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2008年5月14日 (水)

矢崎彦太郎/東京シティ・フィル(2008/5/14)

2008年5月14日(水)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:矢崎彦太郎
東京シティ・フィル
(第219回定期演奏会・
フリーメイソンと大音楽家たちIII)
ピアノ:伊藤恵
企画・構成・お話:吉田進

モーツァルト:交響曲第32番
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番
モーツァルト:フリーメイソンのための葬送音楽
モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」

ビジュアルな面を強調した指揮ではありませんが、よく見ると矢崎さんの指揮の動作はすごくきれいです。
優美なところはしなやかに、迫力のあるところはエネルギッシュに。
そして、まるで動作の全てが1%のロスもなく音に変換されていくかのような印象。
オーケストラのドライブという意味で、まさに理想的と思えるような関係が、この日の会場に、幸せな時間と空間をもたらしたように思います。

この日は、オール・モーツァルト・プログラムということで、会場は普段の東京シティ・フィルの定期演奏会に比べてS席のお客さんの数が多かったように思います。

矢崎さんの指揮は一年前の5月の定期演奏会を聴いて好印象だったので、楽しみにしていました。
本当は、昨年10月や今年3月の演奏会も行きたかったのですが、残念ながら都合がつかず、聴けませんでした。
また、この日は「フリーメイソンと大音楽家たち」の3回目。
1回目、2回目も注目していたのですが、これまた都合がつかず、私は聴くのは今回が初めてです。

「モーツァルトの作品に顕われたメイソンの証し」と題されたこの日の演奏会。
開演前と休憩後に吉田進さんのお話しがありました。
ありきたりの内容てはなく、「へぇー」と感じるようなお話しが満載で、なかなか面白かったです。
「もっと話してほしい」という気持ちになりましたが、演奏会前のトークとしては、あの長さが限界かもしれません。
逆にトークでお腹いっぱいになる前に、やや唐突なくらいの印象を残して「それではお聴きいただきましょう」と打ち切るタイミングは、もし計算されたものだとしたら、たいしたものです。
聴き手の私は、耳が飢えている状態で音楽が始まり、それは嬉しい瞬間でした。

矢崎さんのモーツァルトは、ピリオド奏法ではないと思いますが、明らかに“ピリオド台頭後”の現在のモーツァルト演奏。
はつらつとした生命感と、バロック・ティンパニによる強打の迫力とリズム感は、まさにライヴならではのもの。
1曲目の32番が鳴り出したときは、私は思わず顔がほころんでしまいました。

しかし、41番は(もちろん曲の出来も違うのでしょうが)さらに素晴らしい演奏。
矢崎さんは、楽譜をまったくめくらずに第1楽章を完奏。
無意識のうちに暗譜で振られたようで、第2楽章を始める前に譜面を一気にめくりましたが、第2、第3楽章はまたもや暗譜。
第4楽章の最後の方だけ譜面をめくりながら指揮をされましたが、完全にノッテしまった指揮でした。
トークがあったこともあり、終演は21時20分くらいになっていましたが、全く長さを感じない演奏会でした。

ピアノ協奏曲もライヴならではの情熱あふれる演奏。
伊藤恵さんは大御所の指揮者との共演が多く、重厚な演奏をする人と勘違いしそうになりますが、実際には明るいクリアな音です。
ピアノが休みでオケがノリノリに演奏している場面では、口をぱくぱくさせたり、頭を振ったりして音楽を体で体現している感じ。
情熱的に煽り気味の部分もありましたが、下品にならず、羽目を外さず、品格を保った上での熱演だったと思います。
第1楽章のカデンツァからオケによる終結部に至る部分は、ピアノもオケも、かなりの迫力と推進力でした。

葬送音楽も分厚い音で包み込まれるような印象でしたが、管楽器にもう少しニュアンスがあったら、なお良かったと思います。

矢崎さんの音は、南欧を連想させる明るい音です。
フランス音楽に定評がある方ですが、決して単なるスペシャリストではなく、素晴らしい音楽性を持った方だと思います。
重い音を出す飯守泰次郎さんと好対象で、東京シティ・フィルは常任指揮者と首席客演指揮者が、良い補完関係にありますね。

終演後、フランス政府より勲章を贈られたとかで舞台上で花束が贈られ、さらに盛大な拍手が矢崎さんに贈られました。
帰宅後にネットで検索してみると、すでに2000年に芸術文化勲章シュバリエを叙勲されていますが、今年2月に更に上位の芸術文化勲章オフィシエを叙勲されたとのこと。
その叙勲にふさわしい、素晴らしい演奏会でした。
矢崎さんは、その実力の割には日本での知名度は低すぎるかもしれません。
矢崎さんの指揮は、また聴いてみたいものです。

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