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2010年9月12日 (日)

英国ロイヤル・オペラ「椿姫」(2010/9/12)

2010年9月12日(日)15:00
神奈川県民ホール

英国ロイヤル・オペラ2010年日本公演
ヴェルディ:椿姫

話せば長くなるのですが、要するに…。
降板したアンジェラ・ゲオルギューさまの代役のエルモネラ・ヤオさんが不調で、第1幕が終わったところで降板。
カバーキャストのアイリーン・ペレスさんという方が、第2幕から“代役の代役”で歌い、「なんじゃ、こりゃ」状態だった舞台は第2幕から持ち直して、終わってみれば、大喝采。
第1幕では「ああ、お金、損した」とさえ思いましたが、なかなか珍しい体験をさせていただいて。とりあえず結果オーライでした。

今回の英国ロイヤル・オペラの演目は、ネトレプコさまの「マノン」に、ゲオルギューさまの「椿姫」と告知され、私は、今年の来日団体の鑑賞はこの2つだけに絞り、二兎を追ってチケット争奪戦に参戦しました。
結果は「椿姫」一兎だけの入手。
まあ、それでも、ちょっと鼻にかかったところのあるネトレプコさまの声よりも、ゲオルギューさまの方が好みだったので、まあ満足していました。
(どちらも、CD、DVD、FM、テレビなどでしか聴いたことはありませんが。)

ゲオルギューさま降板のニュースがネット上を飛び交ったのは8月下旬。
正直、少なからぬ打撃を感じました。
でも、冷静に考え直してみれば、パッパーノさまの振る「椿姫」が観れることに変わりはなく、大きな期待度が軽い失望感を押さえ、公演を心待ちにしていました。

開演前の会場は、主役交代はすでに皆さん御承知のようで、落ち着いた雰囲気でした。
しかし、スターが出演するときの高揚感はなく、「まあ、お手並み拝見」といった感じでしょうか。
オケのチューニングがなかなか始まらず、ちょっと不審に思いながら待っていると、オペラ・ディレクターの方が通訳を伴って現れ、「主役交代」のお詫びを述べ、会場の拍手に対して「御理解をいただき感謝します」というような口上。
その後、ようやくチューニングが始まり、指揮者の登場となりました。

出だしのオーケストラは、まあまあ。
でも、ヴィオレッタが出てきて歌い始めると、「ん?」という感じになりました。
素人耳にも、声のコントロールが出来ていない雰囲気が伝わってきます。
それはともかく、パッパーノさまの振るオーケストラの響きも今ひとつ。
周りの歌手も、さほど凄いとも感じない。
コーラスだけは「さすが」と思いましたが、なんとも冴えない舞台に感じました。
3階席後方からは、ブーイングも出ました。
第1幕が終わったとき、ブラボー叫んだ人も少なからずいましたが、会場全体は、冴えない拍手で休憩入り。

この休憩時間のロビーは、何とも言えない静かな雰囲気でした。
私は「ロイヤル・オペラでも、スターが登場しないレパートリー公演は、この程度のレベルなのか…」とがっかりしました。
「帰りに、ロビーで売っているネトレプコさまの「椿姫」のCDを買って、家で口直しならぬ“耳直し”をしよう」
「第2幕もつまらなかったら、第3幕は聴かずに帰ろう」
「怪獣が登場して面白いと評判の、二期会の「魔笛」に行った方が良かったかな」
とさえ思いました。

重い足を引きずって客席へ戻り、第2幕の開演を待っていると、またオケのチューニングがなかなか始まりません。
オペラ・ディレクターが再び現れ、
「私が再び出てくるとは思わなかったでしょう。」
と言って会場の笑いを誘った後、
「お聴きのように、ヤオさんの声が不調で、これ以上歌えないので、この後は、カバーキャストのアイリーン・ペレスさんが歌います」
というような説明。
会場からは「もう。好きなようにして!」というような失笑も。

しかし“非常事態”に燃えたのか、それとも、主役の不調にイライラしていた指揮者が吹っ切れたのか、オケの音がガラリと雄弁に変わりました。
歌手陣もホッとしたのか、演技と歌唱に集中力が戻り、舞台は第2幕から「これなら、まあ、許せるよ」というレベルに持ち直しました。

“代役の代役”のアイリーン・ペレスさんは、小さな声で歌う場面でも、ホールの空間にによく通るなかなかの美声。
少なくとも主役をこなせるレベルにはあったと思います。
第2幕では「歌唱は問題ないけど、演技がちょっとぎこちないかな?」という感もありましたが、第3幕では結構演技も体を使った表現を豊かにこなしていたと思います。

第3幕開演前に、すぐオーケストラのチューニングが始まって、ホッとしました。
もう、オペラ・ディレクターは出てきませんでした。

正直言って、持ち直した後の第2幕、第3幕ですら、事前の“パッパーノさまの振る「椿姫」”の期待度を満たしたかというと、「100%ではないかなぁ」と思います。
歌手陣も、2007年のチューリッヒ歌劇場来日公演の方が圧倒されました。
(あのときは、エヴァ・メイさんが歌ったし、お父さん役はレオ・ヌッチさんが歌いました。)
でも、オペラのオーケストラが、一流指揮者の棒で雄弁に歌ったときの魅惑的な響きは満喫できました。
“代役の代役”、アイリーン・ペレスさんにはカーテンコールでブラボーの嵐。
オーケストラからもさかんに拍手が贈られていました。

とりあえず、終わった後、第1幕での「お金、損した」という気分を払拭して家路につけたのを喜びたいと思います。

なお、私事ですが、昨年の今頃、体調を崩し、せっかく入手したミラノ・スカラ座来日公演の最安席を無駄にしたことを思い出しました。
あれから1年。
健康管理の重要さを改めて思い知らされた1年でした。

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:リチャード・エア
美術:ボフ・クローリー
照明:ジェーン・カルマン

ヴィオレッタ:エルモネラ・ヤオ(第1幕)、アイリーン・ペレス(第2幕、第3幕)
アルフレード:ジェームズ・ヴァレンティ
ジェルモン:サイモン・キーンリサイド
ドゥフォール男爵:エイドリアン・クラーク
医師グランヴィル:リチャード・ウィーゴールド
フローラ・ベルヴォア:カイ・リューテル
ドビニー侯爵:リン・チャンガン
ガストン子爵:パク・ジミン
アンニーナ:サラ・プリング

ロイヤル・オペラ合唱団
ロイヤル・オペラハウス管弦楽団


201009121

201009122

2010年9月21日追記:

「椿姫」初日(12日)は上記の通り。
2日目(16日)はヤオさんが歌ったそうです。
3日目(19日)は再びヤオさんが第1幕終了後に降板し、ペレスさんが第2幕から歌ったと聞いて唖然。
そして、最終日(22日)は、なんとネトレプコさんが歌うと発表になりました。
もはや、初日を鑑賞した私には関係のない世界の出来事なのですが…。

確かに、チラシには「入場券ご購入にあたり、下記についてあらかじめご了承ください。」と明記されています。

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