コンサート/オペラ2008

2008年12月31日 (水)

2008年を振り返って

年末にあたり、2008年に聴いた公演を振り返ってみました。

最初はベスト10などのランキングを作ってみようかと思いましたが、とても絞ることや順位をつけることはできそういないので、列挙するだけにしました。
あと、聴いた回数に意味があるかどうかはわかりませんが、自分の行動パターンを示しているかもしれないので、「指揮者編」と「ホール編」を作ってみました。

2009年も素晴らしい公演に巡り会えることを期待したいと思います。

【国内オーケストラ編】(50音順)

NHK交響楽団
 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット2008/1/12

神奈川フィルハーモニー管弦楽団(日付順) 
 指揮:ゲルハルト・ボッセ2008/1/25
 指揮:ハンス=マルティン・シュナイト2008/3/08
 指揮:ハンス=マルティン・シュナイト2008/4/12

関西フィルハーモニー管弦楽団
 指揮:飯守泰次郎2008/3/30

 ※関西二期会「ナクソス島のアリアドネ」
  →【オペラ編】指揮:
飯守泰次郎2008/1/27

紀尾井シンフォニエッタ東京
 ヴァイオリン弾き振り:安永徹2008/12/13

新日本フィルハーモニー交響楽団(日付順)
 指揮:ゲルハルト・ボッセ2008/02/16
 指揮:イオン・マリン2008/03/21
 指揮:小澤征爾2008/5/16

東京交響楽団(日付順)
 弦楽合奏団2008/1/3
 指揮:秋山和慶2008/1/19
 指揮:大友直人2008/2/8
 指揮:秋山和慶2008/3/9
 指揮:ユベール・スダーン2008/3/22
 指揮:大友直人2008/4/19
 指揮:ユベール・スダーン2008/5/17
 指揮:飯森範親2008/6/07
 指揮:ユベール・スダーン2008/9/27
 指揮:ユベール・スダーン2008/11/1
 指揮:ユベール・スダーン2008/11/2
 指揮:大友直人「フラワリング・ツリー」(2008/12/6

 ※新国立劇場「サロメ」
  →【オペラ編】指揮:トーマス・レスナー(
2008/2/9
 ※
新国立劇場「アイーダ」
  →【オペラ編】指揮リッカルド・フリッツァ(
2008/3/20

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(日付順)
 指揮:金聖響2008/2/15
 指揮:矢崎彦太郎2008/5/14
 指揮:飯守泰次郎「トリスタンとイゾルデ」(2008/9/23
 指揮:飯守泰次郎2008/12/26

東京都交響楽団(日付順)
 指揮:ジェイムズ・デプリースト2008/3/17
 指揮:ジェイムズ・デプリースト2008/3/26
 指揮:ラドミル・エリシュカ2008/4/05
 指揮:エリアフ・インバル2008/4/29

東フィルハーモニー交響楽団(日付順)
 指揮:ダニエル・ハーディング2008/2/14
 指揮:ダン・エッティンガー2008/3/14
 指揮:ヒュー・ウルフ2008/5/8

 ※東京二期会「ワルキューレ」
  →【オペラ編】指揮:
飯守泰次郎2008/2/24
 ※
新国立劇場「椿姫」
  →【オペラ編】指揮:上岡敏之(
2008/6/14
 ※
新国立劇場「リゴレット」
  →【オペラ編】指揮:ダニエレ・カッレガーリ(
2008/11/3

日本フィルハーモニー交響楽団
 指揮:小林研一郎2008/5/25

広島交響楽団
 指揮:秋山和慶2008/3/29

読売日本交響楽団(日付順)
 指揮:マンフレッド・ホーネック2008/2/10
 指揮:下野竜也2008/3/16
 指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ2008/4/18
 指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ2008/9/10
 指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ2008/9/21
 指揮:オスモ・ヴァンスカ2008/11/28
 指揮:広上淳一2008/12/15

【外来オーケストラ編】(日付順)

プラハ交響楽団
 指揮:イルジー・コウト2008/1/13

シュトゥットガルト放送交響楽団
 指揮:ロジャー・ノリントン2008/01/30

フィラデルフィア管弦楽団
 指揮:クリストフ・エッシェンバッハ2008/05/24

サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
 指揮:ユーリ・テミルカーノフ2008/11/05

ロンドン交響楽団
 指揮:ワレリー・ゲルギエフ2008/12/05

シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ
 指揮:グスターボ・ドゥダメル2008/12/17

【オペラ編】(日付順)

関西二期会「ナクソス島のアリアドネ」
 指揮:飯守泰次郎2008/1/27

新国立劇場「サロメ」
 指揮:トーマス・レスナー2008/2/9

東京二期会「ワルキューレ
 指揮:飯守泰次郎2008/2/24

新国立劇場「アイーダ」
 指揮リッカルド・フリッツァ2008/3/20

東京のオペラの森「エフゲニー・オネーギン」
 指揮:小澤征爾2008/4/13

新国立劇場「椿姫」
 指揮:上岡敏之2008/6/14

ウィーン国立歌劇場「フィデリオ」
 指揮:小澤征爾2008/10/26

新国立劇場「リゴレット」
 指揮:ダニエレ・カッレガーリ2008/11/3

※「トリスタンとイゾルデ」 指揮:飯守泰次郎
 →【国内オーケストラ編】
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
  (2008/9/23
※「フラワリング・ツリー」 指揮:大友直人
 →【国内オーケストラ編】
東京交響楽団2008/12/6

【聴いた回数ランキング・指揮者編】

飯守泰次郎(5回)(日付順)
 関西二期会「ナクソス島のアリアドネ」(2008/1/27
 東京二期会「ワルキューレ」(2008/2/24
 関西フィルハーモニー管弦楽団2008/3/30
 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団「トリスタンとイゾルデ」
 (2008/9/23
 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団2008/12/26

ユベール・スダーン(5回)(日付順)
 東京交響楽団2008/3/22
 東京交響楽団2008/5/17
 東京交響楽団2008/9/27
 東京交響楽団2008/11/1
 東京交響楽団2008/11/2

秋山和慶(3回)(日付順)
 東京交響楽団2008/1/19
 東京交響楽団2008/3/9
 広島交響楽団2008/3/29

大友直人(3回)(日付順)
 東京交響楽団2008/2/8
 東京交響楽団2008/4/19
 東京交響楽団「フラワリング・ツリー」(2008/12/6

小澤征爾(3回)(日付順)
 東京のオペラの森「エフゲニー・オネーギン」(2008/4/13
 新日本フィルハーモニー交響楽団2008/05/16
 ウィーン国立歌劇場「フィデリオ」(2008/10/26

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(3回)(日付順)
 読売日本交響楽団2008/4/18
 読売日本交響楽団2008/9/10
 読売日本交響楽団2008/9/21

【聴いた回数ランキング・ホール編】

サントリーホール(大ホール)(23回)
東京オペラシティ・コンサートホール(タケミツメモリアル)(5回)
新国立劇場(オペラ劇場)(4回)
東京文化会館(大ホール)(4回)
すみだトリフォニーホール(大ホール)(3回) 

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2008年12月26日 (金)

飯守泰次郎/東京シティ・フィル(2008/12/26)

2008年12月26日(金)19:30
東京文化会館大ホール

指揮:飯守泰次郎
東京シティ・フィル
(第九特別演奏会)
ソプラノ:佐々木典子
アルト:小山由美
テノール:水口聡
バリトン:成田眞
合唱:東京シティ・フィル・コーア
合唱指揮:藤丸崇浩

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」

何年か前から気になっていた“飯守泰次郎さんの第九”を、ようやく聴くことが出来ました。
去年はチケットを買ってあったのに、聴きに行けませんでした。

うわさ通り、オケの迫力がスゴイ。
特に第1楽章と第2楽章でのティンパニの強打は「“やり過ぎ”と紙一重の差」と思ったほどです。
80年代にこんな演奏をしたら「暴力的にひっぱたくだけのニュアンスのかけらもない演奏」と酷評されたかもしれません。
でも、“ピリオド後”の現代では、それほど違和感があるわけでもなく、音のバランスを崩した印象もありません。
弦楽器もティンパニに負けず、渾身の力で弾いていた印象です。

もちろん、このエネルギーの源は飯守さんの指揮。
音を合わせることよりも、迫力と推進力を重視していたのではないでしょうか。
歯切れがよいのに、音がズシリと重い。
そして、ここぞというところでは、渾身の力を込めて煽る。
ドイツ風の伝統的なアプローチと、ピリオドアプローチの影響と、情熱とを完全に消化(昇華)して結実させた見事なスタイルだと思います。

第3楽章は、管楽器はもう少しニュアンスが欲しい気もしましたが、弦楽器が情感たっぷりに歌い、ティンパニもここでは控え目にアクセントを添えていました。

第4楽章は、合唱だけが突出することはなく、かといって決して非力な声でもなく、オケとコーラスが一体となって飯守さんの棒に応えた素晴らしいハーモニー。
「合唱付き」などという副題は不要の「交響曲」が演奏されたように思います。
独唱は、私は女性陣2人の方が好印象でした。
バリトンの“入り”は「少し緊張されたのかなぁ?」という印象もあり、「飯守さんの音楽の流れの一部になりきれていない歌唱」のような印象も少しありました。
また、四重唱でも「指揮棒をよく見て!」という場面もあったような気がします。
しかしその後は、またオケと合唱が壮大なシンフォニーを奏で、最後はオケがスピードを上げてたたきつけるような迫力で締めくくりました。

来年の東京シティ・フィルの第九は、指揮が飯守さんではなく、ゲルハルト・ボッセさんと発表されています。
私はボッセさんも好きなので、それはそれで楽しみですが、同時に飯守さんの大ファンでもあるので、来年は(関西まで行かないと)聴けないのはちょっと寂しいです。
それだけに、今年聴けたことを感謝したいと思います。

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2008年12月17日 (水)

ドゥダメル/SBYO(2008/12/17)

2008年12月17日(水)19:00
東京芸術劇場大ホール

指揮:グスターボ・ドゥダメル
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ

・オブ・ベネズエラ

ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲
カステジャーノス:パカイリグアの聖なる十字架
チャイコフスキー:交響曲第5番
バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」~「マンボ」

(アンコール)
ヒナステラ:「エスターシア亜」~「マランボ」(アンコール)

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前半の曲で「なかなかやるじゃない!」と思っていたのは大間違い。
休憩後のチャイコフスキーでは、超・大編成のオーケストラが、うねる、うなる、叫ぶ、…。
それが音の洪水となって物凄い迫力で迫ってくるのに、決して爆演ではなくて音楽的に格調のある演奏。
ドゥダメルさんの指揮も、動くときは激しく動くけど、ずっと振りっぱなしではなく、肩に力が入っている様子はない。
やはり、ただ者ではありません。

アンコールに入ると、曲が曲だけに、大騒ぎの様相。
オケのメンバーは、演奏しながら身体を揺らすにとどまらず、楽器をくるくる回したり、次々に立ち上がったり、バレエのように回転したり…。
弦楽器だけでたぶん100人近くいたとおもいますが、それでいて、演奏が破綻しないのが不思議でした。

チャイコフスキーが終わった時点で1階席は総立ちに近い状態でしたが、2曲のアンコールが終わってオケが引き上げた後も当然拍手は鳴りやまず、ドゥダメルさんを舞台に呼び戻しました。
1回目も2回目もドゥダメルさんはなかなか出て来ませんでしたが、拍手は小さくなるどころかどんどん大きくなり、最後は手拍子に。

このように、後半があまりにもすごかったので、前半の印象がかすんでしまいましたが、この日は、まず、会場に入ってたとたん、舞台上に並んだ椅子の多さに度胆を抜かれました。
まるで二つのオケの合同演奏会みたい。
そのメンバーが立ち上がって、両国の国歌の演奏で始まりました。
君が代を日本人が聞いて違和感を感じさせない(むしろ、聞き惚れる)演奏をしたのも素晴らしい。
ダフニスとクロエは、デュトワさんとは対極にあるような、ある意味、荒々しさを内面に秘めた(牙をかくして優雅にふるまった)印象もありましたが、フルート・ソロの音色と技術をはじめ、オケの技量の高さを示していました。

この日はテレビカメラが入っていましたが、この日の興奮を再現できるかどうかは別として、よくぞ記録してくれた…と感謝し、放送を楽しみにしたいと思います。

こってりとした高カロリーのごちそうをたらふく食べた感じで、お腹いっぱい。
毎日食べたら胸やけしそうです。

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2008年12月15日 (月)

広上淳一/読響(2008/12/15)

2008年12月15日(月)19:00
サントリーホール

指揮:広上淳一
読売日本交響楽団
(第477回定期演奏会)
ヴァイオリン:ルノー・カプソン
チェロ:ゴーティエ・カプソン

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
ヘンデル(ハルボルセン編曲):パッサカリア
(アンコール)
ブラームス(シェーンベルク編曲):ピアノ四重奏曲第1番
(管弦楽版)

20081215




兄弟とは言え、まるで一人でヴァイオリンとチェロを弾いているようなカプソン兄弟の一体感は爽快。
思いっきり情熱的に弾いたと感じられるような部分ですら、二人の息はピッタリ。
決して合わせようとしているのではなく、二人とものびのびと弾いているように見えるのに、出てくる音は一体感のある音です。
また、単に一体感があるだけでなく、それぞれの音の艶やかな伸びも美しい。
相乗効果で、1+1=2ではなく、1+1>2の効果を生んでいました。
広上さんの指揮するオケも、交響曲を演奏するような集中力でシンフォニックなサウンドを響かせ、カプソン兄弟も、オケの出来に満足していた様子でした。

後半のピアノ四重奏曲の管弦楽版では、3楽章までは悠然とうねる大河の流れのような演奏。
“シェーンベルク編曲”であることを忘れそうな、ブラームスの哀感をたたえた表情。
「爆演系」とか「鳴らし屋」の面も多少期待していたのですが、老巨匠のブラームスのような印象でした。
第4楽章は打楽器も活躍するのでリズミカルで、さすがに「悠然と」とはいきません。
特に終結部はかなり追い込みをかけていたようです。
しかし、昔(日フィルの常任だった頃)の広上さんに比べれば落ち着いた印象です。
「計算の上での熱狂のようにも見えた」と書いたら言い過ぎかもしれませんが、立派に構築された“シェーンベルク編曲”のブラームスでした。

私は広上さんの指揮は大好きで、この日の演奏会も、年間プログラムが発表されたときから楽しみにしていました。
ただ、指揮をしているときの広上さんの息づかいの荒さは、最近は(この日も)、多少耳障りに感じるときもあります。

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2008年12月13日 (土)

安永徹/紀尾井シンフォニエッタ東京(2008/12/13)

2008年12月13日(土)14:00
紀尾井ホール

ヴァイオリン弾き振り:安永徹
紀尾井シンフォニエッタ東京
(第67回定期演奏会)
ピアノ:市野あゆみ

モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番
ハルトマン:ヴァイオリンと弦楽のための葬送協奏曲
モーツァルト:交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」
ピーター・ウォーロック:キャプリオール組曲~第5曲
(アンコール)

昨年(2007年)の9月にNHK-FMで、安永徹さんが弾き振りしたオーケストラ・アンサンブル金沢の演奏会が放送されました。
(2007年7月22日 しらかわホールで収録されたもの)
曲目は
バッハ:バイオリン協奏曲第1番
モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番 (ピアノ:市野あゆみ)
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調「ジュピター」
というもので、コンサートマスターの席に座ってのリードですので、てっきり、なごやかな合奏かと思いきや、ドイツ風の堂々たるモーツァルトが推進力をもって演奏されていてびっくりしました。
CD(2003年の石川県立音楽堂で収録されたもの)も聴いてみて、印象としてはFMで放送されたものよりも、やや大人しいような気もしましたが、それでも十分に立派。
さすがはベルリン・フィルのコンサートマスターを長年務めただけのことはある…と感心しました。
強力なリードがなければ、このような演奏にはならないでしょう。
…というわけで、この日の演奏は非常に楽しみにしていました。

紀尾井ホールに行くのは1995年4月2日のオープニング以来。
紀尾井シンフォニエッタ東京を聴くのも、その旗揚げの公演以来です。
この日座った席は2階のバルコニー席でしたが、残響はあまり感じないものの、決して乾いた音ではなく、弦にもピアノにも適した好感の持てる音響に感じました。

演奏については「安永さんの強力なリード」という点についてはFM放送やCDと同じですが、「ドイツ風の堂々たる」という点については、そういう面とともに、ティンパニの強打や金管の強奏やアクセントといった「21世紀のモーツァルト演奏」の面も感じました。
生演奏だからそう感じたのか、演奏が変化してきているのかは鑑賞経験があまりないので私にはわかりませんが、決して1970年代のモーツァルト演奏ではありません。
スリリングな面を含んだ、堂々たる、ベートーヴェンのようなモーツァルトの演奏だったように感じました。
(実際には安永さんが指揮者なのですが)指揮者が立って髪を振り乱して指揮をしていないのがいないのが不思議に感じる光景でした。
協奏曲での市野さんのピアノもFM放送やCDでも好感でしたが、生で聴くとくっきりとした音がまた格別でした。

ハルトマンの曲は安永さんがソリストとして立っての演奏。
これは、モーツァルトとはまた違った、緊張感のある素晴らしい演奏でした。

プログラムの冊子によると、安永さんはベルリン・フィル辞任後、日本での活動を増やすとか。
ぜひレパートリーを広げて、ハイドンやベートーヴェンの交響曲も弾き振りしてほしいと期待してしまいました。

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2008年12月 6日 (土)

大友直人/東響(2008/12/06)

2008年12月6日(土)18:00
サントリーホール

指揮:大友直人
東京交響楽団
(第562回定期演奏会)
演出:ピーター・セラーズ
クムダ:ジェシカ・リヴェラ(ソプラノ)
王子:ラッセル・トーマス(テノール)
語り部:ジョナサン・レマル(バス・バリトン)
舞踊:ルシニ・シディ、エコ・スプリヤント、アストリ・クスマ・ワルダニ
合唱:東響コーラス
合唱指揮:有村祐輔

ジョン・アダムズ:フラワリング・ツリー*花咲く木
(全2幕、日本初演、セミ・ステージ形式、原語上演、字幕付)

上演に先立ち、17:15からピーター・セラーズさんと岡部真一郎さんによるプレ・トークがありました。
ピーター・セラーズさんは、情熱を込めて熱く語りました。

作品については、
「オーケストラが主役の部分、歌手が主役の部分、合唱が主役の部分がそれぞれ効果的に用いられている。」

舞踊が登場することについては、
「世界で一番遅い踊りであるジャワの踊りを使った」
「肉体的な表現をする者と言葉を表現する者が別人である舞台は、世界中に例がたくさんある。日本の歌舞伎もそうだ。皆さんはこういうスタイルに、すでに慣れているはずだ。」

セミステージ形式のハンディについての質問に対しては、
「ハリウッド映画は、観ている人はあれこれ想像することができないが、今日の舞台は皆さんがイマジネーションを発揮する余地がある。」
「芸術というのは参加型のアミューズメントであり、今日の舞台は皆さんと一緒に作り上げるものだ」

最後に岡部真一郎さんが
「ゲネプロの演奏を聴いたが、ヨーロッパでのこの曲の演奏とは違って、透明感のある音作りだった」

記憶の範囲なので、実際に話した言葉や順番とは多少違っているかもしれませんが、だいたいこのようなことを話したと思います。
このお話しが、公演開始前なのに、公演の大半を物語っていました。

上演は、映像を映したりせず、ステージ後方の壇上での動きだけ。
しかし、ダンサーの動きが入ることでハンディは全くないどころか、このスタイルこそが最適な上演であるかのような気にさせられました。
このダンサーなくして、この上演は成り立ちません。
オーケストラもコーラスも、白いシャツが見える燕尾服ではなく、全身真っ黒な服。
おそらく視覚的に、壇上の演技が映える効果を狙ったのでしょう。

歌手の3人、特にクムダ役のリヴェラさんと王子役のトーマスさんは、すっかり作品が手の内に入った自信に満ちた歌唱と演技でした。
コーラスは主役に躍り出たとの迫力と、引き立て役に回ったときの雰囲気が見事。
透明感のある素晴らしいハーモニーはいつも通りです。

オーケストラも相当練習が行き届いていたようで、日本初演とは思えないほどの積極的な演奏。日頃何度も演奏している曲のような弾きぶりでした。
大友直人さんの音作りは、プレトークでも言及されていたように、透明感のあるサウンド。
かといって、ただきれいな音を狙っただけではなく、スケール感もあり、素晴らしいサウンドでした。
曲は「弾くのは大変」(プレトーク)とのことですが、聴いている分にはかなり聴きやすい音。
「難解な現代音楽」では全くありません。

終演後のカーテンコールでは、ピーター・セラーズさんが大はしゃぎに近い喜びよう。
オケにもコーラスにも、大声でなにか叫んで、ねぎらっていました。
歌手よりも、指揮者よりも目立っていましたが、まあ、作品の誕生にかかわった演出家としては、この曲は自分の子供のようなものでしょうから気持ちは十分にわかります。
実際、非常に、非常に、非常に、素晴らしい上演だったと思います。

2006年に初演された作品を、2年後に極東の地で質の高い演奏で取り上げてくれた東京交響楽団と、スポンサー企業に感謝したいと思います。

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2008年12月 5日 (金)

ゲルギエフ/ロンドン響(2008/12/05)

2008年12月5日(金)19:00
サントリーホール

指揮:ワレリー・ゲルギエフ
ロンドン交響楽団

ヴァイオリン:ワディム・レーピン

プロコフィエフ:交響曲第4番(オリジナル版)
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
プロコフィエフ:2つのヴァイオリンのためのソナタハ長調op.56~第2楽章
(アンコール)
プロコフィエフ:交響曲第5番
プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲第1番~「仮面」
(アンコール)

20081205




私にとってプロコフィエフの曲は、難解に感じるものが多いのです。
交響曲も、1番と5番以外は、「音楽」と言うよりも「音響」という受け止め方で聴いています。
そうは言っても、今年のロンドン交響楽団の来日演奏会は魅力的でした。
ゲルギエフさんが指揮することに加えて、ありきたりの名曲路線ではないプロコフィエフ・ツィクルス。
すでに本拠地ロンドンで演奏し、そのライヴCDも出ています。
全部聴きたくなってしまうところですが、1日だけ選んだのは、大好きな5番が含まれているプログラムでした。
もちろん、レーピンさんのソロも魅力的でした。

この日の演奏が、最初から最後まで、全て一定のハイテンションを保っていたかというと、そうではないような気がします。
しかし、多少テンションが下がったように感じた部分であっても、それは「相対的」な話しであって、相当ハイレベルの演奏であったと思います。
全体的に素晴らしかったが、なおかつ、さらに高い次元で素晴らしい部分があった…ということでしょう。

個人的には5番の第1楽章、第2楽章が、渦の中に巻き込まれるようなサウンドを堪能しました。
また、ヴァイオリン協奏曲の第2楽章の美しさは比類なく感じました。

驚いたのは、ヴァイオリン協奏曲の後のアンコール。
コンサートマスターが立ち上がり、レーピンさんと二重奏を弾いたのです。
さすがはロンドン響のコンマス。
世界的に高名なソリストに聴き劣りしないように大熱演を披露しました。

ゲルギエフさんの指揮は、遠目に見ていると動きが少ないように見えましたが、近くで見ていた友人の話だと、かなり「目で指揮」をしていたのと、動きは小さいながらも、かなり多くの指示を出していたとのこと。
CDで聴いた印象とはだいぶ違う体感で満足した演奏会でした。

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2008年11月28日 (金)

ヴァンスカ/読響(2008/11/28)

2008年11月28日(金)19:00
サントリーホール

指揮:オスモ・ヴァンスカ
読売日本交響楽団
(第508回名曲シリーズ)
トロンボーン:クリスチャン・リンドバーグ

《ヴァンスカ・ベートーヴェン交響曲シリーズ IV》
アホ:交響曲第9番~トロンボーンと管弦楽のための
メディーバルダンス 1457年古典の曲
(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

20081128




田園交響曲ですから演奏時間は40分くらいはかかったはずですが、体感的には、まるで15分くらいで終わってしまったような「あっという間」の出来事。
決してオーソドックスではない「誇張」や「強調」が続出する演奏です。
その「誇張」や「強調」には、リズムや旋律の強調だけでなく、聞こえるか聞こえないかの弱音も含まれています。
しかし、聴いていて違和感を感じないどころか、「確かにこうあるべきだ」と思ってしまう、音楽的な陶酔感を感じさせる演奏でした。

昨年の1番と2番の演奏会を聴いて大感激しましたし、ミネソタ管弦楽団とのCDも素晴らしいので、今年も大いに楽しみにしていましたが、期待は裏切られませんでした。
10日ほど海外出張に行っていたので、4番と8番の日はチケットを買ってあったのに聴けませんでしたが、この日の演奏を聴けたことだけでも感謝したいと思います。

前半のアホの交響曲は、形式的には協奏曲です。
ソリストも大活躍します。
でも聴いてみると、確かに「交響曲」という言葉も納得できます。
独奏トロンボーンが目立ちますが、ところどころで登場するチェンバロの音色も実に印象的。
曲の方も、リズムが炸裂する部分もあれば、旋律が歌う部分もあり、初めて聴いた私には捉えどころが難しかったですが、なかなか面白い曲です。
こういう珍しい曲を「田園」の前に置いて、多くの聴衆に聴かせてしまおうというプログラミング上の魂胆は大歓迎。
私だって、アホの曲が2曲並んでいたら、いくらヴァンスカさんの指揮であってもチケットを買うのを躊躇したでしょう。
なかなか面白い演奏会でした。

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2008年11月 5日 (水)

テミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィル(2008/11/05)

