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2012年7月の20件の記事

2012年7月30日 (月)

ルイジ/PMFオーケストラ(2012/7/30)

2012年7月30日(月)19:00
サントリーホール

指揮:ファビオ・ルイジ
PMFオーケストラ

ヴァイオリン:デイヴィッド・チャン
チェロ:ラファエル・フィゲロア


ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
R. シュトラウス:アルプス交響曲

正直、休憩時間に帰ってしまおうか…とも思ったのですが、後半は見違えるような演奏で、帰らずに聴いていて良かった!という、終わりよければすべてよし。
前半はタマゴのまま、後半は殻を破ったヒナ、一流のヒナでした。

最初のブラームスの二重協奏曲。どうも軽い感じが…。
ソリストもそうですし、オケの音も…。
スタイリッシュでモダンなサウンドのブラームスも「あり」だとは思いますが、やはりここまで徹底されると、私の好みとはかなりかけ離れているので…。
プロのタマゴの集団はさすがに上手。
技巧的には非の打ち所がないのでしょう。
それでも「何かが足りない」という感じがつきまとう。
紙一重の差なのだとは思いますが、一体となったオケの、凝集された音になりきれていないもどかしさ。
ルイジさんがウィーン交響楽団を指揮したらどういう音になるのだろう?と何度も思いました。
いや、ルイジさんの音づくりは、私があまり知らないだけで、実はこういう方向なのかもしれませんが…。
もう少し重厚さや渋みが欲しいと思ってしまう私は古い人間なのでしょうか?

しかし!

後半のアルプス交響曲は、ある意味、はじけちゃって、相当に高揚した演奏になりました。
出だしは少々音が不安定で「おやおや」と心配したのですが、夜明けで例のルイジさんがよく見せる半狂乱のような煽りを入れ、その後のオケの音は、喜びを発散するような魅惑的で艶やかなものに!
こうなると、元々、技量は高い若者たち、管楽器のソロはもちろん、弦楽合奏までが、名人芸のような魅惑的な音を奏でる。
音大オケで時折感じるような、減点を恐れるような縮こまった演奏ではない、まさしくプロのタマゴが殻を破る瞬間!

演奏が終わった後、カーテンコールの合間に握手をし合う奏者の皆さん。
解散となった後は、舞台上でメンバーどうしの抱擁が随所で繰り広げられていました。
私はこの演奏会だけを聴いたので、ここに至るまでの過程は存じ上げませんが、やはり、“TOKYO”の“SUNTORY HALL”での演奏会、メンバーにとっても、ルイジさんにとっても、それなりに“意味”を持つ演奏会だったものと拝察します。

なお、出番の少ないチェレスタ?の方は、ずっと総譜をめくっていました。
きっと志のある方なのでしょう。

ルイジさんが歴史のある常設プロオケを振れば違った演奏になるのでしょうが、ルイジさんの指揮の動作は、学生相手の親切な拍子取りなどではなく、完全にプロを相手に想定したものだったのではないでしょうか?
もちろんプロになれば、2~3日で定期演奏会をひとつ仕上げなければならないでしょうから、皆さん、まだこれからではありますが、この経験が基盤となって成長して下されば、と思います。
(スポンサーでもないのに、偉そうにすみません。)

私の個人的感想はともかく、前半から会場は湧いていました。
入場者数はあまり多くはありませんでした。
“身内”も少なからずいらしたのかな。
2階正面の席で、立ち上がって、応援団のような大きい動作(手旗信号のようなと言った方が良いかも)で拍手をし、ブラボーを連呼、連呼、連呼している方までいらっしゃいました。

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2012年7月29日 (日)

梅田俊明/読響(2012/7/29)

2012年7月29日(日)15:00
昭和音楽大学 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

指揮:梅田俊明
読売日本交響楽団

(フェスタサマーミューザKAWASAKI2012)
ヴァイオリン:小林美恵

シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
サラサーテ:カルメン幻想曲
サラサーテ:アンダルシアのロマンス
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
ビゼー:「カルメン」組曲より
(第1幕への前奏曲、アラゴネーズ、衛兵の交代、ハバネラ、セギディーリャ、闘牛士の歌、間奏曲、アルカラの竜騎兵、ジプシーの踊り)

1月の神奈川フィル定期で聴いて好印象だった松田理奈さん、体調不良により降板とのことで、私は前日の夜にミューザのホームページで知りました。
7月27日付だったので、2日前の告知だったようです。

正直、松田理奈さん目当てでチケットを購入したようなものなので、降板は非常に残念でしたが、体調不良とあらば、今後のためにも無理はなさらない方が絶対に良いので、御快癒をお祈り申し上げるのみです。
小林美恵さんは、かなり前に、小品(ミニ協奏曲)を日フィルで聴いたことがあって、その時の印象がかなり良かったので、まあ、小林さんなら…と足を運びました。
しかし…。

小林美恵さんは3曲とも暗譜、全身を大きく使っての熱演。
しかし、最初のカルメン幻想曲では…。
どうだったのでしょう?
どれだけ準備の時間がとれたのかは部外者の私にはわかりませんが、小林さんならもう少し上のレベルが…という気もしないでもありません。
(偉そうにすみません。)
アンダルシアのロマンスはゆったりとした曲で、まずまず。
そして最後のツィゴイネルワイゼンは、かなり安定した技巧でドライブし、終わり良ければすべて良し?
でも「あの日フィルでの感動をもう一度!」という期待で聴きに行った私は、そこまでは帳消しに出来ませんでした。
次回は代演でない演奏で聴きたい方です。
(そう言えば、ゴールデンウィークの新百合ヶ丘での小川典子さんとのデュオは、私はチケットを買ったのですが、風邪をひいてしまい、予定をトリミングして、聴きに行かなかったのでした。
すみません、私が悪うございました。)

で、松田理奈さん降板で驚いたら、なんとゲスト・コンサートマスター(ミストレス)に日下紗矢子さん!
内側に小森谷さん。
男性奏者が多い読響のメンバー、日下さんのリードにホイホイとノってしまい(?)やる気の出ること!
いや、もちろんマエストロの棒が一番の要因だと思いますが…。

冒頭のシャブリエの狂詩曲「スペイン」からして「今日の読響は、良い時の読響!」と思いましたが、「カルメン」組曲では、さらにやる気満々の演奏。
梅田マエストロは、ミニ協奏曲3曲では楽譜を見て振っていましたが、オケの曲は暗譜での指揮。
肩に力の入ったところなく、最小限の動き、しかし、その最小限の動きの、ここぞというツボでの気合いの入れ方、俊敏な身のこなしは実に音楽的で、見ていても快感!
素人の私にはわかりませんが、オケの皆さんも、束縛されず、しかし要所を締められて、演奏しやすかったのではないでしょうか?
仮にカンブルラン様が振ったら、この日の音とは違う系統の音が鳴るものと想像しましたが、こういう熱い演奏も十分にありです。

「ふん!何よ!若い娘がトップに座ったら、みんな鼻の下を伸ばしてノリノリの演奏をしちゃって!」と思ったかどうかはわかりませんが、フルート首席の倉田さんも「私だって凄いのよ」と言うような有無を言わせぬ美しいソロ。
(冗談です。
倉田さんも十分に若い実力者です。)

この日の読響は、木管も金管も、ソロが本当にうまかった。
日下さんのリードする弦楽器群も、一丸となっての好演。
ソリスト降板だけは残念でしたが、これだけの演奏が聴ければ、聴きに行った甲斐があったと言わなければなりません。

なお、蛇足ですが、オペラの歌手交代はともかく、指揮者やソリストの交代は、私の場合、今年は幸い、あまり多くはありません。
東響川崎名曲での上原彩子さん代演、都響定期の大植英次さん降板による小泉和裕さん代演くらいでしょうか。
しかし、なんとなく多いように錯覚する(「また?」と思ってしまう)のは、降板を知った時のインパクトの大きさからでしょうか?
厳密に言うと、3月の藤原歌劇団「フィガロ結婚」も指揮者交代ですが、あれは、チケット発売前の、しかもマエストロ・ゼッダへの交代なので無問題。
いや、あれはあれで「あ、チケット買わなきゃ!」と、インパクトが大きかったですけれけど。

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2012年7月28日 (土)

ミンコフスキ/オーケストラ・アンサンブル金沢(2012/7/28)

2012年07月28日(土)14:00
横浜みなとみらいホール

指揮:マルク・ミンコフス
オーケストラ・アンサンブル金沢

ピアノ:ギョーム・ヴァンサン、田島睦子

ヴァイル:交響曲第2番
プーランク:2台のピアノのための協奏曲
プーランク:2台のピアノのための協奏曲~第3楽章
(アンコール)
ラヴェル:マ・メール・ロワ(バレエ版・全曲)
ラヴェル:マ・メール・ロワ~終曲(アンコール)

前半、個人的体調により少し眠かったので、偉そうに感想を述べる立場にありませんが、ハイテンション、爆演一歩手前のギリギリで品位を保った演奏かも。

ヴァイルの交響曲第2番は、私は、オネゲルやマルティヌーなどの大戦の時期に書かれた曲と通ずる、形容し難い暗雲のようなものを感じましたが、まあ、それは個人的感想として、この曲をミンコフスキさんの指揮で、生で聴ける機会を得たことを、まず感謝。

続くプーランクの協奏曲は、プログラム冊子によれば、OEKは演奏経験豊富とのこと。
軽快で(軽妙と言った方が良いかもしれません)、スピード感、スリリング感を、独奏者ともども、気合い十分の演奏でドカンッと。
終楽章(第3楽章)がアンコールとして再度演奏されました。
少々眠かった私も(寝入ってはいないと思いますが…)、ここに至って目も冴え、今度は集中して聴けました。
楽しい、にぎやか、嬉しい!

