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2017年7月の11件の記事

2017年7月29日 (土)

東京二期会「ばらの騎士」(2017/07/29)

2017年7月29日(土)14:00
東京文化会館

二期会創立65周年・財団設立40周年記念公演シリーズ
《グラインドボーン音楽祭との提携公演》
東京二期会、愛知県芸術劇場、東京文化会館、iichiko総合文化センター、読売日本交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団 共同制作
R.シュトラウス:ばらの騎士

ヴァイグレさんの指揮するオケの音が素晴らしい。
いや、もちろん、それに乗って歌う歌手の皆さんも。
オケの音は弾力性があり、“ウィーン”から連想する音に一番近い。
そして、ところどころ、加速やひねりが入っても、音色は濁らず、抜群の安定感。
ドイツの高級車のような??

歌手は、皆さん、登場してすぐの歌唱は、一瞬、あれ?と思うことが多々ありましたが、総じて尻上がりに良くなっていった印象。
元帥夫人とオクタヴィアンの二重唱も、出だしよりは、第1幕の幕切れ、そして、それよりも、終幕での三重唱。

芸達者で、ちょっとコミカルのの幸田浩子さんは私のゾフィーのイメージとはちょっと違いますが、幸田さんらしいし、こういうちょっとひねった演出にはあっているかも、と思いました。

演出は、私は深読みできず、ちょっと取り残された感。
第1幕を見た時点では、奥行きのないかなり狭い空間で演じられ、奥の方に浴室が見えたりするのは、貴族階級には、華やかだけど閉そく感のある表の世界と裏の世界があるということ?と思いましたが、第2幕以降を見ると、そうでもなかったようです。
第2幕は、逆に、表舞台が奥側に広く、裏事情が客席側に狭く配置されたステージ。
第3幕は、ポップな感じで、小道具もいっぱいあって確かに面白いけど、一人何も知らないオックス男爵が感じる恐怖心のような側面はどこかへ行ってしまいました。
まあ、ここは、第1幕で感じたような、裏舞台がドアを隔てて時折垣間見えるようにも思えました。

こういうよくわからなかった演出であっても、それでも幕切れの三重唱は、やはり絶品です。
(例のバイロイトのマイスタージンガーのような)奇抜な演出でも惑わされずに自分の音楽を作る経験を積んできた指揮のヴァイグレの真骨頂かもしれません。
そう言えば、幕切れの三重唱は歌手の動きが止まり、ほぼ演技なしで、指揮に導かれたものでした。

今回は、私は取り残されましたが、二期会の海外との共同制作は大歓迎で、どんどんやっていただきたいと思います。
ただ、時折思うのは、劇場のキャパや舞台に間口などの想定が、東京文化会館ではない劇場を想定したんだろうなぁ…というケースが結構あること。
この日も思いました。
まあそれはそれで鑑賞側がイメージを補正すれば良いのでしょうが…。

スタッフ
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:リチャード・ジョーンズ
装置:ポール・スタインバーグ
演出補・振付:サラ・フェイ
衣裳:ニッキー・ギリブランド
照明:ミミ・ジョーダン・シェリン
音楽アシスタント:森内剛
合唱指揮:大島義彰
演出助手:エレイン・キッド、家田淳、太田麻衣子
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:多田羅迪夫

キャスト:
元帥夫人:林正子
オックス男爵:妻屋秀和
オクタヴィアン:小林由佳
ファーニナル:加賀清孝
ゾフィー:幸田浩子
マリアンネ:栄千賀
ヴァルツァッキ:大野光彦
アンニーナ:石井藍
警部:斉木健詞
元帥夫人家執事:吉田連
公証人:畠山茂
料理屋の主人:竹内公一
テノール歌手:菅野敦
3人の孤児:大網かおり、松本真代、和田朝妃
帽子屋:藤井玲南
動物売り:芹澤佳通
ファーニナル家執事:大川信之

合唱:二期会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団

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2017年7月28日 (金)

インバル/大フィル(2017/07/28)

2017年7月28日(金)
フェスティバルホール

指揮:エリアフ・インバル
大阪フィルハーモニー交響楽団

(第510回定期演奏会)

