コンサート/オペラ2017

2017年11月19日 (日)

カンブルラン/読響(2017/11/19)

2017年11月19日(日)14:00
サントリーホール

指揮:シルヴァン・カンブルラン
読売日本交響楽団

(第572回定期演奏会)
天使:エメーケ・バラート(ソプラノ)
聖フランチェスコ:ヴァンサン・ル・テクシエ(バリトン)
重い皮膚病を患う人:ペーター・ブロンダー(テノール)
兄弟レオーネ:フィリップ・アディス(バリトン)
兄弟マッセオ:エド・ライオン(テノール)
兄弟エリア=ジャン:ノエル・ブリアン(テノール)
兄弟ベルナルド:妻屋秀和(バス)
兄弟シルヴェストロ:ジョン・ハオ(バス)
兄弟ルフィーノ:畠山茂(バス)
合唱=新国立劇場合唱団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
(合唱指揮=冨平恭平)

メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」(演奏会形式/全曲日本初演)

正直、メシアンは苦手な私。
「会員券に付いてきちゃったので聴きに行きました」という気持ちがなかったと言ったらうそになります。
発売早々に完売で買えなかった方が多数いらっしゃることを考えると、私ごときが聴いて申しわけございません。

しかし、行って良かったです。
いまになってようやく日本初演と言うことは、もう生きている間に、次の機会はないかもしれません。

まず、当たり前のことですが、これはオペラですね…と思いました。
20世紀の作品では「ヴォツェック」なども、あんな旋律(失礼!)なのに、紛れもないオペラですが、この作品も、打楽器はピアノのように弾きまくるわ、複雑なリズムが散りばめられて、いかにも私の苦手なメシアン節なのに、やっぱり、紛れもないオペラです。
文字通り「劇的」な歌唱と管弦楽による…。

休憩抜きで4時間超という長大な作品ですが、ただ長いだけ無く、音も多い、多い。
そんな中、第2幕で天使が奏でる、この世のものとは思えない極上の音のひと時は、まさに得難い体験でした。
あの静かな場面での弦楽器群の微弱音、いわばBGMなのですが、作曲家はそうは思ってはいないでしょう。
あの場面で、空間を、静寂ではなく音で満たすためには重要な音だと思いますが、今だに耳に残っています。
聖フランチェスコが失神したという音にふさわしい音でした。

歌手の皆さんも入魂の熱唱。
終演後のブラボーは、当然、聖フランチェスコのヴァンサン・ル・テクシエさんが一番盛大で、次が天使のエメーケ・バラートさん。
私が、あ、結構すごい!と思っていた重い皮膚病を患う人のペーター・ブロンダーさんも、3番目くらいのブラボーでした。

カンブルランさんの身体能力の凄さは今に始まったことではないので全く驚きませんでしたが、初めて見たら驚嘆するでしょうね。

あとはもう、何を書いてよいかわからないくらい、いろいろありました。

複雑怪奇な音、音、音、リズム、リズム、リズム…が、最後は精神的高揚感に帰結しました。
22世紀の人類は、この作品を現代の私たちが「パルジファル」を観るのように上鑑賞するのかもしれないと思いました。

公演はカンブルラン様のソロ・カーテンコールでお開きに。

カンブルラン様が「十分な練習時間確保」を条件に受諾したというここ企画。
読響の音も細部まで磨かれていました。
読響の「神々の黄昏」「ルサルカ」「聖フランチェスコ」くらいしか入ってないスケジュールを見て、「他のオケが見たらうらやましいのでは?」と思った時期もありましたが、それは「余裕のあるスケジュール」などではなかったのでしょう。
すみません。
そして、多忙な中、おそらく長期滞在して導いてくれたことに感謝、感謝です。

201711191

201711192

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月18日 (土)

ポンマー/神奈川フィル(2017/11/18)

2017年11月18日(土)14:00
横浜みなとみらいホール

指揮:マックス・ポンマー
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

(定期演奏会みなとみらいシリーズ第334回)

J.シュトラウスII:皇帝円舞曲
シェーンベルク:浄められた夜
メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」