休憩後のマ・メール・ロワは、私はCDも含めて、バレエ版を聴いたのは初めてかもしれません。
なんとなんと、素晴らしい曲にグレードアップしているではないですか!
「ダフニスとクロエ」の組曲と全曲の違いくらい、違う印象!
私はこの曲の組曲はやや苦手な曲だったのですが、バレエ版によって苦手を克服しました!(たぶん)
断片(失礼!)の陳列ではなく、全体の統一感をもった素晴らしい曲です。
いや、そう感じたのは、ミンコフスキさんの指揮のおかげでしょうか…。
繊細!繊細!美しい限りの繊細!
微弱音の美しさ、そこからつなぎ目なく連続変化で、ふわっと大音量へ。
古楽での暴力的(失礼!)な叩きつけるような印象は全くありません。
極上の香しい音に包まれる幸せ!

アンコールにマ・メール・ロワの終曲をもう一度。
こういう「本編をもう一度」というアンコール、私は大好きです。
前半、個人的体調で眠かったのですが、後半は集中して聴け、ミンコフスキさんの別の面(私が知らないだけかもしれませんが…)を聴けた喜びは大きいものがありました。

私はオーケストラ・アンサンブル金沢は、数年に一回聴いているだけですが、その数少ない体験に照らして、音が格段に向上した印象。
もちろんミンコフスキさん効果もあるのでしょうけど。
2日前のサントリーホールでの公演のチケットを持っていたのに、都合が悪くなり、行けませんでした。
2回行けなかったのは残念!

そう言えばこの演奏会、会場に着いたら、開演前のロビー・コンサートをやっていて、もう最後の方でした。
やるのを知らなかったのは私だけかもしれませんが、知っていればもっと早く行ったのに…。
ドビュッシーの弦楽四重奏曲だったのかな?
(2012/7/29追記:OEK公式ツィートによれば、ラヴェルだったそうです。)
後ろの方から見ていたので良く見えませんでしたが、引き上げる姿に第2ヴァイオリンのトップの方のような姿が見えましたので、もしかしたらトップ奏者の四重奏だったのでしょうか?
結構熱い演奏だったような…。

あと、ロビーで売っていた金沢のお菓子、550円を買ったら、ポストカードとボールペンをいただきました。
利益度外視。
これは「金沢までオーケストラ・アンサンブル金沢を聴きに来て下さいね!」というメッセージだと受けとめました。
前向きに検討させていただきます。

20120728

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2012年7月27日 (金)

新国立「アイーダ」(2012/7/27)

2012年7月27日(金)17:00
新国立劇場

ヴェルディ:アイーダ(コンサート形式、カットあり)
(日中国交正常化40周年記念
2012「日中国民交流友好年」認定行事)

チャイナ・パワー炸裂!
アイーダ、凄過ぎ!
これでは、わが国を代表する歌手の皆さんも負けずにパワーで応酬せざるを得ない!
広上マエストロの指揮するオケも、情感の旋律と、ドラマのパワーを、音で体現していました。

白寿ホールでの終演が16:30頃になり、少々焦りました。
タクシーを使おうかとも思いましたが、主催者挨拶が約15分とのことだったので、当初の予定通りバスにしました。
初台まではすぐでした。
余裕で5分前に着きましたた。
歩いても行けると思いますが、この暑さではやってみる気にはなりません。

閑話休題…。

いつもと異なり、開演前の会場には、中国語の場内アナウンスも流れます。
開演前に日中の劇場のトップ(?)お二人が挨拶。
日本語→中国語、中国語→日本語の通訳付き。
その後、合唱、オケが入場して演奏開始。
ピットにはカバーがかけられ、舞台上にオケが並びます。

歌手は指揮台の左、下手側に椅子と譜面台を置いての歌唱。
ただし、アイーダの和慧さんだけは、譜面台を置かず、完全に暗譜での歌唱、パワー全開、劇的、刺激的!

アムネリスの清水華澄さんも譜面にはさほど目をやらずにパワーで対抗!
二人の応酬には圧倒されました。

ラダメスの水口聡さんは譜面台を高くし、譜面を1ページ1ページ、めくりながらの歌唱でしたが、迫力では負けていません。
最後まで十分に、アイーダ、アムネリスと渡り合っていました。
しかし、第3幕、第4幕では、ひんぱんに水分補給し、かなり、めいっぱいまで頑張った様子。

主役3人以外の歌手の皆さんも、十分過ぎるほどの好演。
広上マエストロ指揮する東京フィルも好演、マエストロの鼻息付き。
演奏会形式でここまでやってくれれば、私はもう、何も言うことなし。
劇場の音響的には、合唱に不利な配置だったかもしれませんが…。

最初はいつもと異なる音響に少し戸惑いました。
オケの音が少し遠い、合唱はもっと遠い。
やはりこの劇場は、オケはピットに入って演奏する前提の音響設計であることを実感。
冒頭で一瞬、独唱歌手の皆さんが微妙に揃わない箇所も…。
しかし、曲が進むと解消されていきました。

カットの箇所は、プログラム冊子(無料!)の「聴きどころ」のページに記載あり。
個人的には、第2幕第1場、第2場のバレエ音楽や、裁判の場面のカットは残念。
(それ以外にもカットあり、です。)
ちなみにアイーダトランペットは、2階の舞台寄り両サイドの席での演奏でした。

演奏会形式とは言え、旬の歌手の熱唱が聴けて、東フィルもこれだけ好演すれば言うことなし。
ただ、ラダメスの水口聡さんは、相当にはりきったようで、後半の幕では「力、出し切り、ふり絞り」の様子。
「2日後の最終日は大丈夫ですか?」という気も…。
私は行く予定はないので、確認は出来ませんが…。

【指揮】広上淳一

キャスト
【アイーダ】和慧(He Hui ヘー・ホイ)
【ラダメス】水口聡
【アムネリス】清水華澄
【アモナズロ】袁晨野(Yuan Chenye ユアン・チェンイェ)
【ランフィス】妻屋秀和
【エジプト国王】田浩江(Tian Hao Jiang ティエン・ハオジャン)

【合唱】新国立劇場合唱団・国家大劇院合唱団(NCPA Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

20120727

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加藤訓子(2012/7/27)

2012年7月27日(金)15:00
白寿ホール

マリンバ・パーカッション:加藤訓子
(Hakuju リクライニング・コンサート
第91回 打楽器の日
ルーツ・オブ・マ/リンバ~KUNIKOワンダーランド)

加藤訓子:ウッド・インスタレーション
ルーツ・オブ・マ/リンバⅠ - Fairy of marimba
沖縄民謡(加藤訓子編):てぃんさぐぬ花
ルーツ・オブ・マ/リンバⅡ - asia
アントニオ・カルロス・ジョビン(加藤訓子編):イパネマの娘
ルーツ・オブ・マ/リンバⅢ - Mama's marimba
J. S. バッハ(加藤訓子編):マタイ受難曲よりコラール
ルーツ・オブ・マ/リンバⅣ
アルメニア民謡(A. コミタス/加藤訓子編):Tinar les
アメイジング・グレイス(加藤訓子編)
スティーヴ・ライヒ(加藤訓子編):シックス・マリンバ・カウンターポイント(1986/2010)
アルヴォ・ペルト(加藤訓子編):鏡の中の鏡(1978)

白寿ホールは初めて行きました。
リクライニング・シートも気になりましたが、視覚を優先して前の方の席にしました。
その狙いは(私にとっては)吉と出ました。
演奏会冒頭、舞台が暗い中、加藤さんは、吊した木片(?)を鳴らしながら入場。
舞台上を歩き回り、床に直置きした木などをバチで叩いて鳴らす。
その後、トーク。
少し、息がはずんでいます。

床に足を前方に出して座り、ひざの上に木片を4個くらい並べて叩いて、マリンバの原形のような音階を鳴らしてみせたり。

その後は、「5オクターブ出るのです」とおっしゃって、大きなマリンバの演奏。
てっきり、鋭いリズムが鳴るかと予想していたら、全く違いました。

マリンバの音がこんなに柔らかく、優しいものだとは!!

これは究極のヒーリング・ミュージック!!

