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2012年10月の20件の記事

2012年10月31日 (水)

ウィーン国立歌劇場「アンナ・ボレーナ」(2012/10/31)

2012年10月31日(水)18:30
東京文化会館

ウィーン国立歌劇場日本公演
ドニゼッティ:アンナ・ボレーナ

グルベローヴァ様の…独り舞台でない!
総合力が凄すぎる!
オケは恐れ入りましたと言うしかない音を奏でるし、歌手の皆さんもグルベローヴァ様と遜色なくハモる!
素晴らし過ぎて、もう、身悶えするような美しさでした。

どの歌手がどう、オケの音色がどう…などと感想を述べるのも、僭越な気分になりました。
はい…はい…凄いです…参りました。
チケットが高いと文句を言ってすみませんでした。
拝謁できただけでありがたき幸せ。
あのグルベローヴァ様が突出しないのも凄い!

いや、突出しないと言いつつも、そこはやはり、グルベローヴァ様。
もちろん、あらを探せば、加齢による劣化はそれなりにあるような気もしますが、そんなことは気にしないで声に酔った方が勝ち。
とてもリタイアの近い?昔の名前で出ている歌手のレベルではないでしょう。

グルベローヴァ様は最初から最後まで全力投球ではなかったかもしれませんが、ここぞと声をはりあげた時の威力は突き抜けるよう。
それも無理してはりあげている印象はなく、絶叫にならない。
まるで伸び盛りの若手歌手のような可憐な声。

グルベローヴァ様は技巧的には…いや、スタミナの問題かもしれませんが、さすがに若い頃(←私は生では未聴)のようにはいかないのでしょう。
しかし、テクニックの問題ではなく、うまい、うまい、舌を巻くほどうまい。
独り舞台ではないと言いつつ、そこはこのオペラ、最後は注目を独占。

ちなみに私は現地の事情は存じ上げず、当初は日常の上演を持ってきたのかと思いきや、2011年4月プレミエの舞台で、その時はネトレプコ様が歌ったとのことです。
その映像は輸入盤ブルーレイで見ることが出来ます。
(我慢できずに見てしまいました…。)
マエストロは、そのプレミエも指揮していました。
歌手は大半が代わっていますが、私はネトレプコ様のやや鼻にかかったような声は個人的にあまり好きではないので(←負け惜しみではなく)、グルベローヴァ様で持ってきてくれて大歓迎です。

演出は正攻法(たぶん)。
プログラム冊子の演出家インタビューにあるように、合唱の存在感をあえて弱めている箇所があったようですが、指揮も演出を尊重してか、音楽的にもコーラスは、パワー全開よりも、ふんわりと歌っている箇所が多かったかもしれません。
まあ、そういう曲だよ、と言われればそれまでですが。

ブルーレイで見たウィーンでのプレミエの映像では、最後は横たわったアンナが赤い布をかぶったように記憶していますが、本日のラストではグルベローヴァ様はただ横たわるのみで照明が暗転し、終了していました。
まあ、あまり細かい所まで覚えていないし、唖然としてこの世にこんな美しい音があっていいのか!と、酔っていたので、観察して比較している余裕もなし。

ピットの国立歌劇場管弦楽団も、当然のこととは言え、舌を巻くほどうまい。
舞台上の歌手と対等以上に張り合い、伴奏などではありません。
しかも、これだけ名人芸を駆使して演奏しておいて、終演後は、指揮者が舞台上から起立させた後は、普段通り、あたかもお仕事モードであっさり解散。
引き上げていく様は、これくらい、いつものことだよ…って?

終演後のカーテンコールは、たぶん15分くらい続いたのではないでしょうか?
最後は残っているお客さんは総立ちに近い状態。
終演後の熱狂は凄かったですが、上演中、ほぼ満席の客演は、多少の咳とかはありましたが、水を打ったように静かでした。
最後の最後だけ、オケの音が鳴り終わる前に拍手が始まってしまったのは残念でしたが。
ともあれ、カール・ベームが指揮していた頃から生き抜いて来た、化け物のような(失礼!)グルベローヴァ様の最後の来日と告知されている公演。
大打者の引退試合の最後の打席で大物投手が投げるように、共演歌手もオケも、最高の舞台でした。
繰り返しになりますが、独り舞台で無くて、本当に良かった。

指揮:エヴェリーノ・ピド
演出:エリック・ジェノヴェーゼ
美術:ジャック・ガーベル、クレア・スターンバーグ
衣装:ルイザ・スピナテッリ
照明:ベルトラン・クールデル
合唱監督:トーマス・ラング

キャスト
エンリーコ8世:ルカ・ピサローニ
アンナ・ボレーナ:エディタ・グルベローヴァ
ジョヴァンナ・シーモア:ソニア・ガナッシ
リッカルド・パーシー卿:シャルヴァ・ムケリア
ロシュフォール卿:ダン・ポール・ドゥミトレスク
スメトン:エリザベス・クールマン
ハーヴェイ:カルロス・オスナ

ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
ウィーン国立歌劇場舞台上オーケストラ

201210311

201210312

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2012年10月28日 (日)

尾高忠明/東響(2012/10/28)

2012年10月28日(日)14:00
サントリーホール

指揮:尾高忠明
東京交響楽団

(第604回定期演奏会)
バリトン:ローマン・トレーケル
混声合唱:東響コーラス

《東響コーラス創立25周年記念②》

武満徹:波の盆(TV音楽の演奏会用編曲版)
マーラー:リュッケルトによる5つの詩
ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」

尾高さん、ピーター・グライムズを振らなかった無念さを、この一曲に全てぶつけたのでは?というような壮絶、白熱の、凄すぎる演奏、歌唱。
東響コーラスを擁する東響だから出来た尾高さんのための演奏会!でしょう。
少なくとも後半は、最近の東響定期でもトップクラスの演奏だっtのではないでしょうか。

武満徹:波の盆は、耳当たりの優しい曲。
なんか、尾高さんが振ると、エルガーあたりを思い起こしてしまうのは私だけでしょうか?
この曲が選曲された理由は存じ上げませんが、尾高さんにピッタリハマった曲だったかもしれません。

リュッケルトによる5つの詩は、私はやや苦手曲で、席の位置も反対側に近い場所だったので、あまり語る資格はないのですが、声に寄り添う東響の木管の音は極めて美しい。

…という感じで、前半はまったりとくつろいで聴いていたのですが…

休憩後のウォルトン:ベルシャザールの饗宴が壮絶!
最初から壮絶!
私は聴いていて肩に力が入ってしまい、大音響が一段落するたびに肩の力を抜く動作をしたくらい。
東響にしては荒々しい部類の音響になっていたように感じましが、激しく攻め続けた結果でしょう。
東響コーラスがアマチュアとは思えないうまさなのはいつものことではありまするが、オケと同様に尾高さんの動作に反応して、いつもの澄んだハーモニーより、荒々しいくらいの迫力だったのも印象的でした。

尾高さんがウォルトンを振れば悪い演奏になるはずはない…などという、斜に構えた姿勢で足を運んだ自分を激しく反省させられる圧倒的な演奏。
大変失礼しました、恐れ入りました、そうですよね…。

暗譜の東響コーラスはP席を埋めて、オルガンの脇にも座る大人数。
LA、RAブロックの後ろにはバンダ。
ハリウッド映画のサウンドトラックなんか目じゃない迫真の大音響(←比較するなと叱られそうですが…)。

尾高さんの、尾高さんによる、尾高さんのための演奏。
おそらく尾高さんの東響定期客演は相当に珍しい(数年前に川崎名曲はあったかな)と記憶していますが、よくぞこの曲を大友さんが譲りました(?)。

思い起こせば東響は、大友さんの指揮で英国音楽には定評があったはずです。
この曲も大友さんの指揮で取り上げたことがあったと思います。
その下地のある東響に、英国音楽を振ると激しい激しい尾高さんが客演。
尾高さんの客演決定が先でしょうが、まるでこの曲のために尾高さんが呼ばれたような…。
こういう演奏を聴いてしまうと、やっぱり尾高さんにはもっと、ウォルトンやエルガーを振ってほしいと思ってしまいます。
尾高さんによる続編を期待したいところですが、音楽監督に就任するジョナサン・ノットは、お国ものはどうなのかな?

