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2008年11月の5件の記事

2008年11月28日 (金)

ヴァンスカ/読響(2008/11/28)

2008年11月28日(金)19:00
サントリーホール

指揮:オスモ・ヴァンスカ
読売日本交響楽団
(第508回名曲シリーズ)
トロンボーン:クリスチャン・リンドバーグ

《ヴァンスカ・ベートーヴェン交響曲シリーズ IV》
アホ:交響曲第9番~トロンボーンと管弦楽のための
メディーバルダンス 1457年古典の曲
(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

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田園交響曲ですから演奏時間は40分くらいはかかったはずですが、体感的には、まるで15分くらいで終わってしまったような「あっという間」の出来事。
決してオーソドックスではない「誇張」や「強調」が続出する演奏です。
その「誇張」や「強調」には、リズムや旋律の強調だけでなく、聞こえるか聞こえないかの弱音も含まれています。
しかし、聴いていて違和感を感じないどころか、「確かにこうあるべきだ」と思ってしまう、音楽的な陶酔感を感じさせる演奏でした。

昨年の1番と2番の演奏会を聴いて大感激しましたし、ミネソタ管弦楽団とのCDも素晴らしいので、今年も大いに楽しみにしていましたが、期待は裏切られませんでした。
10日ほど海外出張に行っていたので、4番と8番の日はチケットを買ってあったのに聴けませんでしたが、この日の演奏を聴けたことだけでも感謝したいと思います。

前半のアホの交響曲は、形式的には協奏曲です。
ソリストも大活躍します。
でも聴いてみると、確かに「交響曲」という言葉も納得できます。
独奏トロンボーンが目立ちますが、ところどころで登場するチェンバロの音色も実に印象的。
曲の方も、リズムが炸裂する部分もあれば、旋律が歌う部分もあり、初めて聴いた私には捉えどころが難しかったですが、なかなか面白い曲です。
こういう珍しい曲を「田園」の前に置いて、多くの聴衆に聴かせてしまおうというプログラミング上の魂胆は大歓迎。
私だって、アホの曲が2曲並んでいたら、いくらヴァンスカさんの指揮であってもチケットを買うのを躊躇したでしょう。
なかなか面白い演奏会でした。

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2008年11月 5日 (水)

テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィル(2008/11/05)

2008年11月5日(水)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール

指揮:ユーリ・テミルカーノフ
サンクトペテルブルク・フィル

チェロ:タチアナ・ヴァシリエヴァ

チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
エルガー:エニグマ変奏曲より「ニムロット」
(アンコール)
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魔術師…いや、手品師の見事なトリック?
このままシルクハットでもかぶれば、そのまま手品師として通用しそうな風貌のテミルカーノフさんですが、その妖しい手つきは本当に手品のよう。
手首を微妙にひねると、ものすごいスケールの音がうねりをたててホールに響きます。

昨年、読響の演奏会(5/195/27)を聴いて「テミルカーノフさんってスゴイ!」と思っていましたが、手兵のサンクトペテルブルク・フィルを振った演奏は、さらに輪をかけて凄かった印象です。

この日の演奏会は、テミルカーノフさんの「冬の日の幻想」(交響曲第1番)が聴けるというので、わくわくしながら購入したこの演奏会のチケット。
まさかの曲目変更で唖然としました。
払い戻しも出来たようですが、思いとどまったのは、来年度の読響の客演陣にテミルカーノフさんの名前がなかったからです。
「しばらくテミルカーノフさんを聴けないから、お目当ての曲目じゃないけど聴いておこう」という程度の軽い気持ちで会場に向かいました。

しかし、1曲目の「ロメオとジュリエット」からド迫力に圧倒されました。
「この曲、こんなに面白かったっけ?」と目から鱗が落ちる心境。
もっとも、鳴っている音は純粋な「音」で、民族性やら感傷的な気分やらはあまり強調されていません。
ただ立派な音が鳴っているだけなのに、その音の奥深さ、味わい深さ、スケールの大きさは驚くばかり。
斜に構えて聴きに来た自分を恥じ入りました。