客席ではうつらうつらしている人が結構居ましたが、確かに、このまま寝てしまいたいほど心地良い。
癒しの音に包まれる快感!!

客席のリラックス、まったりとした雰囲気とは裏腹に、奏者の加藤さんは合間にタオルで汗を拭き、水分補給をしながらの演奏。
トークも交えての演奏ですが、かなり息がはずんでいる様子。
「5オクターブ」のマリンバを一人で奏でるのは相当の重労働のようです。

舞台上にはスピーカーが多数設置されており、後半の方は、事前に多重録音された音源との共演。
スピーカーはあちこちを向いており、後方の壁面には反響のための板も設置。
天然、プラス、人工…のサラウンド。
音でマインドコントロールされる快感!

行ったことがないホールだし、マリンバも普段聴かないから…という程度で買ったチケットでしたが、大当たり!
宗教的な儀式のような気さえしてくる、α波出まくりの体験でした。

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2012年7月23日 (月)

カリニャーニ/読響(2012/7/23)

2012年7月23日(月)19:00
サントリーホール

指揮:パオロ・カリニャーニ
読売日本交響楽団

(第551回サントリーホール名曲シリーズ)
ヴァイオリン:南紫音

〈ドビュッシー生誕150年〉
ドビュッシー(ビュッセル編):小組曲
サン=サーンス:ハバネラ
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
パガニーニ:カプリース第10番
(アンコール)
サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」
プッチーニ:「マノン・レスコー」間奏曲
(アンコール)

一週間前の二期会のオペラで「これまでコンサートで聴いていたカリニャーニさんは何だったのか!」などと偉そうに言っておきながら、そうツィートした舌の根も乾かぬうちに、臆面も無く、読響の演奏会へ。
あれはあれ、これはこれ。
そして、私のこれまでの数回のカリニャーニさんの読響客演の鑑賞の中でベストの演奏だったかもしれません。
2週続けて、マエストロのオペラとコンサートが、両方聴けた幸せ!

冒頭の小組曲では、ふわっと立ち上がる音が心地良い。
オペラ的な甘美な旋律…などと感じるのは思い込みのせいかもしれませんが、弦楽器は果汁がしたたり落ちるかのような、果肉プルルンのような(?)美しさ。
終曲ですら、鋭角的にならずに…。

南紫音さんの独奏によるサン=サーンスの2曲は、「こりゃオペラだよ」と言いたくなるような伴奏。
それも相まって、ヴァイオリン独奏は、技巧的歌唱のソプラノ歌手のような…と言ったら南さんに失礼ですかね。
劇的に、甘美に、縦横無尽に、歌い、叫び、また歌う。
南紫音さんのアンコールは、無伴奏で、パガニーニとのこと。
これはこれでスリリングで良かったと思いますが、本編の“ミニ協奏曲”の方が、より酔わせてもらった印象も多少…。
贅沢過ぎる感想ですが…。
でも、こういう“ミニ協奏曲”は、意外とフルの協奏曲とは異なる難しさがあると思います。
それを、南さんは、そしてバックのオケも、十二分に魅惑的に聴かせてくれました。

後半の交響曲第3番「オルガン付き」も、第1楽章後半の甘美な部分はもう、悶絶しそうな美しさ。
それ以外の劇的な音の迫力はギリギリの節度で踏みとどまる、煽りの一歩手前。
しかし、カリニャーニさんの指揮の動作は、ところどころ脱力してみせたりして、余裕のドライヴ。

アンコールは「マノン・レスコー」の間奏曲。
演奏会冒頭から「やっぱりオペラのマエストロだよ、この歌い回し」「次回はぜひオペラ名曲集を!」などと先入観(いや、後遺症?)で聴いて来ましたが、最後は正真正銘の…。

マエストロの読響客演を全部聴いているわけではありませんが、私の鑑賞経験の中では読響のコンディションが一番良かったかもしれません。
交響曲の演奏終了時に、オルガンの残響が消える前にブラボーを叫んだ方がいらしたことは忘れることにしましょう。

なお、ひとつの仮説、単なる憶測ですが、これまでのマエストロの読響客演は、比較的スケジュールがタイトな来日が多かったような気もします。
今回は二期会を含めて比較的長期間の滞在で、もしかして、マエストロのコンディションも良かったのでしょうか?
いや、それは気のせいでしょう。
指揮者は時差ボケには慣れているでしょうし。

201207231

201207232

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2012年7月22日 (日)

スダーン/東響(2012/7/22)

2012年7月22日(日)14:00

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団

(名曲全集第79回)
テノール:チャールズ・キム
バリトン:ヴォルフガング・ホルツマイア
男声合唱:東響コーラス

マーラー:さすらう若人の歌
リスト:ファウスト交響曲

昨夜「これでもう、仮に死ぬまでファウスト交響曲が聴けなくても、わが人生に悔いはない」と思ったのですが、「でも、もし仮に、今日2日目の演奏を聴かなかったら、死ぬまで後悔するかもしれない」と再考し、川崎で再体験。
以前にも、同じようなことを書いたような気がしますが…。)
まだ少々疲れていたけど、行ってしまいました。
ホール内の環境はサントリーホールとは比較にならないですが、演奏そのものは今日も素晴らし過ぎ!
集中力は昨日ほど保てませんでしたが、それでも聴きに行って良かったです。

一曲目のさすらう若人の歌は、昨日に続いて今日も、個人的体調により眠かったのは、まあ、昼食後だし、想定の範囲内…です…。
今日は反対側ではない(そういう席はない)ので、声がストレートに伝わって来て気持ち良いですし。

ファウスト交響曲は、サントリーホールほど素早く出て来れないホール構造のためか、独唱と合唱は第3楽章の前に入場し、起立したまま。
川崎市教育文化会館は、5月にも何十年ぶりに来て、想像していたほど音響は劣悪ではないと感じましたが、本日も同様の印象。
もちろん、ミューザとは比較対象にすらにならないレベルですし、空調の暗騒音(「暗」は要らないかも?)は弱音部でかなり耳につきます。
もちろん、パイプオルガンはありません。
それでも、そんなホールであっても、スダーン監督の指揮する東響が演奏するなら、私にとっては無問題です。

個人的体調により、今日はファウスト交響曲の第2楽章あたりでかなり眠かったのは、昼食後のためでしょうか?
それとも、昨日一度聴いたという安心感でしょうか…。
寝入ってはいなかったと思いますが、100%の自信はありません…。
でも、第3楽章はバッチリ覚醒して聴けました。

昨日同様に素晴らしかった…と言うのはあまり芸がないですが、この残響僅少のホールでの演奏で、サントリーホールでの演奏と比べて、音色面でも、さほど遜色無いと感じたのは、実は驚異的なことなのではないでしょう?

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2012年7月21日 (土)

スダーン/東響(2012/7/21)

2012年7月21日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団

(第602回 定期演奏会)
バリトン:ヴォルフガング・ホルツマイア
テノール:チャールズ・キム
男声合唱:東響コーラス
《東響コーラス創立25周年記念①》

マーラー:歌曲集「さすらう若人の歌」
リスト:ファウスト交響曲

スダーン監督と東響が絶好調なのは、ふつうは想定内。
しかし今夜は、元々高い期待を遥かに凌駕する、想定外の超名人芸集団!
独唱も合唱も間際に出てきても違和感なしのハイテンション!
恐れ入りました。

この日は私は、朝から都内某所で所用があり、17時に解放されて、余裕でサントリーホールへ。
しかし、たいしたことをしていないのに意外と疲れるもので、ホールに着いた時はトリプルヘッダーの体感。
お疲れモードで東響定期へ。

そんなこともあって、前半は、私の個人的体調により今ひとつ集中力なし。
寝なかったですけど。
演奏、歌唱は、たぶん良かったのでしょう。
“反対側”のハンディをあまり感じなかったですし、暗譜で身ぶりを交えての情感込めた歌いっぷりでしたし。

休憩後も私は、お疲れモードが持続。
なのに、なのに、疲れているのを自覚しているのに、集中力が全く途切れない。
ステージ上から立ち上がり、ホールの空間を満たした音は、極上も極上、もしかして私が聴いたスダーン監督と東響のベストの演奏では?
パスしなくて良かった。
驚異的な演奏でした。

弾力性のある音なのに切れ味が鋭いという、相反するような特徴を兼ね備えた音。
クリアーで分解能は十分にあるのに溶け合った音。
しかも、隅々に至るまで音色や表情が徹底されています。
これが、おそらく、偶然の産物などではなく、綿密なリハーサルから生まれた名演なのでしょう。

独唱と合唱は出番の間際の登壇。
それでもいきなり全開で全く途切れない緊迫感。
特に独唱のキムさんの伸びのある高音域は輝かしいばかり。
オルガンも加わっての圧倒的なクライマックスへ。

私の席からは、普段はスダーン監督の息づかいの音はあまり聞こえないのですが(以前、オペラシティのP席で聴いたときに驚いたくらいです)、この日は、終始、相当に伝わって来ました。
スダーン監督も、相当に、いつも以上に、気合いが入っていたのかもしれません。

