« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »

2016年11月の11件の記事

2016年11月25日 (金)

ラザレフ/日フィル(2016/11/25)

2016年11月25日(金)19:00
サントリーホール

指揮:アレクサンドル・ラザレフ
日本フィルハーモニー交響楽団

(第685回東京定期演奏会)
ヴァイオリン:郷古廉

【ラザレフが刻むロシアの魂 Season IV グラズノフ1】
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
グラズノフ:交響曲第5番(休憩時間に帰ったので未聴)

個人的に色々ございまして、自粛すべきか否か、ギリギリまで迷いに迷った演奏会。
折衷案として、前半だけ聴いて帰ることにしました。

「ラザレフさんのショスタコーヴィチ」と「郷古さんが弾くショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番」という文字列を見ただけで、これはパスするわけには行きませんでした。
そして、その期待は裏切られませんでした。
グラズノフに後ろ髪を引かれながらホールを後にするときも、一応、半分以上は満ち足りた気持ちでした。

第1楽章は、あれ?ちょっと健康的過ぎませんか?美しすぎませんか?という印象もあったヴァイオリン独奏。
第2楽章でラザレフさんが本性を現して?猛然とオケを鳴らしてから、郷古さんのスイッチが入ったように気迫みなぎる演奏へ。

手加減しない猛将ラザレフ。
それに立ち向かう屈強の若武者。
互角に近い名勝負の様相。

あるいは、千代の富士が大関に上がる直前の、北の湖対千代の富士(古くてすみません)が頭に浮かんだりして。

気迫の長いカデンツァは息詰まる迫真の凄演。
さすがに長大なソロの後で少し息が切れたのか、第4楽章の冒頭は若干荒っぽくなりかけましたが、すぐに立て直すあたりは、若いのに既にもう長いキャリアを積んでいる経験の賜物でしょうか。
猛将と若武者の対決、聴き応え十分でした。

若手イケメンのヴァイオリン奏者の中では、テクニック(だけ)をひけらかすような印象が無いので、私は郷古さんにはかなり好意的な方です。
よって、多少、感想にバイアスがかかって、ひいき目になっているかもしれません。

郷古さんの出番が終わったら帰るのはイケメン若手奏者のファンのご婦人の行動パターンのようで気がひけましたが、お許し下さい。

20161125

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月20日 (日)

ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン「ラインの黄金」(2016/11/20)

2016年11月20日(日)16:00
サントリーホール

ザルツブルク・イースター音楽祭 in JAPAN
ホール・オペラ
ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」
- 舞台祝祭劇《ニーベルングの指環》序夜

指揮:クリスティアン・ティーレマン
シュターツカペレ・ドレスデン

ヴォータン:ミヒャエル・フォッレ
フリッカ:藤村実穂子
フライア:レジーナ・ハングラー
アルベリッヒ:アルベルト・ドーメン
ミーメ:ゲアハルト・ジーゲル
ローゲ:クルト・シュトライト
ドンナー:ダニエル・ベェッツ
フロー:タンセル・アクゼイべク
ファーゾルト:スティーブン・ミリング
ファフナー:アイン・アンガー
ヴォークリンデ:クリスティアーネ・コール
ヴェルグンデ:サブリナ・クーゲル
フロスヒルデ:シモーネ・シュリューダー
エルダ:クリスタ・マイヤー
舞台統括:デニー・クリエフ

ブランド物にはブランド物の価値がある。
それを思い知らされる至福と興奮の2時間半。
指揮者も、オケも、歌手も、みんな、みんな、ブランド物。
「ザルツブルク・イースター音楽祭」というタイトルだってブランド物。

しかもこれ、「演奏会形式」ではなく、簡素な舞台装置での、ちゃんとしたオペラ上演でした。
終演後なら撮っていいらしいので、写真を撮ってきちゃいましたが、RAブロックに座れてラッキー。
P席上に作られた舞台にも近いし、指揮者の真横でもあり、目のやり場に困る…いや、どっちを見ていいのか…という贅沢。
この簡素な舞台装置、最後にヴァルハラ城が現れるとき、ぱっと照明をパイプオルガンに向けて照らし、パイプオルガンをお城に見立てるというアイデアも。

そう言えば、この日は、東フィル定期のオペラの時(トゥーランド、イリス)に聞こえた、排気ファンの音のような暗騒音は、全く感じませんでした。
逆に東フィルの時のあの音は何なのだろう??と思いました。