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2012年10月27日 (土)

カンブルラン/読響(2012/10/27)

2012年10月27日(土)18:00
サントリーホール

指揮:シルヴァン・カンブルラン
読売日本交響楽団

(第519回定期演奏会)
バリトン:大久保光哉
アルト:藤井美雪
朗読:明野響香、トーマス・クラーク、谷口優人
合唱:ひろしまオペラルネッサンス合唱団
合唱指揮:もりてつや

ツェンダー:「般若心經」
      - バリトンとオーケストラのための
      
(創立50周年記念 読響委嘱作品、世界初演)
細川俊夫:「ヒロシマ・声なき声」
     - 独奏者、朗読、合唱、テープ、
       オーケストラのための

細川さん、ツェンダー氏に大量リードで圧勝!…という次元の話しではないですが、細川さんの曲の、凄惨、悲痛な音響の交錯に圧倒されました。
もちろん作曲も凄いのですが、それを音にしてみせたカンブルラン様あってのことでしょう。

みなとみらい線~東横線~目黒線~三田線で、みなとみらい→六本木一丁目。
武蔵小杉で隣りの番線(同じホーム)に乗り換えるだけ。
みなとみらい15:00開演の都響はマーラーの第3番一曲だけなので、サントリーホール18:00開演の読響へのハシゴは余裕…と思っていたら、一般参賀に参加したのでギリギリでした。

まずはツェンダーさんの新作、般若心経。
ヴァイオリンが居なくて、ヴィオラ首席の鈴木さんがコンサートマスターっぽい席に座るのにちょっと驚きます。
でも、鈴木さん、元々弾きっぷりはコンサートマスターみたいにゴリゴリゴリなので、違和感なし。
小太鼓をこするような音や、弦楽器の特殊奏法も不思議な音。
般若心経を歌う大久保さんも熱演と言って良い歌唱でした。

で、一応、休憩前は、良い曲が出来ましたね…というような感じでいたのですが、後半でぶっ飛びました。

凄惨、凄惨、凄惨。
とどろく音響の第1楽章の後、合唱が入り、少女による語りに次第に様々な音や言葉が重なって、言葉が聴き取れなくなっていく様は形容し難い無慈悲の災厄。

語りの3人が退場した後の楽章も、凄惨な有無を言わさぬ音響と、悲痛な微弱音とが、何度も、何度も、押し寄せては入れ替わる。
こういう曲をカンブルラン様の指揮で、読響定期で聴けるということは、得難い体験…と言って良いのでしょう。

後半の細川さんの曲の印象が強すぎて、終演後は前半のツェンダー氏の委嘱初演の印象が薄れてしまいましたが、ツェンダー氏の新作を聴く機会、それもカンブルラン指揮の読響定期で…というのは贅沢な体験なのでしょう。

…というわけで、読響さん、本当に良い常任指揮者を獲得されましたね、と何度でも思うわけですが、カンブルラン様がこういう曲も普通の曲と同じように振ってしまって、下野さんの立場が微妙…というのは考えすぎかな?

ちなみに、帰宅して読響のプログラム冊子の解説を見ると、細川さんの曲のの少女、少年の朗読はドイツ語とあります。
あれを日本語でやったのは、私のようなドイツ語のわからない者にとっては物凄く効果的で、ドイツ語のままやってたら、今回ほどの圧倒的な印象は受けなかったかもしれません。
どなたの発案なのでしょう?
素晴らしい!

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インバル/都響(2012/10/27)

2012年10月27日(土)15:00
横浜みなとみらいホール

指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団

(新マーラー・ツィクルス第Ⅰ期・ツィクルスⅢ)
メゾソプラノ:池田香織
女声合唱:二期会合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊

マーラー:交響曲第3番

あの、大興奮した先日のあのブラームスが「あれでも中休みだったのでは?」とさえ思えてくる超絶の音楽。
興奮と言うよりも、感銘、感動、深い、深すぎる感銘。
「こんな音を聴いて許されるのか?」というくらい。
事前の、元々高い期待をはるかに凌駕する、凄すぎる音楽体験。
唖然として見守るのみでした。

個人的体調により、第1、第2楽章は眠くて、目を半分閉じて聴いていたのですが、鳴っている音が物凄いのは一応わかります。
オケのメンバー全員が相当に強い音を出しているはずですが、音が濁りません。
クリアー、センシティブ、パワフル。

第2楽章の後に独唱と合唱の入場のためのインターバルがあって助かりました。
おかげで眠気(個人的体調による)が取れました。
ただ、そういう体調なので、私自身はハイテンションにならずに冷静に観察。
興奮状態にならずに観察していると、目の前で起こっている出来事の物凄さがよくわかります。
平静に観察しているのに、その出来事は、頭で理解していたはずが、いつのまにか心で受け止めています。
私自身は穏やかに、しかし深く、共鳴しました。

声楽陣も、目の前でオケが鳴らしていた音は受け止めていたはずで、突出せずに、この清麗な音響の“部分”として一体化したハーモニー。
交響曲の中に組み込まれた異質感を全く感じさせません。

そして終楽章。
日本に、いや、世の中に、こんな美しい、神々しい音があって良いのか…と言いたくなるくらい。
こんな音を、微弱音から最強奏まで、相当の熱演のはずなのに一糸乱れずに鳴らしきる都響のコンディションは驚嘆するほど素晴らしい。
。今からこんな音を聴いていたら、9番はどうなるのか?というくらい耽美の境地。
残響が完全に消える前に蛮声のフラブラがあったような気もしますが、そんなことでこの演奏に対する私の感銘は揺らぎませんでした。

会場は一般参賀2回の盛り上がり。

自分としては、前日までの疲れが残っていて、先述のように、第1、第2楽章は眠気を感じながらの鑑賞、インターバルで眠気が覚めても、没入せずに鑑賞、それでいてこれだけの深い感銘を受けるとは、驚異的な演奏。
やはりこのコンビは凄いとしか言いようがありません。

20121027

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2012年10月22日 (月)

インバル/都響(2012/10/22)

2012年10月22日(月)19:00
サントリーホール

指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団

(第743回定期演奏会Bシリーズ)

ブラームス:交響曲第2番
ブラームス:交響曲第4番

先日の第3番、第1番の「続き」。
そう、「続き」だったのです。
会場が変わっても、日にちを置いても、トップ奏者が入れ替わっても、インバルさんと都響による交響曲全集、一気に完結しました。

前半の第2番は、相性が良くない演奏だと長大に感じる第1楽章があっという間に終わり、え?もう?…という感じ。
続く第2楽章が低弦の深い、強い音に木管の深い音色、これもあっという間。
第3楽章も余裕の音色で鳴らし、第4楽章は余裕の大爆発、凄い、凄い。
終楽章は、インバルさん、煽っていたのでしょうか?
表情はにこやかに、嬉しそうに振っていましたが…。
これだけ畳み掛けるように加速?煮沸?していったのに、粗野な音にならずに弾力性のある音を保って最後まで行った都響のポテンシャルも凄い。

後半の第4番は、曲が曲だけに、第1楽章から物凄い高揚感。
第1楽章が終わったところで「コールドゲーム、試合成立です」と言われても「そうですか、良い試合でした」と大満足で拍手して帰ったと思うような凄いエンディング。
いや、その後の楽章も、ものすごかったのですが…。
第2楽章、第3楽章も、仮に未完でここで終っても、興奮、あるいは充足感を感じたであろうと思えてくる演奏。
そして当然、終楽章の高揚感もトテツモナイ。

あえてあらを探せば、第3楽章でアンサンブルが一瞬?
私の気のせいかな?
あと、第4楽章で木管の絶妙のソロのリレーの後、ホッと一息の感があった?
私の気のせい?
でも、それくらいしか聴いているこちらも、受け止めるのが精一杯で、観察する余裕がなかったような…。

前半の第2番では、残響が消えるやいなやの拍手開始で、でもまあ、こんな演奏だから仕方ないか…と思いましたが、第4番では、会場全体があっけにとられたように、拍手開始まで間があり、パラパラと始まったような気がしたくらい。
もちろん、その後は満場、割れんばかりの大喝采でした。

インバルさんは、鬼の形相にはならず、割と平然とした表情で振っていましたが、動きは相当に激しく、大きく、終演後は指揮台上で汗を拭き、舞台袖に引き上げるたびに水をゴクゴクと。
紙コップ一杯では足りない感じで、毎回おかわりを…。
やっぱりかなりの気合いが入っていたのでしょう。

今のこのコンビの凄いのは、これだけ畳み掛け、煽り、高揚していながら、(繰り返しになりますが)粗雑な音にならず、弾力性のある美しい音で何度も頂点を極めること。
充実、あうんの呼吸、一体感…などという言葉では語れない、ベストコンディションです。

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2012年10月21日 (日)

ホリガー/水戸室内管弦楽団(2012/10/21)

2012年10月21日(日)14:00
水戸芸術館コンサートホールATM

指揮・オーボエ:ハインツ・ホリガー
水戸室内管弦楽団

(第85回定期演奏会)

ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」
ルブラン:オーボエ協奏曲第1番
J.S.バッハ:オーボエ・ダモーレ協奏曲BWV1055R
バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメント

巨大な音楽!
指揮もオーボエも。
「室内」と言う言葉が似合わないくらい凄い!