マーラー:交響曲第6番「悲劇的」」

都響とはかなり違いますねえ。
どちらが良い、悪いではなくて、それぞれの良さがあるのですが、紛れもないインバルさんの構築なのに、これだけ違う。

都響が“凝縮”なら、大フィルは“拡散”…と言う言葉が悪ければ、“エネルギーの放射”?
この(悲劇的ながらも)大いなる高揚感は、その特性から来たものでしょうか?
特に、第3楽章の、号泣に近い感情の高まりから、第4楽章の「これでもか、これでもか」につながる流れの構築の見事さ。
最初、「都響と結構違うねぇ」と斜に構えて聴いていたのが、興奮させられ、酔わされてしまいました。

プログラム冊子に東条先生が名文を書いていらして、「寸分の隙もなく構築されたもの」「音楽の大きな振幅の中にも、明確な均衡を備えた形式性を最後まで失わずに押し通していた」というのは、開演前は、「本当にその通りですねぇ!」と文章に感嘆したものですが、演奏が終わってみると、この文章はあの都響との演奏会のことであって、この日の大フィルには、一部当てはまらないような気もします。

もちろん、一部は当てはまっています。
第1楽章と第2楽章(スケルツォ)の間、第3楽章と第4楽章の間をあまり間合いを置かず、まるで2部からなる曲のように指揮。
「第2楽章と第3楽章は、この順番以外あり得ない!」と言わんばかりの構築の見事さにも舌を巻きました。

終演後、オケがしきりに指揮者一人での拍手答礼を勧めるのに、指揮者は固辞したように次々に奏者を指差して立たせ、最後は、はい、もうお開き…とやったのを、崔コンマスが頑として引き上げず、とうとうインバルさんを一人で答礼させた…という微笑ましい光景もありました。
この光景も、この日の演奏を象徴しています。
インバルさんが繰り出す合図が導いたことは事実ですが、それに答えて熱演を繰り広げた大フィルの面々にも大拍手です。

もう一つの見どころは、東京ではまず見れない、崔コンマスとインバルさんのコンビ。
崔さんは、都響の3人のコンマスとは(少なくとも弾いている姿は)結構違います。
崔コンマスの大きく身体で表したリードも、こういうエネルギー放射型の演奏に導いた要因の一つかもしれません。

私はあまり大阪へ行かないので、フェスティバルホールは初めて。
そのたった1回の経験だけで断言はできませんが、私が座った2階サイドの席では「おっ、音が近い!飛んで来る!」という印象でした。
残響はあまり感じないにもかかわらず、音に潤いも感じます。
結構クセになる音で、また聴いてみたくなりました。

すかさず、大フィル定期のラインナップを物色しかけましたが、よく考えたら、土曜開催でもない限り、少なくとも半休はとらないといけないし、マーラー1曲だったから最終の新幹線に乗れましたけど、通常の演奏会なら帰りは夜行か翌朝になるのでした。
(演奏中は引き込まれて時刻は全く気にならなかったのですが、終わってインバルさんが1回引っ込んだ時点で時計を見て20時30分より前だったので、わかっていても、ホッとしたり…。)

そうです、この日は、私は、勤務先の夏休みで、「せっかくの平日休みだから」と、チケット早々と購入してありました。
しかし、その後、母親の通院付き添いを入れたため、病院が長引くと行けない可能性が出てまいりました。
やきもきしながら時間が過ぎるのを待ち、「行ける!」「行こう!」と決めた後、東京駅に向かう電車の中で、往復の新幹線の指定席をネット予約しました。
せっかくの休みなのに、私は何をこんなに忙しくしているのだろう…とも思いましたが、素晴らしい演奏に、帰りはそんな気分は吹き飛びました。

行かなかったら、チケット代が無駄になるけど、行けば、さらに往復の新幹線の料金がかかる…とも思いましたが、帰りは、お金を払って行った甲斐があった!と思いました。

どうでもいいことを長々とすみません。
素晴らしい体験の後は饒舌になります。

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2017年7月22日 (土)