懐の深い指揮者ですね~。
ドイツ人の高齢指揮者なので、古き良き時代の…と思ったら大間違い。
まずは、「清められた夜」の雄弁多弁、かつ、微細な音に感嘆。
弦楽器をの音の磨き上げが超絶的に素晴らしい。
艶やかですが“のっぺり”とならずに、音の絡み合いを見事に鳴らす。
私の苦手曲の「浄められた夜」を、こんなに陶然となって聴いたことは初めてかもしれません。

1曲目の皇帝円舞曲の弦楽器群の音も素晴らしい。
それに対して、金管楽器の音は少し異質感を感じたので、この時点で、ポンマーさんって、弦楽器をうまく鳴らす指揮者なのかな?とも思いました。

休憩後のメンデルスゾーンがこれまた素晴らしい。
繰り返しに鳴りますが、古き良き時代のドイツの…などではなく、モダンな(矛盾するようですがピリオド寄りの)要素も加味した演奏。
したがって切れ味もアクセントもある演奏ですが、音の根底に音の深さ、味わい深さがあることで、単なるとんがった演奏には成り下がっていません。
いや、古き良き時代のドイツのの要素も残っているのかもしれません。
“究極の折衷案”が大成功したかのような演奏かもしれません。
もちろん、その折衷を可能にしたのはポンマーさんの魔術のような音楽性でしょう。

欲を言えば、金管楽器のニュアンスが時々混濁気味になったのが残念。
先述の皇帝円舞曲で感じた異質感は、スコットランドでも払拭できませんでした。
しかし、まあそれは目をつぶるとして、弦楽器のニュアンスは名人芸、木管(特にクラリネット)も絶妙の音色。
曲の最後もテンポは速めずに悠然と終了しました。

ポンマーさんは確か(札響にポストを持つ前に?)新日本フィル定期も振ったことを記憶しています。
その時も良かったですが、バッハだったので、フルオケではこういう指揮をされることは存じ上げませんでした。
今の私はいろいろあって、なかなか札幌には行けないし、札響東京公演の鑑賞も、たぶん無理そうです。
神奈川フィルさん、呼んでくれてありがとう…という気持ちです。
次はいつ聴けますことやら…。

ちなみに、ポンマー さん、ずっと起立されての指揮でしたたが、登場するときやカーテンコールのときの足取りはかなりゆっくり。
高齢で体格も良いのでそんなものだろうとは思いましたが、後半のメンデルスゾーンを始める直前、指揮台の楽譜に手をのばした瞬間、ちょっと足もとがふらついてひやり。
いつまでもお元気で、また聴ける日を首を長くしてお待ち申し上げます。

ロビーコンサート

Vn:桜田悟、久米浩介、Va:高野香子、Vc:長南牧人

コルンゴルト:弦楽四重奏曲第2番~第2楽章 
カプースチン:弦楽四重奏曲第1番~第3楽章

まろやかにブレンドされた均質の弦の音が心地良い。
新入団の桜田さんの選曲とのことですが、約16分であっても(神奈川フィルのロビーコンサートはいつもそうですが)「聴いた」感のある演奏。
単なる耳当たりの良い曲ではなく、結構「本格的」感。
それにしても、このロビーコンサートの弦4人の隙の無いアンサンブルは、本編での弦楽器群の好演の縮図だったのかもしれません。(←ほめてます。)

201711181

201711182

201711183

201711184

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月12日 (日)

ヤノフスキ/N響(2017/11/12)

2017年11月12日(日)15:00
NHKホール

指揮:マレク・ヤノフスキ
NHK交響楽団

(第1870回定期公演 Aプログラム)
フルート:甲斐雅之
オーボエ:青山聖樹
クラリネット:松本健司
ファゴット:宇賀神広宣
ハープ:早川りさこ

ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容
ヒンデミット:木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