2008年11月5日(水)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール

指揮:ユーリ・テミルカーノフ
サンクトペテルブルク・フィル

チェロ:タチアナ・ヴァシリエヴァ

チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
エルガー:エニグマ変奏曲より「ニムロット」
(アンコール)
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魔術師…いや、手品師の見事なトリック?
このままシルクハットでもかぶれば、そのまま手品師として通用しそうな風貌のテミルカーノフさんですが、その妖しい手つきは本当に手品のよう。
手首を微妙にひねると、ものすごいスケールの音がうねりをたててホールに響きます。

昨年、読響の演奏会(5/195/27)を聴いて「テミルカーノフさんってスゴイ!」と思っていましたが、手兵のサンクトペテルブルク・フィルを振った演奏は、さらに輪をかけて凄かった印象です。

この日の演奏会は、テミルカーノフさんの「冬の日の幻想」(交響曲第1番)が聴けるというので、わくわくしながら購入したこの演奏会のチケット。
まさかの曲目変更で唖然としました。
払い戻しも出来たようですが、思いとどまったのは、来年度の読響の客演陣にテミルカーノフさんの名前がなかったからです。
「しばらくテミルカーノフさんを聴けないから、お目当ての曲目じゃないけど聴いておこう」という程度の軽い気持ちで会場に向かいました。

しかし、1曲目の「ロメオとジュリエット」からド迫力に圧倒されました。
「この曲、こんなに面白かったっけ?」と目から鱗が落ちる心境。
もっとも、鳴っている音は純粋な「音」で、民族性やら感傷的な気分やらはあまり強調されていません。
ただ立派な音が鳴っているだけなのに、その音の奥深さ、味わい深さ、スケールの大きさは驚くばかり。
斜に構えて聴きに来た自分を恥じ入りました。

2曲目の「ロココ…」は、独奏のヴァシリエヴァさんが、自由自在、奔放に弾きまくり、この曲においても「こんなに面白かったっけ?」という印象です。
しかし、よく聴くと、ソリストの音は、1曲目で聴いたオケの音と同じような音。
指揮者に目をやると、「あれ、テミルカーノフさん、独奏チェロも指揮しているの?」と思う場面もあり。
テミルカーノフさんの手のひらの上で、思う存分に暴れたヴァシリエヴァさんという印象で、ソリストをこれだけ自由に弾かせながら包み込んでしまうテミルカーノフさんの懐の深さを感じました。

ここまで来れば、「悲愴」が「お約束の名演」になるのは当然の結末。
この曲では、特に第3楽章ではテミルカーノフさんの手の動きがかなり少なく、ただたっているだけの状態もしばしば。
でも眼光は鋭く、表情もかなりの緊張感でオケを見据えています。
顔だけで指揮をしていたのでしょう。
ところどころで、音の入りが微妙にずれたり、管楽器の音色が「あれ?」と感じたりした場面もありましたが、そんなことでこの演奏の価値は下がらないと思いました。
アンコールのエルガーもスケールの大きさで圧倒。
すっかり魔術にかけられてしまいました。

この日は、お客さんの数が少なく、1階席など3割くらいしか入っていないのでは?という散々な状態でした。
コンサートの冒頭で、入場してきたオケのメンバーが一瞬顔をしかめたほど。
でも、その少ないお客さんの拍手喝采は、まるで満場の聴衆のようでした。
終演後は、オケが引き上げた後にテミルカーノフさんを舞台に呼び戻しました。

私は、曲目変更にがっかりしたことなどきれいさっぱり忘れて、家路につきました。

ちなみに私がこのオーケストラを私が生で聴くのは、1986年以来で実に22年ぶり。
前回はレニングラード・フィルという名前でした。
指揮者は、当時まだ「アルヴィド・ヤンソンスの息子の」と呼ばれることもあったマリス・ヤンソンスさん。
ムラヴィンスキーさんが振る予定だった演奏会で、当日の会場では、確か料金の差額を払い戻してもらったような気がします。
私はそのとき“ムラヴィンスキーさんを聴けなかったことの意味”を正しく理解していなくて、「差額が返ってきたから、まあいいか」という程度に受け止めていました。
代役の若きヤンソンスさんの振ったオケは、轟音をとどろかせて低弦はうねり、金管は咆哮し、大満足で帰宅したのを覚えています。

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2008年11月 3日 (月)

新国立劇場「リゴレット」(2008/11/03)

2008年11月03日(月・祝)14:00
新国立劇場

ヴェルディ:リゴレット
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私にとって「リゴレット」は、多少の戸惑いを感じる作品です。
悲劇であるのに、途中、甘美で優雅な旋律があまりにも多いからです。
あるいは、弾むようなうきうきする旋律も多い。
鳴っている音楽の印象が、ストーリーだけを文章で読んだ印象と、私にとっては、あまりにも違うのです。
第3幕冒頭の超有名な「女心の歌」など、そのアリアだけ取り出して聴いたりすると、悲劇の「ひ」の字も感じられません。
評論家の先生が書かれた文章などでは「リゴレット」は最初から最後まで完全無欠の作品のように書かれていますが、私は、まだこの作品の凄さがわからないようです。
そういうわけでこの日は、多少傍観者的に鑑賞していました。

感心したのはピットの中の東京フィルの演奏。
甘美、優雅、うきうき、と言った“悲劇とは無縁に思える部分”の音楽を、魅惑的に奏でていました。
オペラのピットに入った東京フィルは、評論家の先生の文章で酷評されることが多いのですが、この日の東京フィルは、私は“オペラのオケ”のように、かなり頑張ったと思います。
4階席で鑑賞していたのでピットの中の指揮者の姿は見えませんでしたが、「指揮姿を見てみたい」と思いながら、素敵な旋律を聴いていました。
ただ、第3幕後半などの、ジルダが刺される場面や、リゴレットが娘の死を嘆く場面など、悲劇本来の劇的な場面や悲しみの旋律は、もう少し感情を込めたり、スケールの大きな音色を出して欲しいような気もしました。
もっとも、私にとっては「リゴレット」自体がまだちぐはぐな印象を拭いきれていないので、そのように感じたのは私の鑑賞力の無さによるものかもしれません。

歌手陣は、最初から最後まで好感でした。
誰かが突出した迫力で抜きんでていたわけではありませんが、全体的な声の統一感を感じられました。
四重唱などはその最たるもの。
それが指揮者の統率力なのかどうかはわかりませんが、前述のオケの鳴らし方もあったので、カッレガーリさんの名前は覚えておいてどこかで再確認してみたいと思いました。

再認識したのは、「女心の歌」は、やはり“オペラの一部”であるということ。
有名なので単独で取り上げられることが多いですが、オペラの中の本来の箇所で歌われてこそ真価を発揮する曲です。
このオペラのこの曲に限らず、「乾杯の歌」「清きアイーダ」も、イゾルデの「愛の死」「ワルキューレの騎行」「7つのヴェールの踊り」も、やはり本来は“オペラの一部”の曲ですね。

【指揮】ダニエレ・カッレガーリ
【演出】アルベルト・ファッシーニ
【美術・衣装】アレッサンドロ・チャンマルーギ
【照明】磯野睦
【芸術監督】若杉弘

キャスト
【リゴレット】ラード・アタネッリ
【ジルダ】アニック・マッシス
【マントヴァ公爵】シャルヴァ・ムケリア
【スパラフチーレ】長谷川顯
【マッダレーナ】森山京子
【モンテローネ伯爵】小林由樹
【ジョヴァンナ】山下牧子
【マルッロ】米谷毅彦
【ボルサ】加茂下稔
【チェプラーノ伯爵】大澤健
【チェプラーノ伯爵夫人】木下周子
【小姓】鈴木愛美
【牢番】三戸大久

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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2008年11月 2日 (日)

スダーン/東響(2008/11/02)

2008年11月2日(日)14:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(川崎定期演奏会 第18回)
ピアノ:アンドレア・ルケシーニ

シューベルト:交響曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
スカルラッティ:ソナタト長調より
(アンコール)
シューベルト:交響曲第2番

前日のサントリーホールでの定期演奏会も聴いたのですが、この日も当日券で聴きに行ってしまいました。
理由はふたつ。
ひとつめの理由は、ピアノ協奏曲の聴き直しです。
昨日は、私は集中して聴くことが出来ませんでした。
ふたつめの理由は、交響曲第2番の第4楽章がめちゃくちゃ楽しかったからです。
これは、もう1回聴きたいと思いました。

この日も、ステージ後方の2階LAブロックの席で、何度も何度も咳をしている人がいましたが、ハンカチで口を押さえ、遠慮がちにしていたので、それほど鑑賞の妨げにはなりませんでした。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、やはり素晴らしい演奏でした。
ピアノは淡々と弾いているようでいて、出てくる音は味わいのある深みがあり、独奏のルケシーニさんの懐の深さを感じました。
オーケストラも、第2楽章冒頭などで迫力を感じる部分もありましたが、全体的には味わい深さを感じる演奏。
同じ指向の音楽でピアノとオケが有機的に繋がり、ホール全体が心地良い陶酔感で満たされた印象です。
この曲の演奏中、寝ている人が結構いましたが、気持ちはわかるような気がします。
退屈で寝てしまったのではなく、あまりにも心地良くて寝てしまったのではないでしょうか。
私も「このまま寝てしまったら気持ちいいだろうな」と思いつつ、この素晴らしさを最後まで見届けようと、集中して鑑賞しました。
前日の借りは返せた」と言って良い体感でした。

当初、この演奏会にはジャンルカ・カシオーリさんの独奏が予定されていましたが、来日不可能になり、スダーンさんの推薦でルケシーニさんの出演が決まったそうです。
本当によいピアニストを連れてきてくれて、スダーンさんにも感謝です。

交響曲もわくわくしながら、楽しく聴きました。
2回目なので「驚き」の気持ちは少なくなり、昨日ほど興奮はしませんでしたが、それでも、かなりエキサイティングな演奏です。
5月の定期演奏会の第1番と第4番のCDに続いて、9月の定期演奏会での第5番と第6番のCDが、会場限定で販売されていました。
(もちろん購入してきました。)
この日の演奏も、CD化を期待して待ちたいと思います。

ミューザ川崎の音響は席によって結構差があるようですが、この日は私の好きな場所。
サントリーホールのよく響く暖かみのある音も好きですが、この日の席の聴感ではサントリーホールよりは分解能が良い印象で、特にピアノの音はくっきりと聞こえました。

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2008年11月 1日 (土)

スダーン/東響(2008/11/01)

2008年11月1日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(第561回定期演奏会)
ピアノ:アンドレア・ルケシーニ

シューベルト:交響曲第3番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
シューベルト:4つの即興曲D.899から第2番
(アンコール)
シューベルト:交響曲第2番

スダーンさんのシューベルト・ツィクルスは絶好調です。
この日のシューベルトの2番、3番は、どちらもバロック・ティンパニがアクセントを添え、金管楽器も鋭い音を出し、弦楽器もスピード感あふれる演奏をしているのに、オーケストラ全体としては溶け合ったハーモニーがまろやかに響いているように感じるという、ちょっと不思議な感覚で聴いていました。
こういう音が出せて、こういう演奏が出来ると言うことは、スダーンさんと東響の相性は絶好調で、オーケストラの状態も非常に良いのでしょう。
東響のスポンサー企業のことについて最近いろいろ報じられていますが、経済的なことに左右されず、ぜひ、この絶好調を維持して欲しいものです。

音楽の話しに戻りますと、この日の第2番はシューベルトの交響曲の中で私が一番好きな曲なので、特に楽しみにしていました。
この曲を好きになった理由は、一時期追っかけのように聴きに通っていた広上淳一さんが時々取り上げていたからです。
特に第4楽章の、アクセル全開でスピードを出していたかと思うと、急にブレーキの踏んで、間を取るあたりが絶妙のおもしろさでした。
この日のスダーンさんの演奏は、ブレーキや間をあまり感じませんでした。
ひたすらアクセルを踏み続けている感じ。
でも、それなのに「先を急いでいる」とか「一本調子」という印象は皆無でした。
聴いていた私は、ぐいぐい引き込まれるわけでもなく、圧倒されるわけでもなく、目の前に繰り広げられるスピード感のある演奏を、目を離すことが出来ずにひたすら「観察」し「ついていった」というような感じです。
なんとも、不思議な、快演でした。
演奏終了後はまるでマーラーの交響曲でも終わった後のような大拍手とブラボーの声でした。

2曲のシューベルトにはさまれたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番も、なかなか良い演奏だったようです。
ピアノは格調の高い音を出していたように思いますし、オーケストラも伴奏ではなく交響曲でも演奏しているかのような音を出していました。
演奏終了後は、独奏のルケシーニさんと指揮のスダーンさんは抱擁して好演を讃え合っていました。
しかしこの日は、協奏曲とアンコールを通じて、P席からかなり大きな咳の音が頻繁にホールに響き渡りました。
特にP席後方の同一人物から繰り返し発せられた咳で、私の集中力は、しばしば途切れました。
生理現象だから仕方ないと言うべきなのかもしれませんが、非常に残念でした。
休憩時間には、係員(ホールのレセプショニスト)が、その咳が止まらなかった人をどこかに案内していき、後半のシューベルトの2番は、集中して聴くことが出来ました。

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2008年10月26日 (日)

ウィーン国立歌劇場「フィデリオ」(2008/10/26)

2008年10月26日(日)15:00
神奈川県立県民ホール

ウィーン国立歌劇場2008年日本公演
指揮:小澤征爾

ベートーヴェン:フィデリオ
200810262200810261





この日が日本公演通算100回とのことで、終演後に一通りのカーテンコールをした後に幕が開くと、舞台上に樽酒が置かれ、総監督のホーレンダーさん(たぶん)と小澤征爾さんで鏡開き。
2人とも青いはっぴを着ています。
舞台上方には「祝…通算100回」の大看板が吊るされ、歌手、合唱団、オーケストラのメンバーも勢揃い。
カーテンコールで指揮者が登場する前にオケのメンバーが引き上げてしまったので「珍しいなぁ」と不思議に思いましたが、そういうことだったんですね。
もっとも、最後は祝祭的なイベントの雰囲気に変わってしまいましたが、上演自体は真剣勝負だったと思います。

今回の来日公演で「フィデリオ」はこの日が初日ということもあったのか、序曲こそ、ところどころ間合いが手探り状態の部分もあったような気がしました。
でも、幕が開いて歌手が登場すると、そこは百戦錬磨のオペラのオーケストラ。
雄弁な表情で音楽を語り始めます。
ちょっとしたフレーズですら、濃厚な表情が見えたりします。
いや、フレーズでなく、伴奏の断続的な音ですら魅惑的です。
歌手の歌よりも雄弁で、オーケストラが主役になってしまった部分もあった…と言ったら言い過ぎでしょうか。
目を閉じて聴いたら、独唱付きの管弦楽曲を“ウィーン・フィルの演奏会”で聴いているような気分になったかもしれません。
特に弦楽器、中でもヴァイオリンがすばらしい!!
小澤さんのオペラでは、しばしば舞台よりも指揮姿に目がいってしまうことがありますが、この日は小澤さんとともに、その横で弾いているコンサートマスターのキュッヒルさんに、しばしば目を奪われました。
金管は、「ん?」と思う場面もなかったわけではありませんが、まあ、ウィーン・フィルではなくウィーン国立歌劇場管弦楽団なのですから、上々でしょう。
2007年5月に現地で聴いた「エレクトラ」「さまよえるオランダ人」では、日によってずいぶん印象も違いました。

それから、オケをべた褒めしたからと言って、決して歌手のレベルが低い印象があったわけではありません。
声を張り上げても「叫び声」にはならず、美しさを保ったままの迫力。
逆に小さな声でもかすれることなく、ホールにしっとりと響く。
やはりウィーン国立歌劇場が連れてくる歌手だけのことはありました。

演出については、かなり長く使われているシェンクさんの演出とのこと。
実は、この日の公演と同じ演出であることを知った上で、我慢できずにバーンスタインさん指揮のDVD(1978年、ウィーンでのライヴ)を買って、事前に見てしまいました。
(故ルチア・ポップさんのファンなので。)
もちろん(細部はともかく)全く同じ演出です。
舞台装置も衣装のデザインも(全く同じかどうかはわかりませんが)同じスタイルのものです。
県民ホールの横に広い舞台の両側は使っていなかったところを見ると、現地ウィーンの狭い間口のセットそのままなのでしょう。
刺激的な演出が好みであれば、おそらく物足りなく感じたと思いますが、演出が自己主張することなく音楽を引き立てるという意味では、この伝統的な演出も良かったと思います。

ちなみにこのバーンスタインさん指揮のDVDでは、この日のコンサートマスターのキュッヒルさん(若い!)が、ヘッツェルさんの横で弾いているのが写っています。
すでに伝説となりつつあるバーンスタインさんの「フィデリオ」を経験した人がこの日も弾いている。
伝統と言わざるを得ません。
現地ウィーンでは、この日本公演中も休むことなく、余裕で?毎晩のように通常のオペラ公演があるとか。
底力と言わざるを得ません。

県民ホールの音響は、私の座った3階後方でもオケの音も歌手の声も響いてきました。
現地ウィーンで2回聴いたときは、国立歌劇場の音響は残響感がなく、乾いた音に聞こえました。
“声”を聴くにはこういう響きの方が良いみたいですが、オケだけの音の時は少し不満を覚えました。
それに比べると県民ホールの音響は、サントリーホールほど響かず、さりとて多少の残響感はあり、オペラの響きとしては好感を感じます。
また、視覚的にも、身を乗り出さなくてもピットも舞台も見えるし、好印象です。
私は、一時期、多目的ホールを忌み嫌った時期もありました。
(前回この県民ホールに来たのは、1994年です。)
でも、この日の上演を観て、オペラをやるには、収容人員と音響と視覚のバランスの取れた良いホールだと見直しました。

全般的に“シンフォニックに演奏されたオペラ”の印象でした。
この日も、バーンスタインさん指揮のDVDと同様、第2幕の途中に序曲「レオノーレ」第3番を挿入して演奏され、
(\3,000のプログラムの冊子によれば「ウィーンの習慣」とのこと。)
“ウィーン・フィルの演奏会”の印象は、ここに極まった感がありました。
私は、こういう演奏でいいと思いました。
ストーリーは水戸黄門のようなものだし、最後は5番や8番の交響曲と同じくらいしつこいし、まるでベートーヴェンの交響曲のようなオペラなのですから。(*注)
小澤さんのシンフォニックな音作りは、コーラスや二重唱、三重唱に至るまで、本当にきれいに響きました。

指揮:小澤征爾
演出:オットー・シェンク
美術:ギュンター・シュナイダー=シームセン
衣装:レオ・ベイ
合唱監督:トーマス・ラング

ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン国立歌劇場舞台上オーケストラ
合唱協力:藤原歌劇団合唱部

キャスト
フロレスタン:ロバート・ディーン=スミス
レオノーレ:デボラ・ヴォイト
ドン・フェルナンド:アレクサンドル・モイシュク
ドン・ピツァロ:アルベルト・ドーメン
ロッコ:ヴァルター・フィンク
マルツェリーネ:イルディコ・ライモンディ
ヤキーノ:ペーター・イェロシッツ
第1の囚人:ウォルフラム・デルントル
第2の囚人:ヒロユキ・イジチ

*注=書籍「これだけは見ておきたいオペラ」(新潮社)の文章を参考にしました。

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2008年9月27日 (土)

スダーン/東響(2008/09/27)

2008年9月27日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(第559回定期演奏会)
ヴァイオリン:アラベラ・美歩・スタインバッハー

シューベルト:交響曲第5番
ベルク:ヴァイオリン協奏曲-ある天使の思い出に-
J.S.バッハ:無伴奏ソナタ第3番からアンダンテ
(アンコール)
シューベルト:交響曲第6番

決して有名曲、人気曲の部類に入らないと思われるシューベルトの6番ですが、演奏が終わった後は盛大な拍手とともにずいぶん「ブラボー」の声もかかっていました。

今シーズンの東京交響楽団の定期演奏会はシューベルト・ツィクルスで、特に音楽監督のスダーンさんが振った5月17日の1番と4番が、目の覚めるような素晴らしい演奏でした。
(この日のライヴCDが「東響主催演奏会場限定」という触れ込みで販売されていました。)
その“続き”ということで、当然この日も期待度大だったわけですが、その期待は満たされたと思います。

この日は、5番と6番の対比が非常に効果的に描き分けられていたと思います。
プログラムの冊子の広瀬大介さんの曲目解説も「木刀を真剣に持ち替える」という比喩で、シューベルトが6番に込めた気概が書かれています。
私は今まであまり意識して聴いていませんでしたが、6番は5番から大きく飛躍した曲のようです。

この日の演奏会で、最初に5番の演奏が始まったときは、「あれ?意外とまろやかな演奏だな」と思いました。
ティンパニが入っていない編成のためかもしれませんが、あまり鋭い音はなく、まるでモーツァルトのディベルティメントか、29番のシンフォニーのよう。
でも、その美しさは比類がありません。
特に「ハーモニー」という意味では、弦と管が溶け合い、まるで一人の奏者が弾いているかと錯覚するような素晴らしい出来。
会場では、この曲で居眠りをしている人が何人も目につきましたが、何となくわかるような気がします。
退屈ではなく、恍惚感で寝入ってしまった人も多かったのではないでしょうか。

それに対して6番は、バロックティンパニが加わり、時折鋭い音を交えて、メリハリをきっちりつけた推進力のある演奏。
6番がこんなにスケールが大きい曲だということは、この日初めて実感したような気がします。
「未完成」「グレイト」に時期的に一番近い曲を、私は今まであまりにも軽視していました。
この曲でのハーモニーは、溶け合うというよりは、分解能が良くくっきりしたアンサンブルに感じましたが、「まるで一人の奏者が弾いているような」という印象は5番と同じ。
スダーンさんの意図が隅々まで浸透しているということなのでしょう。

これらシューベルト2曲に挟まれてベルクのヴァイオリン協奏曲が演奏されましたが、スタインバッハーさんのソロも相まって、これもなかなか美しい演奏。
まるでロマン派の有名曲のように感情を込めてこの曲を自在に弾きこなすスタインバッハーさんの演奏は非常に魅力的でした。
アンコールの選曲も、バッハの無伴奏の中では、前後の曲にマッチする非常に良い曲を選んだような気がします。
シューベルト(まろやか系)→ベルク→バッハ→シューベルト(メリハリ系)という曲順は、聴いてみると結構しっくり来ました。

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2008年9月23日 (火)

飯守泰次郎/東京シティ・フィル(2008/09/23)

2008年9月23日(火・祝)14:00
ティアラこうとう大ホール

指揮:飯守泰次郎
東京シティ・フィル
(オーケストラル・オペラVII)

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」
(ノーカット 日本語字幕付き原語上演)
20080923








もし1日目(9月21日)の公演を聴いていたら、終演後直ちにこの日のチケットも買ってしまったかもしれません。

飯守泰次郎さんの指揮するワーグナーの音の世界は期待通り。
…と書いてしまうとあまりにも素っ気なくなってしまいますが、飯守さんのワーグナーがめちゃくちゃ素晴らしいことを知っているから「期待通り」なのであって、決して半端なレベルではありません。
休憩を挟んで5時間の間、オーケストラは弛緩することなく、劇的な緊張感や、甘美な陶酔感、悲しみ、喜び、束の間の安らぎなどの表情を描き出します。
定期演奏会2~3回分の“時間”と“充実度”。
東京シティ・フィルのメンバーも、相当の準備をしたのでしょう。

歌手陣もかなりの迫力で迫真の歌唱。
1234席のティアラこうとうのホール空間の“小ささ”は、例えば2303席の東京文化会館などに比べて体への負担が少なかったのかもしれません。

成田勝美さん(トリスタン)、緑川まりさん(イゾルデ)は、さすがに長丁場なので最初から最後まで全力投球というわけにはいかないでしょうが、全体の8割~9割くらいの時間はアクセル全開の様相。

マルケ王役の小鉄和広さんは、2月の二期会の「ワルキューレ」でフンディング役を歌ったのを聴いて好印象だったので期待していましたが、フンディングとは異なるキャラクターを威厳をもった声で演じ、今回も好感でした。
フンディング同様、他の役に比べれば短めの歌唱なので、成田さんや緑川さんと同じ土俵で比べていいのかどうかわかりませんが、今後も注目していきたいと思います。

ブランゲーネ役の福原寿美枝さんが力の入った歌唱で素晴らしい。
関西二期会に所属されているとのことなので、帰宅後に調べてみたら、1月に関西二期会が新国立劇場中ホールで上演した「ナクソス島のアリアドネ」で“作曲家”役を歌っていて、そのときにも私は好感を持って聴いていたことを思い出しました。
この日は、「アリアドネ」のときよりもさらに数段良かったような印象です。

歌手とオケと指揮の総合的な印象では、私は第1幕の凄まじいばかりの劇的な表現に特に圧倒されました。
第2幕の愛の二重唱などは、もっと官能的であっても良いようにも感じましたが、それは好み(あるいは私の集中力)の問題かもしれません。
(さすがに聴く方も長時間集中力を維持するのは大変でした。)
第3幕では、マルケ王が到着した後の緊迫感と嘆きが特に印象的。
そして最後の「愛の死」は、緑川さんもオケも美しさと迫力を両立させた熱演。
「前奏曲と愛の死」などという“キセル”をしないで到達したフィナーレは、涙が出そうなくらいの恍惚感を覚えました。

決してワグネリアンではない私ですが、2月の二期会の「ワルキューレ」で飯守泰次郎さんの重厚な音に圧倒されて以来、飯守さんの指揮するワーグナーの歌劇や楽劇を、もっともっと聴きたくてたまらなくなりました。
「飯守さんがワーグナーを振る機会が少ないのは、音楽界にとって損失に等しい」とさえ感じていました。
しかし、飯守泰次郎さんのホームページのMessageのコーナーに掲載されている、「『トリスタンとイゾルデ』稽古場だより」を拝読すると、このような大作を上演するのは並大抵のことではないようです。
東京シティ・フィルのホームページにも、飯守さんのメッセージとして、この公演にかける“思い”が掲載されています。
“大変”なのは“音楽的”にだけでなく、おそらく“経済的”にもでしょう。この日も残念ながら満席ではありませんでした。
二期会の「ワルキューレ」の9ヶ月後にこの「トリスタン」の上演があり、1年に2回、飯守さんのワーグナーの全曲上演に足を運べたのは、「幸せ」と言っても良いのかもしれません。