ノット/東響(2017/07/22)

2017年7月22日(土)15:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団

(フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2017
東京交響楽団オープニングコンサート)

シェーンベルク:浄められた夜
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

これは凄い!
目が覚めるなんてもんじゃございません。
叩き起こされるような、とてつもない凄演。
東響の歴史に残るかもしれないような演奏が2週続けて起こっていいのでしょうか。
演奏終了直後、指揮者が引き上げた直後に、あの水谷コンマスが白いハンカチで汗を拭うほど。
確かに演奏中、水谷コンマスは、もうオーバーアクションと言っても良いほど、弾きまくっていました。

基本、あまりドロドロせず(土俗的にならず)、ミューザの音響を味方につけた「音を構築した」ような演奏ながら、その一音一音に込められたパワーが甚大。
なおかつ、流れが速い…と言うか、推進力のパワーも甚大なため、聴感上は「構築した」感は後退し、爆演一歩手前(←ほめています)の興奮。
そう、ノット監督と東響だから粗雑にならずにこういう演奏になったのであって…。
その音の炸裂は、聴衆(だけでなく、オーバーアクションにならざるを得ない楽団員さんも)ノックアウト寸前の悶絶。
会場は当然、大興奮。

まあ、生演奏だから(さらにこの曲だから)色々あるにせよ、それを恐れず攻めの姿勢で貫くのがノット監督流。

東響の皆さん、みんな素晴らしかったですが、特に鉄壁の木管陣のソロも絶妙の音色。

「春の祭典」は、私は個人的体験として、1995年のブーレーズ/ロンドン響の超絶の名演を聴いて以来、どうしても斜に構えて聴いてしまうのですが、この日は本当にノックアウトされました。
故ブーレーズさんの呪縛から解き放ってくれたかも…。
ノット監督のおっしゃる「新しい時代の幕開け」を、私の心(だけでなく聴衆全員)にもたらした演奏だったかもしれません。

この日もノット監督のソロカーテンコール。
お義理なんてものではありません。
1回だけで終わったのが不思議なくらいの興奮でした。
通常なら定期終了で夏休みモードになるところを、音楽監督が本気モードどころか「シーズン最後のラストスパート!」とばかりにパワー全開だからたまりません。

ところで前半は(すみません)、「浄められた夜」でした。
弦楽合奏が精緻に、かつ、艶やかに、ホール空間に、爛熟寸前の世界を創出します。
最初は、ミューザの音響だと分解能が高すぎてこの曲には不向きでは?とも思いましたが、曲が進むにつれて音の融合と磨き上げが増して、陶酔の、いや、妖しい世界に…。
ただ、「浄められた夜」は私はやや苦手曲なので、音響的な感想は語れても、それ以上のことはよくわからず、申しわけありません。
まあ、ノット監督の作り出す音響に陶然として聴いていたことは事実。
あやうく眠気の方に移行しかけたこと、複数回でした。

その“陶然”からたたき起こされたのが「春の祭典」だったわけです。
プログラムの妙ですね(違う?)。

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2017年7月21日 (金)

チョン・ミョンフン/東フィル(2017/07/21)

2017年7月21日(金)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:チョン・ミョンフン
東京フィルハーモニー交響楽団

(第111回東京オペラシティ定期シリーズ)
ソプラノ:安井陽子
メゾ・ソプラノ:山下牧子
合唱:新国立劇場合唱団

マーラー:交響曲第2番「復活」

第1楽章、第2楽章は、着実に歩みを進めるようなテンポ。
ちょっと「遅い」とすら感じるくらい。
第3楽章は一転、やや速め、その後は一気呵成?