この上演、このブランド品クラスの中で「相対的に」最高だったのかどうかは貧民の私にはわかりません。
歌手に関しては文句なし。
よくぞまあ、皆さん、端役(失礼!)まで、えり抜きの…。
誰が良かった、イマイチだった、なんて言えません。
あえて言えば、ファーゾルト役のステファン・ミリングさんかな?
素のままで出てきて怖い、怖い、街中ですれ違ったら、絶対によける。

オケは時々ふっと力が抜ける感もなくはないですが、まあ、ピッタリ縦の線を合わせようなんて、思っていないでしょう。
上質の手触りの布のようなため息の出そうな瞬間満載。

ティーレマン様って、徹頭徹尾ハイテンションではなくて、力を抜くところはオケに任せて手はあまり動かさない場面も。
オケはやはり歌につけると抜群にうまい…だけでなく単独でも壮大なる音のドラマを作れる。
さすが。

昼食後から水分摂取を控えなければならないこの長大な1幕ものが、神々が城に入城する時には「ああ、もう終わってしまうのか」と思うほど、あっという間に終わった印象。
座り続けたお尻の痛さだけが長さを物語ります。

終わった瞬間、フライングのブラボーどころか、みんなあっけにとられて拍手できず。
一呼吸置いて先行拍手組が拍手を始めても、それは会場全体の半分にも満たなかったのでは?
拍手が本格的に始まった後は熱狂的カーテンコール。

ここで、新国立とは別次元などと言うことに意味はありません。
世界に冠たるブランド物なのですから。
ティーレマン様と「それ以外」を比べても仕方がありません。
「ティーレマン様になれなかった指揮者」なんて、世界中の大半の指揮者がそうなんですし。
「シュターツカペレ・ドレスデン」と「それ以外のオケ」を比べても仕方がありません(以下略)。
でも、そう考えると、あそこに並んじゃって全く遜色のない藤村実穂子さんは、やっぱりすごい。

ティーレマン様のラインの黄金、CDとかFMで聴いたバイロイトの上演とは、ほんの少し印象が違いましたが(おとなしめ?相対的に、です)、実演と録音を比べても意味はありませんね。
このブランド物を体験出来ただけでも幸せです。
私にしては大枚をお支払いした上演、めでたし、めでたし。

201611201

201611202

201611203

201611204

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月19日 (土)

大野和士/都響(2016/11/19)

2016年11月19日(土)19:00
サントリーホール

指揮:大野和士
東京都交響楽団

(第817回定期演奏会Bシリーズ)
ヴァイオリン:庄司紗矢香

フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」
デュティユー:ヴァイオリン協奏曲「夢の樹」(1983-85)
シェーンベルク:交響詩「ペレアスとメリザンド」

1曲目のフォーレは、ふわっとした音で始まり、木管の4首席の同質の美音のソロが美しい。
ただ、オケ全体としての音場が、まとまりではなく、拡散に聞こえたのは私の気のせいでしょう?
2曲目以降では、そうは感じなかったのですが…。

続いて、庄司紗矢香さんを向かえてのデュティユー。
私は、どちらかと言うとデュティユーの作品は苦手なのに…。
この曲は、Apple Musicに音源があったので予習したら、さらに苦手になったのに…。
なんとなんと、めちゃくちゃ楽しみました。
庄司さんの、難しさを外に見せない美音が快感。
バックの都響も気合の入った演奏で快感。
ピアノなどまで使われていて、打楽器的なメリハリが際立ちました。

最後のシェーンベルクは、まだロマン派的な作品。
寄せては返し、延々と続く40分、次第に聴き手もマインドコントロールされ、音楽の渦に飲み込まれる。
スクリャービンの「法悦の詩」とどちらが先?とも思いましたが、似て非なるという印象もありました。
やがて大転換する「この後のシャーンベルク」の予兆も内包しながら、曲はひたすら美しく続き、そして終わる。

この日はさすがに疲れたので、夜の部は自粛しようかと思ったのですが、庄司さんの名前に惹かれて、サントリーホールに吸い寄せられました。
そして、それは正解。
もちろん、シェーンベルクも良かったですけど。

201611191_2

201611192_2

201611193_2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

デスピノーサ/新日フィル(2016/11/19)