想定外の至芸でした。
想定外とは、豪腕ではなかったことです。

まず、ヒンデミットが、切れ味抜群の演奏ではなく、絶妙な芳香と、大河の流れすら想起するスケール感で鳴ったことに驚愕。
2曲とも、おそらく、複雑かつ多層に組み上げられた曲。
それを、「ほら、複雑で面白いでしょ」と示す演奏も切れ味抜群であれば面白いのですが、この演奏は、複雑系を完全に調和させて、伝統を継承する音楽に仕上げました。

協奏曲のソロを吹いた面々の出す音を聴けば、N響メンバーがいかにすばらしい音色を持っているか、一“聴”瞭然ですが、その方々がソロではなく、オケの中で調和したときの全体としての音の素晴らしさ、格別です。

休憩後の英雄交響曲も、なんと味わい深い演奏でしょう。
粗雑な表現の音は皆無。
芳しい音で進む演奏は人間国宝級の良い意味の脱力。
もっとも、指揮者は楽章間で汗をぬぐい、奏者は結構前傾姿勢。
でも、出てくる音はひたすら味わい深い。
これぞ、指揮の至芸なり。
この方向(芳香)の指揮を、音にしてみせたN響も、うまい、うまい。
外面的には超絶技巧ではありませんが、このエッジを立てないふわっとしていながら軽過ぎない音を出すには、見えない超絶技巧を織り重ねたはず。
さすがに第4楽章は、ちょっとだけたたみかけるように迫力を増した箇所はありましたが、第3楽章までは、淡々と進んでいるようでいて、聴いていてちっとも飽きない…どころか、音楽の素晴らしさに浸るような演奏。
圧倒されたのではなく、存分に「味わった」という体感です。

なお、プログラム冊子にも記載がありましたが、ヤノフスキさんの初来日、N響定期への初登場のときにも、ヒンデミットのウェーバーの主題による交響的変容を指揮されたそうです。
…いや、「指揮されたそうです」ではなくて、私は会場で聴いていました。
(プログラム冊子の写真をアップして良いのか、著作権の問題が微妙かな…と思いましたが、ツィッターのN響公式アカウントが私のツィートをリツィートして下さったので、許容範囲内でしょうか。)
ただ、さすがに32年前なので、その演奏の記憶は全くありません。
でも、藤川真弓さんが弾いていた姿や、レーガーの作品が、曲が進むにつれて奇っ怪に変貌し、わけがわからなくなって、約40分の演奏時間がとても長く感じたことは覚えています。
その時は、2017年にこういう演奏会に出会うとは、夢にも思いませんでした(当たり前)。

20171112n1

20171112n2

20171112n3

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月11日 (土)

上岡敏之/新日フィル(2017/11/11)

2017年11月11日(土)14:00
すみだトリフォニーホール

指揮:上岡敏之
新日本フィルハーモニー交響楽団

(第10回RUBY<アフタヌーンコンサート・シリーズ>)
ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ

ラフマニノフ:交響詩「死の島」
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
ドビュッシー:月の光
(アンコール)
シューベルト(リスト編):セレナーデ(アンコール)
レーガー:ベックリンによる4つの音詩
ワーグナー:「神々の黄昏」~ジークフリートの葬送行進曲
(アンコール)

ベックリンの絵画を題材にした作品でサンドイッチにしたチャイコフスキーのピアノ協奏曲、これが手に汗握る快演。
ところどころ、まるでショパンの作品のように揺らしてアクセントをつけるピアニスト。
それに対して、ところどころ、濃厚な表情付けで揺らす指揮者。
揺らす者同志なのに、噛み合う、噛み合う。
上岡監督、何度も、ピアノの方を向いて棒を振る。
あれ?ピアノも指揮しちゃってるの?と思いましたが、よく見ると、ピアニストの手の動きを見ながら、それに合わせて棒を振っていたようにも見えました。
揺らすだけではなく、強靱なアクセントと、巻き上げ猛スピードも飛び出したのに、ピアノもオケも、ずれずにぴったりと合ったのは、上岡さんの、目でピアニストの手を見る指揮のなせる技かもしれません。
会場のブラボーは盛大!
一転して、内面に迫るようなピアニストのアンコール。
こういう時は、休憩時間のロビーの空気が明るく、熱いですね。