遅めの第1、第2楽章はもちろん、速めに転じた後も、旋律美が際立つ。
豪快さを織り交ぜながらも、美しい旋律の印象が強い演奏でした。

先日のノット東響で「この曲に、こんな表情もあったんだ!」と目から鱗だったのが、この日はまたさらに違った表情を発見させられる。
サクサク進む演奏ではなく、丁寧に作り込んだ音の流れ。
“味わう”体感でも、最後の高揚には興奮させられました。

このコンビのマーラーって、数年前は、所々荒っぽく感じる場面ももあったような気もしますが、この日はそういう印象は皆無。
豪快に煽っているようでいても、音は粗雑にならず、濁らず、飽和せず。
(しばらくブランクがあったので、特に去年あたりはほとんど聴いていませんが)、以前は、荒っぽく感じて、煽れば煽るほど冷めてしまって今ひとつ興奮できないことが多かったのですが、この日は久々なのか、初めてなのか、心から全曲楽しめた演奏でした。

この日のチョンさんもソロカーテンコールあり。

ただ、オペラシティで聴く東フィルの音は、(私は久しぶりでしたが)そうそう、こういう音が鳴るんだよねーと、すぐに思い出しました。
私の好みとしては、東フィルの音はサントリーで鳴る音の方が好きかもしれません。

意図して並べたわけではない、ノット/東響「復活」ノット/東響「復活」インバル/都響「葬礼」、中3日で、チョン/東フィル「復活」、この日にて終了。
2日後のチケットは持っておりません。
買っておけばよかったような、もうたくさんのような…。

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2017年7月17日 (月)

インバル/都響(2017/07/17)

2017年7月17日(月祝)14:00
東京芸術劇場

指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団

(都響スペシャル)
コントラルト:アンナ・ラーション
テノール:ダニエル・キルヒ

マーラー:交響詩「葬礼」
マーラー:大地の歌

「蜜月を謳歌して退任した後のあうんの呼吸」などではなく、あの“到達点”だったツィクルスの高次元の均衡をすら崩して攻めようとしているようなインバルさん。
練れた音より攻めの音。
特に大地の歌は、前回サントリーホールで聴いたときよりも、えぐるような表現が多用されていたように感じたのは、私が過去の記憶を美化しているのでしょうか?
それとも、ホールの音響と私の席の位置のせいでしょうか?

確かにあのツィクルスは芸劇の3階RBブロックでしたし、大地の歌10番はサントリーホールのPブロック中段。
いずれも残響が豊かに感じられる場所
それに対してこの日は、直接音をもろに浴びる場所だったので???

「葬礼」は、復活」の第1楽章の初稿です。
版が違うとは言え、さすがに3日続けて聴くと…と思ったのも最初だけ。
もっと聴きたいくらいでした。
この曲の演奏中、指揮棒を折って(左手にぶつかったのかも?)予備の指揮棒を取り出して振る場面も…。

大地の歌の“声”については、私の席の位置からは、裏からのぞいているような場所で聴いたので、コメントする資格なし。
コントラルトのラーションさんは暗譜での歌唱。
テノールのキルヒさんは楽譜を見ながらの歌唱。
(だからどうしたと言うことはなく、他意はありません。)

最近、都響の演奏会はサボってばかりなので定かではありませんが、インバルさんがシェフだった頃とは異なる両者の緊張感(良い意味でも、多少ネガテイブな意味でも)を感じたのは私の気のせいでしょうか?
私はそれを、攻めの姿勢、さらなる別の次元を目指した飛翔にとりましたが…。
インバルさんは、過去の遺産で悠々自適に過ごす人ではないと思いました。

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2017年7月16日 (日)

ノット/東響(2017/07/16)

2017年7月16日(日)14:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団

(川崎定期演奏会 第61回)
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
ソプラノ:天羽明惠
合唱:東響コーラス
合唱指揮:冨平恭平

細川俊夫:「嘆き」~メゾ・ソプラノとオーケストラのための
マーラー:交響曲第2番「復活」

前夜の、何が起こるかわからないような、ある種の怖さは後退しましたが、その分、音が成熟した印象です。

細川俊夫さんの作品も、オケは2日目になってやや洗練された音色になったようです。
その分、強烈なエネルギーの発散(感情の発散と言い換えても良いでしょう)は若干後退した感もありますが、その分、より普遍的な音へと昇華された感もあます。
これはこれで、十分に壮絶。
「あえて言えば」の僅差ではありますが…。

