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2017年8月の5件の記事

2017年8月26日 (土)

小菅優(P)/東響(2017/08/26)

2017年8月26日(土)11:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

モーツァルト・マチネ第30回
ピアノ:小菅優
東京交響楽団

≪オール・モーツァルト・プログラム≫
モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番
モーツァルト:ピア協奏曲第9番「ジュノム」

当初は「指揮者なし」と告知されていたように記憶していますが、完全に小菅さんの弾き振りです。

小菅さん、天下の東響を弾き振りできるステータスになっていることは慶賀の至り。
そして、想定外に(失礼)素晴らしかったです。

特に、2曲目の「ジュノム」。
1曲目の第12番も凡演ではありませんでしたが、この9番になって、小菅さん本来の奔放な弾きっぷり、ある意味、はじけちゃっている情熱が見事に現れました。
ピアノは当然のこととして、オケの音も、2曲目になって切れ味が増した印象。
第2楽章の(プログラム冊子によれば、J.C. バッハの訃報が影響しているとかいう)慟哭と言って良いくらいの悲しみ、そして、再び快活になった楽しい第3楽章と、かわいらしいモーツァルトの仮面の内側に、こんなに多彩な世界が内包されていたのかと、まるでいま初めてわかったような体感です。

小菅さんの「指揮」の方ですが、そりゃ、やっぱり、本職にはかなわないよね…と私が比べている対象が、ノット監督、スダーン前監督、秋山元監督なので、それはそうでしょうけど、大健闘だったと思います。
特に2曲目の「ジュノム」は、オケ・パートも本当に素晴らしい。
どちらかと言うと、ただ振っているときよりも、ピアノを弾きながら目で合図しているときの方が、オケの音はさらに良い音が出ていたようにも思いますが、それはまあ、小菅さんのピアノの音は絶品ですから…。

「ジュノム」ばっかりほめていますが(現に、演奏が終わった後の会場の拍手も、演奏会終了という面を差し引いても、「ジュノム」の方が圧倒的でしたが)12番だって、チャーミングな美音を駆使した極上の演奏だったと思います。
ただ、どうしても、小菅さんには、興がのったときの奔放な演奏のイメージがあるので、どうしても、その方向の表現を散りばめた「ジュノム」の印象の方が強く残ってしまいます。

そして、欲を言えば、ぜひとも、続編をお願いしたい!!

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2017年8月20日 (日)

飯守泰次郎/東京シティ・フィル(2017/08/20)

2017年8月20日(日)15:00
ティアラこうとう大ホール

真夏のレクイエムこうとう2017
指揮:飯守泰次郎
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
 
ソプラノ:盛田麻央
メゾソプラノ:金子美香
テノール:鈴木准
バス:友清崇
合唱:ティアラこうとう真夏のレクイエム合唱団
合唱指揮:四野見和敏

モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」
モーツァルト:レクイエム
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
(アンコール)

なにせ飯守さんの指揮ですので暑苦しい演奏を予想して行きましたが、予想は見事に外れ、清涼感もあるモーツァルトでした。

最初の「プラハ」交響曲が始まったとたん、あ、ピリオド系の音だ!と驚きました。
全員ではないかもしれませんが、弦楽器奏者の95~98%がノンビブラート。
そのピリオド系の演奏ながら、飯守さんの重低音も健在。
したがって、低域を維持しながら高域が伸びた(←オーディオのレビュー記事みたいですが)ハイレゾ・シティ・フィル。
重厚だけど重々しくない快活な音で、スピード感もあります。
飯守さんのあの棒で全く惑わず、迷わず、一糸乱れずに低音から高音まで駆け巡るのは、やはり元手兵のシティ・フィルならではです。
今になっても、やはり飯守さんの棒に一番よく反応するのはシティ・フィルだと思います。
(ピノック+ベーム)÷2のような、私好みのモーツァルトでした。

休憩後のレクイエムでは、オケだけでなく、おそらく独唱も合唱もかなりピリオド寄りの音だったと思います。
最初、「あれ?合唱の音の線が細い?」「独唱の音がキンキンする?」と思いましたが、おそらくピリオド寄りの歌唱に私の耳が慣れていなかったせいでしょう。
「怒りの日」が始まる頃には全く気にならなくなりました。
それどころか清純な声の美しさに酔いしれるように…。
こういうスタイルだと、高音が有利になってしまうのですが、ソプラノの盛田麻央さん、テノールの鈴木准さんが特に好印象。
(常設ではないので、年によって結構印象が異なる)合唱も、今年はアタリだったかもしれません。
劇的な表現はゼロではありませんが、いつもの飯守さんの叩きつけるような音は無く、ひたすら旋律の美しさと、それが織りなすハーモニーに全てを語らせた演奏。
シティ・フィルはもちろん、独唱、合唱も一体となって素晴らしい。
魂が洗われるような精神的高揚感とは、こういうことを言うのでしょう。