休憩後のレーガーは、「空間の創出」を音にして漂わせたような2曲に、「躍動感を音にしたらこうなる!」というような終曲。
オケの音の仕上がり、融合感と均質感は極上。
(これを聴いてしまうと、僅差とは言え、冒頭のラフマニノフは、さらに磨き上げの余地はあったかなぁ…という思いも少々。)

アンコールのジークフリートの葬送行進曲は、レーガーの躍動感みなぎる終曲との類似性かな?と聴いたときは思いましたが、ネット上での情報を拝見すると、「テーマは死」とのこと。

この日は1階席に高校生の団体さんも入っていたようでしたが、客席は結構埋まっていました。
無理矢理連れてこられた(失礼!)学生さんは、この演奏をどのように感じたのでしょう?
クラシック音楽って、高尚な教養などではなく、結構スリリングで面白い…と思っていただっけたのではないか?と(私は)思いました。

291711111

291711112

291711113

291711114

291711115

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年11月 3日 (金)

クリスチャン・ヤルヴィ/新日フィル(2017/11/03)

2017年11月3日(金)15:00
すみだトリフォニーホール

トリフォニーホール開館20周年記念コンサート
クリスチャン・ヤルヴィ サウンド・エクスペリエンス2017
指揮:クリスチャン・ヤルヴィ
新日本フィルハーモニー交響楽団

ピアノ:フランチェスコ・トリスターノ

クリスチャン・ヤルヴィ:ネーメ・ヤルヴィ生誕80年のためのコラール
フランチェスコ・トリスターノ:ピアノ協奏曲「アイランド・ネーション」
フランチェスコ・トリスターノ:ピアノ・サークル・ソングズ~パストラル
(アンコール)
フランチェスコ・トリスターノ:ピアノ・サークル・ソングズ~ラ・フランシスカーナ(アンコール)
ワーグナー(デ・フリーヘル編):オーケストラル・アドヴェンチャー「ニーベルングの指環」

「サウンド・エクスペリエンスって、大げさな…」と思っていましたが、前半はまさに「体験」。
指揮者自作曲に独奏者自作曲、独奏アンコール2曲。
最初、ヒーリング音楽みたい…。
いつの間にか引き込まれ…。
いや、反復のように感じられる音を聴き続けることで、いつのまにか洗脳されるという体験?

特にピアニスト自作曲終演後のカーテンコールでは、舞台上、バックで拍手する楽団員さん、半分は喜んで手を叩き(管楽器、打楽器に含有率高し)、半分は目が笑ってない(弦楽器に含有率高し)。
確かにそういう曲、そういう演奏かもしれません。

ただ、後半のワーグナーは、ちょっと疲れました。
「リング」でオケを舞台上に全部載せると、こういう強烈な音になるのね…という…。

つい最近、「神々の黄昏」全曲を観て、「ワルキューレ」第1幕を聴いたせいかもしれませんが、本当にワーグナーっぽくない。
極彩色を指向して、達成度80%…みたいな…。
歌劇場でやったらワグネリアンからブーイングも出そうな演奏??
もっとも、この編曲自体がそういう方向を目指したものかも????

…というわけで、後半は少し私の感性と合わない面もありましたが、まあ、それも含めて、面白い「体験」だったことは事実。
演奏に合わせて舞台後方のパイプオルガンのあたりを照明で色彩変化させるのも通常のクラシック音楽のコンサートではほとんど見ない光景です。
NJPの演奏は、「まあ、定期演奏会じゃないし、細部は…」という箇所はありましたが、まずます好演と言って良い部類だと思います。

201711031

201711033

201711032

201711034

201711035

201711036

201711037

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月28日 (土)

ラザレフ/日フィル(2017/10/28)

2017年10月28日(土)14:00
サントリーホール

指揮:アレクサンドル・ラザレフ
日本フィルハーモニー交響楽団

(第694回東京定期演奏会<秋季>)