ハイドンからして巨匠風と言って良いような巨大な音楽。
バロックティンパニの強打以外、ピリオドスタイル皆無。
濃厚に表情付けがされているようですが、基本は快速テンポでキビキビと進むので、もたれる印象はありません。
重量感と爽快感を両立したような演奏です。
ああ、ハイドンって、ベートーヴェンの時代まで生きたんだよな…と納得させられる演奏でした。

続くルブランのオーボエ協奏曲は、Nazos Music Libraryで予習して「良い曲だな」と思っていましたが、ホリガーさんが吹くとなるとさらに上のレベルになります。
ハイドンに続いて巨大な音響が出現する。
重量感と爽快感の両立はハイドン同様ですが、そこに、あの、オーボエソロが!

最初のうちはエネルギッシュに吹き振りをしていたホリガーさん、第1楽章が終わる頃になると、ソロが中断すると息が上がったような素振りも…。
しかし、再度楽器をくわえると、全く問題ないどころかさらにヒートアップする!
最終楽章の最後の方では、ソロの合間は息を整える方を優先し、指揮の動作は控えめにした感もありましたが、それは視覚的なことであって、音楽は何の問題も無く、とてつもなく凄い。
演奏が作品を超えてしまった…のかどうかは私にはわかりませんが、とにかく巨大な、でも楽しい音楽でした。

休憩後のバッハも吹き振り。
ピリオドのピの字も無い?バッハ。こ
れを巨匠風と言って良いのかわからないですが、やはりスケールの大きいソロと指揮。
今どき、こういうスタイルのバッハで客席を威圧できるとは、ホリガーさん巨大なり。

最後のバルトークでは、一変して(と私には感じました)研ぎ澄まされたシャープな音が印象的。
ピツィカートの微弱音から全奏者による最強奏まで、多彩、微細。
そして、この人数とは思えない音圧が客席を威圧。
それをこの身に受け止める快感!

ホリガーさんの音楽は、すでにオーボエひとつには収まらなくなっているのでしょう。
そして指揮はすでに余技ではありません。
しかし、そうであっても、ひとたびホリガーさんがオーボエを吹いたとき、そこにはオーボエひとつとは思えない巨大な音楽が、別次元の音響で鳴ります。
「音色」などというレベルの話しではありません。

いったんオケが引き上げた後、拍手が鳴り止まず、再度オケのメンバーと一緒に登場して答礼したホリガーさん。
オーボエの枠はおろか、室内管弦楽団の枠をも超越したような、巨大な、巨大な、威圧される、でも、とてつもなく楽しい、快感の音楽体験でした。

10月の3連休は、ロジェストヴェンスキーさんを優先したため、今回のホリガーさんの来日は聴けないかな…と諦めていました。
しかし、ちょうどスケジュールが空いている日曜日に水戸室内管弦楽団を指揮し、オーボエも吹く!というのを発見!
ハイドンの交響曲まで指揮するとあっては行かない理由が無い…と思ってチケットを買いましたが、
(協奏曲がモーツァルトではなかったので)
ハイドンはもちろん、協奏曲も、バルトークも、本当に素晴らしい体験。
聴きに行って良かったです。

20121021

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2012年10月20日 (土)

カンブルラン/読響(2012/10/20)

2012年10月20日(土)18:00
東京芸術劇場

指揮:シルヴァン・カンブルラン
読売日本交響楽団

(第198回東京芸術劇場名曲シリーズ)
合唱:新国立劇場合唱団

ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」(全曲)
ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」(全曲)

違う席で聴いたら、違う印象を受けたかもしれませんが、音の潤い、調和と言うよりは、音の分解能と突き抜けるような迫力。
パワー炸裂!
その炸裂するパワーをこの身に浴びる幸せ!

マ・メール・ロワは、、出だしは少し管楽器のハーモニーがぎこちない気がしたのは私の気のせいでしょうか?
サントリーホールで聴いたら、もう少し潤いのある音に聴こえたかも…などと思いつつ、芸劇でも、先週のコバケンの芸劇マチネで座った席は全然音が違ったことを思い出しました。
どうもまだ芸劇の音響がよくわかりません。
ロジェストヴェンスキーさんのときも、1日目2日目では、音響がまるっきり違いました。
私は気がつかなかったのですが、舞台上方の反響板の位置が変えられていたと、Twitterで教えていただきました。
確かに1日目では音が反射して戻ってくる感じがあったのですが、2日目では軽減されていました。
この日のカンブルランさんの演奏では、ほとんど感じませんでした。
まだ、しばらくは試行錯誤が続くのでしょう。

後半のダフニスとクロエは、出だしから文句無し。
ハイテンションで次々と繰り出す音に、全く飽きずに聴き続け、気がついたらもう、第3部冒頭に…。
あ、あと少しで終わってしまう…。
残っているのは第2組曲だけ…。
フルート首席の倉田さんのソロの音は(私の席の音響の関係で)想定通りではなかったのですが、やはりさすがです。
見事、見事。
フルート奏者になって良かった!という曲なのではないでしょうか。

カンブルランさんは、最後は、阿修羅のごとく、忘我の境地。
髪は束ねてあるので振り乱さなかったですが、紅潮した顔で激しく振りまくり、半狂乱状態。
そうか、カンブルランさんが髪を束ねているのはこのためか…と思ったのは会場を後にしてからです。

繰り返しになりますが、席の位置が違ったら違う印象を感じた可能性は高いです。
音の潤いよりは分解能とパワーを感じた今日の演奏、最強奏で少し騒々しく感じる場面もありました。
しかし、それは、たまたま私が座った席の音響のせいでしょう、たぶん。
だからと言って、この演奏を浴びさせていただいて、何の不満がありましょうか。
私的には、カンブルランさんに振ってほしい曲第1位のような演奏会。
広島、長崎には行けなかったので、久しぶりのカンブルランさん体験、幸せでした。

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庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ(2012/10/20)

2012年10月20日(土)13:00
横浜みなとみらいホール

ヴァイオリン:庄司紗矢香
ピアノ:ジャンルカ・カシオーリ

ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番
シベリウス:子守歌
(アンコール)

駄目。
眠い。
演奏が悪いのではありません。
私の遊び過ぎのせいです。
(一応、仕事もしています。)

前半は個人的体調により、強烈な眠気に襲われて大失敗。
13:00開演で昼食直後。
ベートーヴェンはピアノ・パートも良いですね…というような断片的な記憶のみ。
軽食で済ませておけば良かったかな…。

休憩後の後半は、覚醒して聴くことが出来ました。
これらの演奏から推察するに、前半も相当に良かったのでしょう。
もったいないことをしました。

どこがどう…と言うほど曲を知らないですし、部分に焦点をあてた分析が不要なくらい「全般的に御立派!」と言いたい演奏。
外面的な効果よりも、内面を見つめるような演奏。
ごくごく部分的に、カシオーリさんが気合を込めて弾いていたのが印象的。
でも、カシオーリさんのピアノも、ヴァイオリンと寄り添って、かなり内面的。
答礼では庄司さんをたてていましたが、演奏としては、単なる伴奏ではない、デュオと言うにふさわしい共演でした。

アンコールは庄司さんが日本語で紹介。

たぶん珍しい部類の13:00開演。
ホールを出たのは15:30頃になりました。
サイン会の列には今日は並びませんでした。
前半、寝ていたも同然なのに、庄司さんに「感激しました!」などとは言えません。

20121020

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2012年10月19日 (金)

ラザレフ/日フィル(2012/10/19)

2012年10月19日(金)19:00
サントリーホール

指揮:アレクサンドル・ラザレフ
日本フィルハーモニー交響楽団

(第644回定期演奏会)
ヴァイオリン:川久保賜紀

【プロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクト 最終章】
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
       ~スケルツォ
(アンコール)(たぶん)
プロコフィエフ:交響曲第6番