2016年11月19日(土)14:00
すみだトリフォニーホール

指揮:ガエタノ・デスピノーサ
新日本フィルハーモニー交響楽団

(第566回定期演奏会 トパーズ<トリフォニー・シリーズ>)
チェロ:マット・ハイモヴィッツ

ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番~サラバンド
(アンコール)
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番

定期演奏会で「ウィリアム・テル」序曲。
こういうプログラム(15番で引用)でないと組まれないかもしれません。
定期クオリティで聴くこの曲は鮮烈!
4つの部分からなる超ミニ交響曲のようにシンフォニック。
冒頭のチェロも、イングリッシュホルンとフルートの掛け合いの妙技も。

つづくチェロ協奏曲のソリストのハイモヴィッツさんは、どちらかと言うとゆるめ?
やや無造作に?弾き始めて、徐々にヒートアップする独奏チェロ。
スタイリッシュと対極の音かもしれませんが、温もりがあり、熱くもなる。
途中、体調(疲労感)のせいで、ちょっと眠くなってしまったので偉そうなことは言えませんが…。

そして、ウィリアム・テルが引用されている交響曲第15番。
くっきり、スッキリ、しかし強めの音。
高解像度とパワーを感じた演奏。
いや、このオケの音の傾向は、序曲も協奏曲も感じました。
デスピノーザさんの大人のでしょうか。
その分、この曲のミステリアスな印象は後退して、終結部の打楽器ちゃらちゃら(←変な形容をしてすみません)も、ストレートに消え行く感じ。
個人的好みとしては、ストレートすぎるようにも感じましたが、まあ、こういうスタイルもありでしょう。
個人的好みとは違うと言いながら、私は結構好感でした。

もちろん指揮者が導いたのでしょうが、NJPの各パート、自発性と意気込みが音に現れて素晴らしい。
新監督着任後のNJPは(ようやくシェフが決まったという安心感??)一皮むけたように感じるのは私だけでしょうか?

201611191

201611192

201611193

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月18日 (金)

秋山和慶/神奈川フィル(2016/11/18)

2016年11月18日(金)19:00
横浜みなとみらいホール

指揮:秋山和慶
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

(定期演奏会みなとみらいシリーズ第324回)
ヴァイオリン:加藤知子

武満徹:3つの映画音楽
伊福部昭:ヴァイオリン協奏曲第2番
チャイコフスキー:交響曲第4番

秋山マジック炸裂!

そんなに数多く神奈川フィルを聴いていない分際で偉そうなことを言ってすみませんが、これまで神奈川フィルから聴いたことがないような、とてつもない音が鳴る瞬間多数。
多少乱れの兆候があっても棒で修正してしまう秋山さんの懐の深さ!

まずは、開演前のチューニングの時点で、弦楽セクションの音が濁りなくシャープ。
チューニングで感じた音の印象は、そのまま本編で鳴りました。

武満さんの曲は弦楽器のみ。
その音は、切れ味があるのに厚みもあり、なおかつ重くならず、飽和しない。
ああ、見事に音が整ってます。
もちろん、合わせるだけの合奏などではなく、随所に遊びや揺さぶりを織り交ぜる。

その好調さは、協奏曲でも。

いきなり独奏ヴァイオリンが延々と演奏し、まるでカデンツァかアンコールで始まったような協奏曲。
独奏、オケ、独奏、オケ、と交互に演奏しながら、次第に一緒になり…。

加藤知子さんは、私はかなり久しぶりです。
まだ若手の頃、山崎伸子さんとデュオやトリオで演奏したりもしていましたね(古い話しですみません)。
その若手の頃のイメージがいまだにあったので、スケールの大きい音にびっくり。
かなりの強奏でも、音に深みがあり、ガサツにならない。
音のコントロールも万全。

タイするオーケストラの方は、なんとも言えない伊福部マジック(たぶん)を、秋山マジック(たぶん)で、なんとも言えない音を出現させる。
伊福部マジックは、和の空間を音で表すかのよう。
それも、茶室のような小さい空間ではなく、巨大な大伽藍を想起させる。
そう、音だけで、みなとみらいのホール空間に、音が鳴っているエリアだけの異空間。
音符だけで巨大空間を描く作曲家も凄いですが、それを音にした秋山さんと神奈川フィルも凄い。
空間を音で満たすのはこうやるんだよ、みたいな。