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2012年7月19日 (木)

小泉和裕/都響(2012/7/19)

2012年7月19日(木)19:00
サントリーホール

指揮:小泉和裕
東京都交響楽団

(第738回定期演奏会Bシリーズ)

ベートーヴェン:「エグモント」序曲
ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

小泉さんが代役なら、まあ仕方がないよ、許容範囲…などと、偉そうなことを考えていた自分が恥ずかしい!
特に後半の「悲愴」、どこがどうだったか覚えていないほど凄かった。
今日の都響は凄かった。
凄かったとしか言いようがないほど凄かった。
代役ではありますが「本来の位置」に立っている小泉さん以外の、何ものでもありませんでした。

一曲目からいきますと、「エグモント」序曲で、「うーーーん」…と。
暴言で申し訳ないのですが、少し前に小泉さんの指揮でベートーヴェンを集中的に聴く機会があったのですが、あれとは別物、別次元の素晴らしさ。
いや、紙一重なんですよ、物理的には。
でも、何かが違うんです。
“気”のようなものです。
もちろん定期だからということもあるでしょうが、都響のクオリティは、やはり格上。
本当に素晴らしい。

(もっとも、おそらく都響の皆さんは、大植英次さんの降板、指揮者交代、曲目変更で、「下手な演奏は出来ない」と、相当の危機感を持って臨んだ演奏会だったのでしょうね。)

小泉さんらしいしなやかな音、弾力性のある音が鳴りますが、その音の威力は大きい。
最強音では、音が飽和せずにスパッと上へ抜ける。
ピリオド風ではなくて何が悪い!
従来スタイル、正攻法で、堂々と構築した立派なベートーヴェンでした。

2曲目は究極のキセル、「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死。
しかし、だんだん冷静に聴くのが許されなくなってきます。
ふわっと音を…まるで催涙ガスでも散布されたかのように広げられると、聴き手のこちらは一瞬にして酩酊状態に陥り、目を泳がせて、身を任せるのみ。

そして後半のチャイコフスキー。
さらに凄い演奏で、第3楽章が終わっても客席は静まりかえり、聞こえたのはオケの皆さんの譜面をめくる音と小泉さんの息づかいのみ。
第4楽章もかなり進んでから「あれ?いつのまに?ワープしちゃったかな?」と我に返る有様。

(寝てませんよ、眠れませんよ、こんな演奏で。)

それでも、ところどころは覚えていて、特にクラリネットの音色は超・絶妙でした。
いや、オケ全体が、弦の合奏ですら、超・絶妙の名人芸のオンパレードだったと思います。
都響がハイクオリティなのはわかっていましたが、まさかこれほどとは…。

民俗的な側面や感傷的な側面をほとんど含まない、純粋に「音響」として鳴らした演奏だったように感じました。
それでもチャイコフスキーの音楽は、そういうアプローチをも十分に許容する音楽です。例えが適切かわかりませんが、カラヤン指揮による演奏のように(?)。

客席は、演奏中、本当に静か。
「エグモント」序曲だけは残響が消えるやいなやの拍手ではありましたが、「トリスタン」も「悲愴」も、余韻を壊さないだけ静けさを十分に保ってからの拍手開始。
特に悲愴の第3楽章と第4楽章の間合いは、小泉さんの動きに会場全体が集中していました。

「悲愴」終了後は、一回目のカーテンコールから、オケの皆さん、起立せずに小泉さんに拍手。
小泉さんが引っこんでいる間は、管楽器奏者の皆さんが、お互いに拍手し合っていました。

予定されていた大植英次さんの体調不良によるキャンセルは残念ではありましたが、それを取り返してお釣りが戻ってきたような今夜の定期。
よくぞ小泉さんのスケジュールが空いていました!
そして…。暴言は申し訳ないですが、小泉さんを聴くなら都響に限る…。
5月の定期も素晴らしかったですし…。

で、小泉さんの指揮にも、曲目変更にも、私個人は何の不満もないのですが、私にとって今回の演奏会は、二度目の大植さんの降板。
しかも、一回目も二回目も、代役の指揮者によって演奏されたのが「悲愴」。
今回は曲目変更による「悲愴」ではなかったのですが、前の週の大阪での大フィル定期を含めると、二回ともマーラーの9番が絡んでいますし…。
しかし、単なる偶然でしょう。
大植さんの御快癒を、心よりお祈り申し上げます。

20120719

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2012年7月16日 (月)

二期会「カヴァレリア・ルスティカーナ/パリアッチ(道化師)」(2012/7/16)

2012年7月16日(月・祝)14:00
東京文化会館 大ホール

東京二期会オペラ劇場
マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ
レオンカヴァッロ:パリアッチ(道化師)

これまでコンサートで聴いていたカリニャーニさんは何だったのか!…と言ったら言い過ぎですかね?
まさに、これこそが、カリニャーニさんの真の姿!
オペラのマエストロ!
今まで私は、カリニャーニさんのことを全くわかっていなかった!…と思いました。
(読響さんに喧嘩を売っているわけではありません。)

オペラは最終日に観るに限ります!
もう一回、観に来たい!
でも、もう公演はない…。
お財布にも優しい…。

まず、1作目の「カヴァレリア・ルスティカーナ」。
カリニャーニさんの指揮する東京フィル、凄まじい!
ハリウッド映画のサウンド・トラックなど敵でありません!
(ジョン・ウィリアムズさんに喧嘩を売っているわけではありません。)
ドラマ、サスペンス、アクション、雄弁過ぎる音楽の威力!
間奏曲も“本来の位置”で、何とも形容し難い美しさと、一抹の寂しさを内包して切々と鳴る。
コンサートのアンコールで聴く間奏曲とは別物!
(日フィルさんに喧嘩を売っているわけではありません。)

そして…。
ああ、清水華澄さんの出演する日を、意図して選んで、良かった!…と自分をほめてやりたくなる素晴らしい清水さんの歌唱。
劇的!
素晴らし過ぎ!
大澤一彰さんもそれに匹敵する迫力!
他の歌手ももちろん、コーラスの威力、表現力は、もう圧倒的としか言いようがない。

田尾下哲さんの演出は、抽象化された舞台装置で、群衆の動きと照明でドラマを描き出すものとのこと。
こういうやり方で時折感じる「経費節減」の印象は皆無。
動きは多彩で、大道具は抽象化されても、小道具はたくさん出てきますし…。

カリニャーニの指揮する東京フィルも、これが時折、評論家の先生に酷評されることもあるピットの東フィルですか?本当ですか?…という素晴らしさ。
もっとも、最終日ですし、新国立のピットでも、東フィルは最近は素晴らしい演奏が続いていますし…。

興奮状態の活気ある休憩時間の後の「パリアッチ(道化師)」の舞台は、壁面は同じものの、テレビ・スタジオに変貌。
この読み替えは(類例があるのかどうか、私は存じ上げませんが)なかなか面白いと思いました。
パパラッチのような人も出てきてフラッシュをたく。
「ON AIR」のランプが点灯すると、舞台がめちゃくちゃ明るくなり、大型のテレビカメラが縦横無尽に走り回る。
(ちなみに、客席には本物の大型のテレビカメラがあって、収録していた様子。)
舞台が眩しくて、字幕が少々見にくいのだけは難点かな。

2作目は指揮者はいつのまにかピットに居て、オケのチューニング終了後にすぐ音楽が始まります。
当然のことながら、オケは1作目の好調を維持し、出だしからパワー全開!
合唱(メンバーは同じだったのでしょうか?)もパワー全開!

この、いきなり全開のオケとコーラスに対して、歌手陣は、1作目が劇的に終了した後だけに少々不利なのは否めません。
しかし、徐々に調子を上げ、まずはネッダの髙橋絵理さんが劇唱、カニオの片寄純也さんも「衣装をつけろ」でハイボルテージに…。

田尾下哲さんのテレビスタジオ、テレビドラマへの読み替え演出は面白かったですが、前半でひな壇の観覧席がくるくる回ったのは何だったのでしょう?
あと、観客役のコーラスの皆さんが、手をたたく場面は、実際に拍手の音を出したり、出さなかったり…。
そう言えば、1作目の「カヴァレリア・ルスティカーナ」では、拍手する仕草はしても、実際に手は叩かず…。
私はてっきり、指揮者が「音楽の邪魔になる」と音を出させなかったのかと思いましたが、2作目を見る限り、演出の意図のようですね。

おそらく私が「???」と、わからなかった数々の所作にも、考え抜かれた意味があるのでしょう。と
ても全ては理解出来ませんでしたが、面白かったことは確かです。
そして、やっぱり、主役は指揮のカリニャーニさん!
素晴らし過ぎる東フィルの音!