明日はもっと良くなるだろうという箇所はあったように思います。
しかし、…。
しかし、…。
ラザレフさんが振ると、日フィルの音が激変する!と言わざるを得ません。
手取り足取りの大暴れ、キュー出しまくり、でした。

前半は川久保賜紀さんの独奏で、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。
賜紀さんを聴くの、久しぶりです。
5年くらい前に読響でブルッフを聴いて感激したので、楽しみにしていました。
基本、線が細い方と言って良いと思いますが、その線の細さを逆手にとって(と言ったら失礼かな?)、繊細な音を切々と歌わせる。
線の細めは短所ではなくて、長所なんです、賜紀さんの場合。
すなわち、太い筆で豪快に鳴らす演奏ではなく、微細なニュアンスを駆使しつつ、神経質にならずにたっぷり歌う。
これが、ラザレフさんと正反対かと思いきや、実はラザレフさんも豪快だけど細部にもこだわっているので、結構良い組み合わせだったりします。

ノーカットの方での演奏だと思いますが、やっぱりこっちの方がいいなあ、私は。
賜紀さんの繊細な演奏は技巧の駆使をひけらかさない。
アンコールのクライスラーも、毛筆ではない、ペン習字のような細やかさが美しい演奏でした。
ちなみにロビーのアンコール曲の掲示、アレグロになっていますが…。
読響の芸劇マチネで、米元響子さんが弾いたアンコールと同じだったような…。

休憩後の後半は、プロコフィエフの交響曲全曲演奏の最後を飾る第6番。
確かラザレフさんが健康上の理由で来日中止になり、ラザレフさんの希望で代役の指揮者は曲目変更、演奏せずにとっておいた曲ではありませんでしたっけ?
プログラム冊子にはそういうことの記載は無かったようですが…。

例によってラザレフさんは大暴れ。
しかしP席から見ていると、その大暴れは(いつものことですが)、やみくもに動き回っているのではなく、キューの出しまくりであることが素人の私にもわかる。
まさに豪快な手取り足取り。
身体、全身だけではなく、目線をも駆使して…。
大暴れの指揮の動作は、一見、豪快だけど荒い音であるかのように錯覚させられます。
しかし実際は、音の出から音の止めに至るまで、細部に至るまで、処理が相当に行き届いています。
雑な箇所、大味な箇所は皆無と言って良いでしょう。

おそらく翌日の2日目の演奏は、さらに磨きがかかり、凄いことになるのでしょう、特に第1、第2楽章は。
この上、何をまだ望むのか?と問われれば、音の溶け合い、だと思います。
その極上の溶け合い、調和は、第3楽章の前半で聴くことが出来ました。
これが全曲を通して出れば、さらに上を行く演奏になるはず。
そして、おそらく2日目は…。

プロコフィエフの交響曲全曲演奏、私はいろいろ事情があって、初回とこの日の最終回しか聴くことが出来ませんでした。
しかし、それでも、聴けたことを喜ぶべきでしょう。
まだまだ課題はあるものの、ラザレフさんが来てくれる限りは、日フィルの未来は明るいのでは?

2012_10_19

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2012年10月18日 (木)

コヴァーチュ/東フィル(2012/10/18)

2012年10月18日(木)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:ヤーノシュ・コヴァーチュ
東京フィルハーモニー交響楽団

(第73回東京オペラシティ定期シリーズ)

ソプラノ:天羽明惠
メゾ・ソプラノ:加納悦子
合唱:東京混声合唱団

リゲティ:ルーマニア協奏曲
リゲティ:永遠の光
(無伴奏合唱)
リゲティ:アトモスフェール
リゲティ:レクイエム

オール・リゲティ・プログラムで全席完売とは驚きました。
現代(近代?)音楽は、お呼ばれの演奏会ではなく、オケ主催の演奏会で聴くに限る?
超常的なハーモニーの異空間!
確かに、主催公演クオリティのオール・リゲティ・プロ。
素晴らしかったです。

冒頭のルーマニア協奏曲、これは「東フィルさん、相当に気合いを入れられましたね」というような目の覚めるような素晴らしい音で始まった曲。
この曲だけはNAXOS MLで予習した時に「あれ?間違えたかな?」と思った現代(近代)音楽らしからぬ曲。
もちろん、表面的に聴く分には、でしょうけど。

続く東京混声合唱団の無伴奏合唱による永遠の光。
おそらく何層にも重なったハーモニーなのでしょうが、それが不思議な調和で均質化されて響く。
こういう音は(予習はしましたけど)生じゃないとわからない。
本当に音が消えた後も、ずいぶん長いこと、コヴァーチュさんの指揮の動作は続きました。

合唱と入れ替わり、再びオケが登場して、アトモスフェール。
やはり多層かつ均質化された構造なのでしょうか。
表面的には持続する微弱音の極めて美しい音が印象的。
想像するに、難曲ですよね?演奏するの。
でも、鳴っている音は神経質ではない美しさでした。

ちなみに、ピアノの両脇に高い椅子でスタンバイし、ピアノの弦をこすって音を出していた方は、ピアニストなのでしょうか?
打楽器奏者なのでしょうか?
打楽器奏者ですよね?
その演奏の姿はよく見えましたけど、私の耳では、音色はあまりわかりませんでした。)

休憩後のレクイエムは、地の底から響くような男声の低域、コントラバス。
それと対極的に天まで突き抜けるようなソプラノ独唱。
弱音器を付けた上に消え入るような小さな音のトロンボーン。
オケの皆さん、自分の出番でない所でも、全く気を抜かぬ鋭い視線で演奏の成り行きを見守る。
耳をつんざくように鳴り響く強奏よりも、無音に近い静けさ(咳などの会場ノイズは多少あり)が、恐ろしいような、心地よいような…。

会場ノイズと言えば、途中、鈴の音が2回くらい聴こえたような気がしましたが、あれは会場ノイズ?
私の気のせい?
音が完全に消えてもまだ振り続けるコヴァーチュさん。
完全無音状態のオペラシティの空間に響く咳の音。
「お客さん、ここ、咳をするところじゃないですよ」と言いたいところですが、もちろん、楽章間と間違えたのではなく、やむをえなかったのだとは思います…。

ともあれ、Naxos MLで予習はしたものの、我が家のローエンドの装置では絶対にわからなかった音響でした。

蛇足ですが、2階席のロビー奥に、指揮者を映すモニターが置かれていたのですが、どこで使ったのか、気がつかなかった私。
休憩時間には電源オフになっており、画面は消えていました。

蛇足、その2。
チケットを買ったとき、P列は販売なしとのことで、実際、P列の座席は撤去されてはいましたが、その場所は、特に使わなかった様子でした。

リゲティというと、私はピアノ協奏曲ヴァイオリン協奏曲(80-90年代)くらいしか生で聴いた記憶がなくて、今日のコヴァーチュ/東フィルの4曲(50-60年代)は、ずいぶん印象が違いました。
作風の変遷なのですか?
もっと聴いてみたくなりました。
東フィルさん、またやって下さい。
完売しますよ。

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2012年10月17日 (水)

インバル/都響(2012/10/17)

2012年10月17日(水)19:00
東京文化会館

指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団

(第742回定期演奏会Aシリーズ)

ブラームス:交響曲第3番
ブラームス:交響曲第1番

このコンビが普通に演奏すれば、普通に高水準の演奏に…などという斜に構えた聴き方を許さない緊迫感のある演奏、特に後半の第1番。
デフォルメした演奏ではないと思いますが、インバルさんが気合いを込めると、余裕で追従するドイツの高級車のような都響です。
いやはや、聴き慣れているはずのこのコンビで、しかも前述のようにさほど作為的でないのにサプライズのある演奏。
緊迫感は尋常ではないですが、それが無理した結果でないところが素晴らしい。

前半の第3番は、どこがどう…というわけでもなく、このコンビのいつもの演奏…と言うことは高水準で…などと不遜な態度で聴いていましたが、第1楽章終盤で「おおっ!」となり、後は聴き手の私も、ただただ、受け止めるだけ。
ごく自然に高揚するあたりがこのコンビの充実ぶりを示しています。
もちろん、インバルさんの指揮に実演ならではの気合いを入れた箇所はありましたし、都響のメンバーも身体を揺らして演奏する箇所も多々ありました。
しかし、全般を通しての印象は、自然体で、背伸びをせずとも、熱演にせずとも、高水準の音が鳴るこのコンビ、でした。