後半は、私にとっては、思い出の第4番。
1981年に、始めて秋山/東響を東京文化会館で聴いたのが、チャイコフスキーの第4番でした。
あの日の演奏が、今の私の嗜好を決定したと言っても過言ではない一夜。

それでも、この日の演奏は、そんな感傷に浸る気持ちが起きない、今の秋山さんの音。
ところどころ、秋山さん、テンポが遅くなったかな?と思う箇所があったのですが、全般的にはそうでもなく、もしかして、アンサンブルにほころびの兆候が出た段階で微妙にテンポをほんの少しだけ遅くして立て直したのかな?と思ったり。

秋山さんの煽りに近い高揚も、しっとりとした歌い回しも、おそらく計算づくの完璧な構築で、オケも、棒を信じてついていけば自然と…だったのでは?
部分的には色々あっても、最後だけ爆演調になりかけても、総じて完成度高し

秋山さんが東響以外のオケを振るとシャープ目な音響になることが多いような気がしていて、この日の神奈川フィルも最初はそんな印象もありましたが、次第に「形を整えるだけではない」真の秋山節に変貌、東響で聴く秋山さんにかなり近い、すなわち、素晴らしい。
神奈川フィルをほめるのに東響を引き合いに出してすみませんが、ほめていることに変わりはないので許して下さい。
オケの音の整いのレベルと調和感が驚異的な場面多数の秋山マジックでした。

201611811

201611812

201611813

201611814

開演前のロビーコンサート
トランペット:三澤徹、中嶋寛人
ホルン:熊井優
トロンボーン:府川雪野
チューバ:岩渕泰助
パーカッション:平尾伸幸

G.ジェルヴェーズ:3つの舞曲
H.カーマイケル:スターダスト

新入団の熊井さんの挨拶も兼ねて?のロビーコンサート。
金管による演奏は、弦楽器よりも音が直進的で、ロビーのざわざわした空間でも、後ろの方で聴いていても、かなり快適に楽しめました。
夜のプレコンサートにふさわしい、ちょっと気軽に技巧を楽しむひと時。
写真撮影不可って、貼り紙は撮っていいよね??

201611815

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月14日 (月)

シナイスキー/新日フィル(2016/11/14)

2016年11月14日(月)19:00
サントリーホール

指揮:ワシリー・シナイスキー
新日本フィルハーモニー交響楽団

(第565回定期演奏会 ジェイド<サントリーホール・シリーズ>)

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番
チャイコフスキー:交響曲第5番

これは素晴らしい!
NJPも、指揮者の繰り出す技に食らいついて行きました。
終演直後、ステージ上で汗を拭う奏者多数。
チャイコフスキーの交響曲第5番という有名曲の予定調和では無く、かなり驚いた快演。
速めのテンポに、小技、中技、大技のアクセントを散りばめ、いや、満載して、手加減せずに突き進む。
油絵の中にペン画を混ぜたような、いや、もっと強烈な木管の強奏も織り交ぜて、聴き慣れない音響すら作り出す。

その、「そこで木管を強奏させるかい!」というような音響は、ある意味、奇っ怪な瞬間を作り出し、プロコフィエフの予兆か…いや、その前に悲愴交響曲がある…というような、複雑系、モダン系のチャイコフスキー。

「こういうチャイコフスキーが好きか?」と問われれば、「う~~ん」と言わざるを得ない演奏でありながら、ライヴで聴くと面白さこの上なし。

前半のショスタコーヴィチも「おっと、こんな曲だなんて聴いてないよ」のレベル。
この曲を、可愛らしいけどちょっと皮肉な小さい交響曲…などではなく、この局に隣接する他の巨大な交響曲同様の壮大な音響に、壮大な皮肉!の大交響曲として演奏した怪演、快演。
切り取って「部分」を聴かされたら、私は9番だとは思わないかもしれません。
NJPのシャープなサウンドがこの快演を際立たせる。
鋭利な切り込みもひねりも、サントリーの空間に大きく響く。
ちょっと響き過ぎの感もあるのは、空席の多い会場ゆえでしょうか。

NJPの優秀な木管陣の妙技は、古部さんも重松さんも不在なのに、この日も素晴らしい。
指揮者の繰り出すアクセントは、もちろんオケ全体で付けたのですが、弦楽器群の包容力のある美音の上を、木管が自在に飛び回った印象もありました。