配役:
トリスタン:成田勝美
マルケ王:小鉄和広
イゾルデ:緑川まり
クルヴェナール:島村武男
メロート:青栁素晴
ブランゲーネ:福原寿美枝
羊飼い:近藤政伸
舵手:須藤慎吾
若い水夫の声:村上公太
合唱:東京オペラシンガーズ

構成:小栗哲家
装置:イタロ・グラッシ
照明:鈴木尚美
舞台監督:金坂淳台
合唱指揮:四野見和敏
副指揮・プロンプター:城谷正博
副指揮:阿部肇
コレペティトール:大藤玲子、篠原明子、小梶由美子
字幕:三宅幸夫
演出補:菊池裕美子

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2008年9月21日 (日)

スクロヴァチェフスキ/読響(2008/9/21)

2008年9月21日(日)14:00
東京芸術劇場大ホール

指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
読売日本交響楽団
(東京芸術劇場マチネーシリーズ第103回)
ピアノ:ジョン・キムラ・パーカー

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
ブルックナー:交響曲第0番

ブラームスは協奏曲ではあるものの、スクロヴァチェフスキさんの指揮するオーケストラパートを楽しみにしていました。
そして、その期待はかなえられました。
9月10日の定期演奏会での交響曲第3番は「悠然」という印象でしたが、この日の協奏曲は鋭いアタックを交えながらの迫力のある演奏で、私がスクロヴァチェフスキさんに抱いていたイメージに近いブラームスでした。
(後半のブルックナーの演奏を聴いた後では、管楽器はもう少し頑張れたのではないか?…という印象もありましたが。)

しかし、その期待をさらに上回ったのがジョン・キムラ・パーカーさんのピアノ独奏。
激情的な部分の迫力と抒情的な部分の雰囲気の両方が、「見事」としか言えない貫禄で弾かれました。
この曲は「ピアノを伴った交響曲」と呼ばれることもあり、この日のプログラムの冊子にも書いてありました。
私の演奏前の期待も、多少、それに近いものがありました。
しかし、やはり、この曲は「ピアノ協奏曲」だったのでした。

演奏が終わった後、指揮者とピアニストは、お互いの肩をつかみ合いながら、かなり長い間、言葉を交わしあっていました。
そして、会場の最大な拍手とブラボーの歓声に満面の笑顔で応えていました。
会心の演奏だったのでしょうか。
拍手も長く続き、コンサートマスターのノーランさんが先頭を切ってオケのメンバーが引き上げ始めるまで続きました。

休憩後のブルックナーは、「腐っても鯛」ならぬ「短くてもブルックナー」と言いたくなるような、魅力的な曲。
(いや、決して腐ってはいません。)
もちろん、延々と続くブルックナーのイメージを抱いて聴いていると、「あれ?この楽章、もう終わり?」と肩すかしにあったような気もしないではありません。
でも、聞こえてくるのは、まぎれもなくブルックナーの世界。
初期(と言っても45歳だそうですが)の作とは言え、大作曲家の曲です。
ブルックナーが晩年に“発見”したときに、破棄せずに、わざわざ“第0番”という番号を付与した理由がわかる気がします。

そして、この曲がスクロヴァチェフスキさんの手にかかると、立派なひとつの交響曲として構築されます。
チェロ主席の毛利さんが例によって、まるで「3人目のコンサートマスター」のように低弦をリードし、弦はうねるような大迫力でした。

演奏会でブラームスとブルックナーを続けて聴く機会は、もしかしたら少ないかもしれません。
この日の2曲は一見さりげなく並べただけのようでいて、実はなかなか気の利いた組み合わせだったような気がします。

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2008年9月10日 (水)

スクロヴァチェフスキ/読響(2008/9/10)

2008年9月10日(水)19:00
サントリーホール

指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
読売日本交響楽団
(第474回定期演奏会)
ヴァイオリン:アリョーナ・バーエワ

ブラームス:交響曲第3番
シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ショスタコーヴィチ:交響曲第1番

スクロヴァチェフスキさんが変わったのか、私の感じ方が変わったのか…。

スクロヴァチェフスキさんというと、N響に客演していた頃からの印象で、比較的とんがった、老齢とは思えないような若々しい音楽…という先入観を持っていました。

しかし、この日の一曲目のブラームスは、「勢いで押してくる演奏」とは対極にあるような、悠然とした演奏に感じました。
決して先を急がず、小さなフレーズも大切にしながら、雰囲気のある空間をホール内に作り出した感じ。
「ブラームスの英雄」(この第3番)だの「ブラームスの田園」(第2番)だのという呼び名はあまり好きではないのですが、この日の演奏を聴いて思い浮かんだ言葉は、(第3番なのに)「ブラームスの田園」でした。
終楽章こそ、少し勢いの良い部分もありましたが、最後はやはり悠然と、静かに終わりました。

15分の休憩を挟んで、20世紀初頭の音楽が2曲。

シマノフスキは、不思議な音響の部分があるかと思えばロマンティックな部分もある曲で、私にとってはちょっと捉えどころがないのですが、CDで聴いたときに比べてやはり生演奏では、特に弱音の部分の細やかな音響を楽しむことが出来ました。
ショスタコーヴィチの前に演奏するには、なかなか良い選曲だったように思います。

最後のショスタコーヴィチは、「若きショスタコーヴィチが渾身の力を込めて書いた“とんがった”作品」というイメージがあるせいか、冒頭に書いた“スクロヴァチェフスキさんへの先入観”も相まって、めちゃくちゃ“とんがった”演奏を予想していましたが、意外にまろやかな響き。
スケールが大きく、ブラームス同様に「先を急がず、悠然と」という印象。
縦の線が少しずれたように感じた箇所もありましたが、それすらもこの音楽の一部のようです。

思い起こせば、昨年(2007年)9月に東京芸術劇場でシューマンとショスタコーヴィチを聴いたときに、「ホール(席)の音響のせいか、ややマイルドな音に聞こえた」と感じましたが、そのときの印象に近いものもあります。
「あれ?私は今まで何を聴いていたのだろう」という気にもなりますが、やはり年輪を重ねただけあって、スクロヴァチェフスキさんの指揮は、老大家の至芸のようです。

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2008年6月15日 (日)

新国立劇場「椿姫」(2008/6/14)

2008年6月14日(土)14:00
新国立劇場
指揮:上岡敏之

ヴェルディ:椿姫

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「オーケストラが主役」と言っても良いくらい、上岡敏之さんの引き出すオーケストラの音は魅力的でした。
残念ながら3階席からはピットの中はほとんど見えません。
「上岡さんの指揮姿を見たい!」と思いながら、耳はしばしばピットの中に吸い寄せられました。
微弱音では涙が出そうなくらいニュアンスに富んだ音。
ドラマティックな部分でも、決して下品にならない雄弁な音。
「伴奏」の域を凌駕した素晴らしいオケだったと思います。
「そこそこの外国人指揮者を呼ぶくらいなら、実力派の日本人指揮者にもっと日本でオペラを振ってほしい」という思いを強くしましたが、上岡敏之さんの場合は「来日」と言っても良いくらいの方ですので、次回はいつオペラを振っていただけるかわかりません。
「よくぞ振ってくれた」と感謝したいと思います。

歌手ではヴィオレッタ役のモシュクさんが、第1幕の華やかな雰囲気、第2幕の葛藤、第3幕の死にそうなヴィオレッタを描き分けて涙を誘います。
アルフレード役のサッカさんも、それに絡んでドラマティックな雰囲気を盛り上げていました。
ジェルモン役のアタネッリさんも健闘していたと思いますが、個人的にはこの役は、昨年のチューリッヒ歌劇場来日公演でレオ・ヌッチさんが歌った「威厳のある、ちょっとこわいお父さん」の強烈な印象がいまだに残っていたせいか、少しマイルドな印象を持ってしまいました。

舞台装置は設定に忠実なオーソドックスなものだと思います。
おそらく読み替えはほとんどなく、筋書きに忠実な演出だったのでしょう。
新国立劇場の「わかりやすさ」を重視した路線の一環だと思います。
私は個人的にはあまり奇抜な読み替え演出は好きではないので、安心して見ていられたのですが、あまりにオーソドックス過ぎて、なにかピリリと効いたスパイスのようなものが欲しい気にもなりました。
「オケが主役」「歌手陣も健闘」という状況で、「舞台装置と演出が伴奏」という感もありました。

この日、第1幕の最後と第3幕の最後では、幕が降り始めるとまだ音楽が鳴っているのに拍手が起こってしまいました。
まだまだ日本ではこういうことが多いですね。
第2幕第1場の終わりは幕が降りても拍手は起こりませんでしたし、第2幕第2場の終わりでは、音楽が鳴り終わった瞬間に照明が消えて暗転し、拍手はそれから起こりました。
もっと「音楽が鳴り終わった瞬間に暗転」という方式を多用してほしいと思うのは私だけでしょうか。

そうは言うものの、総じて上岡さんの手腕に大満足の公演でした。
筋書きはわかっているのに、涙が出そうなくらいジーンときてしまう。
音楽の力は偉大です。

【指揮】上岡敏之
【演出】ルーカ・ロンコーニ
【装置】マルゲリータ・パッリ
【衣裳】カルロ・マリア・ディアッピ
【照明】セルジオ・ロッシ
【振付】ティツィアーナ・コロンボ
【舞台監督】斉藤美穂
【芸術監督】若杉弘
【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

キャスト
【ヴィオレッタ】エレーナ・モシュク
【アルフレード】ロベルト・サッカ
【ジェルモン】ラード・アタネッリ
【フローラ】林美智子
【ガストン子爵】樋口達哉
【ドゥフォール男爵】小林由樹
【ドビニー侯爵】東原貞彦
【医師グランヴィル】鹿野由之
【アンニーナ】岩森美里
【ジュゼッペ】小田修一
【使者】大森一英
【フローラの召使い】黒田諭

2008年6月18日追記:
>上岡敏之さんの場合は(中略)次回はいつオペラを振っていただけるかわかりません。
と書きましたが、後で知りましたが、今年の秋に日生劇場で「魔笛」を指揮されるようです。

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2008年6月 7日 (土)

飯森範親/東響(2008/06/07)

2008年6月7日(土)18:00
サントリーホール

指揮:飯森範親
東京交響楽団
(第557回定期演奏会)
ヴァイオリン:山田晃子
ピアノ:菊地裕介

シューベルト:歌劇「フィエラブラス」序曲
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」

当初予定されていた指揮のミッコ・フランクさんが急病で、飯森範親さんが指揮することは、会場へ着いて初めて知りました。
確か、朝、東響のHPを見たときは、何も書いていなかったような気がします。
結構楽しみにしていたので残念でしたが、東響の「正指揮者」の飯守範親さんの指揮には好感を持っていたので、とりあえず「ま、飯森さんで良かった」と思い直して席につきました。

代演が決まってから飯森さんにどれくらいの準備の時間があったのかわかりませんが、飯森さんのブログには、開演1時間前の記事で
>今日の朝、指揮して欲しいとの連絡を頂き先ほどまで練習をさせて頂きました。
とあり、昨日の23時59分の記事には、
>詳しい事はまだ言えないのですが、
という文章が掲載されています。

この日の演奏は、私は前半は「安全運転」の印象を受けました。
決して下手な演奏ではなく、音色もきれいに鳴っていますし、指揮棒にも迷いはないように見えるのですが、出てくる音は“強い意志を持った音”にはいま一歩の印象があったのです。

シューベルトはバロック・ティンパニを使って演奏していたのですが、鳴っている音は後期ロマン派のような音に聞こえました。
「ずいぶんシンフォニックなシューベルトだなぁ」と感じました。

プロコフィエフも近代的な響きと言うよりは、やはり後期ロマン派のような音。
山田さんのヴァイオリンの音もそういう指向だったので、ソロとオケの一体感は感じられました。
この曲は3月の新日本フィルで、コパチンスカヤさん独奏の情熱の熱演を聴いてしまっているので、それに比べれば大人しい印象を受けましたが、むしろ「上品」と言った方がほめ言葉ですね。
ただ、急に指揮者が変わったことがどのように影響しているのかは門外漢にはわからないので、あまり断定的な思いこみをしないようにしたいと思います。

…と、前半についてはやや消極的な感想を書いてしまったのですが、その「安全運転」の演奏であっても、オケの音はずいぶんスケールが大きい印象。
飯森さんは、東響の「指揮者」という肩書きに就任した頃から聴き続けているので、変化はあまりわからないのですが、「あれ?もしかして、飯森さんの音、変わったかな?」「音のスケールが大きくなったかな?」と感じました。

そのスケールの大きな音が威力を持って鳴り響いたのが、後半の「ペトルーシュカ」でした。
ここにはもはや急な代演の印象は一切無く、素晴らしい演奏だったと思います。
この快演を聴くと、「やはり前半は安全運転だったのかな~」と思ってしまいます。
休憩時間に帰ってしまわず、後半まで残っていて良かった!
前半でも感じたように、後期ロマン派のようなストラヴィンスキーに聞こえました。
私は「ペトルーシュカ」は、「火の鳥」や「春の祭典」に比べてそれほど好きな曲ではなかったのですが、この日の飯森さんの演奏は本当に聴いていて楽しかったです。
この曲が好きになりそうです。

最後にドカンと一発鳴らして曲は終わったのですが、なぜか会場からはなかなか拍手が起こりませんでした。
みなさん、曲が終わったことはわかったはずなのに、拍手が始まらない。
1曲目のシューベルトではフライング気味の拍手すらあったに、「ペトルーシュカ」が終わっても拍手が始まらない。
パラパラと拍手は起こりかけては止み、飯森さんがオケを立たせてようやく拍手は少しずつ始まりました。
この拍手の起こり方は、先日聴いた小澤征爾さんの「悲愴」と似ています。
私自身も、すぐに拍手を始める気にならず、余韻に浸っていました。
いったん拍手が始まると、徐々に拍手のボルテージは上がり、熱烈な拍手に変わっていきました。

2008年6月8日追記:
上記の文章を書いたときはまだアップされていなかったのですが、その後、飯森範親さんのブログとコンマスの高木和弘さんのブログに顛末が掲載されています。

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2008年5月25日 (日)

小林研一郎/日本フィル(2008/05/25)

2008年5月25日(日)14:00
サントリーホール

指揮:小林研一郎
日本フィル
(第322回名曲コンサート)
ピアノ:後藤泉

ベートーヴェン:「エグモント」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ベートーヴェン:交響曲第7番

アイルランド民謡:ダニーボーイ(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第7番の終結部(アンコール)


フィラデルフィア管弦楽団を聴いた翌日ですが、感動、感銘は、チケットの値段に比例しません。
管楽器の音色のニュアンスに歴然とした差があるのは、致し方のないことです。
アメリカのメジャーオケと比較するのは、比較するのが日フィルには申し訳ないくらいです。
でも、このうねるような音の迫力の素晴らしいこと!
コンサートの価値という点では、決して劣っていない印象でした。
コバケンのベートーヴェンは、今はやりのピリオド系の演奏ではありませんが、この推進力は得難いものです。

コバケンというと、ついつい幻想交響曲やチャイコフスキーの5番などの、比較的狭いレパートリーでの18番の超名演が頭に思い浮かんでしまいます。
前回、2007年3月にコバケンの7番を聴いたときも「はたして、どのような演奏になるのか?」と思って出かけた記憶があります。
しかし、重々しい音の固まりが咆哮しながら突進するような熱演に圧倒されました。
そのとき「コバケンの7番」は、私の頭に中に刷り込まれました。
今回は2回目だったので比較的冷静に聞くことが出来ましたが、今回も熱演は再現しました。

もっとも後半だけでなく、前半の演奏から指揮者もオケも力は入っていました。
「エグモント」序曲も決して前座の慣らし運転の演奏ではなく、交響曲の楽章のひとつのような演奏。
ピアノ協奏曲のオケパートも同様。
コバケンは序曲と交響曲は譜面台を置かずに暗譜での指揮。
協奏曲は譜面台を置いていましたが、最初は譜面を開かずに振っていて、第1楽章の途中から譜面をめくりはじめました。
完全に手の内に入っている指揮でした。

ピアノ独奏の後藤さんは初めて聴きましたが、音楽性を感じるフレーズが心地良かったです。
一音一音がくっきりしているのに流れもスムーズ。
部分的にテクニック的な問題で音が少し濁った部分もあったような気もしますが、そのようなことでこの演奏の価値は揺るがないでしょう。
ぜひまた、聴いてみたいピアニストです。

休憩後に登場したコバケンは、スポンサー企業への感謝の言葉の後、ピアノを弾きながら第7番を解説。
「皇帝の熱気をさまして7番へと聴衆を導く」という役割を果たした、なかたか良いトークでした。
ここでコバケンがピアノで弾いた第2楽章のフレーズが素晴らしい!!
思わず会場から拍手が起こったほど。
本番の第2楽章よりも良かったかも…などと言ったら日フィルに怒られそうですが、「このまま引き続けてほしい!」と思ってしまいました。

アンコールに「ダニーボーイ」を演奏した後に、7番の第4楽章終結部を50秒ほど演奏。
2007年3月のときと、アンコール曲は2曲とも同じですが、前回は「35秒ほど」と言って会場の笑いを誘っていましたが、今回は「50秒ほど」と言っていました。
こういうアンコール、コバケンくらいしかやりませんが大好きです。
壮大な交響曲の後に「フィガロの結婚」などを演奏されるとがっかりしますが、壮大な交響曲の後に、壮大な交響曲の終結部をもう一度聴いて、大満足で家路につきました。

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2008年5月24日 (土)

エッシェンバッハ/フィラデルフィア管弦楽団(2008/05/24)

2008年5月24日(土)14:00
サントリーホール

指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
フィラデルフィア管弦楽団

ヴァイオリン:五嶋みどり

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
ワーグナー:歌劇「ローエングリン」第3幕への前奏曲
(アンコール)

かつてオーマンディが「フィラデルフィア・サウンドなど無い。あるのはオーマンディ・サウンドだけだ」と語ったという話しを聞いたような気がします。
真偽はわかりませんし、私がフィラデルフィア管弦楽団を生で聴くのは今回が初めてなので、過去と現在の比較は出来ません。
私が抱いていた「フィラデルフィア・サウンド」のイメージは、オーマンディ指揮のCDの「展覧会の絵」、あるいはNHK-FMで生中継されたムーティ指揮の来日公演の「運命の力」序曲などの、圧倒的にきれいで曇りが無く、カラフルなサウンドでした。
サヴァリッシュ時代はCDもあまり聴いていなかったので、いまだにその頃のイメージが残っています。

今回、この演奏会を聴いて、やはりフィラデルフィア・サウンドは十分に残っていると感じました。
たとえばショスタコーヴィチの交響曲の第4楽章や、「ローエングリン」前奏曲での金管の強奏は、なんとも言葉に出来ないような快感を覚えるサウンド。
これぞ、私が長年憧れていた「フィラデルフィア・サウンド」
ティンパニの音ですら「あ、フィラデルフィア・サウンドだ」と思ってしまうったほどでした。
しかし、この日私が耳を惹かれたのは、むしろ弱音の緩徐な部分でした。
弦楽器が息の長いフレーズを、耳をそばだてないと聞こえないような音で奏でているときの素晴らしさ。
そこに木管や金管がやはり弱音で入ってくるときの、音のつながりの見事さ。
(こういう部分は一流でないオケだと、管楽器奏者の一瞬のためらいが音に出てしまうことが多々ありますが、さすがは超一流のオケは違います。)
この名門オケのサウンドが映画音楽とは一線を画している格調の高さは、むしろ弱音部にあったように思いました。

前半の協奏曲での五嶋みどりさんの独奏も、やはり弱音部が印象に残りました。
第1楽章の前半や第2楽章でのヴァイオリンのフレーズは、決して先を急がず、一音一音をないがしろにせず「あ、ここはこんな魅力的なメロディーなんだ!」と気がつかせてくれるような演奏。
永遠に続いてほしいような素晴らしい瞬間でした。
逆に第3楽章の早い部分などは、個人的には弱音部の素晴らしさには及ばない印象を受けましたが、それでも“普通の演奏”に比べれば十二分に水準以上。
五嶋さんの“来日”の演奏に接するのは久しぶりですが、ワールドクラスの実力はさすがでした。

私は、エッシェンバッハさんの指揮する演奏会は初めてでした。
前回エッシェンバッハさんの演奏を生で聴いたのは、なんと1979年のピアノ・リサイタルでした。
視線が鋭く、P席で見ていた私はちょっと怖くてときどき指揮台から目をそらしてしまったほど。
無駄のない動作とともに、結構、目で指揮をしていたように感じました。

ライブで“何か”が起こってしまった白熱の演奏では決してなく、ある意味“練習の成果を披露した”演奏ではありましたが、超一流の響きを堪能しました。

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2008年5月17日 (土)

スダーン/東響(2008/05/17)

2008年5月17日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(第556回定期演奏会)
ピアノ:リーリャ・ジルベルシュテイン

シューベルト:交響曲第1番
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
シューベルト:交響曲第4番「悲劇的」

このツィクルスは、期待出来そうです。
すでに4月の定期演奏会における大友直人さんのベリオのレンダリングで始まっていますが、東京交響楽団の2008年度の定期演奏会はシューベルト・ツィクルスです。

昨年度の東響のハイドン・ツィクルスは、ピリオドアプローチに定評のある音楽監督スダーンさんの指揮したのが初期の交響曲が多く、ちょっと期待外れの感もありました。
特にシーズン締めくくりの2008年3月の定期演奏会でスダーンさんが指揮した第82番「熊」が目の覚めるような好演だったことで、その思いはさらに強くなりました。

しかし今年度のツィクルスは、交響曲の全てをスダーンさんが指揮します。
今シーズン演奏されない第8番「グレイト」がすでに昨年11月の定期演奏会で演奏されましたが、本格スタートとなる第一回の演奏会は、今後を占う意味で非常に興味を持って出かけました。

この日、会場に入るとバロック・ティンパニとモダン・ティンパニの両方が舞台上に置いてあります。
プロコフィエフではさすがにモダン・ティンパニを使いますが、シューベルトはバロック・ティンパニを使うのでした。
演奏もピリオド・アプローチで、きびきびとした速めのテンポ、鋭いアクセント。
スリリングな演奏でした。
第1番と第4番という初期の曲ですが、決して先人の模倣ではなく、まぎれもなくシューベルトの個性。
それがプロコフィエフの古典交響曲を凌駕するような“新しさ”と生命感を伴って鳴り響いたのでした。

シューベルト2曲に挟まれたプロコフィエフのピアノ協奏曲は、逆にロマンティックな雰囲気。
プロコフィエフの曲は、演奏によって、シャープな現代音楽のように聞こえたり、厚い響きのロマン派の曲に聞こえたりしますが、この日の演奏スタイルは後者に近い演奏に聞こえました。
ジルベルシュテインさんのピアノも、躍動感とともに旋律がはっきり聞こえてきます。
スダーンさんとの相性も良さそうです。
満場大喝采でした。

この日は30分くらいの曲が3つ並び、そのいずれもが演奏会の一番最後に演奏されたかのような熱演。
コンサートを3つ聴いたような得した気分になりました。
9月の5番、6番が楽しみです。

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2008年5月16日 (金)

小澤征爾/新日本フィル(2008/05/16)

2008年5月16日(金)19:15
サントリーホール

指揮:小澤征爾
新日本フィル
(特別演奏会)
オーボエ:古部賢一

モーツァルト:ディヴェルティメントニ長調K.136
モーツァルト:オーボエ協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

ピカピカに磨き上げられたモーツァルトで始まった演奏会。
小澤さんの音楽を好まない人が「きれいに鳴らせば良いというものではない」と言うのを聞いたことがありますが、確かに“アンチ小澤”の人たちの格好の餌食になりそうな演奏です。
ツルツルに磨き上げられ、骨董品や工芸品というよりは機能的なデザインの工業製品のよう。
はっきり言って、最初は私もちょっと戸惑いました。
ピエール・ブーレーズのマーラーのようなモーツァルト?
しかし曲が進むにつれて、「ここまで徹底できれば立派」と感じるようになり、最後は快感に変わりました。
こういうスタイルのモーツァルトを演奏する人って、いま小澤さん以外に居るのでしょうか?
これはこれで、貴重な体験をしたと言わなければなりません。
小澤さんのK.136は、サイトウ・キネン・オーケストラの演奏でCDが出ていますが、第2楽章での聞こえるか聞こえないかの極端に小さい音からのクレッシェンドなどは、やはり生演奏ならではの体験でした。

オーボエ協奏曲は、ソリストが譜面台を置き、指揮者は暗譜という、あまり見ないスタイルでの演奏でしたが、そのことと演奏の出来不出来は関連はありません。
基本的に、ディヴェルティメントと同じ指向の演奏だと思いますが、独奏楽器が入るのと、編成が少し大きくなったことで、1曲目のような“隅々まで磨き上げられた”というような張り詰めた雰囲気よりは、少しリラックスして聴けました。