スタッフ
指揮:パオロ・カリニャーニ
演出:田尾下哲
装置:幹子 S.マックアダムス
衣裳:小栗菜代子
照明:沢田祐二
演出助手:家田淳
舞台監督:村田健輔
公演監督:多田羅迪夫

キャスト
≪カヴァレリア・ルスティカーナ≫
サントゥッツァ:清水華澄
トゥリッドゥ:大澤一彰
ルチア:池田香織
アルフィオ:松本進
ローラ:澤村翔子

≪パリアッチ(道化師)≫
カニオ:片寄純也
ネッダ:髙橋絵理
トニオ :上江隼人
ベッペ:与儀巧
シルヴィオ:与那城敬

合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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2012年7月15日 (日)

スダーン/東響(2012/7/15)

2012年7月15日(日)11:00
NEC玉川ルネッサンスシティホール

指揮:ユベール・スダーン
東京交響楽団

(モーツァルト・マチネ第10回)
フルート:高木綾子
ハープ:吉野直子

モーツァルト:フルート協奏曲第1番
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲
モーツァルト:交響曲第31番「パリ」
モーツァルト:交響曲第31番「パリ」~第2楽章改訂版
(アンコール)

この、ミューザとは比較にならない音響の多目的ホール、回を重ねるにつれて、スダーン監督も東響の皆さんも、鳴らし方のコツがわかってきたのでは?と思えてきました。
素晴らしかった!
この日は「豪華ゲスト」と言って良いでしょう。

高木綾子さんも、吉野直子さんも、これらの協奏曲が、フルート奏者とハープ奏者にとって、いかに大切な曲であるか、身をもって音にして示してくれたソロでした。
音から発散する歓びは尋常ではありません。

一曲目は、高木綾子さんのソロで、フルート協奏曲第1番。
バックのスダーン監督の指揮する東響の疾走する演奏に抗うことなく、しかしことさらメリハリを強調することなく、流麗に奏でられたフルートの音。
枯れた音ではなく、心踊る艶やかな音ですが、心に染み入ってきます。

おそらく一曲ソロを演奏するだけでも大変だと思いますが、続く曲は吉野直子さんが加わってのフルートとハープのための協奏曲。
吉野さんは暗譜、一曲目は暗譜だった高木さんは譜面台を置いていましたが、譜面に目をやる様子はほとんどありません。
圧巻は各楽章のカデンツァ、特にそれらの最後の追い込みの部分。
決して競い合ってはいなくてあくまでも協奏、熱狂もしてはいないのですが、明らかにお二人のテンションが最高潮に上がって、そしてオケに受け渡す。
この高品位の、静かなる高揚、聴き手の私は唖然として聴き入るのみ。
オケの方は、やはり、基本、速めのスダーン監督の指揮。
そこに加わるハープの音の形容し難い美しい音色。
割と華やかな楽器であるフルートと寄り添っても、全く負けることが無い。
完全に対等。
もちろん吉野さんだからなのかもしれないし、モーツァルトの書き方がうまいのかもしれません。
しかし、高木さんも全く手抜きなしの気合いの演奏です。
カデンツァ後の二人の目くばせは「うまくいったね!」かな?

バックのオケでオーボエを吹いていたのが荒さんと最上さん。
このオーボエの絶妙の合いの手も素晴らしかった。
いやはや、わかっているけどスダーン監督の指揮する東響のモーツァルトは、やはり格別のものがあります。

フルートとハープが去って寂しく…はならず、木管陣が増強され、ナチュラル・トランペット?とバロック・ティンパニも加わり、パワーアップしての交響曲。
もちろん音量もアップ、にぎやかさ(と言って良いのかわかりませんが)もアップ。
スピード感とアクセントの連射は爽快感の連続。
「いつものこと」なのですけれどね、このコンビでは。
この「いつものこと」を再体験したくて毎回足を運ぶのです、私たちは。

拍手に応えてスダーン監督は英語で「人々は第1楽章と終楽章は気に入ったが、第2楽章は気に入らなかった」というようなことを言って(すみません、私の英語力ではこの程度までしか…)、第2楽章の改訂版をアンコール。
後味の良い選曲でお開きになって、幸せ、幸せ、幸せ。

20120715

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2012年7月14日 (土)

飯守泰次郎/東京シティ・フィル(2012/7/14)

2012年7月14日(土)15:00
ティアラこうとう大ホール

指揮:飯守泰次郎
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

(第30回ティアラこうとう定期演奏会)
ヴァイオリン:小野明子

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ
(アンコール)
シベリウス:交響曲第2番

「フィンガルの洞窟」は、深い、深い、重みのある音。
飯守さんだからと言って何でもワーグナーに結びつけるのもどうかと思われそうですが、あえて言えば、「タンホイザー」序曲のような「フィンガルの洞窟」。
今日のシティ・フィルはかなり好調のようです。

続く小野明子さんの独奏によるメンデルスゾーンの協奏曲は、力のある強い音の独奏ヴァイオリンが素晴らしい。
高音域はあまり際立たせず、落ち着いた音色でたっぷりと弾き切った演奏。
バックで指揮する飯守さんの音楽との相性抜群の音作り。

アンコールのクライスラーは、私の好みからすると、落ち着いた重心低めの音がいまひとつそぐわない印象。
うーん…。
協奏曲の出来が良過ぎた(と言うか、一聴衆の私の、鑑賞のツボに、はまり過ぎた)ためか、無理にサービスしなくても…の感も…。
(すみません、偉そうに。)
もし機会があれば、こういう曲は小野さんのリサイタルで聴きたいかな。

さて、後半のシベリウス、本当に凄かった。
私の聴いたこのコンビでの最高の演奏だったかもしれませんい。
圧力の高い音だから繊細な微弱音の印象はないのですが、粗雑な音出しは皆無。
そして高揚し、爆発する、叩きつける、煽る、突進する、…。
凄い!凄い!
あのチャイコフスキー・ツィクルスよりも凄い!

このオケで時々必要な脳内補正回路は、本日は全ての曲において不要。
宮本監督効果が出ているのか、エキストラに優秀な奏者が揃ったのか(暴言失礼!)、その両方なのか、部外者の私にはわかりませんが、ともあれ、慶賀の至りです。

ワーグナーのような「フィンガルの洞窟」、ブラームスのようなメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、ブルックナーのようなシベリウスの交響曲第2番…と言葉を遊ぶことは出来ます。
しかし、真実は「飯守泰次郎さんの」音以外の何ものでもありません。

東京シティ・フィルメンバーによるプレ・コンサート
14:30~

モーツァルト(松原幸広編曲):歌劇「魔笛」よりパパパの二重奏
 ヴァイオリン:吉田巧、道端倫子
 チェロ:薄井信介
ヘンデル(J. ハルヴォルセン編曲):パッサカリア
 ヴァイオリン:道端倫子
 チェロ:薄井信介

あまり広いロビーではないので黒山の人だかり、入場してくる方々から生じる音など、条件はあまり良くありません。
しかし、至近距離の聴衆のための演奏は、真剣勝負、気合い入りまくりで素晴らしい。
オペラシティでの定期でもプレ・コンサートをやっていますが、演奏する歓びが伝わってきて、聴いている私たちも幸せな気持ちで開演を待つことが出来ます。

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2012年7月13日 (金)

下野竜也/日本フィル(2012/7/13)

2012年7月13日(金)19:00
サントリーホール

指揮:下野竜也
日本フィルハーモニー交響楽団

(第642回定期演奏会)
【日本フィル・シリーズ再演企画】

戸田邦雄:合奏協奏曲「シ・ファ・ド」【日本フィル・シリーズ第19作】
 ピッコロ:遠藤剛史【日本フィル団員】
 バス・クラリネット:伊藤寛隆【日本フィル首席奏者】
 コーラングレ:坪池泉美【日本フィル団員】
 トランペット:オッタヴィアーノ・クリストーフォリ【日本フィル客演首席奏者】
 ヴィブラフォン:福島喜裕【日本フィル団員】
 ヴィオラ:小池拓【日本フィル首席奏者】
山本直純:和楽器と管弦楽のためのカプリチオ【日本フィル・シリーズ第10作】
 箏:片岡リサ
 三味線:野澤徹也
 尺八:石垣征山
 邦楽打楽器:望月太喜之丞・黒坂昇・冨田慎平
 竜笛:西川浩平
 ドラムス:三浦肇
 ギター:尾尻雅弘
黛敏郎:弦楽のためのエッセイ【日本フィル・シリーズ第9作】
松村禎三:交響曲第1番【日本フィル・シリーズ第14作】

想定外!
素晴らし過ぎ!
ラザレフさんが振った時の日フィルに匹敵!
演奏が良ければ20世紀音楽でも面白い!
会場も湧く!
結論「定期演奏会」でした!