そして、「復活」も、前夜の緊迫感から一夜明けて、音の練り上げはさらに向上。
前夜の多彩な“寄り道”の印象も後退して、比較的ストレートに歩みを進める演奏ですが、突っ走ったと言うほど一気呵成ではありません。
興奮するような演奏なのに「味わった」という体感はこの日も不変でした。

「復活」だけでも大変なのに、前半に細川さんの作品を配置したのは、藤村実穂子さんあってのことでしょう。
藤村さんのスケジュールが押さえられて、出演が決まった時点で成功は半分約束されたも同然?
ノット監督のパワフルな指揮が素晴らしかったですが、藤村さんもビッグネームにふさわしい第2の主役の存在感の声でした。

そして、カーテンコールでの所作は藤村さんを立てていましたが天羽さんも素晴らしいし、東響コーラスの素晴らしさもいつも通り。

もしかしたら東響の歴史でターニングポイントになるかもしれない演奏会。
もっとも、ノット監督の引き出しの多さは、いまだに「こういう指揮者だよ」とわからせない奥深さがあります。
まだまだ新しいターニングポイントは続々とあるかもしれません。

そして、ノット監督の「引き出しの多さ」も、単なる客演ではなく、音楽監督としてお迎えしたから出していただけているものでしょう。
スポンサー様と、それを獲得した事務局にも感謝しないといけません。

この日は、せっかく実家の片付けをするために空けておいたのに、1ヶ月くらい前に公式チケットサイトを見たら、いつも私が買うような場所の(すなわち好みの位置の)席が、最後の2~3席残っていたので、ついついポチッとやっしまいましたが、2日とも聴けて結果オーラーでお釣りが来ました。

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2017年7月15日 (土)

ノット/東響(2017/07/15)

2017年7月15日(土)18:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

 

指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団

(第652回定期演奏会)
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
ソプラノ:天羽明惠
合唱:東響コーラス
合唱指揮:冨平恭平

 

細川俊夫:「嘆き」~メゾ・ソプラノとオーケストラのための
マーラー:交響曲第2番「復活」

後半が凄かったので、終わったら前半の印象がどこかへ行ってしまいましたが、どうしてどうして、前半も壮絶な演奏でした。

細川俊夫さんの作品って、これまであまりピンとこなかったのですが、それは演奏のせいもあったかもしれません。
この日の藤村さんの歌唱の緊迫感。
旋律のつかない語りの部分も、旋律のついた部分も、凄みすら感じる強烈な声。
すでにビッグネームの藤村さんを生で聴くのは初めてではありませんが、なぜビッグネームなのかを初めて知ったかのような歌唱でした。
そして、ノット監督の指揮するオケも、切れ味と気迫で壮絶。
「復活」の「前座」などではありませんでした。
細川さんは2階席正面最前列で大喝采。
休憩時間にはサインを求める方々が席に押しかけるほど。
この音を聴かされたら、書いた方も凄いけど、演奏した方も凄い、みんな凄い。
希有の体験をありがとうございました。

さて、「復活」の「前座」などではないと書きましたが、「復活」は「復活」で、単なる後半ではありません。

一気に目的地に突っ走らず、あちこち寄り道をしながら、ハッとしたり、驚いたり、嘆いたりしながら旅する冒険?
もちろん、部分部分でとてつもない大音響が、これでもか!と襲いかかってきますが、一気呵成に責め立てた単調な煽りなどではなく、多彩、多種多様。
何度も聴いたこの曲に、こんな部分、こんな表情があったんだ…という発見の連続。
「この調子で終わるのかい?」と長く感じながらも、終わってみたらあっという間の出来事だったという矛盾。
これだけ興奮しながらも、最後は「味わった」という体感。

そして、「パントマイムと指揮:ジョナサン・ノット」と言いたくなるくらい。
大きな身体の動きだけでなく、顔の表情まで駆使した指揮。
名優ですよ、ノット監督。

音響の設計も見事。
オケの中の音のバランスは当然のこととして、バンダの鳴る方向、合唱と独唱を分離して配置、パイプオルガンも埋没せずに響く、などなど。
本拠地ミューザがこういう音響だからこそ出来た分解能と溶け合いの両立だったかもしれません。

合唱団は第1楽章の後に入場して、それによって自然と間合いがとられるという一石二鳥?