さて、後半は小澤さんお得意のチャイコフスキー。
雑誌記事などによると小澤さんは、この「悲愴」交響曲でベルリン・フィルを指揮してツアーをしてきたそうなので、“今年(再び)取り組んでいる曲”ということで、隅々まで手の内に入っている曲だとと思います。
(CDも複数出ています。)
この曲では私は、かつてカラヤンやショルティのCDを聴いて育った?ので、純・音響的な演奏でも違和感はありません。
第1楽章、第4楽章などの、嵐のように吹き荒れる場面の“音の意志の力”は本当に強い。
第3楽章の階段を駆け上がるようなスピード感は快感。
第3楽章の後は、ほとんど間をおかずに第4楽章を開始しました。
荒れ狂った後に音が小さくなっていき、最後の音が鳴り終わり、小澤さんが手を下ろし、体の力を抜いても拍手は起こらず、小澤さんがオケに立つようにゼスチャーをしてから拍手が始まりました。
会場全体が、固唾をのんで音楽に集中していたようです。
(最後の微弱音のところで、咳をした人が居たのが残念でしたが、生理現象であり、仕方ないでしょう。)

小澤さんのチャイコフスキーと言うと、最近では「スペードの女王」、「エフゲニー・オネーギン」とオペラを観ましたが、ずいぶん印象が違いました。
オペラでは、雰囲気を醸し出すような“音の香り”を感じたのですが、この日の交響曲では、ひたすた機能美を追求したような演奏。
「どちらの小澤さんが好きか?」と問われれば、私の好みとしては、オペラの方が好きかもしれません。

また、オペラでは、舞台ではなくピットの中の小澤さんの指揮姿についつい目がいってしまった経験が何度もありますが、この日は指揮の動作は少なめ。
あまり手を動かさずにオケを見守る場面も多々あり、ちょっと意外でした。
(かつて、ウィーン・フィル来日公演のブラームスでも、ウィーン・フィル相手なのにずいぶん細かく振っていたような記憶もあります。)

小澤征爾音楽塾東京のオペラの森サイトウ・キネンのような常設でないオケを振るときと、新日本フィルのような常設のオケを振るときの違いなのでしょうか?
確かにサイトウ・キネンは名手揃いかもしれないけれど、新日本フィルの常設オケとしてのアンサンブルは、やはり常設ならではの一体感でした。

…というわけで、結構聴きどころの多い演奏会でしたが、私個人としては、音に包み込まれて熱狂したと言うよりは、目を輝かせて“観察”してしまった感もありました。

会場の雰囲気は、普段の東京の演奏会とはちょっと違う感じ。
ブラボーを叫ぶ人もなく、オケが引き上げた後の指揮者一人のカーテンコールもありません。
でも、みんな、一音たりとも聞き逃すまいと言うような集中力だったと思います。

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2008年5月14日 (水)

矢崎彦太郎/東京シティ・フィル(2008/5/14)

2008年5月14日(水)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:矢崎彦太郎
東京シティ・フィル
(第219回定期演奏会・
フリーメイソンと大音楽家たちIII)
ピアノ:伊藤恵
企画・構成・お話:吉田進

モーツァルト:交響曲第32番
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番
モーツァルト:フリーメイソンのための葬送音楽
モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」

ビジュアルな面を強調した指揮ではありませんが、よく見ると矢崎さんの指揮の動作はすごくきれいです。
優美なところはしなやかに、迫力のあるところはエネルギッシュに。
そして、まるで動作の全てが1%のロスもなく音に変換されていくかのような印象。
オーケストラのドライブという意味で、まさに理想的と思えるような関係が、この日の会場に、幸せな時間と空間をもたらしたように思います。

この日は、オール・モーツァルト・プログラムということで、会場は普段の東京シティ・フィルの定期演奏会に比べてS席のお客さんの数が多かったように思います。

矢崎さんの指揮は一年前の5月の定期演奏会を聴いて好印象だったので、楽しみにしていました。
本当は、昨年10月や今年3月の演奏会も行きたかったのですが、残念ながら都合がつかず、聴けませんでした。
また、この日は「フリーメイソンと大音楽家たち」の3回目。
1回目、2回目も注目していたのですが、これまた都合がつかず、私は聴くのは今回が初めてです。

「モーツァルトの作品に顕われたメイソンの証し」と題されたこの日の演奏会。
開演前と休憩後に吉田進さんのお話しがありました。
ありきたりの内容てはなく、「へぇー」と感じるようなお話しが満載で、なかなか面白かったです。
「もっと話してほしい」という気持ちになりましたが、演奏会前のトークとしては、あの長さが限界かもしれません。
逆にトークでお腹いっぱいになる前に、やや唐突なくらいの印象を残して「それではお聴きいただきましょう」と打ち切るタイミングは、もし計算されたものだとしたら、たいしたものです。
聴き手の私は、耳が飢えている状態で音楽が始まり、それは嬉しい瞬間でした。

矢崎さんのモーツァルトは、ピリオド奏法ではないと思いますが、明らかに“ピリオド台頭後”の現在のモーツァルト演奏。
はつらつとした生命感と、バロック・ティンパニによる強打の迫力とリズム感は、まさにライヴならではのもの。
1曲目の32番が鳴り出したときは、私は思わず顔がほころんでしまいました。

しかし、41番は(もちろん曲の出来も違うのでしょうが)さらに素晴らしい演奏。
矢崎さんは、楽譜をまったくめくらずに第1楽章を完奏。
無意識のうちに暗譜で振られたようで、第2楽章を始める前に譜面を一気にめくりましたが、第2、第3楽章はまたもや暗譜。
第4楽章の最後の方だけ譜面をめくりながら指揮をされましたが、完全にノッテしまった指揮でした。
トークがあったこともあり、終演は21時20分くらいになっていましたが、全く長さを感じない演奏会でした。

ピアノ協奏曲もライヴならではの情熱あふれる演奏。
伊藤恵さんは大御所の指揮者との共演が多く、重厚な演奏をする人と勘違いしそうになりますが、実際には明るいクリアな音です。
ピアノが休みでオケがノリノリに演奏している場面では、口をぱくぱくさせたり、頭を振ったりして音楽を体で体現している感じ。
情熱的に煽り気味の部分もありましたが、下品にならず、羽目を外さず、品格を保った上での熱演だったと思います。
第1楽章のカデンツァからオケによる終結部に至る部分は、ピアノもオケも、かなりの迫力と推進力でした。

葬送音楽も分厚い音で包み込まれるような印象でしたが、管楽器にもう少しニュアンスがあったら、なお良かったと思います。

矢崎さんの音は、南欧を連想させる明るい音です。
フランス音楽に定評がある方ですが、決して単なるスペシャリストではなく、素晴らしい音楽性を持った方だと思います。
重い音を出す飯守泰次郎さんと好対象で、東京シティ・フィルは常任指揮者と首席客演指揮者が、良い補完関係にありますね。

終演後、フランス政府より勲章を贈られたとかで舞台上で花束が贈られ、さらに盛大な拍手が矢崎さんに贈られました。
帰宅後にネットで検索してみると、すでに2000年に芸術文化勲章シュバリエを叙勲されていますが、今年2月に更に上位の芸術文化勲章オフィシエを叙勲されたとのこと。
その叙勲にふさわしい、素晴らしい演奏会でした。
矢崎さんは、その実力の割には日本での知名度は低すぎるかもしれません。
矢崎さんの指揮は、また聴いてみたいものです。

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2008年5月 8日 (木)

ウルフ/東フィル(2008/5/8)

2008年5月8日(木)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:ヒュー・ウルフ
東京フィル
(第38回東京オペラシティ定期シリーズ)
ピアノ・トリオ:椎名豊トリオ
 椎名豊(ピアノ)
 広瀬潤次(ドラムス)
 本川悠平(ベース)

ジョン・アダムズ:舞台音楽「委員長は踊る」
ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー
ベートーヴェン:交響曲第7番

オーケストラの演奏会でジャズのピアノ・トリオ(ピアノ、ベース、ドラムス)を聴いたのはおそらく2回目だと記憶していますが、こういう流れるようなスピード感のある音が情熱的に奏でられると、普段のクラシック音楽のコンサートでは味わえない魅力に耳と目はステージに釘付けになります。
考えてみれば最近は、協奏曲のカデンツァですら即興の入り込む余地は無いのではないでしょうか?
この日のラプソディ・イン・ブルーは、クラリネットの音ではなく、即興風のピアノのソロで始まり、驚きました。
途中数回、ピアノ独奏の部分で、ジャズ・ピアノ・トリオによる比較的長い即興演奏が挿入され、演奏時間は30分近く。
しかし、冗長な印象は全くなく、40分でも50分でもやってほしいくらいでした。

オーケストラも呼応して熱演していたと思いますが、ジャズの即興演奏の前には少々分が悪かったかもしれません。
もっとスゴイ演奏も出来たはずだと思います。
なぜならば、後半のベートーヴェンが白熱の熱演だったから!

ちょうど雑誌「レコード芸術」の2008年5月号に、ウルフ/フランクフルト放送響のベートーヴェン交響曲全集のCDの評が載っていましたが、「プジョーに乗ってハイウェイをすべるよう」と、ほめつつも半分皮肉も込めたような論調に、「今日はいったいどんな演奏を聴かせてくれるのだろう?」と期待半分、不安半分で会場に向かいました。
確かに、深刻な世界は、ウルフさんのベートーヴェンからは聴き取れないかもしれません。
でも、ピリオドアプローチでないのに、この迫力とスピード感。
推進力と迫力のある音が堂々と奏でられ、これはこれでひとつのスタイルとして、私は何の不満もありませんでした。

細部の木管楽器の音色には、もう少し上を望みたい部分もありました。
また、第3楽章と第4楽章はほとんど間をおかずに続けて演奏されたのですが、第3楽章の最後の部分は、続く第4楽章の冒頭に気が行ってしまったのか、少し軽めに終わったような気もしました。
でも、聴いていて「おや?」と思ったのはその程度。
オケメンバーの体を揺らし、頭を振っての熱演に満場大喝采でした。

この日は、(おそらく舞台上の配置換えのためかと思いますが)1曲目終了後に10分、2曲目終了後に15分の休憩がありました。
1曲目のジョン・アダムズの曲も、なかなか面白い曲でした。
10分程度の曲ですが、リズムが印象的でいた。

なお、ウルフさん、1月の読響への客演では松葉杖をついてステージに現われたそうですが、私は行かなかったのでその姿は見ていません。
まだ半年はたっていないので「まさか足を引きずって出て来たら…」と心配しましたが、足早に歩いて出て来て、足は全く危なげ無し。
心配は杞憂でした。

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2008年5月 5日 (月)

マーラーの交響曲の思い出(08)

■マーラーの交響曲の思い出:第8番「千人の交響曲」

この曲は「めったに聴けない大作」という印象があるものの、一方で「意外と頻繁に演奏されているかも」という印象があります。

1986年10月17日(金)19:00
サントリーホール

指揮:若杉弘
東京都交響楽団

ソプラノ:ルチア・ポップ
ソプラノ:豊田喜代美
ソプラノ:佐藤しのぶ
アルト:白井光子
アルト:伊原直子
テノール:ペーター・ザイフェルト
バリトン:ベルント・ヴァイクル
バス:フランツ・マイヤー
合唱:東京芸術大学音楽学部
合唱指揮:田中信昭
児童合唱:東京放送児童合唱団
合唱指揮:古橋富士雄
マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」

残念ながら、年月の経過によって、演奏に関する細かい記憶に残っていませんが、サントリーホールのオープニング・シリーズのひとつでした。
この年はN響の創立60周年と定期公演1000回の記念の年に、サントリーホールのオープニングが重なり、サヴァリッシュが豪華な独唱者を引き連れて来日していました。
大好きだった故ルチア・ポップの独唱でこの曲が聴けた、思い出の演奏会です。
(サヴァリッシュ/N響によるサントリーホール会場初日の「第九」、N響定期公演1000回の「エリア」でもポップの独唱は聴きました。)

2001年11月10日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ジャナンドレア・ノセダ

東京交響楽団
ソプラノ:佐藤しのぶ
ソプラノ:家田紀子
ソプラノ:森麻季
アルト:坂本朱
アルト:栗林朋子
テノール:エフゲニー・アキーモフ
バリトン:フェドール・モジャエフ
バス:妻屋秀和
合唱:東響コーラス、にいがた東響コーラス
児童合唱:東京放送児童合唱団
合唱指揮:樋本英一、宇野徹哉、古橋富士雄
オルガン:松居直美
マーラー:交響曲第8番

ノセダの東響定期への初登場で、エネルギッシュな動作に驚嘆した記憶があります。
当時の「ゲルギエフのアシスタント」という触れ込みに「なるほど」と納得した記憶があります。
なお、私が森麻季さんを初めて聴いたのは、もっとずっと後だと思っていましたが、記録を見るとこのときにも聴いていたようです。

2008年4月29日(火・祝)18:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団

ソプラノ:澤畑恵美
ソプラノ:大倉由紀枝
ソプラノ:半田美和子
メゾソプラノ:竹本節子
メゾソプラノ:手嶋眞佐子
テノール:福井敬
バリトン:河野克典
バス:成田眞
合唱:晋友会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
合唱指揮:清水敬一
児童合唱指揮:加藤洋朗
マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」

つい先日聴いた演奏会です。

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マーラーの交響曲の思い出(06)

■マーラーの交響曲の思い出:第6番「悲劇的」

この曲の生演奏は、2007年のインバル/都響、2008年のハーディング/東フィルと、最近の演奏会が鮮烈な印象に残っています。
一方、20年以上前にN響定期で初めてこの曲を生で聴いたときの印象も、おぼろげに残っています。

1986年6月12日(木)19:00
NHKホール
指揮:若杉弘
NHK交響楽団

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

当時は若杉さん指揮のマーラーを、いろいろなオーケストラで良く聴きました。
なにぶん20年以上前のことなので、演奏はあまり覚えていませんが、ハンマーが振り下ろされた光景はおぼろげに覚えています。
しかし、NHKホールの3階席では、ハンマーの音はあまり感じられませんでした。
でも、いまだに覚えているということは、視覚に訴える効果は抜群だったようです。

2007年12月19日(水)19:00
サントリーホール
指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

この演奏会の感想は、以前書きました。
自然体で演奏しながら、凄い音を出す都響に驚いた記憶が残っています。

2008年2月14日(木)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール
指揮:ダニエル・ハーディング
東京フィル

マーラー/交響曲第6番「悲劇的」

この演奏会の感想も、以前書きました。
第2楽章=アンダンテ、第3楽章=スケルツォの順番で聴いたのは、この演奏が初めてでした。

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2008年4月29日 (火)

インバル/都響(2008/04/29)

2008年4月29日(火・祝)18:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団
(都響スペシャル
エリアフ・インバル プリンシパル・コンダクター就任披露公演)

マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」

ソプラノ:澤畑恵美
ソプラノ:大倉由紀枝
ソプラノ:半田美和子
メゾソプラノ:竹本節子
メゾソプラノ:手嶋眞佐子
テノール:福井敬
バリトン:河野克典
バス:成田眞
合唱:晋友会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
合唱指揮:清水敬一
児童合唱指揮:加藤洋朗

28日、29日、30日と、3公演とも全席完売となっただけでなく、オケと合唱が引き上げた後も無人の舞台に3回も呼び戻されたインバルさん。
スゴイ人気です。

指揮する姿を見ている限り、特に緊張感も力みもなく、普通に振っているだけ。
そうは言っても動きはしなやかで、音を形に表しているので、見ていて心地良いです。
第1部の終結部と、第2部の終結部は、さすがに鬼のような形相を見せましたが、それ以外は表情も比較的穏やか。
オーケストラのメンバーも、舞台に登場したときから特に緊迫感もなく、平静な雰囲気です。
コンサートマスター席に矢部さんと山本さんの二人が座っているあたりは、さすがに「プリンシパル・コンダクター就任披露公演」だからかなと思いましたが、昨年12月の「悲劇的」のときもそうでした。
「千人の交響曲」に身構えていたのは、全席完売のチケットを手に入れた聴衆の方だったのかもしれません。
しかし、その肩の力の抜けた演奏から出てくる音そのものは、轟音だったり、耽美的な弱音だったり…。
この、見た目はさりげなく振って、さりげなく弾いて、でも出てくる音はものすごい音…というのは、昨年12月の「悲劇的」のときの印象と一緒です。
でも、第1部の後半(児童合唱が登場するあたりから後)は、結構、熱演型の演奏になっていたと思いました。
また、第2部終結部は、ミューザの音響もあるのでしょうが、強奏でも音が飽和状態にならず、分解能とブレンドの両立したサウンドになっていました。

コーラスは晋友会なので期待したのですが、私の座ったRAブロックでは、おそらく角度の問題だと思いますが、今ひとつ音が迫ってきませんでした。
(2LAと2RAのP席寄り、およびP席を使っていましたが、私の席からはコーラスの3分の1は見えませんでしたので。)
また、ところどころ微妙に出だしが揃っていない箇所もあり、(最後の「Alles …」「Ist nur …」など)ちょっと意外でした。
児童合唱は舞台上後方で歌っていたので、私の席でも位置的な問題もなく、きれいなハーモニーが響いてきました。
コーラスは児童合唱も含めて暗譜での歌唱でした。

独唱者はPブロック1~列目での歌唱でしたが、第2部でのテノールの福井敬さんが特に印象に残りました。
まるでアニメを見ているかのような表情の変化で、かなりの感情移入をした力のこもった歌唱で圧倒されました。

なお、2-L1扉付近だと思いますが、第1部終結部と、第2部終結部で、バンダ(客席で吹く別働隊の金管楽器)が演奏。
第2部では女声の独唱も同じ位置で歌い、上方から降りそそぐ音は音響効果としてはなかなかのものでした。
(ちなみにバンダは、おそらく2-R1扉付近にも居たと思いますが、私の席からは見えませんでした。)

終演後はホール出口で記念品が配られました。
20080429




この曲は「めったに聴けない大作」という印象があるものの、一方で「意外と頻繁に演奏されているかも」という印象もあります。
ちなみに、今までに私が生で聴いたのは、この日が6回目です。
平均すると3~4年に1回くらいは聴きに行っていることになるようです。

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2008年4月19日 (土)

大友直人/東響(2008/04/19)

2008年4月19日(土)18:00
サントリーホール

指揮:大友直人
東京交響楽団
(第555回定期演奏会)
ヴァイオリン:エリック・シューマン

ベリオ/シューベルト:レンダリング
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
J.S.バッハ:パルティータ第2番~「アルマンド」
(アンコール)
レスピーギ:交響詩「ローマの松」

今季の東京交響楽団の定期演奏会は、シューベルト・ツィクルスです。
12月の定期演奏会を除き、全ての定期演奏会でシューベルトの曲が最低1曲は演奏されます。
その中で、年間プログラムが発表になったときに特に目を惹いたのが、この日の「レンダリング」でした。
さすがは大友さん。
「冥王星」付きの「惑星」も2001年の定期演奏会でいち早く取り上げた人だけあって、面目躍如と言ったところです。
レンダリングは1989年作曲なので、「いち早く」ではありませんが、珍しいことには変わりません。
「レンダリング」については別項にも書きますが、この日の演奏は、つぎはぎの修復の印象はなく、音響的にも統一感が取れていて爽快な印象でした。

さて、せっかくベリオの作品を取り上げたのだから、続けて「シンフォニア」も演奏してくれれば、7月の定期演奏会で金聖響さんが振る「復活」との対比にもなって面白いのに…とも思いましたが、さすがに休憩後の後半はポピュラーな曲が並びました。

まず、ブルッフのヴァイオリン協奏曲ですが、ソロのエリック・シューマンさんと指揮の大友直人さんの相性は、結構良かったのではないでしょうか。
あまり感情移入をしない、純粋に音を奏でているヴァイオリン独奏に聞こえましたが、このスタイルとしてはかなり“立派な音”。
オーケストラもシンフォニックな響きでソロと渡り合い、演奏終了後は独奏者と指揮者が抱擁。
エリック・シューマンさんの仕草や表情は、オケの演奏に大満足のように見えました。
アンコールは、曲名を日本語で紹介してからの演奏。
協奏曲で聴いたソロと同じような印象で、なかなか“立派な音”でした。
大友直人さんも舞台下手のヴァイオリンの後ろの空いた席に座って聴いていました。

最後のローマの松は、舞台上の空席が全て埋まり、大編成。
バンダ(客席で吹く別働隊の金管楽器)は、RCブロックの後ろで演奏していました。
私の座っていた席では、「アッピア街道の松」の最後で、本来のクライマックスの10~15秒くらい前に音量が飽和状態に達してしまい、最後の最後で音の動きがちょっと聞き分けにくかったですが、それはほんの些細なこと。
カラフルな色彩の音響が響き渡り、大いに満足しました。

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2008年4月18日 (金)

スクロヴァチェフスキ/読響(2008/04/18)

2008年4月18日(金)19:00
サントリーホール

指揮:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
読売日本交響楽団
(第470回定期演奏会)

ブルックナー:交響曲第5番

重厚なブルックナーではないし、“筋肉質”という比喩もちょっと違うかも。
約1年前に、みなとみらいホールで聴いたときに「まるでアメリカのメジャーオケのような」と感じたのを思い出しました。

この日の読響も全席完売の人気。
招待客の未来場分かどうかわかりませんが、僅かの空席はありましたが、2月のホーネックさん3月の下野さんの“完売”のときよりも、お客さんは入っていたと思います。

スクロヴァチェフスキさんは、例によって80歳をこえているとは思えない足取りでスタスタと歩いて登場。
もちろん全曲立っての指揮ですし、多くの曲でそうであるように、この曲も暗譜での指揮です。
そして、出てくる音楽は決して枯淡の境地などではなく、生命力と推進力に満ちたものです。
第1楽章が始まったばかりだというのに、オケの団員もめいっぱい力を込めて演奏しています。
チェロ主席の毛利さんが、頭を振り、肩を大きく揺らして熱演しているのが特に目立ちました。

第1楽章、第2楽章は、テンポがそれほど速いわけではありませんが、爽快感を感じるブルックナーでした。
第3楽章は、私の持っているCDの演奏に比べると、ところどころ、結構速めに感じました。
オケも、ギリギリと言うほど危うくはありませんが、この速めのテンポに夢中でついていった印象です。
この曲の3楽章では、ブルックナーにしては(?)心が弾むようなメロディーの部分も多々あり、速めのテンポが生きた感じです。
そして、素人耳にはそれほど荒れた印象はありませんでしたが、この3楽章が終わったところで、スクロヴァチェフスキさんはコンマスの藤原さんにチューニングを要求。
音を整えたところで第4楽章を高らかに演奏しました。

全曲が終わり、スクロヴァチェフスキさんが手を止めた後もすぐには拍手は起こらず、残響が消えていくのがはっきり最後まで聞こえました。
スクロヴァチェフスキさんが手を下ろすやいなや、盛大な拍手とブラボーの嵐。
(サントリーホールの残響が満席時に2.1秒とのことなので)その間はほんの4~5秒だと思いますが、日頃、フライング気味の拍手に辟易しているので、幸福な瞬間でした。

スクロヴァチェフスキさんが1回舞台の袖に引き上げて再登場した時点で、オケのメンバーからは盛大な拍手。
精緻なアンサンブルと言うよりは、勢いを重視したような演奏でしたが、ライブならではの興奮を誘う演奏に対して、この拍手は異存はありません。
それにしても、たいした人気です。
オケが引き上げた後もスクロヴァチェフスキさんを舞台に呼び戻しました。

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2008年4月13日 (日)

東京のオペラの森2008(2008/04/13)

2008年4月13日(日)15:00
東京文化会館大ホール

指揮:小澤征爾
東京のオペラの森2008オペラ公演

演出:ファルク・リヒター

※新演出・ウィーン国立歌劇場との共同制作

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」(全3幕)

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私にとってあまり馴染みの無かったチャイコフスキーのオペラですが、昨年は「スペードの女王」(指揮:小澤征爾)と、演奏会形式の「イオランタ」(指揮:ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー)の実演に接することが出来ました。

最初、予習を兼ねて「スペードの女王」の録画(NHK BS2で放送)を観たときは、とまどいました。
ストーリーからして暗い上に、輪をかけて音楽もめちゃくちゃ暗い!
「スペードの女王」は一瞬、観に行くのが嫌になったほどです。
「イオランタ」はハッピーエンドですが、最初の方は暗い音楽が続き、「おいおい、スペードの女王の続きかい?」と思いました。
この「エフゲニー・オネーギン」だって、陰惨と言って良いくらいだと思います。

しかし、慣れてしまえば麻薬のような作用があるのか、この暗さが快感に変わってきました。
チャイコフスキーだけあってメロディーはきれいだし、コーラスの使い方もうまい!
(大作曲家に向かって素人が言うセリフではありませんが。)(^^ゞ
また、過去の小澤征爾さんのキャリアで「チャイコフスキーのオペラで大成功」という場面が多々あったとも聞いています。
この日も大いに期待して会場に向かいました。

昨年の東京のオペラの森2007の「タンホイザー」では、オーケストラにもう少し上のレベルを望みたいところが、ごく僅かながらありました。
しかし一抹の不安を吹き飛ばして、今年のオケは実に雄弁。
第2幕あたりまでは、歌手よりもオケの方が雄弁な印象すらありました。
コーラスの響きにも満足。
そう言う意味では、小澤さんのチャイコフスキーを聴くという私の期待はかなえられました。

初日ということもあったのかもしれませんが、第1幕では歌手陣の声は、いまひとつ迫ってきませんでした。
タチヤーナの第1幕でのアリアも、第3幕での劇的な歌唱に比べると、少し非力だった感じ。
オネーギンも、同じく第3幕での歌唱に比べると第1幕はいま一歩の印象を受けました。
ただし第3幕での歌手は、あまり演技をせずに、直立して観客席の方を向いての歌唱だったので、比較的演技の動きが多かった第1幕、第2幕とは一概に比較できないかもしれません。
第2幕でのレンスキーも、迫力やテクニックよりも情感を優先したような感じ。
でも、第3幕でのグレーミン公爵は、逆に迫力満点でしたがあまり情感は感じませんでした。
圧巻だったのは、第3幕第2場でのタチヤーナとオネーギンのやり取り。
ここに至って、ようやくオケの雄弁さに歌手が追いついた感があります。
最後は劇的なフィナーレになりました。