一曲目の戸田邦雄さんの合奏協奏曲のソロは日フィル団員さん。
なんとなんと、良い演奏ではないですか!
確かに折衷案的で、初演後、高い評価には至らずに埋れてしまった曲。
しかし…。
当時はともかく、21世紀の今になって聴けば、通俗的(?)な側面が耳に心地良い。
ラフマニノフが、結局、時代に(次代に)生き残ったように、今一度、耳を傾けてみるべき作品かもしれません。
そしてそれは、良い演奏あってこそ。

2曲目の山本直純さんの和楽器と管弦楽のためのカプリチオは、演奏が終わった直後の会場の熱狂は凄いものがありました。
コンマスの扇谷さんが引き上げを始めなければ、拍手はまだ続いたかもしれません。
楽団員の皆さんも「こんなにウケるんだ~」と言いたいのか、皆さんニコニコしていました。
箏、三味線、尺八、邦楽打楽器、竜笛、ドラムス、ギターと、多彩な独奏楽器(すなわち出演料)を要する曲。
ある意味、ごちゃまぜで、次から次へと何かを繰り出す印象の曲。
整頓されていないとも言えそうですが、あえてそうしたのかもしれず…。
「次は何が起こるのだろう?」と全く飽きさせない曲。
この曲がもう少し短く、こんなに多くの独奏者を必要としない(演奏しやすい)編成だったならば、外山雄三さんの管弦楽のためのラプソディと並ぶ人気曲になったかも…と思いました。

休憩後の2曲は、シリアスな曲、コアな曲と言って良いのでしょう。
まずは黛敏郎さんの弦楽のためのエッセイ。
美しい。
複雑なのだろうけれど美しい。
この弦楽合奏の透明感、純度と切れ味!
これが本当に「ラザレフさん指揮でない時の」日フィルなのでしょうか!

最後の松村禎三さんの交響曲第1番も、「本当に状態が良い時の」「ノッてしまった」日フィルの演奏。
混沌とした曲を、ありのままに音にして、それでも聴衆の集中力を引きつけ、維持させ、聴かせる。
微弱音の美しさは「本当に日フィルですか?」と何度も思いました。
さすがにこの曲の演奏終了後は、山本直純さんの曲の後ほどの熱狂までには至りませんでした。
それでもブラボーの声はかかり、この手の曲としては十分過ぎるくらい開場は湧きました。
オケの皆さんも「練習した甲斐があったねぇ」というような満足そうな表情でした。

下野さんは、いつもの下野さんと表情が少し違って、眉を釣り上げての指揮。
すなわち、総譜をかなりの集中力で読み取っていました。
さすがの下野さんも、かなりの労力だったのでしょう。
しかし指揮の動作は音を置きに行く様子はなく、いつも通り流麗だったのはさすが!

定期会員の欠席と思われる空席はそれなりにあった模様です。
私も「どうしようか?」と迷ったことは事実です。
しかし「お呼ばれ」のかり出された現代音楽の演奏会ではなく、主催公演、それも定期演奏会で、本気で練習し、本気で演奏すれば、こういう聴衆を惹きつける素晴らしい演奏になるのですね。

残念…と言って良いのかどうかわからないのですが、4人の作曲家で、誰一人として、会場にいらっしゃらず、舞台にも呼ばれませんでした。
すでに皆さん、他界されているのです。
しかし、こういう見方もできます。
書かれた総譜は永遠の命を持ち、優れた指揮者と、優れた演奏家たちによって、今生まれたかのように再生される、と。

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三ツ橋敬子/新日本フィル(2012/7/13)

2012年7月13日(金)14:00
すみだトリフォニーホール

指揮:三ツ橋敬子
新日本フィルハーニー交響楽団

(第23回 新・クラシックへの扉)

チャイコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」
         ~ポロネーズ
(アンコール)

半休をとってトリフォニーへ。

「眠りの森の美女」は、いきなりパワフルな音にびっくり。
昨年の東フィル定期で「英雄」を聴いた時は、最強奏で「少し飽和状態」のような印象も感じましたから…。
この日は、空回りせずにオケから強い音を引き出している印象。
しなやかさと言うよりは、力ずくで、ぐいっ、ぐいっ、という感じはしましたけど。
そういう意味では「強気、一本槍」の感もあり、意地悪く見れば一本調子、平板な感もありました。
表情付けはされているものの、そして、それは素人のレベルではないものの、もう少し「心が踊るような」楽しさが欲しいと言うのは欲張り過ぎでしょうか?

しかし、後半の「悲愴」では、悲壮感すら漂う緊張?の指揮?が良い方に作用して、緊迫感のある好演になりました。
全ての箇所がうまく行っていたとは言いませんが、全般的には楽章を積み重ねるにつれて、尻上がりに良くなっていったと感じました。
第1楽章の最後の辺りでは「やっぱり弱音部で緊張感を保つのは難しいのかな?」とも思いました。
しかし、第2楽章では音が雄弁に語り出し、迫り来るものがありました。
第3楽章も空回りせずに堂々とクライマックスを築きましたた。

しかし…。

第3楽章が叩きつけるような音で終わった瞬間、上方階の客席から盛大な拍手…。
しかも、なかなかやめない。
やめないだけでなく、2回くらいブラボー?を叫んだ方がいらっしゃいました。
三ツ橋さんは間を置かずに第4楽章へ続けたかった様子。
身動きせずに、拍手が収まるのを待った指揮者と楽団員の皆さん。
拍手が収まると同時の第4楽章開始。
再開後の第4楽章は、中断(?)の影響もなく、素晴らしく高揚しました。
多少荒削りの部分があったにせよ、十分に素晴らしかった。
面白いもので、…いや、当然なのかもしれませんが、振ろう、振ろう、としている箇所よりも、むしろラフに振って身体全体で表現している時の方が、オケから魅惑的な音が生まれてくる。
脱力も指揮の力量のうちなのでしょうか?

アンコールの「エフゲニー・オネーギン」のポロネーズは…。
うーん。
無理にアンコールをやることもなかったのではないか…という気がしました。
前半の「眠りの森の美女」で感じたような印象が戻り…。
あえてスローテンポで演奏したのかもしれませんが、まるでブルックナーみたい。

…というわけで、全てを手放しで「素晴らしい」とは言えない…と言うのが正直な感想ではありましたが、少なくとも「悲愴」はかなりのレベルに仕上がっていましたし、「また聴いてみたい!」と思わせるものは持っている方だと思います。
2日目は私は行きませんが、もっと良くなるのではないでしょうか。
辛口な感想ではありましたが、私はこれでも、三ツ橋さん応援派です。
そのうち、10年くらい経つと、ふてぶてしい女傑に変貌するのでしょうか?
それはそれで楽しみですが、今の謙虚な三ツ橋さんを聴くのも、良いものです。

20120713

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2012年7月12日 (木)

広上淳一/読響(2012/7/12)

2012年7月12日(木)19:00
サントリーホール

指揮:広上淳一
読売日本交響楽団

(第517回定期演奏会)
ヴィオラ:清水直子

武満徹:トゥイル・バイ・トワイライト
(読響1988年 創立25周年記念委嘱作品)
バルトーク:ヴィオラ協奏曲
バルトーク:44の二重奏曲~21番「新年のあいさつ」、
      38番「ルーマニアン・ダンス」
(アンコール)
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

広上マジック炸裂!
濃厚ではなく、オリエンタルでもありません。
血液サラサラ状態で活性化された人体のよう。
それなのにアッサリしていなくて、ちりばめられた表情付けは多彩、多彩!
シンフォニックに磨き上げられた艶やかな音。
マエストロの動きはめまぐるしいですが、無駄に動いているわけではなく、全ての動作に意味がある。
マエストロが力むと、音がその通りにズドンッと鳴る。
ひとつひとつの動作、いや、手のひらの動きまでが高効率で音像に変換される快感!
それだけでなく、右手と左手で、遠近法をも表出してしまう。
まさに「交響」組曲!(←日本語だけなんですかね?)

武満徹、バルトーク、リムスキー=コルサコフと、(西洋から見た)「東方」を感じてもおかしくない3曲。
感傷的にならずに、むしろスマートに音響を構築したマエストロの新境地?
読響のコンディションも相当に良かったのではないでしょう?
素晴らしく調和した音だったと思います。

武満徹さんの作品は、比較的明晰な音だったのかな?
私は武満さんの曲はあまり相性が良い方ではないのですが、この演奏は心地良く耳を傾けることが出来ました。
東洋的ではないモダンなサウンド。
しかし、外面的にはさほど難解なように聞こえなかったのは、シャープさをあまり強調しない演奏のため?

清水直子さんの独奏によるバルトークのヴィオラ協奏曲は、ピーター・バルトーク版とのこと。
通常の版との違いは私の耳ではよくわかりませんが、これまた東欧的ではなく、モダンなサウンド。
清水さんのソロも全身を駆使しての快演。
最後は、マエストロの鼻息とヴィオラのための協奏交響曲に…。

清水直子さんのアンコールは、譜面台が2つ用意されて、読響ヴィオラ首席の鈴木康浩さんとのデュオ。
清水さんに全く負けずに弾き切った鈴木さんもさすが!

