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2012年7月19日 (木)

小泉和裕/都響(2012/7/19)

2012年7月19日(木)19:00
サントリーホール

指揮:小泉和裕
東京都交響楽団

(第738回定期演奏会Bシリーズ)

ベートーヴェン:「エグモント」序曲
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

小泉さんが代役なら、まあ仕方がないよ、許容範囲…などと、偉そうなことを考えていた自分が恥ずかしい!
特に後半の「悲愴」、どこがどうだったか覚えていないほど凄かった。
今日の都響は凄かった。
凄かったとしか言いようがないほど凄かった。
代役ではありますが「本来の位置」に立っている小泉さん以外の、何ものでもありませんでした。

一曲目からいきますと、「エグモント」序曲で、「うーーーん」…と。
暴言で申し訳ないのですが、少し前に小泉さんの指揮でベートーヴェンを集中的に聴く機会があったのですが、あれとは別物、別次元の素晴らしさ。
いや、紙一重なんですよ、物理的には。
でも、何かが違うんです。
“気”のようなものです。
もちろん定期だからということもあるでしょうが、都響のクオリティは、やはり格上。
本当に素晴らしい。

(もっとも、おそらく都響の皆さんは、大植英次さんの降板、指揮者交代、曲目変更で、「下手な演奏は出来ない」と、相当の危機感を持って臨んだ演奏会だったのでしょうね。)

小泉さんらしいしなやかな音、弾力性のある音が鳴りますが、その音の威力は大きい。
最強音では、音が飽和せずにスパッと上へ抜ける。
ピリオド風ではなくて何が悪い!
従来スタイル、正攻法で、堂々と構築した立派なベートーヴェンでした。

2曲目は究極のキセル、「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死。
しかし、だんだん冷静に聴くのが許されなくなってきます。
ふわっと音を…まるで催涙ガスでも散布されたかのように広げられると、聴き手のこちらは一瞬にして酩酊状態に陥り、目を泳がせて、身を任せるのみ。

そして後半のチャイコフスキー。
さらに凄い演奏で、第3楽章が終わっても客席は静まりかえり、聞こえたのはオケの皆さんの譜面をめくる音と小泉さんの息づかいのみ。
第4楽章もかなり進んでから「あれ?いつのまに?ワープしちゃったかな?」と我に返る有様。

(寝てませんよ、眠れませんよ、こんな演奏で。)

それでも、ところどころは覚えていて、特にクラリネットの音色は超・絶妙でした。
いや、オケ全体が、弦の合奏ですら、超・絶妙の名人芸のオンパレードだったと思います。
都響がハイクオリティなのはわかっていましたが、まさかこれほどとは…。

民俗的な側面や感傷的な側面をほとんど含まない、純粋に「音響」として鳴らした演奏だったように感じました。
それでもチャイコフスキーの音楽は、そういうアプローチをも十分に許容する音楽です。例えが適切かわかりませんが、カラヤン指揮による演奏のように(?)。

客席は、演奏中、本当に静か。
「エグモント」序曲だけは残響が消えるやいなやの拍手ではありましたが、「トリスタン」も「悲愴」も、余韻を壊さないだけ静けさを十分に保ってからの拍手開始。
特に悲愴の第3楽章と第4楽章の間合いは、小泉さんの動きに会場全体が集中していました。

「悲愴」終了後は、一回目のカーテンコールから、オケの皆さん、起立せずに小泉さんに拍手。
小泉さんが引っこんでいる間は、管楽器奏者の皆さんが、お互いに拍手し合っていました。

予定されていた大植英次さんの体調不良によるキャンセルは残念ではありましたが、それを取り返してお釣りが戻ってきたような今夜の定期。
よくぞ小泉さんのスケジュールが空いていました!
そして…。暴言は申し訳ないですが、小泉さんを聴くなら都響に限る…。
5月の定期も素晴らしかったですし…。

で、小泉さんの指揮にも、曲目変更にも、私個人は何の不満もないのですが、私にとって今回の演奏会は、二度目の大植さんの降板。
しかも、一回目も二回目も、代役の指揮者によって演奏されたのが「悲愴」。
今回は曲目変更による「悲愴」ではなかったのですが、前の週の大阪での大フィル定期を含めると、二回ともマーラーの9番が絡んでいますし…。
しかし、単なる偶然でしょう。
大植さんの御快癒を、心よりお祈り申し上げます。

20120719

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コメント

今晩の都響には、いつも以上に気合を感じました。小泉さんは期待に違わぬ指揮で、お書きになったとおり、余計なものを排した「音響」の素晴らしさに私も引き込まれました。こういうチャイコ、好きです。
来週の関西出張の際に、小泉=日本センチュリー響のブルックナー1番を聴きにいくつもりです。

投稿: 黒猫 | 2012年7月19日 (木) 23時44分

黒猫様
都響の楽団員のかたがたのツィートを拝読すると、演奏していた皆さんにとっても、おそらくずっと忘れないであろう「特別な演奏」だったようですね。

投稿: 稲毛海岸 | 2012年7月20日 (金) 22時43分

 あなた様がどこのどなた様が存じ上げませんが、
誠に素晴らしいことをお書きくださいました。
感謝申し上げます。
 私も、代役の小泉さん、聴きました!素晴らしかったです。
いつぞや、池袋の芸術劇場の改修工事の
時だったでしょうか、小泉さんと都響がブラームスの
交響曲第1番を演奏しました。それも、素晴らしかった!
ブラボー、出ました。都響の方も「ブラボー出ましたね」と喜んでいらっしゃいました。
 再び、昨日、2013年4月21日(日)雨模様の
サントリーホール、都響プロムナードコンサート。
演目は、チャイコフスキー第5番♪個人的に大好きな
曲なので、とても楽しみに行きました。
期待はいやおうなしに膨らみます。
そして、その期待に実に見事に応えてくれました!
あなた様のように上手に表現できませんが、
都響の演奏の巧みさ、と小泉さんの情熱的な指揮で
昨日もブラボー♪でした。
そして、客もその演奏に引きずり込まれ、まさに
「主客一体」といった素晴らしい「チャイ5」に
なりました。
うまく言えませんが、ほんと!素敵でした。
もし、あなた様もホールにいらしていたら、
ぜひ、この素晴らしさをコンサートレビューとして
書いて、webに発表してください。
 小泉さんと都響の素晴らしさを、わかってくださる
あなた様に、この思いをお伝えしたくて、
恥も外聞もなく、書かせていただきました。
これからも、あなた様の素敵なコンサートレビューを
楽しみにしております。友紀♪

投稿: 友紀 | 2013年4月22日 (月) 17時35分

友紀さま
拙文を目にとめて下さり、ありがとうございます。
小泉さん、いま、まさに肉体(老い始める前)と精神(円熟)が両立した、最高の働き盛りの年齢のような気がします。
もちろん、これからも小泉さんの進化(深化)は続くのでしょうから、目を離すことが出来ない指揮者です(若い頃は、こんなになるとは思いませんでした。暴言失礼。)
そして、都響の素晴らしさ、都響とのコンビネーションの良さも、特筆ものですよね。

投稿: 稲毛海岸 | 2013年4月22日 (月) 23時24分

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