20161114

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月12日 (土)

日生劇場「後宮からの逃走」(2016/11/12)

2016年11月12日(土)14:00
日生劇場

NISSAY OPERA 2016
モーツァルト:後宮からの逃走
(ドイツ語歌唱・日本語台詞・日本語字幕付)

演出は奇抜系ではありませんが、椅子などの小道具を頻繁に入れ替え、動きのある演出は好感です。
背景などは“塗り絵”のレベルですが、その前面での動きと転換の面白さで不満を感じさせません。
小道具勝負ですが、動きが多いので、飽きさせずに視覚効果を繰り出して面白い。
いまはやりの?序曲でのパントマイムも奇抜系ではなく、物語の導入としての効果のあるオーソドックスなもの。

ドイツ語歌唱、台詞は日本語というのは、私は個人的に最後まで慣れませんでした。
日本語でしゃべっていて、すぐ直後の歌でドイツ語が出てくると、一瞬、あれ?…と。
でも、まあ、こういうやり方もありだと思います。
台詞もドイツ語で字幕を追うよりは、視覚的負担は確かに少ないです。
それに、日本語の台詞にしたから、歌わない太守セリム役に宍戸開さんという布陣もできたわけですね。

音楽は川瀬さんらしいスピード感と切れ味のある音楽に好感。
超絶技巧の歌唱が許すならもっと速くしたかったのでは?という感もある箇所もあったような気がしますが、楽しい快感の音楽であることは事実。
川瀬さんの切れ味が冴える指揮棒に、オケの反応も鮮やか。

歌唱は、第2幕以降は、第1幕よりも硬さが取れたのか好演。
ただし小さい会場という好条件もあるのかもしれません。
小さめの会場に合わせて?無理せず(それでも結構目一杯の感もありますが)叫ばず、重唱も整って、川瀬さんの流れに乗っていました。
…と偉そうに辛口のことを書いておりますが(すみません)、それよりも何よりも、この演出の動きを体当たりでこなして笑いを誘った歌手の皆さん、楽しかったです、ありがとうございます。
会場の客席も、第2幕以降は固さが取れ、素直に笑うようになっておりました。

エンディングで、歌わない太守セリムを、視覚的にも究極の善玉(に変換した者)として最後に際立たせて終幕の演出。
奇抜でない方向で、ここまで視覚的な楽しさ満載で、私はかなり好意的に観ました。

日生劇場は私は久しぶりですが、オリジナル演出は結構面白いことが多いような気がします。
もちろん、この劇場の小さめの空間と、東京文化会館や新国立劇場を単純に比較は出来ませんが、この劇場のサイズも考慮してしつらえた演出だろうと思われる演出です。
仮にその演出を他の劇場に持っていっても同様の効果を生むかどうか不明…という文字通り「日生劇場オリジナル」のところがなおさら好ましいです。

【キャスト】
太守セリム:宍戸開
コンスタンツェ:佐藤優子
ブロンデ:湯浅ももこ
ベルモンテ:金山京介
ペドリッロ:村上公太
オスミン:加藤宏隆

【スタッフ】
指揮:川瀬賢太郎
演出:田尾下 哲
管弦楽:読売日本交響楽団
美術:幹子・S・マックアダムス
照明:沢田祐二
衣裳:前田文子
ドラマトゥルク:庭山由佳
演出助手:田丸一宏
舞台監督:山田ゆか(The Stuff)
合唱指揮:田中信昭
副指揮:大川修司、鈴木恵里奈、水戸博之
コレペティトゥア:平塚洋子、矢崎貴子
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ

201611121_2

201611122_2

201611123

201611124

| | コメント (0) | トラックバック (0)

飯守泰次郎/東響(2016/11/12)

2016年11月12日(土)11:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:飯守泰次郎
東京交響楽団

(モーツァルト・マチネ第27回)
ソプラノ:森麻季

モーツァルト:交響曲第1番
モーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」(エクスルターテ・ユビラーテ)
モーツァルト:交響曲第29番