「シェエラザード」でのコンマスの小森谷さんのソロも、相当に素晴らしかったのではないでしょうか?
(○○さんよりうまいのでは?…暴言失礼!)
そろそろ「ソロ」を付けても良いコンサートマスターでは?(つまらなくてすみません。)
異国情緒に背を向けたような、モダンでスタイリッシュな「シェエラザード」だったように感じました。

20120712

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2012年7月 7日 (土)

ハーディング/新日本フィル(2012/7/7)

2012年7月7日(土)14:00
すみだトリフォニーホール

指揮:ダニエル・ハーディング
新日本フィルハーモニー交響楽団

(第497回定期演奏会)

シューベルト:交響曲第7(8)番「未完成」
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

凄い!
凄すぎる!
最後の方は目頭が熱くなって困りました。
昨日聴きに来なかったことを激しく後悔させられた演奏会。
ああ、生きていて良かった。
ハーディングさまと同じ時代に生まれて良かった。
幸せ、幸せ。
定期演奏会はこの日シーズン最後でしたが、最高のフィナーレとなった演奏会でした。

前半の「未完成」は、恐ろしほどの演奏。
平穏な安らかな日々に突然、何度も、何度も、繰り返し襲いかかる脅威!
何事もあの大震災に結びつけるのは早計かもしれませんが、ハーディングさまの阿修羅のような形相を見るに、私が抱いていたこの曲のイメージが豹変する体験でした。

今回は隅々までリハーサルが行き届き、徹底されているよう。
音は相当のレベルまで磨き上げられ、うごめくような微弱音から、襲いかかる強奏まで、不自然なく豹変。
100%ではないかもしれませんが、ハーディングさまのスケールを音に変換して実現していたと思います。

後半の「英雄の生涯」では、冒頭で一人だけいきなり先に飛び出して音を出してしまった方がいて…。
それはハーディングさまのうなり声でした!
「指揮者はオケより先に出る」という原則を音で聴かせてくれました。
それはともかく…。
凄かった…。

先日のエルガーのときに若干感じられた“もどかしさ”が、ほぼ払拭された…と言っても良いレベルの完成度
細部に至るまでの「ハーディングさまの音」の徹底度。
分厚いR.シュトラウスではなく、透き通っているような、ゴールデンウィークの「町人貴族」にも通じる音。
スケルトン・モデルのR.シュトラウスですが、その透明度の美しさは比類がない。
こんな「英雄の生涯」は聴いたことがないかも…と思えてきます。
私、こんな音を聴いていて本当に良いのだろうか?…と、まるで禁止薬物でも摂取して高揚しているかのような気分でした。

崔コンマスのソロも、絶妙、かつ極上。
ハーディングさまは、崔コンマスのソロをただの一度も「指揮」しませんでした。
全く干渉せず、完全に“お任せ”でした。
崔コンマスの存在を無視するかのように、オケに向かってだけ指揮していたハーディングさま。
一回だけ崔コンマスの方を見たときは、崔コンマスの弓の動きにオケの出を合わせて指揮棒を振りました。
終演後のお二人の熱い抱擁を見るに、信頼関係は半端ではないのでしょう。

特に、3.11前には「当たり前」だと思っていたNJPの木管首席の皆さんのハイレベルの音に魅了されました。
今日はその個々の音が一つの方向だけを向いて溶け合い、鳴り響いた日でした。
新日本フィルの木管の皆さんの音は、本当は凄いのです。
わかっていましたけど、久しぶりに聴いたような気がする…と言ったら言い過ぎでしょうか?
(暴言失礼!)
終演後のオケの皆さんの嬉しそうな顔!

個人的な感想ですが、ハーディングさまとNJPだからと言って、毎回ここまで凄いわけではないと感じます。
ハーディングさまの求めるレベルにオケがついていけてないかも…と感じる日もありました。
この日は、本当に、本当に、特別な日だったかも…と思いました。

「未完成」の第1楽章も第2楽章も、「英雄の生涯」も、ハーディングさまは、音が鳴り終わった後の数秒の「無音」をも、手は動かさずとも「指揮」していました。
聴衆もハーディングさまが脱力するまで静寂を保ちました。
会場全体がハーディングさまに集中していました。
ハーディングさまは、客席までをも「指揮していた」とも言えるかもしれません。
この様子を先日のエルガーのときの“あの拍手”の主に見せてあげたい。
もっとも、あの方が来場したら、今日も余韻ぶち壊しをかましたかもしれないので、来場されなくて本当に良かったと思います。
(執念深くてすみません。損な性格です…。)

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2012年7月 6日 (金)

東京クヮルテット(2012/7/6)

2012年7月6日(金)19:00
王子ホール

東京クヮルテットの室内楽 Vol.7 with 清水直子 第2夜

東京クヮルテット
 マーティン・ビーヴァー
(ヴァイオリン)
 池田菊衛(ヴァイオリン)
 磯村和英(ヴィオラ)
 クライヴ・グリーンスミス(チェロ)
清水直子(ヴィオラ)

ハイドン:弦楽四重奏曲Op.20-4「ヴェネツィアの競艇」
ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
ウェーベルン:弦楽器のための5つの楽章Op.5
ブラームス:弦楽五重奏曲第2番

筆圧の強い太い筆で描いた音…という印象は前日と同じでしたが、この日のハイドンは曲の違いからか、終楽章で加速、疾走するスリリング感が感じられて新鮮!
私の席の位置が、この日の方が前の方だったという音響的なこともあるかもしれませんが…。

この日のチケットは、友人に会員先行で買っていただいた前方中央の良席。
初日にかなり後方、2日目にかなり前方の席で聴いて、小さなホールらしく、席の位置の差による音響がかなり少ないこと、でも、やはり微妙な差はあることを体感した次第です。

続くウェーベルン2作品は、ロマン派最終期の爛熟の曲と、無調の世界を完全に確立した後の曲のコントラスト。
とても同じ作曲家と思えない曲の連続は当然意図して並べたものでしょう。
緩徐楽章は、事前にNaxos Music Libraryで“予習”したときに、音源を間違えたか?と思ったくらい、ウェーベルンとは思えないロマン派!

無調の方の曲は、緊張感、緊迫感に満ちた演奏がやはりスリリング。
ただ、カミソリの刃のような切れ味ではなく、どことなく、太い包丁でぶった切ったような切れ味には感じました。
もちろんこれは、スタイルなのでしょうけれど…。

休憩後は5人になって、ブラームス。
実は前日も感じたのですが、女性が加わると、さらにやる気が出るの?と思いました。
いや、女性だからではなく、ベルリン・フィルの首席が加わったから?
五重奏と思えない音の厚み。
そして、気合い入りまくりの強奏の連鎖。
私の個人的嗜好を言えば、もう少しだけ力みを抜いて、音の純度を上げた方が…という思いはあるのですが、これはもう、こういうスタイルなのでしょう。
手抜きの抜け殻のような演奏より、はるかに良いことは言うまでもありませんし。

ところで、私は室内楽ビギナーの一見さんなので、的外れかもしれませんが、アンサンブルの音の純度が…と感じた要因は?
前日に拝見したときは、お年を召されて技巧的に?…と思っていましたが、ブラームスでヴィオラの磯村さんがソロのような部分で奏でた音は完璧に美しい音のようでした。
いや、第2ヴァイオリンの池田さんだって…。
もしかして(こういう言い方は偏見じみていて申し訳ないのですが)後から加入された”異分子”(←清水さんのことではありません)の方に要因有り?と邪推してしまいました。
すみません、ビギナーのたわごとです。
御容赦を。

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2012年7月 5日 (木)

東京クヮルテット(2012/7/5)

2012年7月5日(木)19:00
王子ホール

東京クヮルテットの室内楽Vol.7 with 清水直子 第1夜

東京クヮルテット
 マーティン・ビーヴァー(ヴァイオリン)
 池田菊衛(ヴァイオリン)
 磯村和英(ヴィオラ)
 クライヴ・グリーンスミス(チェロ)
清水直子(ヴィオラ)

ハイドン:弦楽四重奏曲「騎士」
ドビュッシー:弦楽四重奏曲
ブラームス:弦楽五重奏曲第1番

切れ味のある音と言うよりは、筆圧の強い、太い筆で描いたような音。
曲によって印象が結構違いましたが、3曲を描き分けた…と言うべきなのでしょう。

ハイドンからドビュッシーに移ったとき、まるで編成が3倍になったかのような錯覚を覚えました。
ハイドンの演奏のスケールが小さいわけではありません。
しかし、ハイドンからドビュッシーまでの長い年月の間に、いかに進化があったかを体感した次第。
まるでドビュッシーの管弦楽曲。
いや、それは大げさとしても、まるで弦楽合奏を聴いているかような音の密度と迫力。
音が襲いかかってくるような演奏。
上品なフランス音楽ではなく、管弦楽曲で言えば「海」のような、寄せては返す音のうねりと発散。

休憩後は、清水さんが加わってのブラームスの五重奏曲。
ドビュッシーから一転、心に染み入るようなブラームス。
途中で高揚し、演奏が熱を帯びても、加速しても(したのかどうか自信はありませんが)せかせかした印象はありません。
むしろ切々と胸に迫ってくる印象。