そして後半の第1番。
曲が曲だけに、冒頭から気迫みなぎる音。
緩急自在と言うよりは、急急自在っぽいですが、割とゆったり目の中間楽章、特に第2楽章における各木管奏者のソロも美しい限り。
(鷹栖さん、乗り番でした。私は久しぶり。)
もちろん矢部コンマスのソロも余裕の美演。
第4楽章はお約束の…と言ってしまっては身も蓋もないですが、インバルさんは少しだけ煽っていました、たぶん。
その軽い煽りに平然と追従し、高揚し、緊迫しつつも爆演にしない都響。
最後も節度ある、しかし圧倒的と言うしかない終結でした。

東京文化会館の短い残響が消える前に(消えるや否や?)拍手を始めた方がいらしたのは…。
まあ、気持ちもわからなくはありませんが…。
まあ、そんなことは忘れて、予定された通りの、期待値通りの、…と言うことは相当に素晴らしかった演奏に感謝しましょう。

ちなみに蛇足ですが、首席オーボエ奏者の広田さんの公式サイトの活用法、裏技(個人的)。
ここをチェックすると、もう一人の首席オーボエ奏者の鷹栖さんの乗り番がほぼわかるのです(すみません!)。
で、この日も想定通り、鷹栖さんの乗り番だったのですが、広田さんが保護者のような顔をして3番目に座っていたのには、一瞬目を疑いました。

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2012年10月16日 (火)

フェドセーエフ/チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(2012/10/16)

2012年10月16日(火)19:00
サントリーホール

指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ
チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ

<フェドセーエフ80歳記念ツアー>
ピアノ:小山実稚恵

ラフマニノフ:ヴォカリーズ
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
スクリャービン:左手のための2つのノクターン
(アンコール)
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」
         ~「アラビアの踊り」
(アンコール)
チャイコフスキー:「白鳥の湖」
         ~「4羽の白鳥の踊り」
(アンコール)

私にしてはかなり珍しく、招待券をいただきました。
(ありがとうございます。)
半休をとって東京文化会館16:00開演の「サロメ」鑑賞の後、19:00開演のサントリーホールへ。
上野→溜池山王は、銀座線で17分。
時間的には余裕のハシゴ。
しかし平日に遊びほうけて、とても仕事を持っている人間とは、自分でも思えません。

閑話休題。

フェドセーエフさんと(当時の名称の)モスクワ放送響というと、20世紀に聴いた荒々しい演奏を、今でも思い出します。
しかし相当に久しぶりに聴いた前回の東フィルへの客演で、変貌ぶりに驚きました。
この日も当然、その変貌した後のフェドセーエフさん。
ニュアンス豊かで優しい音。
エレガントです。

ラフマニノフのヴォカリーズでふんわりと始まった本番。
しかし、チューニングでは鋼(はがね)のような音が鳴り、鉄のカーテン(死語?)の名残りのような音で、ウィーン国立歌劇場管弦楽団とはだいぶ違うなぁ…と思いました。
しかし、フェドセーエフが振ると、音が変わります。
深い、深い、味わい深い演奏。

続いて、小山実稚恵さんの独奏によるラフマニノフの協奏曲。
最初のうちこそフェドセーエフさんに合わせて?優しく弾いていた小山さん、第2楽章あたりからハイテンションになり、凄い、凄い。
その小山さんの繰り出すパンチを、懐深く、優しい音で受け止めていたフェドセーエフさん、最後の最後だけは、少しだけ昔を思い出すように鳴らしたのかな?
それでも昔に比べれば相当に節度ある音だったと思います。
最強奏でも若い頃のように、うるさい音になりません。

小山実稚恵さんによるアンコールはスクリャービンの左手とのこと。
(左手だけで弾いていたことに気がつきませんでした…。)
会場の熱狂を冷ますかのように、本編のフィナーレとは一転して、優しく紡がれた、粒立ちの良いピアノの音、きれいです。

後半のシェヘラザードでは、ごくごく部分的には煽り、加速を入れるものの、それはかなりの例外で、全般的にはやはり味わい深い演奏。
縦の線はあえて揃えなかったのか、微妙にずれる場面も何回かありましたが、カチッ、カチッと合わせるよりも、よほど魅惑的な効果を生んでいました。
コンサートマスターのソロはもちろん、それ以外の奏者のソロも、皆さん、めっぽう上手い。
技術的に、と言うよりも、興がのった…という月並みな形容が適切かわからないが、テンションの高い演奏をしているのに粗雑な音は皆無です。

アンコールは「くるみ割り人形」と「白鳥の湖」から一曲ずつ。
私の好みからすると、前者は少々遅め、後者は少々早めでしたが、これはこれで楽しい体験でした。
アンコール2曲でオケが解散した後、舞台に呼び戻されたフェドセーエフさんの一般参賀。
野獣の面影の消失した紳士のフェドセーエフさん、聴けて良かったです。

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ウィーン国立歌劇場「サロメ」(2012/10/16)

2012年10月16日(火)16:00
東京文化会館

ウィーン国立歌劇場日本公演
R. シュトラウス:サロメ

とりあえず申し込んでみたエコノミー券の抽選に当選してしまった平日マチネ。
新国立のZ席は当選しないのに、こういうのは当選するのだから、お金が出て行くわけだ…とぼやきつつも、嬉々として半休をとって東京文化会館へ。

これは凄い!
ピットのオケはさすがは天下の国立歌劇場管弦楽団、歌手を食うほどの壮絶な音響!
少女から鬼気迫る化け物に変貌するサロメ!
それに絡むヘロデ、ヘロディアス。
恐れ入りました。

当初は、代役の指揮者がペーター・シュナイダーさんでは文句を言う筋合いはないですが、ウェルザー=メストさんの指揮で聴きたかったのは事実…などと思っていました。
でもまあ、現地ウィーンでのレパートリー上演を日本で観れたと思えば良いかな(暴言失礼!)…などと思っていた自分が恥ずかしい。
白熱し、高揚していく舞台は唖然とするしかありません。

最初のうちこそ、あ、さすがは国立歌劇場管弦楽団、木管のソロは言うまでもなく、ティンパニ至るまで、音色は極上!…などと分析的に聴いていましたが、次第に圧倒されるようになり、「味わう」から「受け止める」しかない状態になりました。

最後の方、7つのヴェールの踊りの後は、サロメの歌唱は神がかり的。
合いの手を入れるヘロデもヘロディアスも高揚し、相当に凄いことになっていましたが、ピットのオケは歌手を食ってしまうほどに雄弁、多弁、強烈、炸裂。
(5階席で聴いた印象です。)

演出は取り立てて目立たず、今の前衛的な演出から見れば、仕事はちゃんとしたのかい?…と言いたくなるような気もしますが、ピットと舞台上の歌手がここまでヒートアップすれば無問題。
いや、もしかして音楽に気を取られて、私が演出の深い意図に気づかなかったのかな?

5階席の私からは(前のめりになると後ろの方の視界を遮るので)ピットの指揮姿はあまり見えなかったのですが、さすがは手慣れたマエストロ、自然体で、ひょい、ひょい、と振っている様子。
代役などは余裕でこなす百戦錬磨の一級職人です。

実は前の日にカラヤンのサロメのCDを聴いて少し後悔しました。
うますぎる、格が違う。
…しかし杞憂でした。
天下の国立歌劇場管弦楽団の生演奏は、ハンパではありませんでした。
これに太刀打ちできるオケは、当然、世界にほんの少ししかありません。
門外漢の私には、今回の国立歌劇場管弦楽団に、どれくらいエキストラが含まれているのかは存じ上げません。
でも、そんなことはどうでも良い、壮絶な体験でございました。
音楽の力は強し!
演出で煽らなくても…。

指揮:ペーター・シュナイダー
演出:ボレスラフ・バルロク
美術:ユルゲン・ローゼ

キャスト
ヘロデ:ルドルフ・シャシンク
ヘロディアス:イリス・フェルミリオン
サロメ:グン=ブリット・バークミン
ヨカナーン:マルクス・マルカルト
ナラボート:ヘルベルト・リッペルト
小姓:ウルリケ・ヘルツェル
第1のユダヤ人:ヘルヴィヒ・ペコラーロ
第2のユダヤ人:ペーター・イェロシッツ
第3のユダヤ人:カール=ミヒャエル・エブナー
第4のユダヤ人:ウォルフラム・イゴール・デルントル
第5のユダヤ人:アンドレアス・ヘール
第1のナザレ人:アルマス・スヴィルパ
第2のナザレ人:ミハイル・ドゴターリ
第1の兵士:アレクサンドル・モイシュク
第1の兵士:ダン・ポール・ドゥミトレスク
カパドキア人:ヒロ・イジチ
奴隷:ゲルハルト・ライテラー

管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

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2012年10月14日 (日)

新国立劇場「ピーター・グライムズ」(2012/10/14)

2012年10月14日(日)14:00
新国立劇場

ブリテン:ピーター・グライムズ
(ベルギー王立モネ劇場からの
 プロダクション・レンタル上演)

怖いですねー。
所々ヴォツェックを思い起こさせるような…。
それを緊迫感のある舞台に仕上げた演出、演じた歌手、コーラスの群衆、指揮、そして「最終日の」東フィル!
壮絶な体験でございました。
今日は私にしては珍しく、カーテンコール2回までで席を立ったのですが(不満があったからではなく、少々疲れ気味だったため)、私が1階に降りて会場を出る時も、まだ拍手は続いていました。

冒頭から緊迫感のあるオケの音、歌唱。
最終日だし、特に私の数少ない経験からすると、ピットの東フィルは、初日より最終日の方が良いことが多い気がするから想定通り。
強い音、叫ぶような音の多い曲ですが、なかなか「らしい」音を鳴らしていたのではないでしょうか。

舞台を締まった、切れ味のあるものにした演出効果は素晴らしい。
装置、照明はもちろん、群衆の動きのスピーディーなこと、そしてそれが、大挙して、威圧感も持って動く様は効果抜群です。

嵐の間奏曲の場面で、幕を下ろしたまま、何も行われずに音楽だけが鳴り響いていたのは、こういうものなのでしょうか?
新国立の舞台機構を使えば、ここで何かパントマイムでも見せることも可能ではないかと一瞬思いました。
まあ、そういう奇抜な演出を求めていたわけではありませんが…。
もちろん、プロダクション・レンタルのためで、新国立劇場の舞台機構を想定していなかったからかもしれないし、次の場面で、扉が開くたびに嵐の音楽鳴る効果を邪魔しなかったという可能性もあります。
休憩後も間奏曲では幕は降ろしたままでした。
でも、逆に、視覚の疲れを休ませてくれた感もありました。
その間、ホッと一息の気分も…。
それくらい、幕が開いている間は壮絶でした。

歌手の誰がどうこうという雑念を感じさせません、
コーラスの群衆に至るまで、緊密に一体化した超ハイテンションの舞台。
4階席からはピットの中は見えませんが、壮絶な音から察するに、これまた相当の熱演だったのではないでしょうか?
東フィルが時折見せる爆演ではなく(暴言失礼!)。

4階席から見下ろすと、傾斜した舞台はそれほど強いインパクトは感じませんでした。
さらに傾斜した小部屋が現れると、さすがにそれは「おお!」という感じでしたが、こんなに凄い上演なら、もう少し奮発して下の方の階の席を買えば良かったかな。

私はこのオペラは初めてで、NAXOS MLにあったコリン・デイヴィス指揮の演奏で予習しました。
その(結構凄い)演奏を耳に刷り込んで臨んだ今日の上演でしたが、十分に実演の迫力を満喫出来た…ということは、この上演も、相当に凄い上演だったのでしょう。
posted at 17:45:36

蛇足ですが、ほとんど閉じかけた壁の向こうでの礼拝の合唱の場面、私は4階の端の方の席だったので、正面からは見えない位置で指揮をしている方の姿が見えてしまいました。
三澤さんかどうかまでわかりませんでしたが、本職っぽい指揮の動作でした。

この上演、日程をやり繰りして、足を運んだ甲斐がありました。
でも、もう少し元気な時に観たかった気がしないでもありません。

スタッフ
【指揮】リチャード・アームストロング
【演出】ウィリー・デッカー
【美術・衣裳】ジョン・マクファーレン

キャスト
【ピータ・グライムズ】スチュアート・スケルトン
【エレン・オーフォード】スーザン・グリットン
【バルストロード船長】ピーター・シドム
【アーンティ】キャサリン・ウィン=ロジャース
【姪1】鵜木絵里
【姪2】平井香織
【ボブ・ボウルズ】糸賀修平
【スワロー】久保和範
【セドリー夫人】加納悦子
【ホレース・アダムス】望月哲也
【ネッド・キーン】吉川健一
【ホブソン】大澤 建

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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2012年10月13日 (土)

マゼール/N響(2012/10/13)

2012年10月13日(土)18:00
NHKホール

指揮:ロリン・マゼール
NHK交響楽団

(第1736回 定期公演Aプログラム)
ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル

チャイコフスキー:組曲第3番
グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番
      ~サラバンド
(アンコール)
スクリャービン:法悦の詩

初日にしては上々…などとと言ったら叱られるかな。
結果的に最後の「法悦の詩」の超絶のサウンドを聴いてしまうと、前半のチャイコフスキーは100%ではなかったのかな。
それでも十分に魅惑的な演奏でしたが。
大物指揮者が在京オケの定期に客演する意義はいろいろあると思いますが、外来オケの来日演奏会ではあまり聴けない曲が聴けるという魅力がありますね。

チャイコフスキーの組曲第3番は、比較的オーソドックスに香り立つような演奏。
それは、マゼールさんが1970年代にウィーン・フィルを指揮して録音した35年前の演奏(名盤です!)とあまり変わっていない印象でした。
(数日前に、久しぶりにCDを取り出して聴いてみたのです。)
隅から隅まで100%が超一流のマゼールさんの音ではなかったのかもしれませんが(例えば、出だしは少し硬かったかな?大物を迎えての最初の本番で、さすがのN響も緊張したのでしょうか?あるいは木管の絡み合いの部分など)、全般的には、非凡なる剛腕が繊細に紡ぐチャーミングな曲。

休憩後は、キュッヒルさんの独奏によるグラズノフの協奏曲。
私はよくわかりませんでした。
会場は大喝采だったので、たぶん名演だったのでしょう。
でも、私自身はこの曲をさほど聴き込んでいるわけではないし…。
そして感じたのは、この曲、キュッヒルさんに合っているのかな?という思いでした。

キュッヒルさんのアンコール、バッハの無伴奏も、私はやや苦手な分野なので良し悪しはわからず。
演奏中に「あ、キュッヒルさんが、今、なぜ日本に居るのか、ようやくわかった!」という邪念も…。

そして最後の、スクリャービン、法悦の詩。
この演奏が聴けただけでも、足を運んだ甲斐があったというものです。
前半のチャイコフスキーも良かったとは思いますが、この演奏を聴いてしまうと、やはりオケの皆さんの力の配分は、100対95くらいだったのかな、と。

そう言えば、ホールに着いて早めに席についたら、メンバーの一部の方がステージ上で練習していて、聴こえてくる音はスクリャービンっぽい音ばかりでした。
N響メンバーをしても、気合いを入れて練習する曲なのですね。
その練習の成果は本番に実りました。

隅から隅まで隙がありません。
微細な部分までコントロールが効いています。
もっとも私はその微細な部分を聴き分ける耳は持ち合わせておらず、ただただ凄い音の“かたまり”として聴くしかなかったのですが…。
そして、それを平然と棒のテクニックで操るマゼールさん。
寄せては返す音の波。
オケが最強奏になっても余裕の指揮の手さばき。
私は1階席前方で聴いたので、この巨大ホールがどう鳴ったのかわかりませんが、壮絶な体験だったと言って良いでしょう。
定期演奏会らしい(N響らしくない?)曲目をマゼールさんの指揮で聴けた幸せ!