第29番の第3楽章から、さらに切れ味が増した印象もありましたが、ミューザの1階席の芳醇な音響の至福に包まれた体感。
オーケストラは、全般的にビブラート控え目のようですが、スダーン監督のようなピリオドの印象とは少し違います。
さすがにティンパニも入らない編成ですし、飯守さんのお名前から想起する重低音はありません。
それでも、第1番も含めて、随所にえぐるような切り込みを加えていた指揮で、それに東響がそれなりに追従したものの、前述のように、ミューザの音場も相まってふくよかな響きの印象が強い。

この日は森麻季さん目当てのお客さんが多めだったような拍手。

森麻季さんの声は、最初のうちは、所々、高音ギリギリ…と感じてしまう場面もありましたが、美声であることこの上なく、尻上がりに声が伸びるようになっていった印象。
オケも含めて、11時開演というのは多少のハンディでしょうか?
飯守さんも、1曲目の後の拍手で、オケを立たせませんでしたが、これはお忘れになった??…のかどうかは不明です。

201611121

201611122

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 6日 (日)

下野竜也/東京シティ・フィル(2016/11/06)

2016年11月6日(日)14:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:下野竜也
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

(第301回定期演奏会)
ピアノ:菊池洋子

モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番
ベルリオーズ:幻想交響曲

モーツァルトは、最初のオケの音が鳴った瞬間、おっ、力強い!と思いました。
可愛らしいだけのモーツァルトではなく、後期交響曲にも通じるしなやかで美しいオケの音。
ピアノが鳴る出すと、これはもう、ベートーヴェンの初期のピアノ協奏曲にも通じる華麗な音。
モーツァルトのピアノ協奏曲が後2曲、27番でもうすぐ終わってしまうというようなことは全く考えられない楽しさです。

後半の幻想交響曲は、オケは特に弦楽器群(木管も、かな)の下野さんの棒への追従と、音像の体現が見事。
金管は所々、ん?と思う箇所があったにせよ、また、強奏は金管の音にさらに磨きが欲しかったにせよ、全般的には、荒削りではない洗練された幻想交響曲が鳴り響いたと言うべきでしょう。

パワフルだけどしなやか。
芳しい芳香すら感じられる美演だけど力演、最後は豪演。

5年前の下野さんだったら「精一杯頑張ってる」感が少し出ていたのですが、今はいとも簡単に、とてつもなく巨大だけど飽和しない音響がとどろきます。

定期会員をやめて久しく、今は1年間に片手で数えるほどの鑑賞回数なので、うかつに比較はできませんが、…。
なおかつ、この日は2回正面の席という、滅多に座らない席だったので、いつも座っている舞台に近い席とは比較できませんが、…。
これほど溶け合ったシティ・フィルの美音を聴いたのは初めてのような気がしました。

プレコンサート

クラリネット:山口真由、須東裕基
ファゴット:皆神陽太

モーツァルト:ディヴェルティメント第3番K.Anh.229(439b)より

柔らかい木管の音が美しく溶け合い、これから本編でモーツァルトを聴く前の素敵なひとときとなりました。
山口さんと皆神さんは首席。
本編でも確かな技巧(技巧を感じさせない美音)を奏でていらして、ああ、シティ・フィルの木管セクション、充実してきたな~と、嬉しくなりました。
久しぶりの定期演奏会鑑賞、すっかり浦島太郎です。

20161106

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 5日 (土)

ヤング/東響(2016/11/05)

2016年11月5日(土)18:00
サントリーホール

指揮:シモーネ・ヤング
東京交響楽団

(第646回 定期演奏会)
チェロ:アリサ・ワイラースタイン

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番~サラバンド
(アンコール)
ブラームス:交響曲第4番

手放しで絶賛とはいかないものの、聴き応えのある演奏でした。
いや、いろいろなことを考えさせられた演奏だったかもしれません。

まず、前半のドヴォルザークでは、冒頭で鳴ったオケの音を聴いて、あ、こりゃ、スッキリ爽快系では?と思いました。
ドヴォルザークの土俗的な(民俗的と言った方が良いのかな?)ニュアンスはどこかへ行ってしまい、スタイリッシュでモダンなサウンドになってしまっています。
「なってしまっています」と書いたのは、私は個人的な好みとして、あまりこういう方向のドヴォルザークは好きではないので…。

そうは言っても、ソリストも指揮者もそういう方向であれば、それなりに首尾一貫した演奏になる…はずですが…。
指揮とオケの間に若干の距離感を感じたのは私の気のせい?
指揮者が豪腕で煽っても、素直にオケが反応しなかったように感じたのは気のせい?
ヤングさんの指揮は一見、豪腕、でも実は細くて、かなり微細に構築している印象。
ただ、ところどころで煽りを入れるのが、うまくいけばいいのですけれど…。

チェロ独奏のワイラースタインも、基本的にオケ(指揮)と同系統のスッキリ系に感じました。
音像がスリムでクッキリというのは良いとして、ソロのアンコールになると、微妙に音の傾向が変わったように(倍音多めに??)感じたのも私の気のせい?
協奏曲は指揮の意向(威光)に従っていたのか???