全曲が終ったところでまばらな拍手がパラパラ、大半の聴衆はあっけにとられて拍手が出来ず?
その後に盛大な拍手とブラボー。
最後は、ノット監督のソロカーテンコールでようやくお開きに。

ノット監督のマーラーは就任披露の9番が壮絶な演奏だったし…という予断を許しません。
ノット監督の引き出しは多いですね。
まるで違うスタイルにすら感じました。
同じだったのは、あっけにとられて、すぐには拍手が出来なかった会場と自分です。

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秋山和慶/新日フィル(2017/07/15)

2017年7月15日(土)14:00
すみだトリフォニーホール

指揮:秋山和慶
新日本フィルハーモニー交響楽団

(第576回定期演奏会トパーズ<トリフォニー・シリーズ>)
ピアノ:パスカル・ロジェ

イベール:寄港地
サン= サーンス:ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」
サティ:グノシエンヌ第3番
(アンコール)
ショーソン:交響曲

少し前までは、秋山さんが東響以外の在京オケを振ると、カチッカチッという音になる傾向があったような気もしますが、この日のNJPも含めて、今やこういう流麗な「近年の秋山さん」の円熟の音が鳴る、鳴る。
その流麗な音色に(欧州から見て)東南の方向(=芳香)を混ぜた絶妙の音色。
秋山さんの棒のマジック!と言いたいところですが、かつてに“刻み”ではなく、流れ重視の懐の深さ。
「銘」演です。

サン=サーンスのピアノ協奏曲を弾いたパスカル・ロジェさんは、客席に強烈なエネルギーを放射すると言うよりは、聴いているうちにこちら客席側が舞台上に引き込まれてしまうような体感。
曲が終わってみればめくるめく音の体験だったという…これも名人芸ですね。

休憩後のショーソンはもう、気持ちよくって眠くなってしまいそうな(←ほめてます)魅惑の音色、音響。
最後はどこかの楽劇の救済のようにも聴こえるように曲が静かに終わると、満ち足りた気分が会場に充満。
救済されました!

近年では、時々、秋山さん、少し枯れたかな?と思うときがありますが(もちろん、気の抜けた凡演ではなく、味わい深さはありますよ)、そういう演奏会は定期演奏会ではありません。
秋山さんはやはりオケ主催の定期演奏会で聴くべき…が私の持論ですが、前月の東響定期、そしてこの日のNJP定期を聴くと、全く枯れてなんかいなません。
もちろん、東響音楽監督の頃のカミソリのような切れ味や精緻さはないですが、これが円熟というものでしょう。
1980年代頃からのファンの私は、嬉しい限りです。

ロビーコンサート

Cb:藤井将矢、菅沼希望

ボッテシーニ:グラン・デュエット第2番~第1楽章

支える側と主旋律側が交互に入れ替わる曲ですが、どちらも重低音という不思議な世界。
しかもその重低音はかなりの超絶技巧。
しかし、終わってみれば重厚な2つの音の世界に引き込まれて拍手喝采でした。

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2017年7月 8日 (土)

スダーン/神奈川フィル(2017/07/08)

2017年7月8日(土)14:00
横浜みなとみらいホール

指揮:ユベール・スダーン
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

(定期演奏会みなとみらいシリーズ第331回)
ヴァイオリン:佐藤俊介

モーツァルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲 
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」
バッハ:パルティータ第3番~メヌエット
(アンコール)
シューマン:交響曲第2番【マーラー編曲版】

スダーンさんが約1年ぶりに首都圏に帰ってきました!
しかも、モーツァルトと、マーラー版のシューマン!
どちらも東響音楽監督時代の記憶がよみがえり、これはもう、万難排して馳せ参じるしかございません。

1曲目から、なつかしいスダーン監督の音が…と言いたいところですが、さすがに東響との10年間という年月(最後の方はもう、あうんの呼吸)と比べると分が悪いかも…と思ってしまいました。
決して凡演ではなく、ひびきび、はつらつ、適度にとんがって、適度に快速の、心地よいモーツァルトなのですが…