日頃、最近のN響にあまり好意的ではない私ですが、マゼールさんが客演しても特別料金にならないのは、感謝すべきであることは十分に認識しています。

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小林研一郎/読響(2012/10/13)

2012年10月13日(土)14:00
東京芸術劇場

指揮:小林研一郎
読売日本交響楽団

(第148回東京芸術劇場マチネーシリーズ)
ヴァイオリン:米元響子

スメタナ:交響詩「モルダウ」
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番
クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
       ~スケルツォ
(アンコール)
バルトーク:管弦楽のための協奏曲

コバケンは、本来は、レパートリーの広くない指揮者であるべきなのでしょう。
そのコバケンが、得意中の得意曲であるモルダウとオケコンを振り、オケが読響となれば悪い演奏になろうはずがありません。
別のオケで最近聴いたブラームスとは雲泥の差。
読響に来演する外国人指揮者と比しても遜色ない名演!でした。
私にとっては、久しぶりに聴く「本来の」コバケンだったような気がします。

冒頭の「モルダウ」、プロの演奏を素人が比較しては申し訳ないですが、先月、別のオケで聴いたブラームスの交響曲とは全く違います。
もちろん良い方に。
コバケンの得意曲(の6曲のうちのひとつ)だから当然…という見方も出来ますが、この隅々まで磨かれたニュアンスは、先月、一番もどかしさを感じた要素です。
鑑賞した席の位置の関係で、音の分解能があまりわからず断言出来ませんが、音色もかなりスメタナっぽく(つまり、機械的、あるいは純粋にシンフォニックではなく)「らしく」仕上がっていた印象です。

続くモーツァルトの協奏曲での米元響子さんのソロの音は、細いのか太いのか、私の席の音響ではよくわかりませんでしたが、なかなかのもの…つまり、モーツァルトを弾く喜びのような感情が音に込められた、心地よい演奏だったと思います。
義務的、禁欲的ではないモーツァルトでした。

本編の協奏曲も良かったのですが、アンコールのクライスラーが、より一層はじけた、楽しい演奏になっていたのは、若手ヴァイオリニストに共通でしょうか?
リサイタルも聴いてみたいと思いましたが、オケの演奏会だけでも取捨選択が大変なので、たぶん無理でしょう。
また、オケの演奏会にソリストとして呼んでほしい方です。
私が前回聴いたのは、5年くらい前だったと思います。

そして後半のバルトーク、管弦楽のための協奏曲。
1995年東響定期で一般参賀となった得意曲。
当然、事前の期待値も、別のオケのブラームスとは比べものにならないくらい高かったのですが、その高い期待がほぼ満たされた…ということは、相当に高水準の演奏だったと思います。
コバケンは楽章間の間合いをいっさい置かず、全曲を通して振りました。
咆哮する金管も、強打する打楽器も、音が濁らない。
それだけでなく、弱音でうごめくような低弦の形容し難いニュアンスも、おそらく細部まで意思が徹底されています。
この、右手一本で、太い筆で描いたようでいて、細部に至るまで意思が徹底された音は、別のオケで聴いたブラームスの不満が完璧に払拭されています。
…と言うよりも、本来の、私にとってのコバケンは、こっちなのですが…。

想像するに、コバケンは、隅々まで丹念に練習して仕上げたのではなく、振ったら、身体から曲のオーラが発散して、自然と出来てしまったのではないでしょうか?
そして今の読響のポテンシャルは、コバケンの意思を音に変換できる力量を有しているのです。

多くの聴衆にとって、演奏会は一期一会でしょう。
本日の演奏を聴いた聴衆と、先月の別のオケのブラームスを聴いた聴衆は、全く違う印象を抱いたかもしれません。
私は多少の予備知識があったので、盗っ人に追い銭(←意味不明)をしてリターンがありましたけど。

コバケンが読響の特別客演指揮者に就任すると聞いた時、正直、違和感がありました。
でも、このコンビ、意外と良いかもしれません。
三大○○曲はともかく、来季の読響のラインナップを見る限り、読響の事務局は、たぶん、コバケンに依頼すべき曲を十分に理解しています。
これは大きい!

ちなみに読響の来季ラインナップには、コバケンのブラームス・プロも入っています。
先月の別のオケでの演奏を聴いて「絶対に行かない!」と思っていましたが、何だか、聴いて確認したくなってきました。

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2012年10月12日 (金)

秋山和慶/東京シティ・フィル(2012/10/12)

2012年10月12日(金)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:秋山和慶
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

(第262回定期演奏会)

モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」
ラフマニノフ:交響曲第2番

今の秋山さんと東響ではこういう音にはなりません。
しかし、かつての若かった頃の秋山さんと東響に、タイムスリップして再会したような嬉しさ!
20世紀の秋山&東響を思い出すような渾身の力演を、卓越した棒さばきで、結果的には煽ったことになる秋山さんの、“手段”としてのテクニックの勝利!
このコンビ、かなり、かなり、かなり、良いかもしれません。

最初のモーツァルトでは、秋山さんのモーツァルト、変わった!と思いました。
少なくとも4~5年前とは相当に違うと思います。
疾走するスピード感。
メリハリの効いたアクセント。
ピリオドスタイルまでは行かないにしても、少なからずそちら寄りに寄った印象です。

このスピード感に東京シティ・フィルもよく追従したと思います。
東響だったらあり得ない僅差での音の出のズレも時々あったように思いますが、
(秋山さんの棒で、ですので)
まあ、目くじらを立てるほどのことはなく、健闘をたたえるべき演奏だと思います。

秋山さんが東響以外のオケを振ると、東響よりも音がシャープに出る傾向は、東京シティ・フィルにもあてはまるみたいです。
…と思って前半は聴いていました。
しかし後半のラフマニノフは、そのシャープさに加えて、元・飯守さんのオケの側面がプラスされて、なんとも形容しがたい、あまり聴いたことのない音に…。

ラフマニノフの交響曲第2番は、今の東響ならもっと洗練されたカラッとした、あるいは艶やかな音になるでしょう。
たぶん。
でも、シティ・フィルから出る秋山さんの音はパワー全開!
ある意味、荒々しい音。
しかしそれは、棒でコントロールされた、偶然の産物ではない音。

秋山さん、熱狂していません。
冷静に棒で示します。
激しささえも、魅惑的な歌い回しも、全て棒で示します。
その、相当に細かく激しい棒の先端に、オケが必死でくらいつく。
爆演ではないですが、スレスレの熱演だったと言って良いのではないでしょうか。

最後の最後は、秋山さんが、一瞬だけ鬼のような形相を見せました。
秋山さんのああいうお顔、私はあまり拝見した記憶がありません。
それくらい、相乗効果で、白熱していった演奏だったのだと思います。
終演後のオケのメンバーの皆さんの嬉しそうな顔が、全てを物語っていました。

秋山さんと東響の音、あるいは、秋山さんと読響の音、どちらとも違う秋山さんとシティ・フィルの音。
個人的に秋山さんの大ファンの私はどれも好きですが、この演奏会での音は、私が最近最近聴いたことのない秋山さんの音だったかもしれません。

ちなみに、この東京シティ・フィル定期、欧米人っぽい風貌の方々が聴きにいらしていて、終演後にロビーに集まって、皆さん紅潮したお顔で嬉しそうにニコニコされていました。
私が個人的に秋山和慶さんのファンであることは横に置いて、日本人として嬉しい、誇らしい気持ちになりました。

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2012年10月 8日 (月)

ロジェストヴェンスキー/読響(2012/10/8)

2012年10月8日(日)15:00
東京芸術劇場コンサートホール

指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
管弦楽:読売日本交響楽団

ヴァイオリン:サーシャ・ロジェストヴェンスキー

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
シュニトケ:ポルカ
(アンコール)
チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」

最終日は“一般参賀”となりました。
後半の「悲愴」の、特に第3楽章以降が壮絶!
ある意味、荒々しい演奏で、前日までの格調高い印象は後退しましたが、それを犠牲?にした甲斐は十分にあった演奏でした。

前半の協奏曲では、眠くなってしまいました。
もちろんそれは、私個人の問題です。
たぶん…。
なぜならば、演奏終了後は会場は大喝采でしたし…。
登場した名誉指揮者は、演奏会冒頭では昨日より元気そうでしたが、オケの音は…どうだったのでしょう?
確かに第2楽章の倉田さんのフルートを始め、木管のソロは素晴らしかったです。
でも、比べてはいけないのでしょうけど、聴く方も3日目になると、昨日までに交響曲で鳴った音を覚えているのです。

しかも、スタイリッシュに弾こうとする独奏者と、どっしり構えて進めたい指揮者の間に齟齬があったようにも聴こえてしまいました。
いや、決してけなすような惨い演奏ではないのですが…。
でも、このツィクルスの、他の曲の音が凄すぎるんで…。

ソリストは譜面を置き、ノーカットでない方?(アウアー版でしたっけ?)での演奏。
だからどうしたというわけではないのですが…。
個人的にはアンコールの演奏の方が面白く感じました。

