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2008年10月26日 (日)

ウィーン国立歌劇場「フィデリオ」(2008/10/26)

2008年10月26日(日)15:00
神奈川県立県民ホール

ウィーン国立歌劇場2008年日本公演
指揮:小澤征爾

ベートーヴェン:フィデリオ
200810262200810261





この日が日本公演通算100回とのことで、終演後に一通りのカーテンコールをした後に幕が開くと、舞台上に樽酒が置かれ、総監督のホーレンダーさん(たぶん)と小澤征爾さんで鏡開き。
2人とも青いはっぴを着ています。
舞台上方には「祝…通算100回」の大看板が吊るされ、歌手、合唱団、オーケストラのメンバーも勢揃い。
カーテンコールで指揮者が登場する前にオケのメンバーが引き上げてしまったので「珍しいなぁ」と不思議に思いましたが、そういうことだったんですね。
もっとも、最後は祝祭的なイベントの雰囲気に変わってしまいましたが、上演自体は真剣勝負だったと思います。

今回の来日公演で「フィデリオ」はこの日が初日ということもあったのか、序曲こそ、ところどころ間合いが手探り状態の部分もあったような気がしました。
でも、幕が開いて歌手が登場すると、そこは百戦錬磨のオペラのオーケストラ。
雄弁な表情で音楽を語り始めます。
ちょっとしたフレーズですら、濃厚な表情が見えたりします。
いや、フレーズでなく、伴奏の断続的な音ですら魅惑的です。
歌手の歌よりも雄弁で、オーケストラが主役になってしまった部分もあった…と言ったら言い過ぎでしょうか。
目を閉じて聴いたら、独唱付きの管弦楽曲を“ウィーン・フィルの演奏会”で聴いているような気分になったかもしれません。
特に弦楽器、中でもヴァイオリンがすばらしい!!
小澤さんのオペラでは、しばしば舞台よりも指揮姿に目がいってしまうことがありますが、この日は小澤さんとともに、その横で弾いているコンサートマスターのキュッヒルさんに、しばしば目を奪われました。
金管は、「ん?」と思う場面もなかったわけではありませんが、まあ、ウィーン・フィルではなくウィーン国立歌劇場管弦楽団なのですから、上々でしょう。
2007年5月に現地で聴いた「エレクトラ」「さまよえるオランダ人」では、日によってずいぶん印象も違いました。

それから、オケをべた褒めしたからと言って、決して歌手のレベルが低い印象があったわけではありません。
声を張り上げても「叫び声」にはならず、美しさを保ったままの迫力。
逆に小さな声でもかすれることなく、ホールにしっとりと響く。
やはりウィーン国立歌劇場が連れてくる歌手だけのことはありました。

演出については、かなり長く使われているシェンクさんの演出とのこと。
実は、この日の公演と同じ演出であることを知った上で、我慢できずにバーンスタインさん指揮のDVD(1978年、ウィーンでのライヴ)を買って、事前に見てしまいました。
(故ルチア・ポップさんのファンなので。)
もちろん(細部はともかく)全く同じ演出です。
舞台装置も衣装のデザインも(全く同じかどうかはわかりませんが)同じスタイルのものです。
県民ホールの横に広い舞台の両側は使っていなかったところを見ると、現地ウィーンの狭い間口のセットそのままなのでしょう。
刺激的な演出が好みであれば、おそらく物足りなく感じたと思いますが、演出が自己主張することなく音楽を引き立てるという意味では、この伝統的な演出も良かったと思います。

ちなみにこのバーンスタインさん指揮のDVDでは、この日のコンサートマスターのキュッヒルさん(若い!)が、ヘッツェルさんの横で弾いているのが写っています。
すでに伝説となりつつあるバーンスタインさんの「フィデリオ」を経験した人がこの日も弾いている。
伝統と言わざるを得ません。
現地ウィーンでは、この日本公演中も休むことなく、余裕で?毎晩のように通常のオペラ公演があるとか。
底力と言わざるを得ません。

県民ホールの音響は、私の座った3階後方でもオケの音も歌手の声も響いてきました。
現地ウィーンで2回聴いたときは、国立歌劇場の音響は残響感がなく、乾いた音に聞こえました。
“声”を聴くにはこういう響きの方が良いみたいですが、オケだけの音の時は少し不満を覚えました。
それに比べると県民ホールの音響は、サントリーホールほど響かず、さりとて多少の残響感はあり、オペラの響きとしては好感を感じます。
また、視覚的にも、身を乗り出さなくてもピットも舞台も見えるし、好印象です。
私は、一時期、多目的ホールを忌み嫌った時期もありました。
(前回この県民ホールに来たのは、1994年です。)
でも、この日の上演を観て、オペラをやるには、収容人員と音響と視覚のバランスの取れた良いホールだと見直しました。

全般的に“シンフォニックに演奏されたオペラ”の印象でした。
この日も、バーンスタインさん指揮のDVDと同様、第2幕の途中に序曲「レオノーレ」第3番を挿入して演奏され、
(\3,000のプログラムの冊子によれば「ウィーンの習慣」とのこと。)
“ウィーン・フィルの演奏会”の印象は、ここに極まった感がありました。
私は、こういう演奏でいいと思いました。
ストーリーは水戸黄門のようなものだし、最後は5番や8番の交響曲と同じくらいしつこいし、まるでベートーヴェンの交響曲のようなオペラなのですから。(*注)
小澤さんのシンフォニックな音作りは、コーラスや二重唱、三重唱に至るまで、本当にきれいに響きました。

指揮:小澤征爾
演出:オットー・シェンク
美術:ギュンター・シュナイダー=シームセン
衣装:レオ・ベイ
合唱監督:トーマス・ラング

ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン国立歌劇場舞台上オーケストラ
合唱協力:藤原歌劇団合唱部

キャスト
フロレスタン:ロバート・ディーン=スミス
レオノーレ:デボラ・ヴォイト
ドン・フェルナンド:アレクサンドル・モイシュク
ドン・ピツァロ:アルベルト・ドーメン
ロッコ:ヴァルター・フィンク
マルツェリーネ:イルディコ・ライモンディ
ヤキーノ:ペーター・イェロシッツ
第1の囚人:ウォルフラム・デルントル
第2の囚人:ヒロユキ・イジチ

*注=書籍「これだけは見ておきたいオペラ」(新潮社)の文章を参考にしました。

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