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2012年6月30日 (土)

「アリベルト・ライマンと現代オペラの潮流」(2012/6/30)

2012年6月30日(土)14:00
日本生命日比谷ビル7階大会議室

シンポジウム
「アリベルト・ライマンと現代オペラの潮流」

(日生劇場開場50周年記念事業ライマン・プロジェクト)

司会:長木誠司 (音楽学・音楽評論)
パネリスト:
片山杜秀(音楽評論家)
下野竜也(指揮者)
高橋宣也(慶應義塾大学文学部准教授)
野平一郎(作曲家・ピアニスト)
高島勲(日生劇場芸術参与)

無料のイベントですが、内容はお金を払っても良いくらい充実。
その上、「メデア」の公演プログラム引換券もいただきました。

いや、この引換券目当てを目的とする気持ちが半分くらいはあったことは事実です。
こんなウマイ話しが、世の中に…。

最初に司会の方だったかな?
「現代音楽ファンとオペラファンは層が一致しません。
現代音楽とオペラの両方のファンが一堂に会する希少な機会です。」
というようなことをおっしゃって、パネリストが順番に、日生劇場でライマンのオペラを上演する意義をスピーチ。

片山さん:
「日生劇場は1963年10月開場です。
関西が地盤だった日本生命が、関東進出に際し、劇場を建てて存在感をアピールしようという趣旨だったようです。
したがって、“もしものことがあったときに、子供のために…”の生命保険会社らしく、子供向けの劇場というのが最初のコンセプトだったらしいです。
しかし、こけら落としがベルリン・ドイツ・オペラになって、設計した方?は驚いたそうです。」
など。

高橋さん:
「“メデア”の台本のグリツパルツァー氏は、“メデア”単独では不十分で、そこに至るまでの過程をさかのぼる必要があると考え、“金羊皮”という三部作としました。
第1部が“賓客”、第2部が“アルボーの船人”、そして第3部が“メデア”です。」
など。

野平さん:
「20世紀初頭は作曲家がオペラと違う方向で演劇的音楽表現を模索しました。
しかし1970年代あたりから作曲家が歌劇場に戻ってきています。
ちょうど作曲家がオクターブが書けない時代の後、書いても良い時代になったのと図式が似ています。
ライマン氏は、最初のオペラ作品は1000席程度のキール歌劇場でしたが、出世作の“リア”で、一般聴衆のためのの普通のオペラハウス、バイエルン国立歌劇場のために作曲したことが大きかったと思います。
オペラは、オペラ劇場の空間で、最後まで聴衆の緊張感を保つ必要があります。
劇場の大空間を、音で埋めなければなりません。」
など。

下野さん:
「“メデア”は、明確なビート(拍子)がほとんど感じられません。
これが緊張感の持続に貢献しています。
5月の読響定期でライマンの小品を演奏しましたが、リハーサルのとき、楽団員の皆さんの反応は、最初は“なんじゃこりゃ”でした。
しかし、リハーサルが進むと“いいね”に変わりました。
ライマン氏のスコアには、アレグロとか、アンダンテとか速度を表す言葉が書いてありません。
書いてあるのは、メトロノームでいくつという数字です。
しかし、日生劇場の空間に合ったテンポを探すのも指揮者の仕事だと思います。
R.シュトラウスがショルティにアドバイスした言葉は凄いです。
“テンポの決め方は?”(ショルティ)
“リブレットを読めば良い”(R.シュトラウス)
ライマン氏が音に与える“長さ”にも注目です。
言葉を伸ばすのは、女の人がキレるときによく使います。
“あなた、これ、どーゆーことーーーぉ?”
この作品は、オーケストラが79人です。
日生劇場のピットは、50人近くの弦楽器奏者でいっぱいです。
そこで、管楽器はステージ上で舞台を囲うように配置することにしました。
ちょうどコロシアムの雰囲気になります。
しかも、このオーケストラは、全員が一緒に鳴ることはありません。
ピットだけでは味わえないサラウンド効果をお届けできると思います。」
など。

休憩後は、休憩時間に提出された質問用紙への回答。

日生劇場で現代オペラを上演する意義は?