【ラザレフが刻むロシアの魂SeasonⅣグラズノフ3】
グラズノフ:交響曲第4番
ショスタコーヴィチ:交響曲第1番

仕上がり良好、極上の包み込まれるような音です。

グラズノフは私はたぶん初めて聴いたと思いますが、「珍しい曲を音にしてみました」のレベルではありません。
例によってハイテンションの指揮ですが、出てくる音は不思議と柔和。
柔和だけど弱々しくない。
弱々しくないけど、ふわっとホール空間に充満する。

ラザレフさんは、着任当初の荒々しいくらいの指揮から「爆演型か?」と勘違いしていました。
「ラザレフさんよりインキネンさんの方が日フィルには合っているのでは?」と思ったこともあったくらい。
それが、実は違って、ニュアンスをも重視する指揮者だったことはかなり前に気が付かされてはいましたが、この日の演奏は、ラザレフさんが活を入れて立て直し、良い方に転がり出して、上昇基調にのった日フィルの現在を、音が示した演奏でした。
もちろん、入念なリハーサルで磨き上げたのでしょうけれど…。

休憩後のショスタコーヴィチも、本当に音が練り上げられ、微弱音も繊細な美しい音。
おそらく大音響の美しさもその繊細な音の織り重なり、練り上げから生まれたものでしょう。
スカッとする音ですが、スッキリ系ではなく、芳香感を内包した音。
その音がホール空間を満たす充足感。
短い曲2曲で、短めの演奏会でしたが、満足感は非常に高い演奏会でした。

20171028

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月22日 (日)

ノット/東響(2017/10/22)

2017年10月22日(日)14:00
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団

(名曲全集第130回)
オルガン:石丸由佳
ピアノ:児玉桃

リスト:バッハの名による前奏曲とフーガS.260(オルガン独奏)
シェーンベルク:管弦楽のための変奏曲
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
ラヴェル:ボレロ

迷いましたが、やっぱり行ってみるものです。
前日の演奏が110%とすれば115%から125%は行ったのではないでしょうか。
最後のボレロはおそらく前日よりもノット監督による点火が早く、楽団員さんはもう、わっしょい、わっしょいの勢いで弾きまくりながら、顔に「おい、おい、おい」というような笑みが浮かぶほどでした。

前日、こんなに凄いパガニーニ狂詩曲の演奏は、おそらく私は、生きている間には二度と巡り会えないだろう…と前日に思ったときに、巡り会う方法がひとつあることには気がついました。
それは翌日のこの日、ミューザに行くこと。
正解でした。

そのラフマニノフは、こちらも前日の出来が素晴らしかったので110%が120%になったような僅差ですが、オケの音の切れ味はさらに増し、モダンでスタイリッシュなラフマニノフ、分厚く感傷的なラフマニノフから決別。
桃さんの多彩な音の粒々も快感でした。

前半も、前日の追体験ではありません。
オルガン独奏曲は、ミューザのオルガンに変わって音色が変化。
私は、サントリーのオルガンの音よりも好きなので、柔らかさが加わったオルガンの音で複雑にからまる音色を楽しみました。

シェーンベルクを聴く限りは、ホール音響は予想したほど演奏効果に影響していないように感じました。
もともと、サントリーホールでも、高分解能で演奏されました。
それでも、やはりミューザの方がホール音響の分解能は上だったでしょうか。
それにしても、私がかなり苦手のシェーンベルクの作品が、こんなにも耳に心地良く、文字通り「音を楽しむ」ように聞こえたのは、前夜に体験済みだったとは言え、やはり驚きを禁じ得ません。

生演奏だから細部は色々ありましたがそれは枝葉末節。
微弱音からの音がさざめくように立ち上がるところのニュアンスなど、音の磨き上げの極致。
東響の黄金時代、今後も注目せざるを得ません。

201710271

201710272

201710273

201710274

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月21日 (土)

ノット/東響(2017/10/21)

2017年10月21日(土)18:00
サントリーホール

指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団

(第654回定期演奏会)
オルガン:石丸由佳
ピアノ:児玉桃

リスト:バッハの名による前奏曲とフーガS.260(オルガン独奏)
シェーンベルク:管弦楽のための変奏曲
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
ラヴェル:「鏡」~「悲しい鳥たち」
(アンコール)
ラヴェル:ボレロ