2曲目の「ロココ…」は、独奏のヴァシリエヴァさんが、自由自在、奔放に弾きまくり、この曲においても「こんなに面白かったっけ?」という印象です。
しかし、よく聴くと、ソリストの音は、1曲目で聴いたオケの音と同じような音。
指揮者に目をやると、「あれ、テミルカーノフさん、独奏チェロも指揮しているの?」と思う場面もあり。
テミルカーノフさんの手のひらの上で、思う存分に暴れたヴァシリエヴァさんという印象で、ソリストをこれだけ自由に弾かせながら包み込んでしまうテミルカーノフさんの懐の深さを感じました。

ここまで来れば、「悲愴」が「お約束の名演」になるのは当然の結末。
この曲では、特に第3楽章ではテミルカーノフさんの手の動きがかなり少なく、ただたっているだけの状態もしばしば。
でも眼光は鋭く、表情もかなりの緊張感でオケを見据えています。
顔だけで指揮をしていたのでしょう。
ところどころで、音の入りが微妙にずれたり、管楽器の音色が「あれ?」と感じたりした場面もありましたが、そんなことでこの演奏の価値は下がらないと思いました。
アンコールのエルガーもスケールの大きさで圧倒。
すっかり魔術にかけられてしまいました。

この日は、お客さんの数が少なく、1階席など3割くらいしか入っていないのでは?という散々な状態でした。
コンサートの冒頭で、入場してきたオケのメンバーが一瞬顔をしかめたほど。
でも、その少ないお客さんの拍手喝采は、まるで満場の聴衆のようでした。
終演後は、オケが引き上げた後にテミルカーノフさんを舞台に呼び戻しました。

私は、曲目変更にがっかりしたことなどきれいさっぱり忘れて、家路につきました。

ちなみに私がこのオーケストラを私が生で聴くのは、1986年以来で実に22年ぶり。
前回はレニングラード・フィルという名前でした。
指揮者は、当時まだ「アルヴィド・ヤンソンスの息子の」と呼ばれることもあったマリス・ヤンソンスさん。
ムラヴィンスキーさんが振る予定だった演奏会で、当日の会場では、確か料金の差額を払い戻してもらったような気がします。
私はそのとき“ムラヴィンスキーさんを聴けなかったことの意味”を正しく理解していなくて、「差額が返ってきたから、まあいいか」という程度に受け止めていました。
代役の若きヤンソンスさんの振ったオケは、轟音をとどろかせて低弦はうねり、金管は咆哮し、大満足で帰宅したのを覚えています。

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2008年11月 3日 (月)

新国立劇場「リゴレット」(2008/11/03)

2008年11月03日(月・祝)14:00
新国立劇場

ヴェルディ:リゴレット
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私にとって「リゴレット」は、多少の戸惑いを感じる作品です。
悲劇であるのに、途中、甘美で優雅な旋律があまりにも多いからです。
あるいは、弾むようなうきうきする旋律も多い。
鳴っている音楽の印象が、ストーリーだけを文章で読んだ印象と、私にとっては、あまりにも違うのです。
第3幕冒頭の超有名な「女心の歌」など、そのアリアだけ取り出して聴いたりすると、悲劇の「ひ」の字も感じられません。
評論家の先生が書かれた文章などでは「リゴレット」は最初から最後まで完全無欠の作品のように書かれていますが、私は、まだこの作品の凄さがわからないようです。
そういうわけでこの日は、多少傍観者的に鑑賞していました。