「欧州で、作曲家がオペラハウスに戻ってきている状況を日本ではあまり体験できていません。」(長木さん)
「オペラは音楽、演劇、バレエ、絵画などを含んだ、その時代の総合芸術でした。
現代はそれを、過去の作品の新しい演出だけで楽しんでいmすが、新しい作品で楽しんでも良いはずです。」(片山さん)
「“オペラは死にかけている芸術だ”と言っていたブーレーズが、(実現は厳しいかもしれませんが)2015年にスカラ座で新作上演の契約を結んでいます。
作曲家にとっては“どう受け止められるか?”というチャレンジです。
現代の表現として、作曲家がうったえるものを楽しんでいただきたいと思います。」(野平さん)
「この作品に限らず、現代オペラは暗い題材が多いです。
オペラは現代社会を映しているとも言えます。」(長木さん)
「過去の作品を演奏するようになったのは、メンデルスゾーンあたりからと言われています。
それまでは、常に新作の上演でした。
現代は、過去の作品の消化と、生まれてくる作品の上演とのバランスが取れていないいびつな状態とも言えます。
200年後の私たちの子孫が、ライマン氏の作品をどう感じるか?と思います。
しかし、現代の作曲家が、200年後の人類だけを相手にして、現代の聴衆を無視しているとは思えません。
20世紀音楽は突然変異のように現れたと思われていますが、ワーグナーにもドビュッシーにも兆しはありました。
本当は、連続変化しているのです。
第1次世界大戦と、第2次世界大戦による情報の欠落が、突然変異の印象を与えているのかもしれません。
私たち演奏する側が、例えばツェムリンスキーをもっと演奏するなどして、間を埋めることをすれば、理解が深まるかもしれません。」(下野さん)
posted at 17:52:50
「現代オペラは、一時期、音楽が複雑な上に、ストーリーも複雑で、演出も複雑で、聴衆の理解力を超えてしまった時期がありました。
ライマン氏は、音楽的要素を少し引き算して、演技や演出などの視覚効果やストーリーと合わせてちょうど良い作品にしたのが成功要因ではないかと思います。」(片山氏)

ライマン氏への委嘱は検討しなかったのか?

「委嘱の費用は、予算的に無理です。
上演にかかる費用に占める入場料収入の割合は、ドイツでも、うまくいっている劇場で20%台、イタリアの大半の劇場は10%未満です。
新国立劇場は25%くらいで、これはかなり優秀な部類です。」(長木さん)
「過去の日生劇場での新作上演は、全て他の団体の委嘱による共同制作でした。
一作だけ委嘱した、三島由紀夫台本、黛敏郎作曲のオペラで、作曲が間に合わず、スケジュールに穴が空いたというトラウマもあるかもしれません。
(子供向けミュージカルの委嘱はたくさん行われています。)
むしろ、日本人だけでライマン氏のオペラを上演することに意義があると思います。」(片山さん)

歌手は本当に暗譜しているのか?:

「スコアと上演映像を対比して聴くと、歌手はかなりの高効率で音符を音にして歌っています。
もちろん生の上演ですので完璧はあり得ず、多少の音の欠落は出ています。
ライマン氏くらいになると、そんなことは織り込み済み(想定内)で書いていると思います。」(野平氏)
「歌手だけで歌うと大丈夫なのに、オーケストラが微妙に違うことをする箇所があるので、歌手の皆さんにはお気の毒な(難しい)曲です。(下野さん)」

最後の方で高島さんが、ライマン氏がインタビューで語ったこととして
「異邦人として来て、その土地に馴染もうとするが、うまくいかないというのは、今のヨーロッパにも当てはまります。“メデア”は決して過去の作品ではありません。」
と。

途中、作曲のライマン氏、ライマン氏に「リア」のオペラ化を提案したフィッシャー=ディースカウ氏のインタビュー映像や、「メデア」と「リア」の(たぶん欧州での)上演舞台映像の映写あり。

14:00開始で16:50頃に終了。
パネリストの皆さんは、まだまだ話したそうでしたが、拝聴して私がメモした量はすでに盛りだくさん。
下野さんと野平さん、音楽評論家の片山さんは、普段聴衆に近い側に居るだけあって、つかみの話術も巧みだと、改めて感心しました。

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