続く協奏曲は、ソロの佐藤俊介さんが素晴らしい。
近年の大活躍は耳にしていましたが、私はなかなか聴く機会を得ず、この日の演奏で、なるほど、さすが!と思った次第。
スダーンさんの“とんがり”を凌駕する佐藤さんのピリオド系。
きれいに朗々と鳴らしたかと思えば、激しく追い込む、激しくかきむしる、スリリングとすら感じるトルコ風。
(ところどころ、耳慣れない旋律を弾いていましたが、即興を加えながらの演奏だったのでしょうか?)
ソロだけでなく、オケの部分もかなり一緒に弾いていましたが、その時もかなりの身体的なアクションを加えてオケの方を向いての演奏だったので、指揮者、ソリスト、コンマスと、リーダーが3人居るような…。
ともあれ、佐藤さんにお株を奪われたようなスダーンさんでしたが、逆にピリオド系モーツァルトは百戦錬磨のスダーンさんだからこの独奏につけられたとも言えるかもしれません。

さて、この日のクライマックスを佐藤さんに持って行かれたか?…と思っていた休憩時間が終わると、驚きの後半大逆転が待っていました。
前半の演奏に対して、10年連れ添った東響のようには…などと感想を述べてすみませんでした。
マーラー版のシューマン交響曲第2番、素晴らしい演奏です。
ハイレゾ・リマスターされた音を、録音ではなく生演奏で「見せて」くれたような、目がさめるような音響です。
どこがどう…と言えませんが、第3楽章での木管(特にクラリネット)の旋律美は悶絶しそうになるほど。
スダーンさんのパワーが注入されて、はつらつとした演奏が最初から最後まで持続しました。
こうなったら続編を期待したくなります。
あと3曲あります。
スダーンさんの継続招聘を期待したくなりますが、それが無理なら川瀬さんやってくれませんかね?
いま上り調子の神奈川フィルで(←上から目線ですみません)スダーンさんが東響音楽監督時代を象徴するような(名刺代りのような)曲を指揮するという素晴らしい機会でした。
一期一会に終わりませんように。

ロビーコンサート

オーボエ:古山真里江
クラリネット:森川修一
ファゴット:石井淳

モーツァルト:ディヴェルティメントK.439b~第1、第4、第5楽章

歯切れの良い気持ちよい演奏で、どことなくこの日の指揮者スダーンさんの音色の側に少し寄った演奏に感じたのは私の気のせいでしょうか?
ロビーコンサートも好調の神奈川フィルです。

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2017年7月 2日 (日)

ハーゲン・クァルテット(2017/07/02)

2017年07月02日)日)14:00
神奈川県立音楽堂

音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ21
ハーゲン・クァルテット
ルーカス・ハーゲン(第1ヴァイオリン)
ライナー・シュミット(第2ヴァイオリン)
ヴェロニカ・ハーゲン(ヴィオラ)
クレメンス・ハーゲン(チェロ)

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第3番
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」
ハイドン:弦楽四重奏曲第78番「日の出」~第3楽章(アンコール)


めったに室内楽の演奏会に行かない私ですが、超一流弦楽四重奏団の演奏会は行きたい!とずっと思っていました。
なぜなら、超一流オーケストラのチケットはべらぼうに高価ですが、超一流弦楽四重奏団ならそこそこのお値段で超一流の音が聴けるからです。
この日はようやくその願い(超一流の音を聴く!)がかないました。

神奈川県立音楽堂には、室内楽好き、弦楽器好き、弦楽四重奏好き、ハーゲン・クァルテット好きの皆さんが集結したようで、演奏中の客席は都響B定期並みに(?)静か。
演奏が終わった後の拍手は盛大で熱い、熱い。
ちなみに、開演前、休憩時間の男子トイレはブルックナーの演奏会のように長蛇。