舞台装置や衣装は写実的なものではなく、現代的なものでしたが、昨年の「タンホイザー」のような極端な読替があったわけではないので、素直に楽しめました。

第2幕第1場や第3幕第1場のパーティー?の場面以外では、背景で雪がずっと降り続いていますが、これはロシアを意識したものなのか、心理描写を意図したものなのか、雰囲気作りなのか。
少なくとも視覚効果はなかなかのものでした。
第3幕での最後の場面では、オネーギン一人を残してタチヤーナが降りしきる雪の中に消えていきました。

第1幕では、8組の男女が舞台後方で抱擁したまま静止しています。
何を意味しているのかわかりませんでしたが、第3場になって、オネーギンがタチヤーナの求愛を拒絶する場面で、一人、また一人と、男性が抱擁をふりほどいて去っていき、舞台上に女性だけ8人が取り残されました。
BGMの映像版みたいなものですが、この視覚効果も結構印象的でした。

新演出の初日を観るのは私は初めての経験でしたが、自分自身もわくわくするものがありますし、会場の雰囲気もなかなか良いものです。
歌手陣に関しては、もしかしたら回を重ねるごとにもっと良くなるかもしれません。

装置: カトリーン・ホフマン
衣装: マルティン・クレーマー
照明: カーステン・サンダー
振付: ジョアンナ・ダッドリー

オネーギン: ダリボール・イェニス(バリトン)
タチヤーナ: イリーナ・マタエワ(ソプラノ)※
レンスキー: マリウス・ブレンチウ(テノール)
オリガ: エレーナ・カッシアン(メゾ・ソプラノ)
グレーミン公爵: シュテファン・コツァン(バス)
ラーリナ夫人: ミハエラ・ウングレアヌ(メゾ・ソプラノ)
フィリッピエヴナ: マルガレータ・ヒンターマイヤー(メゾ・ソプラノ)
トリケ: ヘルムート・ヴィルトハーバー(テノール)
ザレツキー: 北川辰彦(バス)
隊長: 桝貴志(バリトン)

演奏:東京のオペラの森管弦楽団
合唱:東京のオペラの森合唱団
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※中央と右の写真(オペラする彫刻)の撮影日は2007年4月5日。

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2008年4月12日 (土)

シュナイト/神奈川フィル(2008/04/12)

2008年4月12日(土)15:00
神奈川県立音楽堂

指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
神奈川フィル

(シュナイト音楽堂シリーズVol.14「シューマン・シリーズI」)
ヴァイオリン:石田泰尚

シューマン:序曲、スケルツォと終曲
シューマン:ヴァイオリン協奏曲
シューマン:トロイメライ
(アンコール、ヴァイオリン&チェロ二重奏)
シューマン:交響曲第1番「春」

神奈川フィルのシュナイト音楽堂シリーズは、今回からシューマン・シリーズです。
全回は聴けないかもしれませんが、昨年の年末に発表になって以来、シューマンの交響曲の好きな私は、心待ちにしていました。

残響が少なく、でも音がくっきりと聞こえるこのホールの音響でシューマンを聴くと、サントリーホールなどの残響感のあるホールで聴くのとは違う味わいがあります。
シュナイトさんの場合、もちろんピリオドアプローチではありませんが、あまりシンフォニックでない響きは、ブリュッヘン/新日本フィルで聴いた4番の響きと、根底では通じるところがあるような気もしました。

ただし、シュナイトさんのテンポは比較的遅め。
交響曲では(耳が慣れたせいか)それほど「遅い」と感じませんでしたが、ヴァイオリン協奏曲では、私が過去に聴いた演奏や持っているCDに比べると、ずいぶん遅く感じました。
でも、その遅さが冗長さにつながらないところは、やはりシュナイトさん(やソロを弾いたコンマスの石田さん)の音楽性なのでしょう。
交響曲、協奏曲とも、「あ、この部分のメロディー、こんなに魅力的だったんだ!」と感じる瞬間が何箇所もありました。
また、なめらかに全曲が続く印象ではなく、ところどころ、ブチッ、ブチッと楽想が変わるのも、結果的に聴いていてよくわかりました。

友人に教えていただいたのですが、チェロ主席の山本裕康さんのブログに、練習でシュナイトさんが「これはブラームスじゃない!シューマンだ!」とおっしゃったと書いてあったそうです。
確かに、シューマンはブラームスではなく、メンデルスゾーンでもありません。
ブルックナーを予見させる、あるいはマーラーを連想させる…と言ったら言い過ぎかもしれませんが、この日の演奏は、シューマンの音響が本来持っている性質を、正攻法の演奏で示したような気がします。

生演奏で聴いたときに多少違和感を感じた、ヴァイオリン協奏曲の遅いテンポですが、帰宅後、頭の中で3楽章のメロディーが、あのテンポで鳴り続けています。
もう一回聴きたい!
演奏会の会場で「頭」がついて行けなかった自分を悔やむしかありませんが、「耳」は覚えていてくれたようです。
石田さんのソロの美音も、ソロを弾く姿も、後半コンマスの席に座って交響曲を弾く姿も、耳と目に残っています。
終わった後で、じわじわと感動が深まる、不思議な体験でした。

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2008年4月 5日 (土)

エリシュカ/都響(2008/04/05)

2008年4月5日(土)14:00
東京藝術大学奏楽堂

指揮:ラドミル・エリシュカ
東京都交響楽団

(東京のオペラの森2008・NOMORIイベント・ウィーク)

ドヴォルザーク:交響詩「野鳩」
ヤナーチェク(ターリッヒ編曲):組曲「利口な女狐の物語」
チャイコフスキー:交響曲第5番

この4月に札幌交響楽団の主席客演指揮者に就任したエリシュカさんの評判は、雑誌の記事などで伝わってきていました。
2006年に札響定期に登場したときに、初日の演奏の素晴らしさが口コミで伝わり、2日目の当日券売り場に長蛇の列が出来たとか。
そのエリシュカさんの、おそらく「東京初登場」の演奏会を聴くことが出来ました。

NOMORIイベント・ウィークの中で一番の注目公演と私は思っていましたが、1000人程度のホールにもかかわらず、多少の空席はありました。
でもまあ、空席が目立つというほどでは無かったので良かったと思います。

エリシュカさん、やはり評判通り、かなりの実力者のようです。
私は、この日のエリシュカさん指揮の演奏を聴いて、ジャン・フルネさんを思い出しました。
フルネさんが指揮台に立つと、オケの音が何とも言えない上品な音に変貌しました。
もちろんエリシュカさんの音とフルネさんの音は目指す方向が違いますが、エリシュカさんの指揮する都響の音は、なんとも格調高い、しなやかな音に変貌しています。

格調の高い熱演。
でも、指揮者は決して熱狂はしていなくて、比較的冷静に、次々と的確な指示を出しています。
オケのメンバーがそれに“夢中”になって奏でている感じです。
オケのメンバーが“本気”になっているのは、“目つき”を見て、はっきりわかりました。

このホールの音響のせいだけではないと思いますが、全般的に、まろやかな響きの音。
特に印象的だったのが、3曲とも甘美なメロディーの部分。
特に弦楽器が歌うように心を込めて奏でるメロディーには、心底うっとりと聴き惚れました。

コンサートの冒頭で舞台に登場したとき、エリシュカさんはちょっと緊張しているように見えました。
1曲終わった後の盛大な拍手で少し表情がゆるんだような印象でしたが、結局コンサートの最後まで、笑顔は見せなかったと思います。
確かインタビュー記事で「小澤征爾さんが音楽監督を務める音楽祭で指揮をすることができるとは思ってもいませんでした」というようなコメントもあったので、「東京初登場」も含めて緊張されていたのでしょうか。
でも、聞こえてくる音楽には、全く影響はありませんでした。

ヤナーチェクの演奏の後と、チャイコフスキーの演奏の後で、エリシュカさんはオケの中に入っていって、管楽器奏者を次々に立たせるとともに握手。
オケが引き上げ始めた直後に、エリシュカさんは再度舞台に現れ、一人舞台上で拍手に応えるエリシュカさん。
ぜひまた聴いてみたい指揮者です。

エリシュカさんは、この後、4月11日(金)、12日(土)と、札幌で、札響の主席客演指揮者就任記念公演です。
ドヴォルザークの交響曲第6番が予定されていますが、これは聞き物でしょう。
私は関東在住だし、日程の都合も交通費の都合もつかないので聴けませんが、札幌の音楽ファンの方が羨ましいです。
また、秋には大阪フィルの定期演奏会も指揮されます。

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2008年3月30日 (日)

飯守泰次郎/関西フィル(2008/03/30)

2008年3月30日(日)19:00
すみだトリフォニーホール

指揮:飯守泰次郎
関西フィルハーモニー管弦楽団

(地方都市オーケストラ・フェスティバル2008)
ソプラノ:緑川まり(*)
バリトン:三原剛(**)

オール・ワーグナー・プログラム
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
歌劇「タンホイザー」より「夕星の歌」
(**)
歌劇「ローエングリン」より「エルザの夢」(*)
「エルザの大聖堂への行列」「第3幕への前奏曲」
楽劇「ラインの黄金」より「ヴァルハラ城への神々の入場」
楽劇「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」
「ヴォータンの別れと魔の炎の音楽」
(**)
楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートの葬送行進曲」
「ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲」
(*)

私は聴きませんでしたが、昨年の関西フィルの東京公演もかなりの迫力だったそうです。
幸い、その演奏(ショスタコーヴィチの5番)はCD化され、この日の会場で先行発売されていました。
(一般発売は5月とのことです。)
http://www.taijiroiimori.com/04disc/discf.html
“重い音”がズシッと響く“飯守泰次郎さんの音”は、聴けば聴くほど「また次回も聴きたい」と思うようになってしまいます。
2月の二期会の「ワルキューレ」を聴いたこともあり、この日も吸い寄せられるようにすみだトリフォニーホールに来てしまいました。

空席はありましたが、前日の広島交響楽団よりはお客さんの入りは多い。
金、土、日で5公演(さらに室内楽公演もあり)、この演奏会が日曜日の夜という条件を考慮すると、“飯守泰次郎さんがワーグナーを振るとどうなるのか”を知っている人が集まったのかもしれません。

一曲目のマイスタージンガーから、もう心はウキウキです。
なんとも言葉にしようがない、飯守さんのワーグナー・サウンドです。
「このまま第1幕に突入してくれないかなぁ」という欲求すら感じましたが、曲が終わったときには、第3幕の最後を聴いているかのような満足感。
全く矛盾する二つの感情ですが、どちらも演奏に満足した感情であることは間違いありません。

関西フィルのサウンドは、飯守さんが東京シティ・フィルを振ったときに比べれば、多少軽い感じもしますが、1月に新国立劇場で「ナクソス島のアリアドネ」のピットに入ったときも、こういう方向性のサウンドでした。
長い曲などは力を入れる場面と少し力を抜く場面を使い分けていたようですが、逆にマイスタージンガーや、ローエングリンの前奏曲、そしてワルキューレの騎行など、オケだけで演奏されることも多い曲は、響きも磨かれ、迫力満点でした。

歌手の二人も見事。
三原さんはすっかり役になりきって歌っていたようで、前半のタンホイザーと、後半のワルキューレでは全く表情が違う。
もちろん燕尾服での歌唱でしたが、後半で出て来たときは、思わず「あ、ヴォータンの顔になってる!」と、思わずニヤッとしてしまいました。
緑川さんは、ブリュンヒルデの自己犠牲で、オケの強奏にも負けずに声を張り上げ、それが決して「叫び」にならないところが日本人歌手としてはトップクラスなのでしょう。
すばらしいパワーですが、声のきれいさがパワー全開でも損なわれないのに感心しました。

歌手のお二人が暗譜なのは、オペラ歌手として、ある意味当然ですが、指揮の飯守泰次郎さんも、最初から最後まで暗譜。
すっかり手の内に入っているワーグナーを披露してくれたのでした。

なお、この日はプレトークで紹介されましたが、若いコンマスの人がトップに座り、ベテランのコンマスの人が内側に座りました。
ただ、見ていると、内側に座ったベテランの人は、自分が弾いていないときはソロを吹いている管楽器奏者の方を見たりして目配りをしていますが、若いコンマスの人は、あまりそういう気配は見えませんでした。
休憩前や終演後のオケを解散させるタイミングなども、結構難しそうです。
都響のコンマスの矢部達哉さんが、「コンマスになりたての頃に、先輩のコンマスから、コンマスとして何をしなければならないかを、みっちりたたき込まれた」と雑誌のインタビューで語っていたと思いますが、コンマスは、なってからが大変なのでしょうね。

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2008年3月29日 (土)

秋山和慶/広島響(2008/03/29)

2008年3月29日(土)19:00
すみだトリフォニーホール

指揮:秋山和慶
広島交響楽団

(地方都市オーケストラ・フェスティバル2008)
ヴァイオリン:ヘンニング・クラッゲルード

グリーグ:抒情組曲
シンディング:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブル:メランコリー(アンコール)(ヴァイオリン&オーケストラ)
スヴェンセン:交響曲第2番
グリーグ:2つの悲しき旋律~過ぎし春(アンコール)

もしかしたらお客さんの数よりも、空席の数の方が多かったかもしれません。
でも、目の覚めるような素晴らしい演奏に、会場はかなり沸いていました。

コンサートマスターは派手なアクションで煽るし、木管奏者はソロになると、まるで外来オケのように「待ってました、私の妙技を聴いて下さい」と言わんばかりにノリノリで演奏する。
音色という点では、私の好みとすれば、もう少しまろやかな響きを好みますが、おそらくこのオケが目指している方向は“熱演型”“勢い”であって、私の“好み”は、おそらく的外れなのでしょう。
普段の広島での定期演奏会で、いつもこういうテンションの高い演奏をしているとすれば、このオケはすごいオケです。

シンディングのヴァイオリン協奏曲では、独奏のクラッゲルードさんが曲が手の内に入った熱演を披露してくれましたが、バックのオケも凄い。
“伴奏”ではなく“競争”と言っても良いくらいで、こんなにテンションの高い協奏曲のバックは滅多に聴けません。
クラッゲルードさんは、ソロがひと休みのオケだけが鳴っているときに、一瞬ニコッとしましたが、こんな熱演のオケパートを聴けば、ソリストも嬉しくなるでしょう。
実は、待ちきれなくて、ナクソスから出ているこの曲のCD(独奏は同じクラッゲルードさん)を事前に聴いてしまったのですが、CDではそれほど面白い曲とは思えなかったのが、この日の演奏では、ぐいぐいと引き込まれ、大変魅力的な曲に聞こえました。
生演奏の力は大きいですし、CDのセッション録音から数年が過ぎていますので、その間のクラッゲルードさんの弾き込みも効いているのでしょう。
(帰宅してもう一度CDを聴いてみましたが、この日聴いた演奏にはとうてい及ばない印象です。)
素晴らしい瞬間に立ち会えたことを感謝したいと思います。

スヴェンセンの交響曲は、おそらく私は初めて聴いたと思います。
プログラムの冊子の解説では「典型的19世紀ドイツ語圏のスタイル」と書かれていますが、まさにそういう曲。
北欧的な印象は薄いと言った方が良いかもしれません。
だからと言って、決してシューマンやブラームスの亜流ではなく、作曲者の個性を感じます。
この日の演奏の力も大きかったのかもしれませんが、素晴らしい曲なので、機会を見つけてまた聞いてみたいと思います。

------------------
2008年3月31日追記:
すみだトリフォニーホールのHPに、アンコールの曲名が掲載されました。
前半のアンコールは、ブル作曲の「メランコリー」という曲名とのことです。

三省堂の「クラシック音楽作品名辞典」を見てみると、
『John Bull(英)1562/63~1628』
とありますが、この人でしょうか?
「初期バロック音楽の鍵盤音楽の発展に貢献した」とあります。
ちょっと違うようです。

ネットで検索してみると、
NORDIC FOREST -北欧のクラシック音楽-というHPの、CD紹介のページに、
『Ole Borneman Bull 1810-1880、ノルウェー』
という作曲家がヒットしました。
ノルウェーだから、この作曲家の可能性が高いですね。
『孤独の時に (メランコリー) (ヨハン・ハルヴォルセン編曲)』
という曲目が含まれていますので、もしかしたらこの曲かもしれません。

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2008年3月26日 (水)

デプリースト/都響(2008/03/26)

2008年3月26日(水)19:00
サントリーホール

指揮:ジェイムズ・デプリースト
東京都交響楽団
(第659回定期演奏会Bシリーズ)
ヴァイオリン:矢部達哉

ペルト:フラトレス
    [弦楽オーケストラと打楽器のための(1991年版)]
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
ヒンデミット:交響曲「画家マチス」


ヒンデミットの演奏が終わった後は、まるでマーラーの交響曲の後のような歓声と盛大な拍手。
確かに、この音響効果は素晴らしいものでした。
しかし、単なる“きれいな響き”だけではなくて、その“音”が雄弁に何かを語り、心に迫ってくるかのような印象でした。
デプリーストさんは、細部を浮かび上がらせることよりも、オケ全体の音が溶け合った状態を目指していると思いますが、その一体感のある美音は聴いていて爽快でした。

「ドン・ファン」は、ヒンデミットに比べると弱音時の金管楽器の細部の丁寧な音作りを望みたい箇所もありましたが、それはほんの一部のことで、全般的にはやはり素晴らし音響効果でした。

なお、前半の2曲については、近くの席のお客さんの騒音で、著しく集中力をそがれましたので、あまりコメントする立場にありませんが、都響の弦楽器群は、何とも言えない艶のある音色を出していました。
ペルトは、かなりの緊張感を伴った弱音が魅力的。
モーツァルトの協奏曲は、矢部さんのヴァイオリンが磨き抜かれた音色。
しかし優雅に弾いているだけではなくて、コンマスの山本さんの方を向いて情熱的に煽る場面も。
そういえば、「ドン・ファン」での山本さんのソロも、なかなかの美音でした。

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2008年3月22日 (土)

スダーン/東響(2008/03/22)

2008年3月22日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団
(第554回定期演奏会)
ソプラノ:森麻季
メゾ・ソプラノ:谷口睦美
テノール:福井敬
バリトン:久保和範
合唱:東響コーラス
(創立20周年記念)
合唱指揮:大谷研二、松原千振

ハイドン:交響曲第82番「熊」
モーツァルト:ミサ曲ハ短調K.427

こういうハイドンを聴きたかったのです!!

東京交響楽団の2007年度はハイドン・ツィクルスでした。
確かに10月のヘンツェのオペラのとき以外は、必ず1曲、ハイドンの交響曲が演奏されました。
しかし、スダーンさんが振ったのは、7月の川崎定期を含めても、1番、2番、3番9番、そしてこの日の82番だけ。
(1番、2番は私は聴いていません。)
それ以外の指揮者が振ったのが、25番93番94番101番、104番。
(104番は私は聴いていません。)
ハイドンの交響曲が膨大なのはわかりますが、選曲にバランスも欠いているし、1回くらいはスダーンさんの指揮でオール・ハイドン・プログラムの日があっても良かったのではないか…というのが、ハイドン好きの私の感想です。

まして、この日の82番の素晴らしい演奏を聴いてしまうと、スダーンさんには初期の曲ばかりでなく後期の曲も指揮してほしかったなぁ…と思ってしまいます。
スダーンさん以外の指揮者が指揮したハイドンは、ピリオドアプローチではなかったと思います。
この日の演奏は、ピリオド風ではなく、完全にピリオド奏法だったのではないでしょうか?
楽器も、バロック・ティンパニに加えて、トランペットは普段あまり見ない形のものでしたし、フルート主席の甲藤さちさんが持っていた楽器は、黒っぽい色のものでした。
弦楽器奏者の弦を押させる左手は震えていません。
こうして、鮮烈で、鋭いアタックを伴った、今風のハイドンのサウンドが響き渡ったのでした。
会場も、演奏会が始まって約20分が経過したところなのに、演奏会の最後の曲が終わったかのような盛大な拍手。
私個人としても、1年間、待ちに待った快演でした。

休憩後の後半は、創立20周年記念の東響コーラスが(例によって暗譜で)加わり、モーツァルトのミサ曲。
ここでもオケはピリオドアプローチ。
アクセントをはっきりつけ、透明感のある響き。
コーラスも同様に透明感のあるハーモニー。
今風のモーツァルトのサウンドに包まれる経験は、至福のひとときでした。
独唱者では、やっぱり森麻季さんが素晴らしい!
ソプラノ独唱の活躍する曲ですので、どうしても他の独唱者に比べて目立つことは目立つのですが、本当にきれいにコントロールされた、これまた透明感を感じる声で、スダーンさんの意図を十二分に体現していたと思います。

この日のチケットは全席完売でした。
森麻季さんの人気のためなのかどうかはわかりません。
今シーズン最後の定期演奏会は、待ちに待ったスダーンさんらしい演奏での締めくくりでした。

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2008年3月21日 (金)

マリン/新日本フィル(2008/03/21)

2008年3月21日(金)19:15
サントリーホール

指揮:イオン・マリン
新日本フィル
(第428回定期演奏会)
ヴァイオリン:パトリシア・コパチンスカヤ

バーンスタイン:「キャンディード」序曲
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
ホルヘ:クリン(アンコール)
プロコフィエフ:交響曲第5番

指揮者のマリンさんは、ひたすらきれいな響きを追求していたように感じました。
「キャンディード」序曲も、プロコフィエフの交響曲も。
まるで、ジョン・ウィリアムズの映画音楽のような…と言ったら叱られるでしょうが、汚い音は徹底的に忌避して、オケの強奏でも澄んだ響きで、全くうるさく感じません。
ひたすら、きれいに、きれいに。
かなりオケを煽っている場面がありましたが、それでも音はきれい。
重量感や、突き刺さるような迫力や、心躍るようなリズムはあまり感じられません。
指揮棒も、点を打つと言うよりは、しなやかに弧を描く感じ。
おそらく、好みによっては評価が分かれる演奏だったのではないでしょうか。

私は「キャンディード」はともかく、プロコフィエフはもう少し迫力とリズムを感じたい気分でしたが、マリンさんの音のスタイルは徹底していて、これはこれで認めざるを得ないと思いました。
確かに、こういうサウンドでオケの強奏が止まった後にサントリーホールに響く残響の美しさは格別のものがあります。
「ちょっと好みと違うんだよな~」と思いながらも目を輝かせて聴き入ってしまい、第4楽章の最後では「終わらないでほしい」と思ってしまいました。
こういう音作りだったら、ラヴェルの曲を聴いてみたくなりました。

協奏曲のソロを務めたコパチンスカヤさんは、ときに足を踏み鳴らし、上半身を派手に動かし、情熱の熱演。
それにもかかわらず音は濁らず、テクニック的にも素晴らしい。
暗譜ではなく譜面を置いての演奏でしたが、決して曲が頭に入っていないわけではなく、曲は完全に彼女のものになっていたと思います。
木管奏者のソロの場面で2回ほどオケの方を振り返って、ソロ奏者に目を向けましたが、その目線の魅力的なこと!
指揮のマリンさんとは違って、聴衆を興奮に誘うような、力のこもった音でした。

会場の聴衆だけでなく、オケのメンバーまでがアンコールを促すかのように拍手をしていました。
アンコール曲は短い曲でしたが、こするような音も使った(たぶん)超絶技巧の曲。
会場からは、演奏中にもかかわらず、かすかにどよめきと笑いが起こりました。
ぜひまた聴いてみたいヴァイオリニストです。

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2008年3月20日 (木)

新国立劇場「アイーダ」(2008/03/20)

2008年3月20日(木・祝)14:00
新国立劇場
ヴェルディ:アイーダ

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豪華な舞台装置の第1幕、第2幕に比べれば、第3幕の舞台装置はやや質素。
でも質素な舞台の第3幕の方が、緊張感のある人間模様が迫力のある歌唱によってドラマティックに迫ってきたような気がして、ちょっと面白くなりました。
もっとも、これは舞台装置のせいというよりは、尻上がりに調子が上がったと見るべきでしょう。

第1幕のラダメス、アイーダ、アムネリスの三重唱や、第2幕のアイーダ、アムネリスの二重唱など、水準以上ではあるものの、もう少し迫力がほしい気がしました。
あるいは「清きアイーダ」のアリアも、第3幕、第4幕のベルティさん(ラダメス役)の素晴らしい歌唱に比べれば、多少抑え気味だったような印象でした。

第2幕第2場の「凱旋の場」は、豪華な装置の舞台を次から次へと人々の行列が精巧な小道具を伴って横切ります。
一瞬目の錯覚かと思いましたが、本物の馬に乗った人も横切りました。
たかだか10秒か15秒のために、めちゃくちゃ贅沢ですね。
しかし、この豪華な舞台の割りには、意外に音が迫ってこない印象でした

私は最初、会場の音響のせいだと思っていました。
この日座ったのは3階席のサイド。
頭上には4階席の底があるので、ホールの天井からの反射音などがあまり聞こえないせいだろうと思っていました。
でも、第3幕、第4幕の“音”を聴くと、そのせいではなかったような気がします。

第3幕のアイーダとラダメスの掛け合いは迫力満点。
オーケストラもシンフォニックな響きで迫力を後押しします。

第4幕の裁きの場面における緊張感は、“迫力”は“音の大きさ”のことではないということを示してくれました。
神殿と地下牢の上下二段構造の舞台も同様。
地下牢のアイーダとラダメスはしっとりと歌い上げ、それに神殿のアムネリスがからみ、息をのむような美しい瞬間でした。

ピットの東京交響楽団は2月の「サロメ」よりも音がきれいだったような気がします。
(席が違うので一概には言えないかもしれませんが。)
管楽器も含めて、定期演奏会で聴くようなシンフォニックな音を出しているように感じました。
私の席からはオーケストラピットの指揮者は見えなかったので、フリッツァさんの指揮ぶりはわかりませんでしたが、少なくとも第3幕、第4幕については、なかなかの好演だったと思います。
歌唱の方では、ラダメス役のベルティさんがいちばん印象に残りました。