感心したのはピットの中の東京フィルの演奏。
甘美、優雅、うきうき、と言った“悲劇とは無縁に思える部分”の音楽を、魅惑的に奏でていました。
オペラのピットに入った東京フィルは、評論家の先生の文章で酷評されることが多いのですが、この日の東京フィルは、私は“オペラのオケ”のように、かなり頑張ったと思います。
4階席で鑑賞していたのでピットの中の指揮者の姿は見えませんでしたが、「指揮姿を見てみたい」と思いながら、素敵な旋律を聴いていました。
ただ、第3幕後半などの、ジルダが刺される場面や、リゴレットが娘の死を嘆く場面など、悲劇本来の劇的な場面や悲しみの旋律は、もう少し感情を込めたり、スケールの大きな音色を出して欲しいような気もしました。
もっとも、私にとっては「リゴレット」自体がまだちぐはぐな印象を拭いきれていないので、そのように感じたのは私の鑑賞力の無さによるものかもしれません。

歌手陣は、最初から最後まで好感でした。
誰かが突出した迫力で抜きんでていたわけではありませんが、全体的な声の統一感を感じられました。
四重唱などはその最たるもの。
それが指揮者の統率力なのかどうかはわかりませんが、前述のオケの鳴らし方もあったので、カッレガーリさんの名前は覚えておいてどこかで再確認してみたいと思いました。

再認識したのは、「女心の歌」は、やはり“オペラの一部”であるということ。
有名なので単独で取り上げられることが多いですが、オペラの中の本来の箇所で歌われてこそ真価を発揮する曲です。
このオペラのこの曲に限らず、「乾杯の歌」「清きアイーダ」も、イゾルデの「愛の死」「ワルキューレの騎行」「7つのヴェールの踊り」も、やはり本来は“オペラの一部”の曲ですね。

【指揮】ダニエレ・カッレガーリ
【演出】アルベルト・ファッシーニ
【美術・衣装】アレッサンドロ・チャンマルーギ
【照明】磯野睦
【芸術監督】若杉弘

キャスト
【リゴレット】ラード・アタネッリ
【ジルダ】アニック・マッシス
【マントヴァ公爵】シャルヴァ・ムケリア
【スパラフチーレ】長谷川顯
【マッダレーナ】森山京子
【モンテローネ伯爵】小林由樹
【ジョヴァンナ】山下牧子
【マルッロ】米谷毅彦
【ボルサ】加茂下稔
【チェプラーノ伯爵】大澤健
【チェプラーノ伯爵夫人】木下周子
【小姓】鈴木愛美
【牢番】三戸大久

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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2008年11月 2日 (日)

スダーン/東響(2008/11/02)

2008年11月2日(日)14:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(川崎定期演奏会 第18回)
ピアノ:アンドレア・ルケシーニ

シューベルト:交響曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
スカルラッティ:ソナタト長調より
(アンコール)
シューベルト:交響曲第2番

前日のサントリーホールでの定期演奏会も聴いたのですが、この日も当日券で聴きに行ってしまいました。
理由はふたつ。
ひとつめの理由は、ピアノ協奏曲の聴き直しです。
昨日は、私は集中して聴くことが出来ませんでした。
ふたつめの理由は、交響曲第2番の第4楽章がめちゃくちゃ楽しかったからです。
これは、もう1回聴きたいと思いました。

この日も、ステージ後方の2階LAブロックの席で、何度も何度も咳をしている人がいましたが、ハンカチで口を押さえ、遠慮がちにしていたので、それほど鑑賞の妨げにはなりませんでした。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、やはり素晴らしい演奏でした。
ピアノは淡々と弾いているようでいて、出てくる音は味わいのある深みがあり、独奏のルケシーニさんの懐の深さを感じました。
オーケストラも、第2楽章冒頭などで迫力を感じる部分もありましたが、全体的には味わい深さを感じる演奏。
同じ指向の音楽でピアノとオケが有機的に繋がり、ホール全体が心地良い陶酔感で満たされた印象です。
この曲の演奏中、寝ている人が結構いましたが、気持ちはわかるような気がします。
退屈で寝てしまったのではなく、あまりにも心地良くて寝てしまったのではないでしょうか。
私も「このまま寝てしまったら気持ちいいだろうな」と思いつつ、この素晴らしさを最後まで見届けようと、集中して鑑賞しました。
前日の借りは返せた」と言って良い体感でした。