アンコールのアヴェ・ヴェルム・コルプスも、清らかさの極み。
例年は暑苦しいくらいの第九で、発表されたときは「え?今年はやらないの?」と、ちょっとがっかりしたくらいでしたが、清涼感あるモーツァルトに、飯守さんの違う側面を見たような演奏会で、大満足でした。

開演前のロビーコンサート

ファゴット:皆神陽太
ヴァイオリン:桐原宗生
ヴィオラ:佐藤裕子
チェロ:大友肇

フランソワ・ドヴィエンヌ:ファゴット四重奏曲

1楽章の10分くらいの曲ですが、終結に向けての構築と高揚が十分に組み上げられている曲、そして演奏。
在京オケメンバーの室内楽にハズレなし、ですね。
個人的に諸事に忙殺されている中、約1週間ぶりの生演奏だったので、音が鳴ったら一気に気が緩みました。
音楽の力は偉大です。

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2017年8月12日 (土)

下野竜也/新日フィル(2017/08/12)

2017年8月12日(土)16:00
すみだトリフォニーホール

下野竜也プレゼンツ!音楽の魅力発見プロジェクト 第4回
指揮・お話・企画監修:下野竜也
新日本フィルハーモニー交響楽団

ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
ドヴォルザーク:我が母の教えたまいし歌
(アンコール)

入場時に「え?1曲なのに終演が17:45?下野さん、いったい何分しゃべるつもり?」と思いましたが、心配は杞憂でした。
それどころか、もっとしゃべってほしかったくらい。
30分ほど、オケを鳴らしながら解説。
その後、休憩20分でした。
その休憩前のレクチャーの面白いこと、面白いこと。

まず登場して、第2楽章の冒頭を指揮。
オケのメンバーが「遠き山に…」と歌いながらの演奏。

その後、背景のスクリーンに映っている肖像画を「実はドヴォルザークではなくノーベルでした」といういたずらも。

そのスクリーンに楽譜を写しながら、「もしも二流作曲家が書いたら」のバージョンと比較しながら演奏したり。
第4楽章でシンバル鳴らしまくりの編曲?で演奏したり、もしも第2楽章で、弦楽器がミュートを付けないで演奏したら?とか。

「新世界」ではなく「新世界より」ですよ。
最後、静かに消えていくんですよ。
本編では、ぜひ、余韻を楽しんで下さい。
…とおっしゃっていたのに、本編では、静寂の中でくしゃみをした方がいらして…。
下野さん、演奏終了後、客席側を向く前に、楽団員さんと笑っていました。

それはともかく、本編は素晴らしい演奏でした。

やはり定期と同じとはいかないよね…と思った出だしを、あっという間に本気印の熱演にもっていった下野さんの迫力の指揮、さすが。
この数ヶ月前に読響ファイナルで聴いたばかりなのに、また下野さん凄い!凄い!という驚きの連射でした。

下野さん、ここぞというところで左手で、ひょい、全身でグイッと西江コンマスをあおり、西江コンマスが素直に呼応して前のめりになって力を込めて弾くので、指揮とコンマスを見ているオケ全体がうねるように反応するという連鎖の連射も堪能させていただきました。
アンコールの前に「来年も開催します」と言ったらオケからも拍手が起きました。

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2017年8月11日 (金)

秋山和慶/東響(2017/08/11)

2017年8月11日(金・祝)
ミューザ川崎シンフォニーホール

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2017
東京交響楽団フィナーレコンサート
指揮:秋山和慶
東京交響楽団

ピアノ:反田恭平

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番~第3楽章(トルコ行進曲)
(アンコール)
ラフマニノフ:交響曲第2番

反田恭平さんは初めて聴きました。
輪郭のくっきりした音を駆使し、縦方向の振幅と横方向の揺らしを、許容範囲最大限に駆使した快演。
秋山さんのファンの私ですら、しばしは耳がピアノに吸い寄せられました。
私が好きなスタイルかどうかは横に置いて(すみません)この吸引力と発散するエネルギーは素晴らしいと言わざるを得ません。

