーツァルトで始まった演奏会。
小澤さんの音楽を好まない人が「きれいに鳴らせば良いというものではない」と言うのを聞いたことがありますが、確かに“アンチ小澤”の人たちの格好の餌食になりそうな演奏です。
ツルツルに磨き上げられ、骨董品や工芸品というよりは機能的なデザインの工業製品のよう。
はっきり言って、最初は私もちょっと戸惑いました。
ピエール・ブーレーズのマーラーのようなモーツァルト?
しかし曲が進むにつれて、「ここまで徹底できれば立派」と感じるようになり、最後は快感に変わりました。
こういうスタイルのモーツァルトを演奏する人って、いま小澤さん以外に居るのでしょうか?
これはこれで、貴重な体験をしたと言わなければなりません。
小澤さんのK.136は、サイトウ・キネン・オーケストラの演奏でCDが出ていますが、第2楽章での聞こえるか聞こえないかの極端に小さい音からのクレッシェンドなどは、やはり生演奏ならではの体験でした。

オーボエ協奏曲は、ソリストが譜面台を置き、指揮者は暗譜という、あまり見ないスタイルでの演奏でしたが、そのことと演奏の出来不出来は関連はありません。
基本的に、ディヴェルティメントと同じ指向の演奏だと思いますが、独奏楽器が入るのと、編成が少し大きくなったことで、1曲目のような“隅々まで磨き上げられた”というような張り詰めた雰囲気よりは、少しリラックスして聴けました。

さて、後半は小澤さんお得意のチャイコフスキー。
雑誌記事などによると小澤さんは、この「悲愴」交響曲でベルリン・フィルを指揮してツアーをしてきたそうなので、“今年(再び)取り組んでいる曲”ということで、隅々まで手の内に入っている曲だとと思います。
(CDも複数出ています。)
この曲では私は、かつてカラヤンやショルティのCDを聴いて育った?ので、純・音響的な演奏でも違和感はありません。
第1楽章、第4楽章などの、嵐のように吹き荒れる場面の“音の意志の力”は本当に強い。
第3楽章の階段を駆け上がるようなスピード感は快感。
第3楽章の後は、ほとんど間をおかずに第4楽章を開始しました。
荒れ狂った後に音が小さくなっていき、最後の音が鳴り終わり、小澤さんが手を下ろし、体の力を抜いても拍手は起こらず、小澤さんがオケに立つようにゼスチャーをしてから拍手が始まりました。
会場全体が、固唾をのんで音楽に集中していたようです。
(最後の微弱音のところで、咳をした人が居たのが残念でしたが、生理現象であり、仕方ないでしょう。)

小澤さんのチャイコフスキーと言うと、最近では「スペードの女王」、「エフゲニー・オネーギン」とオペラを観ましたが、ずいぶん印象が違いました。
オペラでは、雰囲気を醸し出すような“音の香り”を感じたのですが、この日の交響曲では、ひたすた機能美を追求したような演奏。
「どちらの小澤さんが好きか?」と問われれば、私の好みとしては、オペラの方が好きかもしれません。

また、オペラでは、舞台ではなくピットの中の小澤さんの指揮姿についつい目がいってしまった経験が何度もありますが、この日は指揮の動作は少なめ。
あまり手を動かさずにオケを見守る場面も多々あり、ちょっと意外でした。
(かつて、ウィーン・フィル来日公演のブラームスでも、ウィーン・フィル相手なのにずいぶん細かく振っていたような記憶もあります。)

小澤征爾音楽塾東京のオペラの森サイトウ・キネンのような常設でないオケを振るときと、新日本フィルのような常設のオケを振るときの違いなのでしょうか?
確かにサイトウ・キネンは名手揃いかもしれないけれど、新日本フィルの常設オケとしてのアンサンブルは、やはり常設ならではの一体感でした。

…というわけで、結構聴きどころの多い演奏会でしたが、私個人としては、音に包み込まれて熱狂したと言うよりは、目を輝かせて“観察”してしまった感もありました。

会場の雰囲気は、普段の東京の演奏会とはちょっと違う感じ。
ブラボーを叫ぶ人もなく、オケが引き上げた後の指揮者一人のカーテンコールもありません。
でも、みんな、一音たりとも聞き逃すまいと言うような集中力だったと思います。

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