閑話休題。

演奏ですが(前置きが長くてすみません)、前半と後半で、このカルテットの異なる側面を見たようなコントラストでした。

ショスタコーヴィチとベートーヴェンは、切れ味は内包にとどめてひたすら美しい熟成の音。
柔らかい手触りのような上質の音でありながら、全くゆるくなっていない極上の音楽体験です。
ショスタコーヴィチでの軽妙な皮肉っぽさもひねりも、一瞬の微細な技にとどめていますが随所に散りばめられ、しかしそれが突出せず…という、漫然と弾き流していない、大人の音楽。

前半が終わった時点ですでに幸せいっぱいの休憩時間でしたが、休憩後のシューベルトでは、前半は内包していた切れ味を前面に出し、気迫みなぎる凄演は手に汗握る。
第2楽章の切々と歌う旋律も、この曲の“お約束”ながら、ハーゲン・クァルテットの音の構築で鳴らされると、もう、目をうるうるせざるを得ない美しさ、悲しさ。

アンコールのハイドンが比較的肩の力の抜けた曲、演奏だったのと、アンコール後すぐに客席の明かりが明るくなったので拍手はおさまりましたが、本当に熱気のこもった会場の拍手でした。

前半の“静”に対して後半の“動”?
曲の性格ゆえかもしれませんが…。

ブランドものの価値を満喫した2時間。
夏本番ではないにせよ、蒸し暑い中、汗をかきながら坂を上がって聴きに行った甲斐がありました。

20170702

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2017年7月 1日 (土)

藤原歌劇団「ノルマ」(2017/07/01)

2017年7月1日(土)14:00
日生劇場

藤原歌劇団
ベッリーニ:ノルマ

最初、最安席が買えなかったらスルーするつもりだった公演。
ところが発売初日に公式サイト、ぴあ、イープラスなどのネット販売は全席完売。
完売となると悔しくて…。
翌週になったら追加されたのか、公式サイトに席が出てきたので、ついつい高価な席を買ってしまったのでした。
勢いで買った私にしては高価な券、結果は大吉と出て、めでたし、めでたし。

この公演、ノルマ役のデヴィーアさん目当ての方が多いのでしょうか。
しかし、確かにデヴィーアさんの存在感は素晴らしかったものの、デヴィーアさんの“一人舞台”ではありませんでした。

まず私が素晴らしいと思ったのは、指揮のランツィッロッタさん。
牽引力、統率力で、東フィルからキビキビとしたキレのある音を引き出していました。

そして、ポリオーネ役の笛田博昭さんのハイパワーの歌唱も素晴らしい。
笛田さん、最初出てきたときは「あれれ?」と思うような歌唱だったのですが、直後のアリアになったらパワー全開で、アリアだけ力を入れるんかい?と思ったら、アリアの後もハイパワーが最後まで持続。
最初出てきたときの声は何だったんでしょう?

休憩前の三角関係のドラマティックシーンを歌った歌手は三者三様の相乗効果。
ここまでのデヴィーアさんは、声量よりも技巧と凄み…と思いましたが、休憩後はかなりパワー全開の場面もありました。
超絶技巧のスピード感はあまり感じませんでしたが(若干テンポを犠牲にした面もあるのかもしれませんが)安定感がありました。
凄みを感じる存在感と言うか、オーラと言うか。

この“一人舞台”じゃない総合力の終幕など、手に汗握りながら目頭がじーんとなりました。

ところで、初台のピットのオケ(東フィル、東響)は、評論家の先生に酷評されることがよくあります。
でも、この日の東フィルの演奏(好演!)などを聴くと、指揮者にも責任はあるのではないかとも思ったりもします。
この日のピットは私は非常に好感でした。
初台のピットではありませんが、故ゼッダさんが振ったときだって何の不満もありませんでした。
…などと、ついつい、余計なことまで考えてしまったくらい好演だったと思います。

総監督:折江忠道
指揮:フランチェスコ・ランツィッロッタ
演出:粟國淳
ノルマ:マリエッラ・デヴィーア
アダルジーザ:ラウラ・ポルヴェレッリ米谷朋子
ポリオーネ:笛田博昭
オロヴェーゾ:伊藤貴之
クロティルデ:牧野真由美
フラーヴィオ:及川尚志
合唱:藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

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