…というわけで、第1幕と第2幕に対してネガティブな感想を書いてしまいましたが、あくまでも「第3幕と第4幕に比べて」ということですし、この豪華な舞台だけでも“目には御馳走”ですので、大いに満足して帰ってきました。
第2幕第2場(凱旋の場)などは、“耳ではなく目が主役”だったと思えば、お釣りが来るくらいです。
やはり「ゼッフィレッリのアイーダ」だったのでしょう。

【指揮】リッカルド・フリッツァ
【演出・美術・衣裳】フランコ・ゼッフィレッリ
【再演演出】粟國淳
【照明】奥畑康夫
【振付】石井清子
【舞台監督】大仁田雅彦
【芸術監督】若杉弘

キャスト
【アイーダ】ノルマ・ファンティーニ
【ラダメス】マルコ・ベルティ
【アムネリス】マリアンナ・タラソワ
【アモナズロ】堀内康雄
【ランフィス】アルチュン・コチニアン
【エジプト国王】斉木健詞
【伝令】布施雅也
【巫女】渡辺玲美

【合唱指揮】三澤 洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【バレエ】東京シティ・バレエ団
【児童バレエ】ティアラこうとう・ジュニアバレエ団
【管弦楽】東京交響楽団

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2008年3月17日 (月)

デプリースト/都響(2008/03/17)

2008年3月17日(月)19:00
東京文化会館大ホール

指揮:ジェイムズ・デプリースト
東京都交響楽団
(第658回定期演奏会Aシリーズ)
ピアノ:児玉桃

ハイドン:交響曲第44番「悲しみ」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
ショスタコーヴィチ:交響曲第12番「1917年」

なぜか私は、在任中ほとんど聴く機会がなかったデプリーストさん。
前回聴いたときは、椅子に座って指揮をしてはいましたが、まだ杖をついて歩いて舞台に登場しましたから、かなり前のことです。
千葉マリンスタジアムで、野球の試合の前に都響の金管奏者を指揮して「Take Me Out to the Ball Game」演奏したのは(私はスタジアムに居ましたが)聴いたうちに入りませんね。
すでに“先物取引”でインバルさんの治世下のような都響ですが、3月いっぱいはシェフはデプリーストさんです。

プログラムの冊子を見ると、デプリーストさんの音に対して「フィラデルフィア・サウンド」と書いてある記事を良く目にします。
でも、この日の演奏は、はたしてフィラデルフィア・サウンドだったのでしょうか?
私はフィラデルフィア管弦楽団は、CDか、NHK-BSか、NHK-FMでしか聴いたことがありませんが、その輝かしい金管のサウンドとは、この日の都響はちょっと違う印象でした。

でも、弦楽器の潤いのある音は、なかなか魅力的でした。
しっとりと落ち着いた感じの音で、あまり高い音がキンキン響くことはなく、中音域が美しい。
ハイドン、モーツァルトでも、まったく曲調が異なるショスタコーヴィチでも、私はしばしば弦楽器に耳を奪われました。

管楽器を加えたときに完璧なアンサンブルとは言えない場面もありましたが、総じてデプリーストさんの落ち着いた音楽の運びは“貫禄”を感じました。

ピアノ協奏曲の独奏は児玉桃さん。
ソリスト目当てにオケのコンサートのチケットを買いたくなるピアニストの一人です。
前日聴いたベレゾフスキーさんのピアノが、まるで流れるような弾き方だったのと対照的に、一音一音をしっかりと鳴らして、格調高いモーツァルトの音楽に仕上げていたと思います。
個人的には、こういうピアノの音の方が私は好きです。
モーツァルトのピアノ協奏曲というと、短調の20番、24番が取り上げられることが多いような気がしますが、私は23番や17番などの長調のピアノ協奏曲をもっと聴きたいと思っていました。
そう言う意味で、児玉桃さんのピアノで23番を聴けて、この日はとても幸せでした。

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2008年3月16日 (日)

下野竜也/読響(2008/03/16)

2008年3月16日(日) 18:00
サントリーホール

指揮:下野竜也
読売日本交響楽団
(第500回名曲シリーズ)
ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー

ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ラフマニノフ:13の前奏曲から第5番(アンコール)
メトネル:「おとぎばなし」から「リア王」(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第7番
J.S.バッハ:G線上のアリア(アンコール)
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「コリオラン」序曲と、交響曲第7番は、まさに下野さんの音楽。
劇的な部分だけでなく、静かな旋律にも、なんとも言えない潤いが宿ります。
エネルギッシュでありながら決して肩に力は入らず、オーケストラはその指揮に乗って次々に魅力的な瞬間を作り出す。
7番をこれだけ盛り上げながら“爆演”系の演奏にならないのは見事です。
下野さんのベートーヴェンは、去年5番、9番と聴いてきましたが、いずれもピリオドアプローチではないのに、まさに現代の生命力に満ちたベートーヴェン。
読響の弦も、ヨーロッパのオケのような響きで応えていたように思いました。

7番の後にアンコールをやるとは予想していませんでしたが、下野さんは、「名曲シリーズは本日で500回になります。高いところから恐縮ですが…」と落語の真打ち披露口上のような言い方をして会場の笑いを誘い、「今後とも読売日本交響楽団をよろしくお願いいたします。」と言ってから「G線上のアリア」を演奏しました。
しっとりとした、素晴らしい演奏でした。
下野さんには、こんどは「田園」を演奏してもらいたいものです。

以上の3曲に比べて「皇帝」は、下野さんのやりたい音楽になっていたのでしょうか?
ベレゾフスキーさんのピアノは、ときには「ヴァイオリンを弾いているような音を目指しているのではないか?」と思うくらい、まるで流れるような旋律。
しかもかなり速い。
「おいおい、ショパンかい?」「いや、ドビュッシーかい?」と思うような瞬間も多々ありました。

ベレゾフスキーさんはピアノ演奏だけに没頭はせず、鍵盤上で指を動かしながら、指揮棒を見たり、指揮者を見たり、ソロを吹くオケのメンバーを見たりしていました。
仲道郁代さんのような、自分がピアノを弾かないときに、まるで指揮者のような身振りでオケの方に眼光を光らすのとは違って、演奏しながらのアイ・コンタクトですが、楽団員を自分のペースに引き込むのには効果的だと感心しました。

「皇帝」の冒頭のピアノを聴いた瞬間に、「あ、私好みの演奏ではないな」と感じましたが、曲が進むにつれてだんだんとと引き込まれてしまい、終わったら私も思いっきり拍手をしていました。
今でも「私好みではない」と思っていますが、“このスタイル”での名演であることは認めざるを得ません。

アンコールの2曲はベートーヴェンではないので、私も存分に楽しめました。
ベレゾフスキーさんは、個人的には「協奏曲ではなくリサイタルを聴きたい」と思いましたが、この日の「皇帝」も、面白かったことは事実です。

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2008年3月14日 (金)

エッティンガー/東京フィル(2008/03/14)

2008年3月14日(金)18:30
千葉市文化交流プラザホール

指揮・ピアノ:ダン・エッティンガー
東京フィル
(第33回千葉市定期演奏会)
ソプラノ・お話:中村恵理

モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲
シューベルト:歌曲「アヴェ・マリア」
シューベルト:歌曲「ます」
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」より「さあ、この薬で」
モーツァルト:歌劇「魔笛」より「愛の喜びは露と消え」
グリーク:付帯音楽「ペールギュント」より「ソルヴェーグの歌」
グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

エッティンガーさん指揮の東フィル定期のライブ録音はNHK-FMで聴いていますし、オペラは新国立劇場で観ています。
おなじみの指揮者のつもりでいましたが、よく考えると、コンサートを生で聴くのはこの日が初めてでした。
しかも、新国立劇場の4階席からはピットの中は見えませんので、指揮姿を見るのも、この日が初めてでした。

大変エネルギッシュな指揮ぶりで、そのパワーが音に乗り移って爆風のように迫ってくる感じ。
「魔笛」序曲も「運命」も、日本のオケの通常のレベルとはパワーが違う印象です。
ただ、歌の伴奏にまわったときのオケの音には、そのパワーが感じられず、ちょっと残念でした。

ソプラノの中村恵理さんが英語を通訳しながらの、エッティンガーさんとのトークが楽しかったですが、エッティンガーさんは風邪をひいて3月8日のサントリーホールでの定期演奏会の後、寝込んでいらしたそうで、当初予定されていたエッティンガーさんの歌がキャンセルになったのは残念でした。

中村恵理さんの声もなかなか魅力的。
軽すぎず、重すぎず、無理な声のはり上げもせず、一音一音を大切に歌い込んでいる感じです。
容姿も良いので、舞台に花が咲いた感じです。
「アヴェ・マリア」「ます」はピアノ伴奏での歌唱でしたが、ピアノの音が鳴り終わる前に会場からは拍手が起こってしまいました。
オケの伴奏での4曲の中では、グノーの「私は夢に生きたい」が、楽しさ、迫力、技巧ともに会場を圧倒する素晴らしい歌唱。
この圧倒的な歌唱を聴くと、他の5曲は「力をセーブしていたのかな?」と思ってしまいましたが、まあ、歌の性格が違うので、そんなこともないのでしょう。
中村恵理さんの“声”は、またぜひ聴いてみたいです。

この会場の音響は、シンフォニーを聴くには、個人的にはもう少し残響が欲しいところですが、逆に歌にはこの程度の残響の方が好ましく感じました。
このホールは、2006年度まで「ぱるるプラザ千葉 ぱるるホール」と呼ばれていたところです。2008年度からは、京葉銀行が命名権を取得し、「京葉銀行文化プラザ 音楽ホール」と、また名称が変わるそうです。
http://www.mielparque.jp/chiba/hall.htm

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2008年3月 9日 (日)

秋山和慶/東響(2008/03/09)

2008年3月9日(日)14:00
府中の森芸術劇場 どりーむホール


指揮:秋山和慶
東京交響楽団

チェロ:長谷川陽子

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番
エルガー:チェロ協奏曲
ホルスト:組曲「惑星」

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昨年、NHK-FMで大阪フィルの定期演奏会(2007年3月29日、ザ・シンフォニーホール)が放送されました。
そのときの秋山さん指揮の「惑星」、エルガーのチェロ協奏曲(独奏:ジャン・ワン)が素晴らしく、ぜひ秋山さんの「惑星」を生で聴きたい!と思っていたところ、この演奏会のことを知りました。
協奏曲の曲目も共通しています。

秋山さんの「惑星」を生で聴くのは、1986年3月8日のN響定期以来、22年ぶりです。
私は、1981年3月11日の東響定期で初めて秋山さんの指揮する演奏会を聴いて以来の秋山さんのファンです。
かつて秋山さんの指揮で聴いて大感激した曲を、近年の秋山さんの指揮で再度聴くと、素人が生意気なことを言うようですが、秋山さんの円熟を体感します。
この日も貫禄の棒さばきでした。

チューニングの音、そして1曲目の「威風堂々」の音を聴いて嬉しくなりました。
私がこのホールでコンサートを聴くのは今回が初めてですが、残響感もあり、なかなか良い音響です。
サントリーホールやオペラシティに匹敵するレベルではありませんが、私の座ったのは2階席前方に関して言えば、東京文化会館よりも私好みの音です。
多目的ホールということで少し心配していましたが、杞憂でした。
パイプオルガンがないことだけはハンディだと思いますが、東京文化会館だってありません。

コンサートマスターに高木さんが座り、ヴィオラの西村眞紀さんやフルートの甲藤さちさんなど、定期演奏会でおなじみのいつものメンバーが顔を揃え、秋山さんが指揮台に立てば、もう心配はいりません。
ずっと聴き続けてきた秋山&東響サウンドが響き渡りました。

2曲目のチェロ協奏曲は長谷川さんの音に魅了されました。
長谷川さんの演奏を生で聴くのも本当に久しぶりですが、朗々と鳴る音のスケールの大きさと音の艶に嬉しくなりました。
演奏が終わった後の会場の拍手は盛大でしたが、あまり長くは続かず、2回呼び戻しただけで終わってしまい、ちょっと申し訳ない気分。
都心のホールだったらもっとカーテンコールは長かっただろうと思われる好演でした。

休憩後の「惑星」は期待通りの名演。
「サントリーホールで聴きたかった」と思わなかった…と言ったらウソになりますが、逆にカラフルな色彩の音は、このホールの方がくっきりと出たかもしれません。
「木星」を聴きながら、「最近はいろいろ使われているけれど、やっぱりオリジナルをフルオーケストラで聴くのが一番!」と思いました。
「海王星」の終結部の音が消えていくところでは、ステージ上のライトを徐々に暗くしていき、最後は青っぽいかすかな光だけが残るという、クラシック音楽のコンサートでは珍しい演出もありました。
演奏終了後は、舞台裏で歌っていたコーラスのメンバーも舞台上に出て来て拍手を受けていました。

アンコールはもちろん無し。
この曲の後にアンコールはいりませんね。
開演前に会場に入って席についたとき、金管が「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」のようなフレーズを練習していたので「まさかアンコールに?」と思いましたが、そんなわけないですよね。
「ティル・オイレンシュピーゲル」と思ったフレーズも、私の聞き違いかもしれません。

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2008年3月 8日 (土)

シュナイト/神奈川フィル(2008/03/08)

2008年3月8日(土)15:00
神奈川県立音楽堂


指揮:ハンス=マルティン・シュナイト
神奈川フィル
(シュナイト音楽堂シリーズVol.XIII)

ハイドン:交響曲第82番「くま」
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
20080308





「田園」の最後の音が鳴り終わってすぐに拍手を始めた人が会場の2~3割だったでしょうか。
でもシュナイトさんは、まだ指揮棒を下ろしません。
拍手はいったん止み、シュナイトさんが棒を下ろしてから盛大な拍手となりました。
この日の「田園」、特に終楽章の喜びに満ちた旋律は至福のひとときでした。
「田園」くらい有名な曲であれば、曲が終わったことは、ほとんどのお客さんがわかっていたと思います。
会場を埋めたお客さんの多くが間髪を入れない拍手に同調しなかったのは、皆シュナイトさんの音楽に心から共感していたのでしょう。
会場では当日券も発売されていたので完売ではなかったようですが、見渡す限り、満席のように見えました。
そして、シュナイトさんに対する拍手も熱狂的。
みな、シュナイトさんの音楽を聴くために集った“信者”だったのかもしれません。

私が神奈川フィルの「シュナイト音楽堂シリーズ」を聴くのは、今回が初めてです。
音楽堂でコンサートを聴いたのも本当に久しぶり。
前回は1993年4月29日の神奈川フィル(指揮:広上淳一)ですから、15年ぶりです。
昔から「音響が良い」と言われている音楽堂ですが、残響はあまり感じられません。
しかし、決して無味乾燥の痩せた音ではなく、くっきりとした美しい音が迫ってくるのは、やはり「音響が良い」と言うべきでしょう。
サントリーホールやオペラシティとは違う次元の音響の良さだと思います。
また、1階席前方から傾斜がついているので、前の席の人の頭が視覚の妨げになることもなく、非常に舞台が見やすいホールです。
この日は、定期会員の友人に先行予約で一緒に買っていただいた席なので、舞台からの距離も位置も絶妙の場所で、音、視覚、価格(会員割引!)ともに三拍子揃った最高の席でした。

シュナイトさんはかなり足が悪いようで、狭い歩幅でゆっくりと歩いて登場。
当然、椅子に腰掛けての指揮です。
しかし音楽が始まってしまえば、そんなハンディは全く関係なし。
1曲目のハイドンからして、はつらつとしたメロディとリズムが会場を支配します。
聴く前は「ドイツの正統派」などとレッテルを貼りたくなりますが、決して古くさい演奏ではなく、いま生まれてきたような新鮮さを持ったハイドン。
ピリオドアプローチではないと思いますが、伝統に根ざしながらもやはり21世紀のハイドンです。
この曲の第2楽章がこんなに楽しい曲だったなんて、初めて感じたような気がします。
第4楽章冒頭の単独の“熊のうなり声”や、終結部の全奏における“うなり声”を伴ったミックスした音響も楽しく響きました。

「ここで帰ってしまっても十分に満足」という気分の休憩時間ですが、もちろん帰るわけにはいきません。
「田園」はCDも出ていますが、このコンビにとっては“お約束の名演”のようです。
特に変わったことをしているわけではないのに音が次から次へと迫ってきます。
コンマスの石田さんも大きなアクションで熱演。
最初から最後まで、特に弦楽器群が素晴らしかったですが、第5楽章が静かに始まった後、音が動き始めたときには、あまりの美しさに背筋がぞくぞくっとしてしまいました。
冒頭にも書きましたが至福のひととき。
私自身は、おそらく美味しいものを食べたときの最初の一口のような(あまり人様にはお見せできない)恍惚感の表情を浮かべていたと思います。
管楽器が多少完璧でない場面もありましたが、そんなことでこの演奏の価値は揺らがないでしょう。
そして、終結部は音量をやや落として、テンポもゆっくり目にして、「消え入るように」と言ったら言い過ぎかもしれませんが、静かに曲を閉じました。

このコンビの「田園」のCDは私の自宅のオーディオ装置では、少し鮮明さに欠ける音に聞こえます。
しかし、この日は音楽堂の分解能の良い音響で、“お約束の名演”を堪能させていただきました。

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2008年2月24日 (日)

二期会「ワルキューレ」(2008/02/24)

2008年2月24日(日)14:00
東京文化会館大ホール

東京二期会オペラ劇場
指揮:飯守泰次郎

ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」全三幕
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くせになりそう。
私は(まだ)ワグネリアンではなく、どちらかというとオペラよりもコンサートの方を好む人間ですが、こういう音を約4時間続けて聴いてしまうと、なぜ世の中にこれだけ多くのワグネリアンが居るのかと言う理由が、多少なりともわかるような気がします。
『これだけは見ておきたいオペラ』(新潮社)という本に堀内修さんが「退屈するなら、誰が4晩もかかる作品に付き合うものか。」という文章を書いていますが、“4晩”を“4時間”に置き換えれば、それがそのままこの日の「ワルキューレ」にあてはまると思います。
この長時間、東京文化会館の座席に座っているのは、東京から香港までエコノミークラスで行くのと同じようなものですが、それだけの価値はあったと思いました。

まず、飯守泰次郎さんの指揮するオーケストラの音が見事。
長丁場ですので、ちょっと音がずれたり、外したりという場面が無かったわけではありませんが、総じて、吠えたり、甘美になったり、官能的になったり、…といったワーグナーの音響を見事に体現していたと思います。
東京文化会館の響きは、残響感があまり感じられません。
でも、昨年5月のウィーンへの旅行時に聴いた国立歌劇場(シュターツオーパー)やフォルクスオーパーの音響は、サントリーホールよりも東京文化会館に近い感じでした。
歌劇場としては、あまり響きすぎない方が良いのでしょう。
個人的な好みとしては、もう少し音に包み込まれるような感じが欲しい感じもしますが、ストレートに音が向かってくる感じも、なかなか良いものでした。

歌手陣についても、皆それぞれ良かったと思いますが、フンディング役の小鉄和広さんの声が特に力強く迫ってきました。
これは、比較的出番が少なかったせいもあるのでしょうか。
他の主役陣は、力を入れて歌っている場面と、やや力を抜いて歌ってる場面があったようにも感じました。
歌い始めで「おや?ヴォータンにしてはちょっと弱々しいかな」などと思っていると、そのうちにどんどん声が強くなってきて、ここぞというところでは朗々と響く声が…という感じ。
確かに、これだけ長いと、最初から最後まで声を張り上げっぱなしというわけにもいかないのでしょう。
逆にメリハリがついて、聴く側の聴衆にとっても、私は良かったように思います。

演出は、オペラ通ではない私には、先進的なのか伝統的なのか、すばらしいのか平凡なのか、よくわかりませんでした。
DVDで観たメトロポリタン歌劇場のようなリアルな舞台装置ではありませんが、登場人物の服装は伝統的なスタイルの服装のようにも思えます。
特に奇抜な読替もなかったようです。

終演後の「ブラボー」の声が一番多かったは、やはり飯守泰次郎さん。
当然ですね。
1月に新国立劇場で観た同じ飯守さん指揮のR.シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」も良かったですが、やはり飯守さんのワーグナーは格別でした。

演出および装置:ジョエル・ローウェルス
衣裳:小栗菜代子
照明:石井リーサ明理
舞台監督:小栗哲家
公演監督:多田羅迪夫、曽我榮子

配役:
ジークムント:大野徹也
フンディング:小鉄和広
ヴォータン:泉良平
ジークリンデ:増田のり子
ブリュンヒルデ:桑田葉子
フリッカ:増田弥生
ゲルヒルデ:林志保
オルトリンデ:星野尚子
ヴァルトラウテ:三本久美子
シュヴェルトライテ:北澤幸
ヘルムヴィーゲ:吉村美樹
ジークルーネ:浪川佳代
グリムゲルデ:田辺いづみ
ロスヴァイセ:平舘直子

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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2008年2月16日 (土)

ボッセ/新日本フィル(2008/02/16)

2008年2月16日(土)15:00
すみだトリフォニーホール


指揮:ゲルハルト・ボッセ
新日本フィル
(第75回名曲シリーズ<クラシックへの扉>)
ヴァイオリン:郷古廉(ごうこ すなお)

ウェーバー:歌劇「オイリアンテ」序曲
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番「軍隊」
パガニーニ:24のカプリースより(アンコール)
ハイドン:交響曲第1番
ハイドン:交響曲第100番「軍隊」
ハイドン:交響曲第88番「V字」から第4楽章(アンコール)


昨年10月30日の都響12月7日12月8日の札響、今年1月25日の神奈川フィルと、勝手に個人で聴き続けてきた“ボッセ・ハイドン・ツィクルス”も、とりあえず一段落。
(この後、関西で神戸市室内合奏団の演奏会でハイドンが取り上げられますが、私は関東在住ですし、予定もあって遠征は出来ません。)

この日のハイドンは、いままで聴いてきた4回に比べて、ピリオドアプローチの影響が一番少ない演奏のように感じました。
弦楽器は、メリハリをつけると言うよりも、流れるような音。
バロックティンパニが強打するので、ピリオドアプローチっぽい響きもしますが、それ以外は、割と昔ながらのハイドンの演奏に近く、ちょっと意外でした。

もしかしたら、今までの都響、札響、神奈川フィルも、私がぼんやり聴いていただけで、実はこういう演奏だったのでしょうか?
そうではなかったような気がするのですが…。
まあ、それはそれとして「ハイドンの演奏は、○○でなければならない」というわけでもないので、ボッセさんの指揮に乗って熱演を繰り広げた新日本フィルの演奏は良かったです。

考えてみれば、新日本フィルは、かつてカザルスホールで、ハイドンの交響曲全曲ツィクルスを完遂したオケです。
私は全て聴いたわけではありませんが、60番あたりから、ほぼ毎回通い、お世話になりました。
当時は、ピリオドアプローチではありませんでしたが、だからと言って、あの“偉業”の価値は、いささかも揺らぐことはありません。
この日の演奏を聴いて、あの当時、目を輝かせてカザルスホールでハイドンを毎月聴いていた日々を思い出しました。

最後にアンコールで、交響曲の楽章を演奏してくれたのは、ハイドン好きの私にとっては最高の贈り物でした。

さて、私はハイドン目当てでこの日の演奏会に出かけたわけですが、この日のもう一つの聴き物は、郷古廉(ごうこ すなお)さんのヴァイオリンでした。
プログラムの冊子によれば、1993年12月生まれとのこと。
中学2年生です。
若い、若すぎる…という先入観を吹き飛ばして、伸びのあるきれいな音。
テクニックだけでなく、音楽性も豊かなようです。
生徒による「発表会」ではなく、入場料を取れるプロの「演奏会」レベルの演奏にびっくりしました。
重箱の隅をつつくならば、曲の終わりを一目散に目指して急がずに、少しよそ見をしたり、寄り道をしたりする演奏をする余裕があれば、さらに良い演奏になると思いますが、そんなものは、歳を重ねれば身につくでしょう。

モーツァルトを弾ききっただけでなく、アンコールを弾いたのにも驚きました。
豊島さん、西江さんと、二人のコンマスが座っている目の前でアンコールを弾く度胸もたいしたものです。
こちらも伸びのある音が印象的でしたが、多少力が入り過ぎの部分もあったようです。
でも、ありきたりのバッハとかではなくて、聴いていて楽しかったです。

なお、ボッセさんは、郷古さんのアンコールの演奏を、舞台の袖でずっと立って聴いていました。

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2008年2月15日 (金)

金聖響/東京シティ・フィル(2008/02/15)

2008年2月15日(金)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール


指揮:金聖響
東京シティ・フィル
(第216回定期演奏会)

プロコフィエフ:交響曲第5番
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番


東京シティ・フィルの2007年度の年間プログラムを見たときに、真っ先に私の目をひいたのがこの演奏会でした。
この2曲を並べた演奏会というのは、結構珍しいのではないかと思います。
どちらも、普通は演奏会の後半を飾る曲。
今年5月のフィラデルフィア管弦楽団の来日演奏会では、23日(金)と24(土)の2日に分けて演奏される曲目です。
しかも、どちらも私の好きな曲目で、プロコフィエフは特にお気に入りです。
1年くらい前から楽しみにし、発売初日にチケットを買いました。

しかし、残念なことにお客さんお入りは、いま一歩。
1階席は半分も埋まっていなかったのではないでしょうか。
でも、2階両サイドのバルコニーはほとんど埋まっていましたし、3階にも結構お客さんが座っていました。
(要するに、S席以外は、そこそこ売れていたと言うことになりますね。)
そして数は少ないながらも、入場したお客さんは、みんな熱心に聞き入っていて、会場の雰囲気は、なかなか良い雰囲気でした。