この日は奏者は何人か入れ替わっていて、ティンパニOBの菅原さんも居ません。
交響曲になったとたん、オケの音は真剣モードに!…と言うのは言い過ぎでしょうか。
しかし最初のうちは、遅いテンポに微妙に乗り切れていない金管の音?
やっぱり凄いけど、前日の5番の方が音の極上感が…などと思って聴いていましたが、第3楽章で一発ドカンと鳴らした後は、全奏者一丸となって、鳴らす、鳴らす、煽る。
それでも爆演ではなく、中身はずっしり。
第4楽章は第3楽章の残響が消える前に、一呼吸も置かずに続けての演奏。
怒涛のような第4楽章は、最後の最後まで、微弱音にならず。
そして、その最後の静けさの中でくしゃみ?をした聴衆がいらしたのはご愛嬌。
しかし、トテツモナイ演奏の前には、些細なことは気にならず。

3日連続というハードな?演奏会。
最終日は少し荒っぽかった印象を受けたのは、あえてそうしたのではないかと思えてくるような迫力。
前日までの調和のとれたハーモニーを若干崩したことによって、得られた別の効果もあったはずです。

指揮者は、最後の方は、あまり振らなくなり、本当に最小限の指示しかしない。
ときには、かなり長い旋律でも、任せて楽譜を目で追っているだけの場面も…。
それでも、こういう音が鳴る。
おそらく、立っているだけでも、こういう音が鳴るのでしょう。

初日はお客さんが少なめで「あらら」という感じでしたが、初日より2日目2日目より3日目とお客さんが増え、めでたし、めでたし。
終わり良ければすべて良し。
久しぶりの来演で忘れかけていましたが、この老巨匠となった名誉指揮者は、読響の宝です。

20121008

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2012年10月 7日 (日)

ロジェストヴェンスキー/読響(2012/10/7)

2012年10月7日(日)15:00
東京芸術劇場コンサートホール

指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
読売日本交響楽団

チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
チャイコフスキー:イタリア奇想曲
チャイコフスキー:交響曲第5番

前日の“続き”が聴けた幸せ!
しかもその“続き”は、トテツモナイ“続き”でした。
パルジファルを3日連続で演奏したオケだから受け止めて音にすることが出来るトテツモナイ音楽パート2!

前日の演奏を聴いた身としては、少々のことでは驚かないはずだったのですが、この日も驚きの再体験、いや、さらにパワーアップした体験でした。

幻想序曲「ロメオとジュリエット」は、この曲が、盛り上がってからが勝負…の曲などではなく、ドラマは冒頭から始まっている!ということを初めて知ったような気分。
一音一音が意味深く、ざわめき立ち、絶妙に響く。
深い、深い曲だったのですね!
そのドラマが激しく動き出しても、音楽は悠然と言って良いほどの貫禄で鳴ります。
大河の流れのように、急流でも押し寄せるように、悲しみは切々と…。
この曲のこんな演奏、私はかつて聴いたことがあっただろうか?と思えてきます。

続くイタリア奇想曲も、格調高い泰然とした音楽。
タンバリンが鳴ろうが、シンバルが鳴ろうが、決してお祭り騒ぎにならない!
こんな深遠なタンバリンの音、初めて聴いた…と言ったら言い過ぎでしょうか?
曲調の場面転換を感じさせない連続性での演奏でした。

そして後半の交響曲第5番。
ロジェストヴェンスキー三の指揮は、要所要所でキューは出すものの、その動作は小さいことが多く、回数も多くありません。
それなのに、それなのに、トテツモナイ音が鳴る!
メインの旋律だけでなく、合いの手のようなアクセントの「部分」すら意味深く響く!
第2楽章の最後など、指揮者は微動だにせずに音がピタリと止まりました。
クラリネットを筆頭に木管、ホルンを筆頭に金管、ティンパニOB菅原さんと、あげだせばキリがありませんが、好演の連続、それでいて音は見事に溶け合っています。

指揮者が力まずとも音が鳴る…と言いたいところですが、もしかしたらお年を召した今のロジェストヴェンスキーさんには、あの動きでも精一杯なのでしょうか?
鳴った音を聴く限りでは、ハンディの微塵も感じられず、パワーアップした印象すらあるのですが…。

そう言えば読響は、良い時には、チューニングの時から指揮者のカラーの音が鳴っているような気がすますね。
先日のミスターSの時も、現在進行形のロジェストヴェンスキーさんも…。
チューニングの音でわかった風なことを言うな!と叱られそうです…。

ちなみに、Twitterで教えていただいた情報によると、この日は前日に比べて、天井の反響板が客席側がさらに下ろされていて、水平に近づいていたとのことです。
前日は音がはね返って来る感じがあったのですが、今日は弱まって少し改善されていました。
なかなか奥が深い。

この日はテレビカメラは無し。
しかし映像収録はなくても、本日の演奏は、聴衆の記憶の中に生き続けるでしょう。
演奏体験として、読響の遺伝子の中にきっと残るでしょう。
このツィクルスが企画されたことに心から感謝したいと思います。

20121007

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2012年10月 6日 (土)

ロジェストヴェンスキー/読響(2012/10/6)

2012年10月6日(土)15:00
東京芸術劇場コンサートホール

指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
読売日本交響楽団

ピアノ:ヴィクトリア・ポストニコワ

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー:「四季」~「舟歌」
チャイコフスキー:交響曲第4番

遅めのテンポで全く弛緩することなく空間を制圧した「神!降臨!」と言いたくなる演奏でした!

ピアノ協奏曲では、序奏からして一音一音に不思議なパワーの宿るオケの音。
硬質なピアノかな…と一瞬思いましたが、全曲を通して聴くと、硬軟、強弱織り交ぜての絶妙の表情付け。
遅めのテンポは指揮者によるものでしょうか、ピアニストが合わせたものでしょうか?
その少し遅めのテンポが、全くダレずに進行するのは、もちろん指揮者の円熟のなせる技でしょうが、それに見事に追従したオケも相当に素晴らしい。
この日の読響は相当に良い時の読響です。(←相当に良い時の方が多いですが、毎回ではないような気がしますので。)

この曲をスピード感や豪快さとは距離を置いた“味わい深い曲”として聴くのは、私はあまり経験がないかもしれません。
おそらく隅々まで指揮者の意思が徹底された演奏でしょう。
チャイコフスキーのバレエ音楽に通じるようなものすら感じました。

ポストニコワさんによる協奏曲の後のソロ・アンコールの「舟歌」は、これがもう、本当にいとおしくなるような演奏。
じーーーんと来て、涙が目に浮かぶような絶品でした。

前半の協奏曲でもそうでしたが、後半の交響曲でも指揮者は指揮台を使わずに指揮。
長身なのはもちろんです、最小限の動作の指揮姿から発せられるオーラはとてつもなく大きい。
見た目には楽譜にかじりついて振っているかのようなのですが、身体から発する「気」の威力は絶大!
前半同様、遅めのテンポでていねいに紡ぐ音楽の味わい深さ。
木管楽器のソロの絶妙さ。
弦楽合奏の、これまた絶妙のニュアンス。
どこを切り取っても、ため息が出そうな美しさです。
指揮者は全てを細かく振らず、出の合図だけ、あるいはそれすらしないこともありましたが、アンサンブルはピッタリ揃って…。

漫然と聴いていると、チャイコフスキー特有の土俗的なものや苦悩や葛藤は昇華されて、美しい純音楽として鳴っているように感じます。
しかし、よくよく注意深く聴くと、それらのドロドロした要素は、全体の一部分として内包しているのです。
これは凄い!

前回、シュニトケ?を振ったのは2009年でしたっけ?
最近は名前を忘れがちになりますが、この名誉指揮者も、読響の宝です。
1931年生まれとのことなので80歳をこえたことになります。
でも、89歳のミスターSもまだまだ現役。
まだまだ、何度も来てほしい指揮者です。

その、老巨匠の域に達した名誉指揮者の反対側で、周囲よりも少し年長の風貌で存在感を示していたのがティンパニOBの菅原さん。
いい味を出していましたよ。
私は生演奏では、かなり久しぶりだったかもしれません。

残念ながら空席は多かったです。
2階正面は、もしかしたら着席率1-2割くらいだったかもしれません。
しかし聴衆の集中力は素晴らしく、ブラボーの声も多数、拍手は敬意の大喝采でした。

ちなみに本日はテレビカメラが入っていました。
どの程度放映されるのかはわかりませんが、この演奏が収録されたことは、本当に喜ばしいことだと思います。

20121006

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