当初、この演奏会にはジャンルカ・カシオーリさんの独奏が予定されていましたが、来日不可能になり、スダーンさんの推薦でルケシーニさんの出演が決まったそうです。
本当によいピアニストを連れてきてくれて、スダーンさんにも感謝です。

交響曲もわくわくしながら、楽しく聴きました。
2回目なので「驚き」の気持ちは少なくなり、昨日ほど興奮はしませんでしたが、それでも、かなりエキサイティングな演奏です。
5月の定期演奏会の第1番と第4番のCDに続いて、9月の定期演奏会での第5番と第6番のCDが、会場限定で販売されていました。
(もちろん購入してきました。)
この日の演奏も、CD化を期待して待ちたいと思います。

ミューザ川崎の音響は席によって結構差があるようですが、この日は私の好きな場所。
サントリーホールのよく響く暖かみのある音も好きですが、この日の席の聴感ではサントリーホールよりは分解能が良い印象で、特にピアノの音はくっきりと聞こえました。

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2008年11月 1日 (土)

スダーン/東響(2008/11/01)

2008年11月1日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(第561回定期演奏会)
ピアノ:アンドレア・ルケシーニ

シューベルト:交響曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
シューベルト:4つの即興曲D.899から第2番
(アンコール)
シューベルト:交響曲第2番

スダーンさんのシューベルト・ツィクルスは絶好調です。
この日のシューベルトの2番、3番は、どちらもバロック・ティンパニがアクセントを添え、金管楽器も鋭い音を出し、弦楽器もスピード感あふれる演奏をしているのに、オーケストラ全体としては溶け合ったハーモニーがまろやかに響いているように感じるという、ちょっと不思議な感覚で聴いていました。
こういう音が出せて、こういう演奏が出来ると言うことは、スダーンさんと東響の相性は絶好調で、オーケストラの状態も非常に良いのでしょう。
東響のスポンサー企業のことについて最近いろいろ報じられていますが、経済的なことに左右されず、ぜひ、この絶好調を維持して欲しいものです。

音楽の話しに戻りますと、この日の第2番はシューベルトの交響曲の中で私が一番好きな曲なので、特に楽しみにしていました。
この曲を好きになった理由は、一時期追っかけのように聴きに通っていた広上淳一さんが時々取り上げていたからです。
特に第4楽章の、アクセル全開でスピードを出していたかと思うと、急にブレーキの踏んで、間を取るあたりが絶妙のおもしろさでした。
この日のスダーンさんの演奏は、ブレーキや間をあまり感じませんでした。
ひたすらアクセルを踏み続けている感じ。
でも、それなのに「先を急いでいる」とか「一本調子」という印象は皆無でした。
聴いていた私は、ぐいぐい引き込まれるわけでもなく、圧倒されるわけでもなく、目の前に繰り広げられるスピード感のある演奏を、目を離すことが出来ずにひたすら「観察」し「ついていった」というような感じです。
なんとも、不思議な、快演でした。
演奏終了後はまるでマーラーの交響曲でも終わった後のような大拍手とブラボーの声でした。

2曲のシューベルトにはさまれたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番も、なかなか良い演奏だったようです。
ピアノは格調の高い音を出していたように思いますし、オーケストラも伴奏ではなく交響曲でも演奏しているかのような音を出していました。
演奏終了後は、独奏のルケシーニさんと指揮のスダーンさんは抱擁して好演を讃え合っていました。
しかしこの日は、協奏曲とアンコールを通じて、P席からかなり大きな咳の音が頻繁にホールに響き渡りました。
特にP席後方の同一人物から繰り返し発せられた咳で、私の集中力は、しばしば途切れました。
生理現象だから仕方ないと言うべきなのかもしれませんが、非常に残念でした。
休憩時間には、係員(ホールのレセプショニスト)が、その咳が止まらなかった人をどこかに案内していき、後半のシューベルトの2番は、集中して聴くことが出来ました。

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