前日にはこの同じホールでハーディング/東京フィルの演奏会を聴きました。
昨日は3階正面の席でしたが、この日は正反対の、オルガンの前のP席。
やっぱり私は、P席の方が、視覚面、音響面、価格面ともに好きです。

金聖響さんが指揮する東京シティ・フィルの音は、飯守さんが振ったときの重い音でも、矢崎さんが振ったときの明るい音でもなく、なんと言ったらいいのでしょう、シンフォニックな音です。(語彙が貧弱ですみません。)
しかも、単に音響効果を狙っただけの演奏ではなく、フレーズがなんとも音楽的。
またまた語彙が乏しくてすみません。
「シンフォニックで音楽的な演奏」なんて書いても、全然わかりませんよね。
ただ、弁明ではありませんが、この日の2曲はいろいろな背景があるにせよ、最終的に出来上がった姿は標題のない純粋な交響曲。
(最近では「革命」と呼ばない方が主流ですね。)
この日の演奏は、ことさら何かを強調するわけではなく、しかし決して淡々とした演奏でもなく、ニュアンスと力強さを兼ね備えた、この2曲の、まさに私好みの演奏でした。

一曲めのプロコフィエフから、まるで演奏会後半の雰囲気で、気合いが入っています。
弦楽器群が秀逸。
管楽器のごく一部のソロでは、「あれれ?後半のショスタコーヴィチに練習の優先度を置いたのかな?」という場面がありましたが、全般的には、大熱演、大健闘でした。

後半のショスタコーヴィチもほぼ同様に、弦楽器奏者は、みな体を揺らしての熱演。
本当に魅惑的な音でした。
一曲目のごく一部で気になった、管楽器の「あれれ?」という場面もなく、素晴らしい演奏でした。

東京シティ・フィルは正団員の数がそれほど多くはないので、今回も多くのエキストラの奏者が参加しているものと思います。
エキストラが比較的固定メンバーなのか、毎回違うメンバーなのかは、単なる一般音楽ファンの私にはわかりませんが、決して臨時編成のオケの音ではありませんでした。

演奏終了後、拍手を受けながら、オケのメンバーはあちこちで、ニコニコしながら、何やら二言三言交わしあっていました。

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2008年2月14日 (木)

ハーディング/東フィル(2008/02/14)

2008年2月14日(木)19:00
東京オペラシティ・コンサートホール


指揮:ダニエル・ハーディング
東京フィル
(第36回東京オペラシティ定期シリーズ)

マーラー/交響曲第6番「悲劇的」


なんと力強い音でしょう!
物理的な音の強さだけではないと思います。
強い「意志」が音に乗り移っていたのだと思います。

この日私が座ったのは3階席正面。
http://www.tpo.or.jp/japanese/ticket/seat/operacity/index.html
席のランクはA席で、私にしては高価なランクのチケットを買いました。
…というか、あまり席が残っていなくて、あまり選ぶ余地がなかったのです。
すぐ目の前は格安のT席。
僅か1メートル程度の距離ですが、チケット代の差額は大きい。
その差は、おそらく視覚の差でしょう。
T席に近い側だったのでちょっと心配しましたが、体をよじることも、身を乗り出すこともなく、少し遠いながらも舞台の95%くらいがが良く見えました。

音響に関しては、良く混ざり合ってひと固まりに近い感じに聞こえます。
第2ヴァイオリンが右側でチェロが左側に来る対向配置でしたが、さすがに距離がありますので、ステレオ効果はあまり感じませんでした。
残響感はそれほど感じませんが、乾いた音ではありません。
個人的には、視覚的には多少難があるものの、3階R1~2列の1~20番あたりの音の方が好きです。

それでも“ハーディングさんのマーラーの音”は、ビンビン伝わってきました。
舞台に近い席で聴いたらもっと凄かったのかもしれませんが、会場に居合わせることが出来たことを喜ぶべきでしょう。
第1楽章の最初の一音から、いきなり重戦車の大群が現れたような迫力。
その迫力も、決して粗野な爆演ではなく、冒頭に書いたような「意志」のこもった迫力です。
この大音量での迫力は、最後まで持続しました。

ただ、その反面、ゆっくりのテンポや弱い音の部分は、ほんの少し雑になったり、奏者がちょっとためらいがちに音を出す場面がなかったわけではありません。
この辺は、個人的には、4日前に聴いたホーネックさん指揮の読響の「復活」に軍配を上げたいような気もします。
しかし、それは些細なこと。
当夜の演奏を聴けて、私は、大満足でした。

この日は、第2楽章=アンダンテ、第3楽章=スケルツォの順番で演奏されました。
プログラムの冊子には、比較的詳しくいろいろな経緯が書かれていますが、今後は、この順番の演奏が主流になっていくのでしょうか。
記憶の限りでは、この順番で聴いたのは、私は、この日が初めてです。
(12月に聴いたインバルさん指揮の都響の演奏も、第2楽章=スケルツォ、第3楽章=アンダンテでした。)
私個人としては、長年慣れ親しんできた「第2楽章=スケルツォ、第3楽章=アンダンテ」の方が、しっくり来る印象でした。
ただ、第1楽章→第2楽章、第2楽章→第3楽章では違和感があったものの、第3楽章→第4楽章は、意外としっくり来ました。
もう少し時間がたって慣れてくれば、あまり気にならなくなるかもしれません。

第4楽章の最後の一音が鳴り終わってからハーディングさんが手を下ろすまで、20~30秒くらいだったでしょうか。
その間の静寂と緊張感は“音楽の一部”でした。

追記:
この日の録音が、後日2008年5月11日にNHK-FMで放送されました。
最後の一音が鳴り終わってから拍手が始まるまでの静寂は、38~9秒くらいでした。

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2008年2月10日 (日)

ホーネック/読響(2008/02/10)

2008年2月10日(日)18:00
サントリーホール


指揮:マンフレッド・ホーネック
読売日本交響楽団
(第499回名曲シリーズ)
ソプラノ:薗田真木子
アルト:マルティナ・グマインダー
合唱:国立音楽大学合唱団

マーラー:交響曲第2番「復活」


プログラムの冊子には、ホーネックさんの微弱音のことが「音の魔術」「耳をそばだてて聴く、音楽のすごさ…。」と書かれています。
確かにその通りで、鳴らすところは思いっきり派手にドカンと鳴らすのと好対照の微弱音が、この日の会場を支配しました。
合唱の入りがこんなに小さい声で歌われたのを聴いたは、私は初めての経験のような気がします。

ホーネックさんの指揮姿は美しく、エネルギッシュでありながらも、しなやかな動きでオケを引っ張ります。
素人目の感想で恐縮ですが、こういう棒だったら、弦楽器はさぞかし弾きやすいのではないか…と思いながら聴いていました。
この日の読響の弦の音は秀逸。
特に第2楽章あたりから妖しい(?)雰囲気が会場に満ち始め、第3楽章では聴く者を麻酔にかけるかようなに陶酔感。

加えて、この日の独唱者2人が素晴らしい。
アルトのグマインダーさんは、ホーネックさんの推薦での起用とのこと。
確かに、シーズンプログラム発表の時点ではアルトは「未定」とされていました。
第4楽章のアルト独唱は、第3楽章までの弦の音の“雰囲気”を見事に引き継ぎ、陶酔の極み。
声を張り上げて歌う曲ではないこともあると思いますが、無理をせずに余裕を持って、その余力をニュアンスに振り向けて歌っていたのでしょう。
声の質も魅力的で、ぜひまた聴いてみたい人です。
ソプラノの薗田さんも、決して声を荒げることなくきれいな声を維持して歌いきったように思います。
ソプラノのキンキンする声はあまり好きではありませんが、こういうきれいなソプラノは大好きです。

合唱の国立音楽大学も声を張り上げずに好演。
N響の「第九」で「ちょっと声を張り上げすぎじゃない?」「叫んじゃ駄目だよ」と思うことがたまにあるのでちょっと心配しましたが、ホーネックさんの意図を汲み取ったようです。

全席完売にもかかわらず、会場内には空席が結構ありましたが、この日聴きに来たお客さんは(咳は少し目立ちましたが)みな集中力をもって聴いていたようです。
「拍手はご遠慮下さい」というアナウンスが流れたわけではありませんが、歌手が登場したときの拍手はなし。
曲が終わった後も、こういう曲もかかわらず、ほんのごく僅かとは言え、一呼吸置いての拍手開始。
みんなホーネックさんの魔術にかかってしまったのでしょう。

金管楽器にもこのニュアンスが徹底できればなお良かったと思いますが、本来咆哮する役割の楽器にそれを求めるのは酷なのでしょう。

まるで、この曲を初めて聴いたかのような、「ここは、こんな音だったんだ」というような、いろいろな発見のあった演奏でした。

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2008年2月 9日 (土)

新国立劇場「サロメ」(2008/2/9)

2008年2月9日(土)14:00
新国立劇場
R.シュトラウス:サロメ

この日ピットに入った東京交響楽団は、前日の夜にサントリーホールでの定期演奏会を聴いたばかりです。
ずいぶんハードだと思いますが、さすがはプロですね。
(2日続けて聴いている私も私ですが…。)(^^ゞ
ちなみに、サロメの公演は2月3日(日)、6日(水)、9日(土)、11日(月・祝)の4日で、その合間(?)に8日(金)にサントリーホール、10日(日)にミューザ川崎で定期演奏会の開催です。
ピットに入るのはオケとしては重要な活動(経験)だと思いますが、もう少しスケジュールは考慮した方が、演奏の“質”のためには良いのではないかとも思います。

私個人の印象では、この日の東響の演奏は、“オペラのオケ”としては満足できるレベルだったと思います。
確かに超一流クラスの指揮者が振ったときのオペラのオケの響きは、絶妙のものがあります。
昨年は、小澤征爾さん指揮のウィーン国立歌劇場(現地)やサイトウキネン、ウェルザー・メストさん指揮のチューリッヒ歌劇場(来日公演)で、オペラのオケの極上の響きを聴きました。
この日の演奏は、もちろんその域には達していないと思います。
でも、普通のレパートリー指揮者が振る、普通の(?)オペラのオケとしては、迫力も繊細さも雰囲気もありました。
評論家の先生の中には、ピットでの演奏を「ステージ上(つまり定期演奏会など)では、あれだけ良い演奏をするのに…」と酷評する向きもありますが、指揮者も違いますし、ある程度は、いたしかたないことだと思います。
この日の演奏だって、昨年11月にゲルギエフさんが東響を振ったときの演奏と比べてみても仕方ありません。
繰り返しになりますが、私は、この日のレスナーさん指揮の東響の演奏で、「サロメ」というオペラを満喫しました。

(その分、定期演奏会の方に多少の負担が出ていたような気がしないでもありません。メンバー表を見ると“分担”はしているようですが、東フィルのような大所帯ではないので、共通しているメンバーが多いと思います。)

歌手陣では、ヘロデ王役のヴォルフガング・シュミットさんが絶妙。
声の質が私のイメージするヘロデ王にピッタリだと思います。
ヨハナーン役のジョン・ヴェーグナーさんも、朗々と響き渡る声で、自信に満ちた預言者を演じていました。
王妃ヘロディアス役の小山由美さんも、妖艶な熟女の雰囲気とはちょっと違いましたが、声量も声の質も、なかなかのものでした。
私は、この3人の歌唱が印象に残りました。

サロメを歌ったナターリア・ウシャコワさんは、この3人に比べて、4階席の私の座った席までは、声があまり強く響いてこない印象がありました。
特に前半は、多少抑え気味に聞こえました。
確かに、最初から最後まで、ほぼ出ずっぱりですし、踊りも踊らなければならないので大変だと思いますが、“主役”なわけですから、頑張ってほしかったと思います。
…と言っても「3人と比べて」の話しですから、合格ラインに達していないわけではありません。

演出はおそらくオーソドックスなものだと思います。
私はそんなに“オペラ通”ではないので、やはりこういう演出の方が安心できます。
もっとも、プログラムの冊子によれば、最後にサロメにとどめを刺すのが小姓であるところは新機軸とのこと。
サロメのせいで自殺した護衛隊長に思いを寄せていた小姓が敵を討つ…ということだそうです。
もっとも、新機軸と言っても、もとになった演出はバイエルン国立歌劇場の1987年の演出とのことですから、1987年当時の新機軸ですが…。
(この新国立劇場の「サロメ」も、私は観るのは初めてですが、プレミエは2000年です。)

開演時は、場内が暗くなって指揮者の登場を待っていると、幕が上がり、いきなり音楽が鳴り始めました。
…というわけで、開演時の拍手は無し。
終演時は、最後の大音量が鳴り終わって舞台が暗転し、ふた呼吸ぐらい置いてから拍手が始まりました。
フライングの拍手など無く、とても良かったと思います。

【指揮】トーマス・レスナー
【演出】アウグスト・エファーディング
【美術・衣裳】ヨルク・ツィンマーマン
【再演演出】三浦安浩
【舞台監督】大澤裕
【芸術監督】若杉弘
【管弦楽】東京交響楽団

キャスト
【サロメ】ナターリア・ウシャコワ
【ヘロデ】ヴォルフガング・シュミット
【ヘロディアス】小山由美
【ヨハナーン】ジョン・ヴェーグナー
【ナラボート】水口聡
【ヘロディアスの小姓】山下牧子
【5人のユダヤ人1】中嶋克彦
【5人のユダヤ人2】布施雅也
【5人のユダヤ人3】松浦健
【5人のユダヤ人4】小貫岩夫
【5人のユダヤ人5】大澤建
【2人のナザレ人1】青戸知
【2人のナザレ人2】青柳素晴
【2人の兵士1】大塚博章
【2人の兵士2】斉木健詞
【カッパドキア人】藤山仁志
【奴隷】鈴木愛美

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大友直人/東響(2008/2/8)

2008年2月8日(金)19:00
サントリーホール


指揮:大友直人
東京交響楽団
(第553回定期演奏会)
ピアノ:ジョナサン・ビス

ハイドン:交響曲第25番
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル・ラ・ヴァルス


ゲストコンサートマスターのレオン・シュピーラーさん(元ベルリン・フィル)は、拍手を受けて入場すると、団員を立たせて答礼してからチューニングに入りました。
ベルリン・フィルのスタイルですね。
オーストリア式、イギリス式など、国によっていろいろなスタイルがありますが、私は、このベルリン・フィルのスタイルが結構好きです。

シュピーラーさんは1928年1月生まれということですのでなんと80歳になったばかり。
技巧的にはともかく、座って弾いているときの存在感はさすが。
ベートーヴェンの協奏曲の“伴奏”では、特に力が入っていたように見えました。
ジョナサン・ビスさんのピアノは一音一音がくっきり聞こえる感じで、「この音でドビュッシーのピアノ曲を聴いてみたい」などと考えながら聴いていましたが、曲が進むにつれて次第に熱がこもっていったのは生演奏ならでは。
ベートーヴェンの協奏曲の中では、この3番がビスさんに合っていたかもしれません。

大友直人さんは、最近はいつもそうしているように指揮棒を持たないでの指揮。
後半のドビュッシーでは、最初は「直球勝負の演奏」と感じました。
確かに“音楽”としては、聴いていて非常にわかりやすい演奏だったと思います。
「リヒャルト・シュトラウスの交響詩のようなドビュッシー」などと言ったら言い過ぎかもしれませんが、旋律の流れが非常によくわかり、各楽器の音が生々しく聞こえました。
しかし、個人的には、もう少しミステリアスな雰囲気や、ブレンドされた音の香りが欲しいところです。
この曲の生演奏をそれほど多く聴いたことがあるわけではありませんが、ジャン・フルネさん指揮の演奏に接したことがある者としては、どうしてもあの独特の雰囲気が忘れられません。
…というわけで、「悪い演奏ではないのだが…」と思って聴いていると、第3曲からオケの響きが変わったような気がしました。
各楽器の音が生々しく聞こえていたのが、音が溶け合って、クリアで透明感のあるサウンドに聞こえるようになりました。
このサウンドが曲の最後では高らかに鳴り、快感。
第1曲、第2曲が私の個人的な好みに合わなかったことなど忘れて、幸せな気分で拍手をしました。

ラヴェルでは再び少し生々しい音に戻った感じですが、ドビュッシーでは気に入らなかったサウンドであっても、ラヴェルだったらOKの場合もあります。
「響きのきれいさ」よりは「迫力」を目指したような演奏でした。

1曲目のハイドン(ピリオドアプローチではありませんが、やや速めのテンポで、きれいな弦の音が印象的)からベートーヴェンを経て、休憩後はドビュッシーとラヴェルというのは、バラエティーに富んでいて、面白いプログラムです。
でも、楽員の皆さんは(プロだから大丈夫なのかもしれませんが)多少切り替えが難しかったのではないかと感じました。

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2008年1月31日 (木)

ノリントン/シュトゥットガルト放送響(2008/01/30)

2008年1月30日(水)19:00
サントリーホール


指揮:ロジャー・ノリントン
シュトゥットガルト放送交響楽団

ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン

ヴォーン・ウィリアムズ :劇音楽「すすめばち」(むずかし屋)序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番~サラバンド(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
ブリテン:「マチネ・ミュージカル」から「行進曲」(アンコール)
シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」間奏曲 (アンコール)

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メンデルスゾーンでは拒否反応が出たのに、ベートーヴェンには大いに惹きつけられたということは、私がまだロマン派の音楽に関しては保守的なのかもしれません。
前半が終わって休憩に入ったときには、正直「やはり、場違いな“異教徒の集い”に来てしまったかな…」と思いました。
「メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲って、こんなに静かな曲だったっけ?」と思いながら聴いていました。
良く言えば繊細、悪く言えば神経質。
「本当に、これが、あの有名な曲?」と思うほどで、切々と歌う場面は皆無の演奏。
ヤンセンさんのソロも、基本的にはノリントンさんの音作りのコンセプトの枠内での自己主張だったと思います。
はっきり言って、後半もノリントンさんの音を聴き続けることに、少し抵抗感すら感じてしまいました。

しかし、後半のベートーヴェンでは、私の印象は一変しました。
もっとも、おそらく変わったのは聴いていた私の方であって、ノリントンさんの音楽は首尾一貫、いっさい変わっていなかったのでしょう。

何気ないフレーズにつけられた極端なアクセント。
ティンパニの突然の強打。
主旋律ではないパートの雄弁な表情。
急に音量を絞るかと思うと、逆に意図的なクレッシェンド。
これらの「奇をてらっている」と感じてもおかしくない“小細工”が、どれも説得力を持った音として迫ってきます。
前半2楽章が、いや、全4楽章が、こんなに次から次へと面白く、あっという間に終わったように感じたのは初めてかもしれません。
演奏が終わった後、「もう1回、最初から全曲を聴きたい」とすら思いました。
しかも、緻密に組み立てられた音楽のはずなのに、生演奏ならではのスピード感と高揚感がありました。

私は今まで、ノリントンさんのことは、勝手にイメージを思い描いて、ずっと“聴かず嫌い”で来ていましたが、今回は知人の絶賛もあったので、チケットを購入しました。
やはり、その評判通り、ノリントンさんは凄かった!

ちなみに、この日のノリントンさんの指揮の身振りは、曲によってかなり異なっていました。
1曲目では指揮棒が比較的きれいに拍子を刻んでいました。
指揮姿は「美しい」と思えるほど、きれいな棒でした。
2曲目では指揮棒を持たず、どちらかと言うと表情付けをするような指揮ぶり。
3曲目では、再び指揮棒を持っていましたが、拍子をとることはほとんどせず、号令をかけているような感じ。
この号令に従って、これだけ緻密な音楽を奏でるのですから、オーケストラが凄いのか、リハーサルが徹底しているのか…。

ノリントンさんは、英雄交響曲の第1楽章と第2楽章の間で、聴衆の咳がなかなか止まないと、「おい、まだかい?」とでも言いたげに客席を振り向いて笑いを誘っていました。
第3楽章開始時は、いったん静かになった後、咳をした人がいたので、動かしかけた指揮棒を止めました。
音を大事にしている証でしょう。
第3楽章と第4楽章の間は続けずに、いったん間合いを取りましたが、違和感はありませんでした。

それにしても、全席完売の会場を埋めた聴衆は、みなノリントンさんの信者なのでしょうか?
こんな異端の(?)演奏にもかかわらず、老若男女、みな絶賛に近い熱烈な拍手。
私のような初見参の者から見ると、やはり“異教徒の集い”の印象です。
しかし、私もとうとう“異教徒”に一歩足を踏み入れてしまったようです。

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2008年1月27日 (日)

関西二期会「ナクソス島のアリアドネ」(2008/1/27)

2008年1月27日(日)14:00
新国立劇場(中劇場)

関西二期会
指揮:飯守泰次郎

R.シュトラウス:ナクソス島のアリアドネ

このオペラのチケットを買った動機は、飯守泰次郎さんの指揮だったことと、今まで入ったことのなかった中劇場に入ってみたかったことです。
「ナクソス島のアリアドネ」を映像でも観たことがなかったのも動機のひとつでした。

確かこのオペラは、カール・ベームさんの最晩年に、ザルツブルク音楽祭か何かで、当時若手だったエディタ・グルヴェローヴァさんがツェルビネッタを歌って大旋風を巻き起こしたと記憶しています。
当時は私はあまりオペラに関心がなかったので、NHK-FMで放送されたライブ録音も聴かなかったと思いますが、それでも「グルヴェローヴァさんが歌うくらいの、難しい超絶技巧のアリアがあるオペラ」ということだけは、頭に刷り込まれていました。
したがって、今回の歌手陣に関しては未知数であることは認識した上でのチケット購入でした。

そうこうしていると、1月25日の公演のネットでの(一般のファンではなくて、専門家筋の方の)評判が芳しくない。
「おやおや、どうなることか」と思いながら会場に向かいました。

冒頭に書いたように、新国立劇場の中劇場に入るのは初めてです。
2階席でしたが、1000人規模のキャパですので、舞台がずいぶん近い。
舞台だけでなく、オーケストラ・ピットの中も良く見えました。
なかなか良いアングルで、嬉しくなりました。

私の座った席のランクはA席。
発売初日の昼の時点で、すでにB席、C席は売り切れていましたが、チラシの裏のシートマップを見て納得。
大半(1階席全てと2階正面1~2列)がS席で、A席~C席は非常に少ないのです。
特にC席など、10席あったのかどうか…。
この日座ってみた印象では、全席均一料金でも良いくらいにも感じましたが、「努力した人には多少安く提供しますよ」という姿勢なのかもしれません。

このオペラは初めてだったので「長いから途中でトイレに行きたくなったらどうしよう」と心配して水分控えめで臨みましたが、プロローグとオペラ(劇中劇)の間に25分の休憩があって一安心。
休憩を入れるのが普通なのかどうかは知りませんが、集中力を維持するためには私は嬉しかったです。
20080127






そして、事前の心配にもかかわらず、飯守さんの指揮、関西フィルの演奏、歌手陣の歌唱とも、私は十分に楽しみました。
歌手陣が「絶叫」との評もありましたが、確かに一部に「あ、叫んでしまった」と思われる部分がないわけではありませんでしたが、概ね、1000人の空間に見合った声の出し方をしていたと思います。

プロローグでは「作曲家」役の福原寿美枝さん(アルト)が私は良かったです。
「叫ぶ」ような歌唱は感じられず、きれいな声を保ったまま、感情の起伏を良く表していたと思います。

オペラ(劇中劇)では、やはりツェルビネッタ役の日紫喜恵美さん(ソプラノ)。
アリアの終盤で、ちょっと絶叫気味になった部分もありましたが、そんなことはどうでも良く、この方のコロコロ転がるようなかわいらしい声の魅力は、持って生まれたものでしょう。
もっと歌い込めばさらに良くなるかもしれませんが、まずは、この生来の声の魅力に触れることができ、大いに魅了されました。

終盤のアリアドネ(畑田弘美さん、ソプラノ)とバッカス(竹田昌弘さん、テノール)の二重唱も、飯守さんの指揮に乗ってうっとりとするひとときを創出しました。
最後の静かな部分で「幕が閉まり始めて拍手が起きてしまったら…」と心配しましたが、会場全体静かなまま最後の音が鳴り終わるまで拍手は起きず、嬉しかったです。

道化達の歌と踊りもコミカルで楽しかったですが、もうちょっと、シリアスな雰囲気をぶちこわすようなインパクトがあれば、なお良かったと感じました。
私の前の席の人は、くすくす笑っていましたが、私は残念ながらその域までは到達しませんでした。
ふと、このオペラをウィーン・フォルクスオーパーが上演したら、どうなるだろう?と思ってしまいました。

ひとつだけおかしかったのは、バッカスが船に乗って出てくる場面で、私の座った左側の席からは、船が先端の部分だけしかないことが丸見えだったこと。
関西の劇場に合わせて製作したものを、扇型に広がった新国立劇場の中劇場に持ってきたためでしょうか?
まあ、御愛嬌ということで、目くじらをたてることではありません。

終演後はブラボーも飛び、特に飯守泰次郎さんへのブラボーがすごかったです。
(一人、ブーイングをしていた人も居ましたが。)
飯守さんの指揮は、東京シティ・フィルで見るときは「この人、本当に齋藤秀雄門下なの?」と思うくらいなのですが、この日のオケピットの中では、ちゃんときれいに振っていたように見えました。
シティ・フィルのときは、わざときれいに振らないようにしているのでしょうか?