プログラミングの妙味に、よくぞここまで磨き上げた!というような演奏で、もうお腹いっぱい。
前菜、メインディッシュ、デザートなどではなく、メインディッシュ級を4曲(桃さんのアンコールを入れれば5曲)並べられて、おいしいので全部食べちゃった…という感じです。

私は東響の定期会員は比較的長い方だと思いますが、嬉しい反面、東響が未知の領域の高みに登って行ってしまって、手の届かない存在になってしまいそうな怖さも感じた演奏会でした。

まずはオルガン独奏とオーケストラで、連続して演奏されたリストとシェーンベルク。
実はめちゃくちゃ(破壊的なくらいに)革新的だったリストと、実はそれまでの伝統との継続性がるシェーンベルクを、続けて演奏することで音にしてみせたのでしょうか。
私は、シェーンベルクの複雑怪奇は想定内として、リスクと音が絡まりあう複雑怪奇に、かなり驚きました。

そして…。

私は、シェーンベルクは結構苦手な作曲家なので、オルガン独奏が終わってオケの演奏が始まった時は、「あー、しばしの我慢…」と思ったのですが、曲が進むにつれて、複雑な音の絡まりが高揚していく様子にで、「あれれ?面白いじゃないですか!」という気持ちになっていったのに、自分で驚きました。
これ、「珍しいものを聴かせていただき、ありがとうございました、おわり」の演奏ではありません。
シェーンベルクをここまで楽しませてくれたノット監督に感謝!感謝!です。

そして…。

休憩後のラフマニノフが、もしかしたら一番の聴きものだったかもしれません。
実は、桃さんのパガニーニ狂詩曲って、事前に想像が出来なかったのです。
あの一見クールな桃さんが、どう弾くのだろう?
なぜ、桃さんがソリストに呼ばれたのか?
その答えは、ノット監督指揮するオーケストラの音にありました。

パガニーニ狂詩曲のオーケストラ・パートが、こんなにくっきりと分解能高く演奏されたのは(私の乏しい鑑賞経験の中ではありまするが)全く記憶にございません。
あのカンブルラン様が読響で振ったときだって、確か、こうはならなかったような…。(←芸劇の3階で聴いたので、断言はできませんが…。)

この、ロマンティックではなく、センチメンタルでもない、スタイリッシュでモダンなラフマニノフを実現するためには、ソリストは桃さんでなければならなかったのです(←大げさ)。
このオケの音、伴奏などではありません。
がっぷり四つの協奏曲、いや、交響曲並みの気合いで演奏されたオケ。
シェーンベルクよりも後の時代ながら、作風から「時代が逆戻りした」ような印象になるものと予想していましたが、その予想もはずれました。
感傷的な印象は皆無に近く、完全に「同時代」のような音楽。
本当に、本当に、素晴らしい演奏。
この曲の、これ以上の演奏は、おそらく、私が生きている間に、もう二度と出会えないでしょう(翌日のミューザ川崎での同演目の演奏会に行かない限り。

桃さんのアンコールも、最初、「メシアンかな?」と思いました。
桃さんらしい、クールだけどちょっと凄みがある演奏でした。

最後は、文字通りオーケストレーションの天才によるボレロ。
一般的には、この曲がこの日のメインディッシュでしょう。
その通り、素晴らしい演奏でしたが、それ以外の曲の演奏もめちゃくちゃ素晴らしかったので、最後は大喝采ながら、いつものノット監督のソロカーテンコール(一般参賀)にはなりませんでした。

凝りに凝った演目(桃さん、ちゃんと、構成を壊さないように、ラヴェルを選んだんですね~。さすが!)にお腹いっぱい。
満腹感で大満足です。

プログラム冊子に載っているアシスタントコンマスの廣岡さんの談話に「最初の頃は(ノット監督に)ついていけない時もあった」というようなことが載っていましたが、確かにそうでした。
私も、そういう演奏会にあたってしまったことはあります。
しかし、今や、就任当初に比べて打率は格段に上がっていると言って良いのでしょう。
東響は、秋山さんの時代の最後の方、スダーン監督との蜜月に続いて、ホップ・ステップ・ジャンプの、第3の黄金時代を迎えたと言って良いのかもしれません。