技巧的にはどうなのでしょう?
全盛期の東京クヮルテットを私は体験していません。
例え、体験していたとしても、半分、別の団体と言ったら言い過ぎでしょうか…。
でも、細部のことは横に置いて、私は全身で迫り来る音を受け止めました。
私はふだん室内楽はあまり聴かないので、現在の音楽シーンでの東京クヮルテットの位置付けは知りません。
依然トップクラスを維持しているのか、それとも昔の名前で出ているのか…。
でも、最大限に献身的な演奏ではあったと思います。

前述のように筆圧の強い太い筆で、それでも3曲それぞれの違う側面を(たぶん)見事に描き分けた演奏。
私としては、ドビュッシーが一番、発見、驚きを感じた演奏でした。
(私の数少ないこの曲の体験に照らして、ですが。)
それだけでも、聴いて良かったと思いました。

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2012年7月 1日 (日)

山下一史/都響(2012/7/1)

2012年7月1日(日)14:00
東京文化会館

《響の森》vol.31 ブラームス&ベートーヴェン

指揮:山下一史
東京都交響楽団

ヴァイオリン:渡辺玲子
チェロ:長谷川陽子

ブラームス:悲劇的序曲
ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲
ベートーヴェン:交響曲第7番
シューベルト:「ロザムンデ」~間奏曲第3番
(アンコール)

なかなか関東で聴けない山下さんの指揮。
発売初日にチケットを買ったのですが、想定以上の力強さと格調の高さ!
山下さん、さらに“高み”に登られたようです。

一曲目の悲劇的序曲から、山下さんらしい、しなやかな音が弾力性を持って響く!
(…と言いつつ、この日も曲目を勘違いしていて、大学祝典序曲のつもりで居て驚きました…。)

山下さんの指揮を生で聴くのは、私はたぶん3回目だと思いますが、都響で聴く山下さんはさらに素晴らしい。
私の印象は、山下さんの音づくりの魅力はメロディ・ラインの美しさだと思っていましたが、今日もその通りだし、さらに力強いかも。

二重協奏曲でも山下さんは暗譜。
協奏曲もオケからしなやか、かつ、力強い音で始まる。
その音を聴いて力んだのか、あるいは開始での緊張感か、出だしだけはソリストお二人とも少し力が入っってしまった印象。
しかし流れ出せば万全。
このお二人ならではの美音の駆使。
お二人の音が絡み合うと、個別に聴いているときにも増して結構スリリング。
協演にして競演。
それを懐の深い音で山下さんと都響が支える。
素晴らしい!

後半のベートーヴェンの第7番は、2007年にニューフィル千葉を山下さんが指揮したときにも聴きました。
あの時は旋律の歌わせ方に魅せられた記憶がありますが、5年経って、オケもいま絶好調の都響で、さらにパワーアップ!
いや、いたずらに出力だけ大きくしたのではありません。
弾力性がありながら力強く、メリハリも効いて、メロディを歌わせながら、過度にセンチメンタルにならず、実に格調高い。
終楽章ですら熱狂せず、着々と歩み、頂点を極める。
一回聴いているだけに十分期待していたのですが、それを上回りました!

考えてみれば、指揮者にとって、5年の年月は短くはありません。
それを5年前の体験で想定してチケットを買った自分が恥ずかしい。
そして、やはり都響の素晴らしいアンサンブルあっての、この拡張高い名演だったのだろうと思いました。

アンコールの「ロザムンデ」間奏曲は、山下さんは指揮台に上がらず、オケと同じ平面での指揮。
これもメロディ・ラインの美しさは素晴らしいですが、やはり格調の高さをも感じる演奏。
至福のひととき。
最安席、格安料金で、こんなに幸せな気分にしていただいて申し訳ないです!

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『オペラの「演出」をどう読むか』(2012/5/26~6/23)

2012年5月26日(土)10:30
2012年6月2日(土)10:30
2012年6月9日(土)10:30
2012年6月16日(土)10:30
2012年6月23日(土)10:30

中央大学駿河台記念館

講師:
森岡実穂(中央大学経済学部准教授)
山崎太郎(東京工業大学教授)

中央大学クレセント・アカデミー
オペラの「演出」をどう読むか

少し前の話しですが、中央大学のオープンカレッジ「クレセントアカデミー」で、オペラの演出についての講座を聴講しました。
毎週土曜日で、全5回連続で、10:30-12:00という時間設定は、午後の公演に行けるように配慮されたとのことです。
これが受講の決め手となりました。
仮にそうでなく、例えば土曜日の午後とかの設定だったら、受講しなかった可能性の方がが高いです。
もっとも、土曜日の午前中はチケット発売日が多いので、早めに教室に行って、モバイル端末でチケットを予約する行為を毎回のようにやっていましたが。

それはともかく、森岡先生も山崎先生も、例えばクラシックジャーナル046「オペラ演出家ペーター・コンヴィチュニー」などに執筆されていて、その文章も非常に興味深い。
しかし、直に語られる言葉を拝聴するときのお話しの興味深さは、印刷物の比ではありません。
CDと生演奏の違いに匹敵する、生の講義の面白さでした。

まず、初日に森岡先生は、
「自分に見えているものと見えていないものを自覚することも大切です。
私は宗教的視点からはあまり語れません。」
とおっしゃいました。
これで私は、一気に「あ、先生は信用できる!」と思いました。
「私の理論は万能!」ではなく、いろいろな見方があるということです。
ちなみに、森岡先生はジェンダー論(生物学的な性ではなく、役割や“~らしさ”としての男性、女性)などからの切り口を専門とされているようです。

受講して得たことはとても全ては書けませんが、印象に残ったことを少々。

初回は、
「どんな作品、どんな演出でも、作者や演出家が“こうとらえた”という視点で切り取ったものに過ぎません。」
「自分はこう思ったから、人に伝えたいということが“表現”です。」
「その時代の“新しい視点”を加えることが再現芸術には必要不可欠です。」
など。
初日の題材は「蝶々夫人」と「トスカ」。
「“蝶々夫人”では、演出家の視点は、“この作品にどんな悲しみを見つけられるか?”ということで読み替え演出が可能になります。」
「トスカ」では、第1幕最後の合唱が入ってくる場面でスカルピアの一瞬見せる神への畏れ(台本にも明記されているそうです)の様々な演出、演技。

第2回は「魔笛」を題材にして啓蒙主義の時代のお話し。
世界史はあまり得意ではなかったので「なるほど、そうだったのか!」と目から鱗が落ちる思いでした。
ちなみに、何十年も前に、大学1年生の教養課程で、日本史の授業を受けたときの感動を思い出しました。
詳細はもう忘れましたが、例えば太閤検地を論じる切り口に「これが大学の日本史か!高校の日本史とは別物!これが学問というものか!」と驚嘆しました。

3回目は「蝶々夫人」に戻って、西洋人から見た“オリエンタル(東洋的)”の視点。
政治的必然性(植民地の正当化)から生まれた“劣者を父親のように支配しようとする”視点。
「それぞれの作品には“この演出はどういう方向で行くのか”を決めなければならない場面があります。
“蝶々夫人”にはそういう場面が多いと思います。
現代で虐げられている者(貧困層など)への読み替えも、そこから生まれます。」
など。

3回目までは森岡先生の講義でしたが、4回目は山崎先生の講義。
ドラマとは?
ドラマティックとは?
「劇場には、時間的制約、空間的制約があります。
したがって、劇には、あまり多くの物事を詰め込むことができません。
低級な劇は、単なるエピソードの羅列だと言われています。
(そうならないように)ある特別な一日を切り取り、緊張が臨界点に高まった場面から開始する手法がとられます。
開始後は、前進型ドラマと遡及型ドラマがあります。
「舞台でのアクションには限界があります。
例えば戦闘シーン。
映画なら可能ですが、舞台上では限界があります。
そういう場面は、劇では、“語り”で観客の想像力に働きかける方法をとります。
例えば、使者の報告、壁越しに見ている者の語り。
叙事的語りは劇に不可欠な要素です。」
など。

これは、黛敏郎のオペラ「古事記」で、八岐大蛇(やまたのおろち)の退治の場面が群衆(合唱)による語りで歌われたことを思い出しました。

第4回では「魔笛」の解釈の歴史も。
「啓蒙主義、文明社会を絶対視することへの疑念。」
「ザラストロと夜の女王の価値観の対立は、単純な善悪の図式で割り切れない、世界の多様性そのものという見方も出来ます。
矛盾は矛盾のまま存在する現実の世界を描き出したものと言えるかもしれません。」

最終回は、森岡先生、山崎太郎先生のお二人で交互に登壇。
受講生からのコメントも求めて終了。
プロの演出家の方もお二方聴講されていたことを知りました。

毎回“視野が広がる快感”を覚えた講義でした。
毎週土曜日の講義の受講、連続5回を、私の個人的スケジュールに組み入れるのは少々タイトな時期だったのですが、受講して本当に良かった!と思いました。

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