演出はオーソドックスなものだと思います。
昨今の過激な演出が好きな方には物足りないでしょうが、私はこのオペラを初めて観たので、初鑑賞には適した演出で良かったと思います。

…というわけで、専門家ではなく、一般のファンの私としては、事前の杞憂を吹き飛ばして、大いに満足して帰ってきました。

【指揮】飯守泰次郎
【演出】松本重孝
【装置】荒田良
【衣裳】八重田喜美子
【照明】服部基
【振付】石井潤
【舞台監督】菅原多敢弘
【演出助手】豊田千晶
【公演監督】蔵田裕行
【管弦楽】関西フィルハーモニー管弦楽団

キャスト
【執事】蔵田裕行
【音楽教師】萩原寛明
【作曲家】福原寿美枝
【テノール歌手/バッカス】竹田昌弘
【士官】角地正直
【舞踏教師】北村敏則
【かつら師】服部英生
【下僕】木村克哉
【ツェルビネッタ】日紫喜恵美
【プリマドンナ/アリアドネ】畑田弘美
【ハレルキン】大谷圭介.
【スカラムッチョ】八百川敏幸
【トルファルディン】藤田武士
【ブリゲルラ】馬場清孝
【ナヤーデ】高嶋優羽
【ドリャーデ】山田愛子
【エコー】森原明日香

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2008年1月25日 (金)

ボッセ/神奈川フィル(2008/01/25)

2008年01月25日(金)19:00
横浜みなとみらいホール

指揮:ゲルハルト・ボッセ
神奈川フィル
(第241回定期演奏会)

J.C.バッハ:シンフォニア ト短調作品6-6
ハイドン:交響曲第94番「驚愕」
ベートーヴェン:交響曲第7番

古典派の交響曲の歴史を、迫力とスピード感のある演奏でたどることができました。

私がヨハン・クリスティアン・バッハの曲を聴くは、もしかしたらこの日が初めてかもしれません。
プログラムの冊子によれば、J.S.バッハの末っ子で、ハイドンより2歳年下とのことです。
聴く前は「バッハ」という名前から「J.S.バッハの亜流」をイメージしてしまいましたが、聴いてみると、全く作風は違います。
プログラムの冊子には「偉大な父親の呪縛からは解き放たれて」とありますが、まさにその通りであることを、この日の演奏で確認しました。
この曲は、急-緩-急の3楽章構成で、交響曲の先駆けとなったジャンルとのこと。
劇的な第1楽章と第3楽章、ロマンティックではないが気品のある緩徐楽章など、とっても魅力的な曲です。

神奈川フィルの弦が美しい!
ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスターだったボッセさんに、かなり鍛えられたのでしょうか?
昨年2回ほど聴いた神奈川フィルの定期のときよりも格段にきれいに聞こえました。
もっとも、座った席は違うので、一概には比較できませんが…。

ハイドン好きの私は、J.C.バッハのこの曲が気に入ったので、他の曲も聴いてみたくなりました。
しかし、プログラムの冊子によれば、シンフォニアだけで60曲あまりも作曲しているとのこと。
「ハイドンの交響曲ですらまだ聴き込んではいないのに、J.C.バッハに手を出したら、時間がいくらあっても足らない」と思いましたが、そこに宝の山があることだけは覚えておきたいと思いました。

続いて、この日の私のお目当てのハイドン。
昨年10月30日の都響12月7日12月8日の札響と、勝手に“ボッセ・ハイドン・ツィクルス”と心の中で名付けて聴きに行っていますが、「驚愕」一曲とはいえ、聞き逃すわけにはいきません。
その期待通り、素晴らしい演奏でした。
80歳台後半の指揮者が振る演奏の新しいこと!
ピリオド奏法ではありませんが、明らかにピリオドアプローチが台頭した以降の演奏スタイル。
それでいて決して軽くなく、芯の据わった音。
この曲でも弦楽器の美しさは比類なく、フルートを始めとする木管の積極的な演奏も大変魅力的でした。
雑な音はいっさいなく、ちょっとした音まで表情が込められています。
以前聴いた神奈川フィルの演奏会で「極細部の詰めが…」と感じた面影は皆無でした。

ここで帰ってしまっても大満足…という状態の幸せな休憩時間の後は、さらに輪をかけてノリノリのベートーヴェン。
ボッセさんは、4つの楽章を、ほぼ続けて演奏しました。
緊張がとぎれず、交響詩のような効果を生んでいて、良かったと思います。
このボッセさんの推進力は、もし若手の駆け出しの指揮者が真似をしたら、一歩間違えば「爆演系」の粗野な演奏になるかもしれません。
しかし、さすがはボッセさん。
スピードと迫力と格調を兼ね備えた、ピリオドアプローチ以降の、現代のベートーヴェン演奏を満喫しました。

この日のベートーヴェンの曲が1番や2番ではなく、7番であるところが、プログラミングのうまさでしょう。
J.C.バッハが1770年出版、ハイドンが1791年作曲、ベートーヴェンが1813年初演とのことです。
ほぼ20年の間隔で「交響曲がこのように発展してきた」ということが、演奏会全体を通して、そして7番の終楽章の圧倒的な迫力によって示されたような気がします。
選曲、演奏ともに、素晴らしい演奏会でした。

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2008年1月19日 (土)

秋山和慶/東響(2008/01/19)

2008年1月19日(土)18:00
サントリーホール


指揮:秋山和慶
東京交響楽団
(第552回定期演奏会)
ヴァイオリン:前橋汀子

ハイドン:交響曲第94番「驚愕」
諸井誠:JSB(ヨハン・セバスティアン・バッハ)へのオマージュⅡ
     ―ヴァイオリンとオーケストラのための協奏組曲
     (2006-8年改訂版)
R.シュトラウス:家庭交響曲


コンサート会場を出て家路についても、頭の中に“先ほど聴いた音”が鳴り続ける。
家に着いても、CDやFMはおろか、テレビさえつけたくない。
こんな幸せなことはありません。
この日、サントリーホールに響き渡った家庭交響曲のサウンドは、本当に心地良いものでした。

秋山さんの指揮する家庭交響曲は、20年以上前の1985年に、東京文化会館での東響定期演奏会でも聞きました。
あの頃も、秋山&東響と言えば、かなりの好演が期待できましたが、20年の歳月、20年間の秋山さんの円熟、20年間の東響の進歩は、今さら言うことではありませんが、感無量です。
当時の演奏を克明に覚えているわけはありませんが、当時の東響は、こんな豊饒なサウンドは出せなかったと思いますし、フルスケールの大音量から、ふと再弱音に切り替わったときの微妙なニュアンスも、十分には表現できなかったと思います。
この日の東響の響きは本当にカラフルな音色で、ドイツ風と言うよりはアメリカ風のリヒャルト・シュトラウスだと感じましたが、聴いていて痛快でした。
強いて重箱の隅をつつけば、木管がさらに弦と溶け合ったハーモニーになったら…という思いもありますが、そんなことはほんの些細なことです。
比較的演奏される機会の少ない曲だと思いますし、私も過去に生演奏では2回しか聴いたことがありませんが、この日の演奏に満足しましたので「もう、しばらくは聴かなくてもいいや」というくらいの気持ちになりました。
(演奏終了時のフライング気味の「ブラボー」の声にはちょっと驚きましたが…。)

なお、後半だけでなく、前半の演奏もなかなかのものでした。

まずハイドンですが、(私は秋山さんのファンであるにもかかわらず)実はあまり期待していませんでした。
以前、秋山さんの指揮で聴いたモーツァルトの交響曲第40番が、ずいぶん古めかしく感じたからです。
東響がスダーンさんの時代になって、ピリオドアプローチの影響を受けた演奏が多くなった頃に聴いたので、そう感じてしまったのかもしれません。
しかし、この日のハイドンの演奏は、“立派な”交響曲でした。
モーツァルトの40番が1788年、この日の「驚愕」が1791年、ベートーヴェンの1番が1800年に完成しています。
一般には「ハイドン→モーツァルト→ベートーヴェン」のように言われますが、ハイドンは長生き、モーツァルトは早世だったので、本当は「ハイドン→モーツァルト→ハイドン→ベートーヴェン」だと私は勝手に思っています。
深読みしすぎかもしれませんが、ベートーヴェンの1番につながる交響曲の演奏にふさわしい、格調高い、堂々たる演奏だと思いました。
また、第2楽章を筆頭に、東響の弦の音とは、本当にチャーミングでした。

私は、ハイドンの交響曲のCDでは、ショルティの演奏が結構好きです。
評論家の先生方の評判はあまり良くありませんが、ピリオドアプローチではない“昔ながらの演奏”なのに、さすがはショルティだけあって、スピード感とアタックと迫力のある演奏に仕上がっています。
この日の秋山さんの“ピリオドアプローチではないけれども推進力のある演奏”を聴いて、「多少、ショルティのハイドンに通じるものがあるのかな?」と感じました。
「秋山さんの指揮で、もっとハイドンを聴きたい!」と思いましたが、東京ではおそらく無理でしょう。
広島交響楽団の「ディスカバリー・モーツァルト&ハイドン シリーズ」が聴ける広島の方がうらやましくなりました。

次に、諸井誠さんの曲ですが、単純に“音”を聴いている限りでは、結構面白く聴けました。
ただ、プログラムの冊子に書かれている作曲者本人による曲目解説には、「大幅な改訂を加えたこと」などしか書かれていません。
どこがバッハへのオマージュなのか、どういう狙いで書いた作品なのかは、わかりませんでした。
ですから、私の曲に対する理解度は低いと思いますが、この曲を魅力的に聴かせてくれた最大の功労者は、ヴァイオリン独奏の前橋汀子さんだったと思いました。

1995年の東響定期で、前橋さんのブルッフのヴァイオリン協奏曲を聴いたことがありますが、そのときの私の印象は「演歌の熱唱のような」というものでした。
こぶしを効かせるように、節回しに思い切った表情付けをした濃厚なブルッフでした。
私個人としては、そのときは「熱演だけど、ちょっと濃すぎるなぁ…」と感じましたが、それだけ感情を込めて弾いてくれるヴァイオリニストは、そう多くはないと思います。

この日の前橋さんは、さすがにロマン派の曲ではないので「演歌の熱唱」にはなりませんでしたが、現代音楽(?)とは思えないほど力を込めて、思い入れたっぷりに弾きました。
現代音楽の演奏でたまに出くわす「楽譜をとりあえず音にしてみた」というレベルの演奏ではなかったと思います。
勝手な推測ですが、諸井さんも(この演奏が作曲者の意図に合致していたかどうかは別として)ここまで思い入れのある演奏をしてくれるとは思っていなかったのではないでしょうか。

1階席やや後方の客席で聴いていた諸井さんは、舞台からの秋山さんと前橋さんの呼びかけに応じて立ち上がり、舞台に向かって拍手をしたり、お辞儀をしたりしていましたが、舞台には上がりませんでした。
1階席前方や2階席正面のお客さんは、全く見えなかったと思います。
私は、この曲を結構面白く聴いたので、もっと作曲者に拍手を浴びせたい気持ちになりました。

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2008年1月13日 (日)

コウト/プラハ響(2008/01/13)

2008年1月13日(日) 14:00
サントリーホール

指揮:イルジー・コウト
プラハ交響楽団


スメタナ:連作交響詩「わが祖国」全曲


ホールに入ると、舞台の上でハープ奏者二人が「ヴィシェフラト(高い城)」冒頭の練習をしています。まるで「今から我が祖国が始まりますよ~」と言うような最高の予告編で、気分はすっかり「わが祖国」モードに切り替わりました。

このコンサートのチケットを買ったのは、NHK-BSで放送された2005年11月のコウトさん指揮のN響の演奏会が素晴らしかったからです。
コウトさんはN響の定期会員だった1990年代に何回か聴いていますが、あまり記憶にありません。
しかし、その放送で聴いたブラームスの交響曲が推進力満点の迫力だったので、コウトさん指揮のコンサートに行きたくなりました。

また、2007年11月に聴いたチェコ・フィルの「わが祖国」が、(たまたま私の座った席の音響のせいかもしれませんが)私にとっては不完全燃焼だったので、チェコの指揮者とチェコのオケでのリベンジの意味もありました。
そして、その期待は、見事に満たされました。

オケの並びはチェロが右側に来る対向配置。
コンサートマスターを先頭にメンバーが入場し、次々に着席。
会場からは拍手が贈られます。
チューニングで何とも形容しがたい“チェコの香り”の音を確認した後、コウトさんが登場しました。

このオケの音は、言葉では形容しがたいのですが、まさにチェコのオケがボヘミアの曲を演奏する際に期待されるちょっとくすんだ音。
“透明感”とは対極にあるような音ですが、決して濁った音や汚い音ではありません。
フィラデルフィアやモントリオールとは全く違う音で、ウィーンとも違いますが、うっとりするような瞬間が多々あります。

“予告編”のあった「ヴィシェフラト(高い城)」冒頭のハープの出だしは、お約束通り指揮者は何もせずに立ったまま。
でも、何とも言えない間合いで演奏は進みます。
コウトさんが指揮を始めると、弦のアンサンブルが…、木管が…、金管が…、と、次々に妙技を繰り広げます。
ほんのちょっとしたフレーズでも、本当に丁寧に、しかし萎縮せずに歌います。
技術的にうまいオケは他にいくらでもあるでしょうが、この“チェコの音楽性”を“妙技”と言わないわけにはいきません。

「モルダウ」になるとハーモニーにさらに厚みが増し、うねるような音の流れが会場を包みます。
壮大なドラマを見るような「モルダウ」が終わったときには、拍手をしたい衝動に駆られました。
「やはりこの曲は演奏機会が他の5曲より多いから仕上がりが良いのかな?」と思いましたが、このハーモニーは「シャルカ」以降も継続しました。
宴会で夜が更けてみんな眠り込んだ後の、弦のザワザワという音は、この後の総攻撃を予感させる、少し背筋が寒くなる雰囲気を見事に表していたと思います。
私も少し背筋がゾクゾクしました。

「シャルカ」が終わったところで拍手をして良いのかどうか、会場は迷ったようで、最初はパラパラと拍手が起こりましたが、コウトさんが客席の方を向くと、盛大な拍手になりました。
ここで15分の休憩。
休憩後に登場したコウトさんを迎えた拍手は、さらに盛大でした。

「ボヘミアの森と草原から」「ターボル」「ブラニーク」と、“こうしてほしい”演奏が進みます。
単に“チェコの香り”を漂わせるにとどまらず、推進力と迫力で興奮させられたのはコウトさんの力量でしょう。
コウトさんの指揮の動作はスクロヴァチェフスキさんに似ているような気がしました。
手の動作だけでなく、ときどき口を開けてオケを煽るところも似ています。
譜面を見ながらの指揮でしたので、「わが祖国」の楽譜が6冊に分かれていることもわかりました。
なるほど、連作交響詩6曲なんですね。

この曲は、民俗色を漂わせる部分もありますが、シンフォニックな部分も多々あります。交響詩ですからあたりまえかもしれませんが、この日の演奏は、「交響」+「詩」を最適な配分で提示した、私にとっては理想に近い演奏でした。
演奏終了後はブラボーの声もかかり、盛大な拍手でした。

この日の会場は満席ではありませんでしたが、それなりにお客さんは入っていたと思います。
11月のゲルギエフでもこれくらいの入りでした。
当日券はS席とA席だけでしたが、確かにPブロックやLA、RAブロックは空席なし。
休日昼の公演で「ニューイヤーコンサート」と銘打っていましたが、会場のお客さんに浮ついた雰囲気は一切なし。
コウトさんの、あるいはチェコのオケの「わが祖国」を聴くのが目的で集まった聴衆は、平日夜の定期演奏会並みの集中力で聴いていたと思います。
定期演奏会並みにアンコールもなく、後味良く会場を後にしました。

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2008年1月12日 (土)

ブロムシュテット/N響(2008/01/12)

2008年1月12日(土)18:00
NHKホール

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
NHK交響楽団
(第1610回定期公演)

モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」


私は1985年4月から2000年2月までN響の定期会員でした。
その期間は4人の名誉指揮者が次々と来演していました。
デュトワさんの時代に移行した期間でもあり、スヴェトラーノフさんやプレヴィンさんが客演していた時期もありました。
今にして思えば、結構…いや、ずいぶん贅沢だったと思います。

しかし当時は「ブロムシュテットさんやサヴァリッシュさんが毎年のように聞けるのは当然のこと」と勘違いしてました。
(サヴァリッシュさんの最後の来日を「また次があるさ」とたかをくくって聞き逃してしまったのは苦い経験です。)
そうはいっても、当時もブロムシュテットさんが振る日は、かなりワクワクしたものです。
ニールセンの「不滅」やベートーベンの7番などの圧倒的な音響を懐かしく思い出します。

N響の定期会員を辞めた後は、ブロムシュテットさんは2001年にオーチャードホールで聴いただけで、NHKホールには足を運んでいませんでした。
そういうわけで、N響の名誉指揮者陣の中で唯一現役のブロムシュテットさんの演奏会を久しぶりに聴けるのを心待ちにしていました。

この日の席は1階席前方だったので、ブロムシュテットさんのお顔を間近で見ることが出来ました。
確かに、以前に比べれば「少し年をとったなあ…」というお顔をしていますが、とても80歳を越えている印象ではありません。
定期会員だった頃(つまり10年くらい前)に、「ブロムシュテットさんって、70歳になるとは思えない」と感じたのを思い出しました。
しかもこれは風貌の話しであって、歩く足元はまったくあぶなげなく、スタスタと歩いて登場するし、多少動作は少なくなったとはいえスクッと立ってきびきびとした動作の指揮ぶりです。
この様子なら、まだ2~3回は来日してくれるのではないか…と期待してしまいました。

1曲目のモーツァルトの交響曲は、当初発表の34番から変更になった曲。
34番も聴いてみたかった気がしますが、「プラハ」も好きな曲なので不満はありません。オケの並びは、第2ヴァイオリンが右側、チェロが左側に来る対向配置、コンサートマスターはペーター・ミリングさん(シュターツカペレ・ドレスデンのコンサートマスター)がゲスト・コンサートマスターとして座りました。
ブロムシュテットさんはこの曲は指揮棒を持たずに指揮。
ピリオド・アプローチではなく、伝統的な演奏の部類に入ると思いますが、第1楽章や第3楽章ではスピード感のある瞬間が多々あり、決して枯れた演奏ではありません。
ブロムシュテットさんは、ところどころで「シュッ」というような声(息?)を発して力を込めていました。
また、3楽章ではティンパニを「あれ?ピリオドアプローチ?」と思うくらい強打させていました。
一曲目から「ブラボー」の声が多数かかって、大喝采で休憩に入りました。

休憩時間に舞台上は、モーツァルトの小編成からブルックナーの大編成に配置転換。
モーツァルトでは「音が向かってくる」ような印象でしたが、後半のブルックナーでは「音に包みこまれる」ような印象に変わりました。
ブロムシュテットさんは後半は指揮棒を持っての指揮。
第1楽章からオケのメンバーは全力投球の様相です。
すでに体を揺らし、頭を振って弾いている人が何人もいます。
ひたすら美しい瞬間、分厚い響きの瞬間、激しい瞬間が交錯し、その中を美しいホルンの響きが高らかに貫く。
私の席はかなり前の方だったので、随所に出てくる弦の微小な音まで良く聞こえました。壮大な構築物の建築が終了したかのようなエンディングに、会場は一瞬息をのみ、ごく一部の人を除いて一呼吸置いてから盛大な拍手と「ブラボー」で熱演をたたえました。

ただ、欲を言えば、壮大なフォルテの後に残響がほとんど残らず、音がプッツリとぎれるのはやはり残念。
この日の私の席は、NHKホールの中でも比較的音の良い部類の席でしたが、それでも、もう少し残響のあるホールで聴いたら、もっと素晴らしかったと思います。
「赤坂、初台、池袋、横浜、川崎。…」という地名が、演奏中に頭に浮かんでしまいました。

開演前の室内楽
17:15
NHKホール2階北側ロビー

トランペット:井川明彦
ホルン:今井仁志
チューバ:吉川武典
ピアノ:竹島悟史

P.ガべイ:トランペット、ホルン、トロンボーン、ピアノのための
      「レクリエーション」(1958)


開演前の室内楽は比較的珍しい曲だと思います。
1楽章は楽しく弾む雰囲気の曲。私は、サン・サーンスの七重奏曲に通ずる雰囲気を感じました。
2楽章は一転して夜を思わせるような落ち着いた雰囲気。弱音器をつけたトランペットがムードを高めます。中間部は弱音器を外しましたが、終結部は再びつけていました。
3楽章は再び快活な曲。
小空間を埋めた聴衆から盛んな喝采が送られていました。

この空間は、定期会員だった頃の記憶では、弦などは結構残響感を伴って美しく響いていたと思いますが、この日の金管楽器では、かなりストレートに音が向かってくる感じでした。

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2008年1月 3日 (木)

東京交響楽団弦楽合奏団(2008/1/3)

2008年1月3日(木)15:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

MUZA ニューイヤーコンサート2008
~新春に贈る弦楽の響き~


東京交響楽団弦楽合奏団
ヴァイオリン:高木和弘(東響コンサートマスター)
フルート:甲藤さち(東響主席奏者)
チェンバロ:曽根麻矢子
ハープ:山崎祐介

ヴォーン・ウィリアムズ:「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番
サン=サーンス:ファンタジー
ドヴォルザーク:弦楽セレナーデ
グリーグ:2つの悲しき旋律~過ぎし春(アンコール)


この日の主役は、間違いなく高木和弘さんでした。
ヴォーン・ウィリアムズ、ドヴォルザーク、グリーグでは19~20人のアンサンブルを、指揮者無しとは思えない推進力のある演奏でリードしました。
サン=サーンスでは、ハープの山崎さんとのデュオで情熱的なソロを聴かせてくれました。
バッハでは、チェンバロの曽根さん、フルートの甲藤さんとのトリプルコンチェルト。

しかも、1曲目の後と、3曲目の後には(ステージ上の配置転換の合間に)マイクを持って出て来てトークもこなしました。
結構笑いのツボを刺激して話しがうまい!
このコンサートの最初の広告がミスプリで「弦楽合唱団」になっていたことを紹介し「最初の広告を見て来場された方には申しわけありませんが、今日は歌は用意していません」と言って笑いを誘っていましたが、後半のトークではその言葉と裏腹に、「大晦日に宿泊したホテルのロビーでのカウントダウンコンサートで、最後の曲が“私のお墓の前で…”だった」と、2~3秒歌ったりもしました。
場内のウケも良かったようです。

そういうわけで、2007年の4月に東響のコンサートマスターに就任した高木さんの実力を、指揮者なしのこの演奏会で、存分に感じ取ることができました。

しかし実を言うと、私がこの日、普段あまり行かないジャンルの演奏会のチケットを買ったのは、ソリストに主席フルート奏者の甲藤(かっとう)さちの名前があったからでした。

私は密かに(?)東京交響楽団の主席フルート奏者の甲藤さちさんのファンです。
甲藤さんの吹くフルートの澄んだ音色が大好きです。
東響の演奏会に行って、フルートの席に甲藤さんが座ると嬉しくなります。
(もう一人の主席の相澤さん、ゴメンナサイ。男女差別と言われそうですが、やっぱりオジサンよりはきれいな女性の方が…)(^^ゞ

ネットで検索してみると、東響の演奏会に行った人の感想で「甲藤さんのソロパートが良かった」というものがいくつかヒットします。
私が行かなかった2007/8/12のミューザ川崎での演奏会では「牧神の午後への前奏曲」と「ダフニスとクロエ」で甲藤さんのソロが聞けたそうで、「しまった!そこまで気が回らなかった!」と目から鱗でした。
(もっとも、事前に甲藤さんが出演する日かどうかを見分けるのは、素人の私には難しいですが…。)

2007/2/10のオペラシティでの演奏会は私も行きました。
プログラムにソリストとして名前が載っていたわけではありませんが、間違いなく甲藤さんが主役の一人だった演奏会でした。
http://c-music.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/2007210_2651.html

…というわけで“いつもの甲藤さんの音色によるブランデンブルグ協奏曲”を想像しながら楽しみにしていたら、なんと演奏前の高木さんのトークで「今日は甲藤さんは、黒い色の、木のフルートを吹きます」とのこと。
予想は外れましたが、このフルートの音色がなんとも暖かい。
普通のフルートに比べて演奏は難しそうで音量も小さめに聞こえましたが、チェンバロとの掛け合いには適した音色だったと思いました。
いつもとちょっと違う甲藤さんが聴けて嬉しかったです。

チェンバロの曽根さんは東響の演奏会にもソリストとしてときどき登場しているので聴いたことがありますが、ふだん私は舞台の右横(RAブロック)か後方(P席)に座っていることが多いので、その魅力を正確に理解していたとは言えません。
この日の演奏会は全席均一料金だったので、今まで一度も座ったことがないミューザ川崎の2階席正面の特等席に座りました。
したがって、曽根さんのチェンバロの繊細な音を存分に感じることが出来ました。
第1楽章のカデンツァは(チェンバロですから音が大きくなるわけではありませんが)結構情熱的な演奏だったと思います。

ヴォーン・ウィリアムズとサン=サーンスでハープを弾いた山本さんも、前面に出てくる役割ではありませんでしたが、この演奏会の雰囲気作りに重要な役割を果たしていたと思いました。

この日はニューイヤーということもあってか、東響メンバーの女性奏者もみんな赤系統のドレスで素敵な雰囲気でした。
チェロ(とチェンバロとハープ)以外は立っての演奏でしたが、みなさん立ち姿が美しい。
いつもは(RAブロックの私の席からは)背中しか見えないヴィオラ主席の西村眞紀さんのお顔も見えて、やっぱり“高い席”は良いなあ…と思いました。

アンコールの際に高木さんは「グリーグのラスト・スプリング」と曲目を紹介した後、わざわざ「演奏は東京交響楽団弦楽合奏団です」と念押しをして(場内や舞台上からも笑いが起きました)アピールを忘れませんでした。

ウィンナ・ワルツではないこのニューイヤーコンサートは、料金が格安なので気軽に聴きに行きましたが、聴き通してみると、選曲、ソリストとも、非常によく考えられた企画で、演奏の質も高く、定期演奏会レベルの演奏会だったと思いました。

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