ちょっともやもやした気分で休憩時間を過ごし、後半のブラームスへ。
こちらは、前半よりも良かったです。
音の練り上げも、指揮への追従も。

引き締まった力強いサウンドに透明感すら感じる音で、音の溶け合いは美しい。
時折見せる加速を伴った高揚(←“煽り”とも言う)は、オケの追従が完璧ではなかったかもしれませんが、全般的には満足度は高い。
晩秋の哀愁とか、人生の黄昏とかを感じさせない、有る意味、情熱がほとばしる若々しい第4番だったかもしれません。
そういう意味ではストレート過ぎる感もありましたが(←マーラーのように屈折しろとは言いませんが、微妙に「素直すぎない?」と)、指揮は大味でもなく配慮が細部に行き届いた演奏。
ただし、東響との相性は不明…。

なんとなく、ですが、終演後のカーテンコールでも、東響の皆さん、目も顔も、あまり笑っていないんですよね。
こわい女傑に従ってはいたものの、敬愛してはいないような???

この後、オペラもあるのですが、どうなりますことやら。

201611051

201611052

201611053

201611054

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2016年11月 3日 (木)

ブロムシュテット/バンベルク響(2016/11/03)

2016年11月3日(木・祝)19:00
サントリーホール

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
バンベルク交響楽団

シューベルト:交響曲第7番「未完成」
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
ベートーヴェン:「エグモント」序曲
(アンコール)

前半の「未完成」は、微弱音の極上の旋律美と、実は突如激昂するようなパッションの対比が際立つ。
聴感上はあまりピリオドっぽくありませんが、ビブラート控え目だったのかな。
もしこの曲が完成されていたら、グレイト(交響曲第8番)級の曲になっていたであろうことを示す、短いけれど、巨大な演奏です。

「未完成」ね、前座ね、…とは思いませんでしたが、演奏会前は、どこか「小品」のような気持ちで見くびっていた自分が恥ずかしい。
ブロムシュテットさん、真剣勝負、オケも真剣勝負、会場も集中力が高くて真剣勝負でした。

後半の「田園」は、至福としか言いようがありません。
これまたビブラートはほぼゼロでしょうか。
スリムな響きなのに音が痩せていない…と言うと、言語的には大いなる矛盾なのですが、本当にそういう体感、聴感なのです。
溢れる喜びがサントリーホールの空間に充満します。
前半の「未完成」に比べて少しピリオド寄りのスタイルが多めに入っているとは言え、とんがってせかせか…と言う演奏ではありません。
速めのテンポなのにたっぷり歌わせる…という二律背反を見事に音にしています。

第4楽章の劇的な変転は、第1、第2、第3、第5楽章との対比が際立つ…はずが、それすらも、全体の中の部分に過ぎない…という構築の見事さ、巨大さ。

この「田園」の後にはアンコールはいらないよ…というくらいに感銘でしたったが(何度も、目がうるうるしました)、いざアンコールの「エグモント」序曲を聴くと、「未完成」「田園」「エグモント」という流れが必然に感じられてきます。
「エグモント」序曲もビブラートはほぼゼロで、「田園」と同じ傾向の音響ですが、曲の傾向として、当然、スピード感とリズム感が加味されます。
爽快だけど味わい深いという、これまた二律背反。

ブロムシュテットさんのソロ・カーテンコールをもってお開きに。
あっという間に終わった感もある、充実の、至福のひとときでした。
もちろんブロムシュテットさんが凄いことは間違いありませんが、バンベルク響の音色にも惹かれました。
世界の超一流ではない、ちょっと中心地から外れたところにある、でも二流ではないオケの、形容しがたい美しい音色でした。

201611031

201611032

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »