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2008年6月の2件の記事

2008年6月15日 (日)

新国立劇場「椿姫」(2008/6/14)

2008年6月14日(土)14:00
新国立劇場
指揮:上岡敏之

ヴェルディ:椿姫

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「オーケストラが主役」と言っても良いくらい、上岡敏之さんの引き出すオーケストラの音は魅力的でした。
残念ながら3階席からはピットの中はほとんど見えません。
「上岡さんの指揮姿を見たい!」と思いながら、耳はしばしばピットの中に吸い寄せられました。
微弱音では涙が出そうなくらいニュアンスに富んだ音。
ドラマティックな部分でも、決して下品にならない雄弁な音。
「伴奏」の域を凌駕した素晴らしいオケだったと思います。
「そこそこの外国人指揮者を呼ぶくらいなら、実力派の日本人指揮者にもっと日本でオペラを振ってほしい」という思いを強くしましたが、上岡敏之さんの場合は「来日」と言っても良いくらいの方ですので、次回はいつオペラを振っていただけるかわかりません。
「よくぞ振ってくれた」と感謝したいと思います。

歌手ではヴィオレッタ役のモシュクさんが、第1幕の華やかな雰囲気、第2幕の葛藤、第3幕の死にそうなヴィオレッタを描き分けて涙を誘います。
アルフレード役のサッカさんも、それに絡んでドラマティックな雰囲気を盛り上げていました。
ジェルモン役のアタネッリさんも健闘していたと思いますが、個人的にはこの役は、昨年のチューリッヒ歌劇場来日公演でレオ・ヌッチさんが歌った「威厳のある、ちょっとこわいお父さん」の強烈な印象がいまだに残っていたせいか、少しマイルドな印象を持ってしまいました。

舞台装置は設定に忠実なオーソドックスなものだと思います。
おそらく読み替えはほとんどなく、筋書きに忠実な演出だったのでしょう。
新国立劇場の「わかりやすさ」を重視した路線の一環だと思います。
私は個人的にはあまり奇抜な読み替え演出は好きではないので、安心して見ていられたのですが、あまりにオーソドックス過ぎて、なにかピリリと効いたスパイスのようなものが欲しい気にもなりました。
「オケが主役」「歌手陣も健闘」という状況で、「舞台装置と演出が伴奏」という感もありました。

この日、第1幕の最後と第3幕の最後では、幕が降り始めるとまだ音楽が鳴っているのに拍手が起こってしまいました。
まだまだ日本ではこういうことが多いですね。
第2幕第1場の終わりは幕が降りても拍手は起こりませんでしたし、第2幕第2場の終わりでは、音楽が鳴り終わった瞬間に照明が消えて暗転し、拍手はそれから起こりました。
もっと「音楽が鳴り終わった瞬間に暗転」という方式を多用してほしいと思うのは私だけでしょうか。

そうは言うものの、総じて上岡さんの手腕に大満足の公演でした。
筋書きはわかっているのに、涙が出そうなくらいジーンときてしまう。
音楽の力は偉大です。

【指揮】上岡敏之
【演出】ルーカ・ロンコーニ
【装置】マルゲリータ・パッリ
【衣裳】カルロ・マリア・ディアッピ
【照明】セルジオ・ロッシ
【振付】ティツィアーナ・コロンボ
【舞台監督】斉藤美穂
【芸術監督】若杉弘
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト
【ヴィオレッタ】エレーナ・モシュク
【アルフレード】ロベルト・サッカ
【ジェルモン】ラード・アタネッリ
【フローラ】林美智子
【ガストン子爵】樋口達哉
【ドゥフォール男爵】小林由樹
【ドビニー侯爵】東原貞彦
【医師グランヴィル】鹿野由之
【アンニーナ】岩森美里
【ジュゼッペ】小田修一
【使者】大森一英
【フローラの召使い】黒田諭

2008年6月18日追記:
>上岡敏之さんの場合は(中略)次回はいつオペラを振っていただけるかわかりません。
と書きましたが、後で知りましたが、今年の秋に日生劇場で「魔笛」を指揮されるようです。

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2008年6月 7日 (土)

飯森範親/東響(2008/06/07)

2008年6月7日(土)18:00
サントリーホール

指揮:飯森範親
東京交響楽団
(第557回定期演奏会)
ヴァイオリン:山田晃子
ピアノ:菊地裕介

シューベルト:歌劇「フィエラブラス」序曲
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」

当初予定されていた指揮のミッコ・フランクさんが急病で、飯森範親さんが指揮することは、会場へ着いて初めて知りました。
確か、朝、東響のHPを見たときは、何も書いていなかったような気がします。
結構楽しみにしていたので残念でしたが、東響の「正指揮者」の飯守範親さんの指揮には好感を持っていたので、とりあえず「ま、飯森さんで良かった」と思い直して席につきました。

代演が決まってから飯森さんにどれくらいの準備の時間があったのかわかりませんが、飯森さんのブログには、開演1時間前の記事で
>今日の朝、指揮して欲しいとの連絡を頂き先ほどまで練習をさせて頂きました。
とあり、昨日の23時59分の記事には、
>詳しい事はまだ言えないのですが、
という文章が掲載されています。

この日の演奏は、私は前半は「安全運転」の印象を受けました。
決して下手な演奏ではなく、音色もきれいに鳴っていますし、指揮棒にも迷いはないように見えるのですが、出てくる音は“強い意志を持った音”にはいま一歩の印象があったのです。

シューベルトはバロック・ティンパニを使って演奏していたのですが、鳴っている音は後期ロマン派のような音に聞こえました。
「ずいぶんシンフォニックなシューベルトだなぁ」と感じました。

プロコフィエフも近代的な響きと言うよりは、やはり後期ロマン派のような音。
山田さんのヴァイオリンの音もそういう指向だったので、ソロとオケの一体感は感じられました。
この曲は3月の新日本フィルで、コパチンスカヤさん独奏の情熱の熱演を聴いてしまっているので、それに比べれば大人しい印象を受けましたが、むしろ「上品」と言った方がほめ言葉ですね。
ただ、急に指揮者が変わったことがどのように影響しているのかは門外漢にはわからないので、あまり断定的な思いこみをしないようにしたいと思います。

…と、前半についてはやや消極的な感想を書いてしまったのですが、その「安全運転」の演奏であっても、オケの音はずいぶんスケールが大きい印象。
飯森さんは、東響の「指揮者」という肩書きに就任した頃から聴き続けているので、変化はあまりわからないのですが、「あれ?もしかして、飯森さんの音、変わったかな?」「音のスケールが大きくなったかな?」と感じました。

そのスケールの大きな音が威力を持って鳴り響いたのが、後半の「ペトルーシュカ」でした。
ここにはもはや急な代演の印象は一切無く、素晴らしい演奏だったと思います。
この快演を聴くと、「やはり前半は安全運転だったのかな~」と思ってしまいます。
休憩時間に帰ってしまわず、後半まで残っていて良かった!
前半でも感じたように、後期ロマン派のようなストラヴィンスキーに聞こえました。
私は「ペトルーシュカ」は、「火の鳥」や「春の祭典」に比べてそれほど好きな曲ではなかったのですが、この日の飯森さんの演奏は本当に聴いていて楽しかったです。
この曲が好きになりそうです。

最後にドカンと一発鳴らして曲は終わったのですが、なぜか会場からはなかなか拍手が起こりませんでした。
みなさん、曲が終わったことはわかったはずなのに、拍手が始まらない。
1曲目のシューベルトではフライング気味の拍手すらあったに、「ペトルーシュカ」が終わっても拍手が始まらない。
パラパラと拍手は起こりかけては止み、飯森さんがオケを立たせてようやく拍手は少しずつ始まりました。
この拍手の起こり方は、先日聴いた小澤征爾さんの「悲愴」と似ています。
私自身も、すぐに拍手を始める気にならず、余韻に浸っていました。
いったん拍手が始まると、徐々に拍手のボルテージは上がり、熱烈な拍手に変わっていきました。

2008年6月8日追記:
上記の文章を書いたときはまだアップされていなかったのですが、その後、飯森範親さんのブログとコンマスの高木和弘さんのブログに顛末が掲載されています。

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