201710211

201710212

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月15日 (日)

下野竜也/N響(2017/10/15)

2017年10月15日(日)14:00
NHKホール

指揮:下野竜也
NHK交響楽団

(第1867回定期公演Aプログラム)
ヴァイオリン:クララ・ジュミ・カン
ソプラノ:モイツァ・エルトマン

モーツァルト:歌劇「イドメネオ」序曲
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
モーツァルト:歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」序曲
ベルク:「ルル」組曲

モーツァルト、ベルク、モーツァルト、ベルクで、前半と後半それぞれに共通テーマという下野さんらしい凝ったプログラム。
そのプログラミングの妙の術中にはまり、モーツァルトがどことなく暗い影を伴って響くような…。

ベルクのオケは後半の方の「ルル」組曲の方が格段に良かったです。
音の融合と、文字通り「劇的」な高揚と激情。歌手も堂に入って狂気(?)を声にして突き抜けるような歌唱。
素晴らしい!!

前半のヴァイオリン協奏曲は、オケが「複雑で奇怪な曲」の側面を隠しきれていないように感じられてちょっと残念。
物理的には僅差でも、聴いた印象には増幅されて現れる?

「終わり良ければ全て良し」で気分良く家路につけました。
そして、いっそのこと、尾高賞受賞作品は、下野さんを毎年定期に呼んで、定期演奏会で演奏したら?と思ったりもしました。
下野さんの前に尾高忠明さんかもしれませんが、Aプロ下野さん、BCプロ尾高忠明さんとか??
ベルクなんて、もう現代音楽ではないのですが…。

休憩時間の男子トイレの行列が普段よりかなり短いNHKホールでした。

20171015n

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年10月14日 (土)

川瀬賢太郎/神奈川フィル(2017/10/14)

2017年10月14日(土)14:00
横浜みなとみらいホール

指揮:川瀬賢太郎
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

(定期演奏会みなとみらいシリーズ第333回)
語り:唐田えりか

武満徹:系図~若い人たちのための音楽詩~
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

無造作に2曲並べただけ…ではなく、家族をテーマにした2曲でした。
プログラミングの妙ですね。

武満さんの作品は、谷川俊太郎さんの詩が語りとして挿入される曲。
以前、確か、N響定期で聴いたような記憶がありますが、その時も、語りの威力が強く印象に残っています。
この日の唐田さんも、さすがはその道のプロ。
譜面台のに紙は置かれていたようですが(そこに詩が書いてあったかどうかは不明)、譜面の方を向かずにまっすぐ客席を向いていたので、おそらく暗唱。
劇と違って詩なので、どちらかと言うと淡々と語りを進目ざるを得ないとは思いますが、平板ではなく、淡々中にも語りの表情付けを内包した至芸でした。
あと、この曲は、オケがこんなに分厚く、大編成で、雄弁だったのか…とちょっとびっくりでした。

後半の「英雄の生涯」は、前半の武満作品で「オケの音にもう少し融合感があれば」と感じたのが、完全に払拭されました。
素晴らしい音の練り上げ。
スリムでスタイリッシュな音を、多層に折り重ねて、厚いけど見通しの良い音を紡ぐ川瀬マジック炸裂!

崎谷コンマスのソロも川瀬さんの作るオケの音の方向に沿った演奏。
スリムかつ透明感のある音色ながら、歌い回しも間合いも絶妙。

生演奏なので、響きの純度の面で、隅から隅まで完璧でなかったとは言え、その程度のことは在京オケ上位陣でもあります。
むしろ、このレベルまで音の純度を高めるような磨き上げが出来たことを賞賛すべきでしょう。

神奈川フィル、本当に変わりました。
「シュナイトさんの頃に比べて…」などと言うと、もう、年寄りの回顧談のようです。

201710141_2

201710142_2

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