アンコールは、本編でのくっきり感から一転、流麗感きわまるモーツァルト。協奏曲の時よりも枠が外れた感もあり、強弱も含めて自由奔放ですが、聴いていて面白いことは間違いない。

反田恭平さんは、私の好きなタイプの演奏には絶対に入らないと思いますが(何度もすみません)、また聴いてみたくなる不思議。
あと、秋山さん、慌てず騒がず(時にはブレーキをかけたかどうかは不明)、懐の深さでがっしりとオケの音を構築。
その安心感もあっての“やりたい放題”だったかもしれません。

休憩後の交響曲は、秋山さんにしては、かなり旋律の歌い回しをきわださせていたと感じました。
特に第3楽章、ですが、全曲を通しても。
それでも、曲の最後に向けてのがっしりとした構築はゆるぎ無し。
この日の私の席の位置のせいか、ミューザの割には分解能よりも音の溶け合いを感じましたが、芳香感もある美しいブレンドの音にに聴こえました。

この曲は広島響とのCDもある秋山さん。
もっとも「録音しているだけあって手の内に入った」などと申し上げるのは秋山さんに失礼でしょう。
かつての切れ味よりも近年の円熟の側面がやや強い演奏でしたが、まだまだ枯れていない秋山さん。
「今日指揮したのは誰だっけ?と言われるのが理想」とおっしゃっているようですが、この日の演奏は、秋山さんのファンの私が聴いても、それに近い、まさに、曲に、音楽に、献身的に向き合われた演奏だと感じました。

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2017年8月 6日 (日)

鈴木秀美/神奈川フィル(2017/08/06)

2017年8月6日(日)15:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2017
指揮:鈴木秀美
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」
ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」
J.S.バッハ:カンタータ「汝、何を悲しまんとするや」BWV107~
      第7曲コラール「主よ、あなたの栄光を与えて下さい」
      (アンコール)

メンデルスゾーンからバッハまで、時代を、音の大河を、遡るような体験。
全てに発見がある、素晴らしい演奏会でした。

まずはメンデルスゾーン。
「フィンガルの洞窟」も「イタリア」も、第一印象は「素朴な音だな~」でした。
あまり光らない、コテコテに盛られていないその音は、素材の良さを存分に活かした料理のよう。
「あまり迫ってこないな~」と思いながら、こちらから注意を向けると、何もしていないわけではありませんが、まるで何もしなくても音楽が勝手に生き生きと踊り出すような、ハッとするようなチャーミングな瞬間の連続。
これは素晴らしい。

“もっと後の時代の風にしない”と言うことの意味が、秀美さんの棒で初めてわかったようなちょっとした驚き。
こういう天然素材の音で聴くと、メンデルスゾーンが「偉大なる過渡期」であったことがよくわかります。
古典派の枠内から、いままさに離陸しよう!としている瞬間のようです。

さて、この、メンデルスゾーンの、意外に古い側面を見た後に待っていたのは、ハイドンの意外と新しい側面でした。
斬新さと言った方が良いかもしれません。
そのハイドンの先進性を誇示するような快演。
叩きつけても巻き上げても揺るがない音楽。
秀美さん、ベートーヴェンに対峙するのと同じくらいの気迫で臨まれたのではないでしょうか。
こういう音楽が、既にあの時代にあったという…。

いやいや、ベートーヴェンの交響曲第1番が書かれたのは、このハイドンの交響曲第104番の5年後のようです。
モーツァルトの交響曲第41番の7年後でもあります。

ハイドン→モーツァルト→ベートーヴェン(直列)ではなく、ハイドン→モーツァルト→ハイドン→ベートーヴェン(同時並行含む)だったということを音で示したような、ベートーヴェンの交響曲に比肩しうることを示したような。
比肩しうるベートーヴェンの交響曲は、第1番どころではないかもしれません。

先進性のハイドンの後のアンコールは深遠なるJ.S.バッハ。
こういう世界が、さらに時代を遡って確立されていたことを体感。

このコンサート、「シンフォニーで、ヨーロッパ旅行」などという副題(キャッチフレーズ?)がついていました。
表題から言えば、確かにその通りでしょう。
しかし、これは、単なる都市間の旅行ではなく、タイムトラベルの世界だ、と思いました。

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